第2話:踊る阿呆に見る阿呆
1:踊り狂う村と作戦会議
セレナ(元・見浦アルト)一行は、魔王の手下が潜むという「ラグナの森」を抜け、次の目的地である小さな村「ミト村」に到着した。
だが、村に足を踏み入れた瞬間、異様な光景が広がっていた。村人たちがあちこちで、さまざまなダンスを踊り続けているのだ。男も女も、老人も子供も、汗だくで古典的なダンスからムーンウォークやロボットダンスまで、ステップを踏み続けている。
「うわ、なにこの村!? みんなオーディションでも受けてんの!?」
セレナがツッコミを入れると、ミラが杖をクルクル回しながら言う。
「ふむふむ。ミラの魔法センサーによると、この村、なんか変な魔力に支配されてるよ! ほら、さっさと調べよ!」
ガヤルドは豪快に笑い、「ハハッ、踊りならオレも負けねぇぜ! 見ろ、俺の故郷の踊りを!」と、突然盆踊りのようなものを披露し始める。
「いや、誰も頼んでねぇよ!」とセレナが叫ぶ中、シルビアがニヤリと笑い、冷静に言う。
「ふふ、この踊りは呪いの類ね。村人に話を聞くべきよ」
一行は、長老の村長に話を聞く。村長は日本舞踊のような舞を踊りながら、震える声で説明した。
「山の洞窟に潜む翼の魔物が、村の若い娘を次々とさらっていき、村人には『踊り続ける呪い』をかけおった…。勇者様、どうか魔物を討伐してくだされ!」
セレナは眉をひそめる。「若い娘をさらうって、めっちゃ怪しいな…。警察に相談した方が…。でも、洞窟の場所は?」
村長は首を振る。「それが、誰も知らんのじゃ…。魔物は空から現れ、娘をさらって飛び去るのじゃ」
シルビアが扇子をパチンと閉じ、ニヤリと笑う。
「ふふ、なら作戦は簡単。セレナ、キミが村の若い娘に扮してさらわれるのよ。そしたら洞窟の場所が分かるわ♡」
「は!? 俺が!? いや、俺、男だから! そんなの絶対嫌だ!」
セレナは顔を真っ赤にして抗議するが、シルビアは妖艶に微笑む。
「仕方ないわね。じゃあ、私も人質として加わるわ♡ 二人で可愛く踊って、魔物を誘いましょう♪」
「いや、なんでお前までノリノリなんだよ!」
ガヤルドが「ハハッ、いいじゃねぇか! セレナの姿ならバッチリだろ!」と笑い、ミラが「セレナ、恥ずかしがらないで! ミラもダンスで応援するよ!」と無邪気に煽る。
セレナは頭を抱え、独白する。「なんで俺がこんな目に…。ルミナス、絶対許さねぇ!」
2:セレナの屈辱ダンス
村の広場で、セレナとシルビアは村の若い娘に扮してダンスを踊ることに。セレナは村人から借りたフリフリのドレスを着せられ、恥ずかしさに顔を真っ赤にしながらぎこちなくステップを踏む。
「くっ、殺せ!こんなヒラヒラした服で魔物を誘惑するなんて! なんで俺がこんなことを…!」
一方、シルビアは扇子を振りながら、まるでプロのダンサーのように優雅に舞う。村人たちが「うおお、女神だ!」「美しすぎる!」と大盛り上がり。
「ちょっと、シルビア、目立ちすぎだろ! 俺だって…!」 と謎の対抗心を燃やすセレナ。
少し離れた所では、ガヤルドが盆踊りのように舞い、ミラは幼稚園のお遊戯会のようなダンスを楽しそうに踊っている。
セレナ「みんなノリノリ過ぎるだろ!」
その時、空に暗い影が現れる。バサバサと翼を羽ばたかせ巨大な魔物が降りてきた。魔物はセレナとシルビアを見比べ、なぜかシルビアだけをガシッと掴んで飛び去る。
「きゃあ♡ たすけて~!」とシルビアがわざとらしい悲鳴を上げる。
セレナはポカンと立ち尽くし、地面に膝をついて独白する。
「見た目は女の、男に魅力度で負けた……。いや、俺、男だからいいんだけど……。なんか地味にショックなんだけど!?」
ガヤルドがセレナの肩を叩き笑う。
「ハハッ、気にすんな! シルビアの色気は魔物すら落とすぜ!」
ミラがさらに「落ち込まないで!セレナが単にダンス下手だっただけじゃん!」と追い打ちをかける。
「フォローになってねぇ! とにかく、魔物の行った方向を追うぞ!」
セレナは意気消沈しつつも、気を取り直して一行を率いる。魔物が飛び去った山の方向へ向かうのだった。
3:魔物の洞窟に突入
一行は魔物の飛行ルートを追って、山の洞窟にたどり着く。薄暗い洞窟の中では、ゴブリンやオークらしき魔物たちがウロウロして談笑しているが、なぜかやる気がゼロ。
「あ~、だる~。俺、二日酔いで頭ガンガンすんだよな~」
「今月のシフト、キツすぎだろ…。魔王様、もっと休みくれよ~」
セレナは呆れ顔で呟く。「なんだこの魔物、ブラック企業の中間管理職みたいじゃん…」
戦闘が始まるが、魔物たちの士気が低すぎて、ろくに抵抗しない。ガヤルドが「オラァ!」と剣を一振りすればゴブリンが逃げ出し、ミラが「くらえ!」と小さな火球を放つだけでオークが「まいった!」と降参。
「いや、こんな楽勝でいいのか!? 勇者としてなんか物足りないぞ!」とセレナが叫ぶ。
シルビアの声が洞窟の奥から聞こえる。「早く来て~! 私、退屈してるのよ~♡」
「退屈!? お前、さらわれた身だろ!?」
一行はほぼ無抵抗の魔物たちをスルーして、洞窟の最深部へ。そこには、さらわれた村の娘たちが、鉄の檻に閉じ込められていた。シルビアはなぜか檻の手前で扇子を振り、脚を強調した妙に艶かしいポーズで魔物たちを挑発中。
「ふふ、優しくしてね……♡ 私、壊れやすいのよ?」
魔物のボスは、部下にキレる。
「アホ! ニューハーフ連れてきてどうする! 若い娘って言っただろ!」
だが、ボスはシルビアをチラ見し、内心で呟く。
「いや……これ、意外とアリなんじゃね?」
その瞬間、セレナたちが乱入!
