表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/31

第14章:揺れる王都と賢者会議(2)

 学院関係者が動揺するなか、その騎士は王国の紋章を掲げた。

 会場は一気に騒然。

 封印派の賢者は「これ幸い」とばかりに「王国と連合軍が求めるなら、学院も逆らえぬ。さあ、早く拘束しろ!」と再び声を上げる。


 リオネが慌てて「待って、いま話し合いの真っ最中です!」と訴えるが、騎士たちは剣を抜き、連合軍士官も「誰が話を聞くか」と手をかざす。

 今にも会議が崩壊し、レイジが強制連行される危険が迫る。

 そこへ、長老が再度杖を振りかざし、強力な結界を張る。


「王国の使者と連合軍とやらが入るのは構わぬが、学院の会議を壊すなら、わしも容赦せんぞ!」と威圧的に宣言する。


 騎士や士官が一瞬怯んだところで、セトがここぞとばかりに声を張り上げる。


「そちらこそ、王や陛下から正式な命令を受けたという証拠はあるのか? ただの暴走部隊じゃないのか?」と突っ込む。


 騎士は憤慨し、「馬鹿を言うな。陛下はレイジ封印を望んでいる!このままでは連合軍に利用される恐れがある」と理屈を並べる。

 連合軍士官も「いや、連合こそがレイジを管理すべきだ。王国が独占するなど認められん!」と譲らない。

 結局、両者はレイジの扱いをめぐり対立し、賢者会議の場で言い合いを始めてしまう。


 リオネは呆れ、「これじゃ会議どころじゃないわ……ユダの影響かしら。戦乱を煽る思惑が透けて見える」

 レイジは歯を食いしばり、「なんで人間同士がこんなに争うんだ……」と胸を痛める。


 長老が「静粛に!」と怒声を上げるも、騎士と士官は小競り合いを続ける。

 封印派の賢者たちも、ここぞとばかりにレイジに『拘束呪』を打ち込もうとする気配がある。


 まさに学院会議が崩壊寸前、会場全体を揺るがすほどの巨大な爆音が聞こえた。


「な、なんだ!?」

「この音は外から!?」

「まさか襲撃か?!」


 一斉に視線が入り口に注がれる。

 どうやら学院敷地の外で大きな爆発が起きたようだ。

 焦げ臭い匂いが漂い、魔力の歪みが大講堂にも伝わってきている。


 セトが血相を変え、「爆弾か……ユダの手下か、連合軍強硬派の仕業か」と声を震わせる。

 長老は「まさか賢者会議を破壊しに来たか?」と眉をひそめる。


 封印派賢者たちも驚き、「我々も狙われているというのか……?」と困惑する。

 王国騎士は「騎士団を呼ばねば!」と言い、連合軍士官は「俺たちはここを脱出する!」と勝手に動き出す。

 会場は完全にパニックだ。


 リオネがレイジの腕を掴み、「外に出るしかないわ。このままここにいても封印派と騎士・連合軍が入り乱れて、あなたが捕まるだけ!」と大声で呼びかける。

 

 セトも賛同し、「長老、申し訳ないが退避します。学院が破壊されたら元も子もありません!」と伝える。


 長老は苦い表情をしつつ、「わしも一緒に行く。こんな暴挙、絶対に許せん……賢者会議を乱す者が誰か、突き止めねば」と杖を握り締める。封印派の何人かも動揺していて、「学院が破壊されるのは困る……」と後に続く者もいる。

 そして、学院外で待ち受ける何者かの襲撃へ向かうために、セトやリオネ、長老と共に大講堂を飛び出すのだった。



 アリシアは王の前で訴えを続ける最中、大広間に急報が入る。


「学院で大爆発が起きたようです!」

「連合軍が大規模に動いたとの情報もあります!」


 宰相や騎士団幹部が騒ぎ出し、王は苛立ちをあらわにする。


「……このタイミングで賢者学院か。まさかレイジが学院に潜んでいるのか……?」と鋭い眼差しをアリシアに向ける。


 アリシアは一歩も引かず、「もしレイジが学院にいるなら、なおさら『封印』ではなく、彼と話し合ってください。いまは闇商人ユダや連合軍の脅威を差し置いて、同士討ちしてる場合じゃありません!」と大声で主張する。


