第1話:目が覚めると、なぜか胸があった
1:突然の召喚と女神のミス
見浦アルト(17歳)は、どこにでもいる冴えない男子高校生。テストは赤点スレスレ、部活は帰宅部、友達はオンラインゲームのギルド仲間だけ。
そんな彼は、いつものようにコンビニのカップ焼きそばをすすりながら、ゲーミングPCでRPGをプレイしていた。だが、その平穏な日常が突然崩れ去る。
「うおっまぶしっ! 何この光!? 目が!目がぁぁぁあっ!!」
突然、画面からの眩い光に包まれ、アルトは悲鳴を上げながら気を失う。やがて目を覚ますと、体がふわっと浮き、気づけば大理石の神殿に立っていた。
目の前には、古代ギリシャ人のような服を着た女性、自称「女神ルミナス」がふよふよ浮かんでいる。金髪に純白の衣装、頭には星形のティアラの神々しい雰囲気。だが、どこか抜けた笑顔が不信感を煽る。
「ふわ~! やっと召喚成功! ようこそ、選ばれし勇者よ! 我が名は女神ルミナス!この世界『エリシオン』を魔王から救うため、我が力を――」
「ちょっと待て! 俺、なんでこんなとこに!? 説明しろよ!」
アルトは女神を遮って叫ぶが、声が妙に高い。自分の体を見下ろすと、そこには信じられない光景が。
「うそ、だろ……!? な、なんで俺、こんな胸が!? スカート!? 髪サラサラ!?」
そう、アルトは美しい少女の姿に変身していた。腰まで伸びる黒髪、キラキラした瞳、華奢なのに妙に強調されたボディライン。まるでアニメのヒロインだ。鏡はないが、触ればわかる。これは完全な女体化だ。
「え、ルミナスさん…だっけ!? これ、俺の体どうなってんの!?」
アルトはパニックで叫ぶが、ルミナスは長い髪を指でくるくる弄りながら、気まずそうに目を逸らす。
「えっとね、ちょっとだけ召喚の設定ミスっちゃって……。性別を女にしちゃったの☆ てへぺろ!」
「冗談じゃねぇ! 俺、男だぞ! 元の体に戻せ!」
ルミナスが「チッ」と舌打ちして露骨に機嫌悪そうになる。
「うるさいなぁ! 細かいことは気にしないの! とにかく、この世界を魔王から救うのがキミの使命なんだから! ほら、ステータス画面見てみなよ! めっちゃ強いよ!」
半信半疑で、アルトは空中に浮かぶステータス画面を覗く。そこにはこう表示されていた。
名前: セレナ
職業: 勇者(♀)
スキル: 聖剣召喚、回復魔法、魅力アップ(パッシブ)
備考: 女神のミスで女体化。一切の苦情は受け付けません。
「セレナって誰だよ! 俺、アルトだろ! ってか、魅力アップって何!?」
「ふふん、敵や村人に好かれやすくなるボーナスだよ! 感謝してよね!」
「誰が感謝するんだよ! このポンコツ女神!」
アルトもといセレナは頭を抱えるが、ルミナスは「じゃ、仲間紹介するから頑張ってね~!」と言い残しスッと姿を消す。
「待て! まだ話終わってねぇ!」
だが、女神の声はもう聞こえない。そこへ、神殿の奥からドタドタと足音が近づいてくる。
2:個性的すぎるパーティメンバー
神殿の扉がバーンと開き、3人の人物が現れる。セレナは目を丸くする。こいつらが、俺の仲間!?