「そこまでだ! お前たちは完全に包囲されている!」
セレナが聖剣を構え、ガヤルドが剣を振り上げ、ミラが杖を掲げる。
ボスは焦りつつも、「おのれ、勇者め! 返り討ちにしてやる!」と襲い掛かる。
4:死闘の決着と帰還
戦闘開始直後、ボスが自信満々に仕掛けた「落石トラップ」が誤作動。巨大な岩がボス自身に直撃し、瀕死状態に。
「ぐはっ! な、なぜ俺の罠が…!」
セレナは呆れながら聖剣を振り上げる。
「とどめだ!」
一撃でボスは「ぐふっ!」と叫び、派手に倒れる。
あまりのあっけなさに、セレナは呟く。
「いや、俺の活躍、ほぼゼロじゃん…。これ、勇者としてどうなの?」
ガヤルドが「ハハッ、勝てりゃいいんだよ!」と笑い、「ミラの魔法がなくても勝てたじゃん! つまんなーい!」とミラは不満げ。
シルビアが歩み寄ってきて、扇子でセレナの顎をクイッと持ち上げる。
「ふふ、セレナ、助けに来てくれてありがとう♡ でも私、ちょっと楽しかったかも?」
「楽しかった!? お前、どんなメンタルだよ!」
一行は檻に囚われていた村の娘たちを解放。娘たちは「ありがとう、勇者様!」「シルビア姐さん、かっこいい!」と大喜びだが、セレナは「俺、何もしてないのに…」とまた地味に落ち込む。
村に戻ると、村長は感謝の言葉と共に宣言する。
「勇者一行の栄光を讃え、モニュメントを建造するぞ!」
セレナたちはちょっと期待したが、翌日、広場に現れたのは……ハリボテの板に一行の絵が描かれた、顔出しパネル。
しかも、セレナの絵は妙に胸が強調され、シルビアはM字開脚のポーズ、ガヤルドは筋肉ムキムキ、ミラはなぜか8頭身の大人として盛られている。
「な、なんだ!このクソダサいパネル!?」とセレナが叫ぶ。
村長は得意げに言う。
「どうじゃ、勇者様たちの勇姿を完璧に再現したぞ!」
ガヤルドは「ハハッ、オレの筋肉、いい感じだぜ!」と満足そうだが、ミラは「なんでミラ、こんなデカいの!?」と抗議。シルビアは「ふふ、私の魅力、よく出てていいわね♡」とニヤリ。
セレナが村長に変な置物やダサい服を贈られ、微妙な空気の中、村人たちに盛大に見送られてセレナ一行は次の目的地へ旅立つ。
村長たち「お達者で〜!またパネルを見に戻って来てくだされ〜!」
セレナ(独白)「恥ずかしくてもう二度と来ないと思うけど…」
5:新たな目的地へ
開けた道に出て、セレナは空を見上げ叫ぶ。
「ルミナス!次はどこに行けばいいんだー!」
少し間をおいて、女神ルミナスがホログラムのように空に現れる。慌てていたのか、手には美顔ローラーを持ったまま。
「も〜、何?それくらい自分で考えなさいよね!」
ルミナスがブツブツ文句を言いながら、ぶっきらぼうに叫ぶ。
「やっぱ大きなお城のある街とか、人の集まる所に行った方がいいんじゃない!?」
セレナが「ふーん、じゃあその街まではどう行ったらいいんだ?」と問いかける。
「えーと、それはね…。あっ、ちょっと宅配の人が来たから、この辺で!それじゃガンバ〜☆」
ルミナスの姿がスゥーッと消えていく。
「このポンコツ女神がぁ!」とセレナが叫ぶ中、一行のドタバタな冒険は続くのだった。(つづく)