1人目は、筋骨隆々の剣士・ガヤルド。革の鎧に巨大な両手剣を背負い、顔には戦士らしい傷跡。いかにも「脳筋」なオーラ全開だ。
「オレはガヤルド、旅の剣士だ。勇者とやら、見た目はか弱いが、戦えるんだろ?」
ガヤルドはセレナを上から下まで眺め、ニヤッと笑う。セレナはなぜか寒気がし、胸の辺りを腕で覆いながら叫ぶ。
「いや、ちょっと、ジロジロ見んな! 俺、男だから! 勘違いすんなよ!」
「は? 男? お前、この可愛い顔で男だと? ハハッ、いい冗談だ!」
2人目は、小柄で金髪ツインテールの少女・ミラ。見た目は10歳くらいだが、巨大な魔法の杖を軽々と持つ。
「ふーん、勇者ってアンタ? まあ、ミラの超すごい魔法に比べれば、勇者なんておまけだけどね! ほら、早く魔王倒しに行こ!」
ミラは子どもっぽくウィンクするが、杖から漏れ出てる魔力がヤバい。
「いや、こんな子どもがそんな強そうな魔法使えるの!? てか俺、こんな体でどう戦えと……」
そして3人目は、妖艶な美女・シルビア。銀髪ロングに扇情的なドレス、扇子を手に優雅に微笑む。だが、声が妙に低く、どこか男性的な響きがある。
「勇者セレナ、よろしくね。私は賢者シルビア。このパーティの頭脳よ。あ、ちなみに私の下にはね……ふふ、秘密の玉があるの♡」
「うわっ、急に何!? 情報過多すぎるって!」
セレナはシルビアの意味深なウィンクにたじろぎ、思わず後ずさる。ガヤルドが豪快に笑い、ミラが「シルビア、変なこと言わないでよ!」とツッコむ。
3:初バトルと女体化の洗礼
ルミナスの指示で、魔王の手下が潜む「ラグナの森」へ向かうことになった一行。セレナはまだ女体化に慣れず、スカートの裾を気にしながら歩く。
「なんでこんなヒラヒラの服なんだよ……。脚がスースーするし、ズボン返してくれ!」
「ふふ、セレナ。その服似合ってるわよ。もっと堂々とすれば?」とシルビアが語りかける。
「うるさい! 俺は男だ!」
「はいはい、男の娘でも可愛いよ~」とミラがニヤニヤ。ガヤルドは「男でも女でも、剣で敵をぶった斬れりゃ関係ねぇ!」と豪快に笑う。
森に着くと、さっそくゴブリンたちが襲ってくる。セレナは慌ててステータス画面を開き、「聖剣召喚」を試みる。
「えっと、聖剣ってどう出すんだ!? イメージ!? 気合!?」
すると、手に光が集まり、輝く銀の剣が現れる。だが同時に、「魅力アップ」のパッシブスキルが発動。ゴブリンたちがセレナを見て、なぜかハート目になり、武器を落として呆然。
「おお、勇者すげぇ! 敵がメロメロじゃん!」とガヤルドが感心。
「これ、俺の力じゃねぇ! ポンコツ女神のせいだろ!」
セレナは剣を振るうが、スカートがめくれるのを気にするあまり、派手に転倒。
「くそっ、この体、動きにくい! ルミナス、覚えてろよ!」
ミラが「ふん、ミラの魔法で十分なのに!」と火球を放ち、ゴブリンを一掃。
シルビアは扇子をパタパタしながら、「ふふ、セレナの魅力は使えるわね。次は私が戦術を立てるわ」と冷静に分析する。
4:冒険の第一歩と小さな決意
ゴブリンを倒し、森の奥で魔王の手下が隠した「魔晶石」を発見した一行。だが、これは魔王討伐のほんの一歩に過ぎない。セレナは疲れ果て、夜のキャンプ地で体育座りで俯いている。焚き火を囲む仲間たちに、思わず愚痴をこぼす。
「はぁ……なんで俺がこんな目に。女の体とか、マジで意味わかんねぇ……」
切り株に腰掛けたミラが無邪気に言う。
「でもさ、セレナ、女の子でもカッコいいじゃん! ミラ、応援するよ!」
女の子座りのシルビアが扇子で口元を隠しつつ囁く。
「ふふ、性別なんてただの器よ。大事なのは、君の心がどう戦うか、でしょ?」
ガヤルドは肉をガッツリ齧りながら叫ぶ。
「お前が男でも女でも、勇者なら魔王ぶっ倒せ!それでいいだろ!」
セレナは仲間たちの言葉に、ほんの少し心が軽くなる。
「ま、仕方ねぇ。この体でも、魔王だろうがなんだろうが倒してやるよ!」
セレナが拳を握りしめ、夜空を見上げる。ふと、思いついたように立ち上がり、空に向かって叫ぶ。
「おい!ルミナス、見てるんだろ!なんとか言えよ!」
すると夜空にルミナスの姿がホログラムのように現れる。頭にはナイトキャップのようなものを被っている。
「何の用?夜ふかしはお肌の大敵なんだけど!」
ルミナスが目を擦りながら不機嫌そうに呟く。
セレナが大声で夜空に叫ぶ。
「魔王討伐って言っても、何の手がかりもないじゃん!お前、女神なら何か情報知ってるんだろ?教えろよ!」
ルミナスは都合が悪そうに目を逸らしながら呟く。
「あ〜、情報ね!もちろん知ってるけど…それを探るのも勇者の使命!とりあえず、村で聞き込みとかしたらいいんじゃないかな!うん!じゃあ、ガンバ〜☆」
ルミナスの姿がスゥーッと夜空に消えていく。
「おい!絶対何も知らないだろ!あのポンコツ女神、絶対許さねぇ!」とセレナが叫ぶ中、仲間たちは大笑い。
こうして、勇者セレナと個性豊かなパーティの、魔王を倒すためのドタバタな冒険が始まったのだった。(つづく)