 王は怒りを含んだ声で「しかし、レイジを連れて来るでもなく、ただ『再生できる』などと言うだけでは、信用できん」と吐き捨てる。

 そこでアリシアが決死の一言を放つ。


「だったら、私を人質にしても構いません。騎士団や国民の前で『レイジが味方である』証拠を示せばいい。レイジが世界再生を願うなら、国に危害を加えないで済む。――もし万一、彼がまた破滅の道へ戻るなら、私の命を差し出しましょう。それでも、王国とレイジが手を結ぶ道を開いてください!」


 宰相や騎士団幹部が「バカな!」と口々に非難するが、アリシアの覚悟は揺るがない。

 王は複雑な表情を浮かべ、「そこまで言うか……」と呟く。

 評定の場は波立ち、ガロンの囮行動で外から叫び声が響いているが、それを無視して王は思案に沈む。


 結局、王は宰相と短く視線を交わし、「よかろう。だが、今すぐレイジを連れて来ることは不可能なのだろう? 賢者学院で起きた騒動と関係があるなら、いずれ向こうから何らかの動きがあるはず。そのときこそ、お前の命で保証させてもらう」と冷たく宣言する。


 アリシアは背筋を正し、「はい、私をどう扱っても構いません。ですが、レイジと話をする機会だけは必ず作ってください。世界は再生に向かう可能性があるんです……!」と目を潤ませる。

 

 王は重々しく頷き、「わかった。しかし、もしレイジが虚報を流しているだけなら、騎士団総出で封印し、そなたも責任を負うことになるぞ」と忠告する。

 アリシアは構わないと示す。




 一方、賢者学院外で起きた爆発は、やはりユダの私兵が魔道爆弾を起動したものだった。

 彼らは学院の守備を撹乱し、混乱を拡大しようと目論んでいる。

 騎士団や連合軍の部隊も入り乱れ、まさに学院は戦場と化す寸前だった。


 レイジとセト、リオネ、そして学院長老が駆けつけると、そこには多数の私兵が闇商人の紋章を隠し持ち、禁呪を使って警備員を追い詰めている光景が広がっていた。

 さらに、連合軍の偵察兵や騎士団の強硬派までもが乱入し、「レイジはどこだ!」などと叫んでいる。


「むちゃくちゃだ……ユダが火をつけて、騎士団や連合軍の駒まで引き入れたのか」


 セトが激しい苛立ちを見せる。

 リオネは背筋を伸ばし、「ここで踏ん張らないと、会議が完全に壊れるわ。レイジ、どうするの?」と問いかける。

 レイジは真剣な目で前を見据える。


「俺はもう、破滅を振りまきたくない。だけど、ここで黙っていれば学院が潰され、世界再生の研究も止まってしまう。――精霊王の加護で、一瞬だけ魔力を解放して、彼らを無力化できないかな……」


 長老が少し考え、「大規模な攻撃魔法はまた暴走を招く恐れがあるが……おぬしがきちんと制御しているなら、結界でサポートできるかもしれん」と言う。

 セトも「僕も援護する。リオネの歌で心を安定させながら、短時間で敵を制圧しよう」と賛同する。

 リオネは弦を握りしめ、「うん。私も歌であなたの魔力を穏やかに導くわ。……行きましょう、レイジ!」と微笑む。


 こうして、レイジは学院正門前でユダの私兵と騎士団・連合軍の迷走する兵士たちを一気に鎮圧する作戦を実行する。

 仲間が結界と歌でサポートし、レイジが『再生の魔力』を小規模な爆発的衝撃波として放出――周囲を巻き込まず、敵の武器だけを弾き飛ばすイメージだ。

 

 地面が震え、空気が押し出されるように衝撃が走る。

 私兵や兵士たちは「なんだ、この力は……!?」と叫んで武器を落とし、転倒し、戦意を失う。

 破壊ではなく『制圧』――これこそレイジが新たに会得した技術。

 暴走するほどの魔力を暴力へ使うのではなく、最小限の衝撃で敵を沈黙させるスタイルだ。


 レイジは歯を食いしばりながらも、冷静を保つ。


「君たちを殺す気はない!ユダに踊らされるのはやめろ!」と叫ぶ。

 リオネの歌声が響き渡り、セトと長老の結界が最終的に敵を拘束。

 こうして学院周辺の戦闘は、わずかな犠牲で鎮圧されることになった。



 賢者学院の戦闘が収まると、封印派の賢者たちや騎士・連合兵の一部も、レイジの『制圧力』に唖然とする。

 彼が本気の破壊をせず、最小限の犠牲で終わらせた事実――それは『破滅』ではなく『再生』に近い力であると理解せざるを得ない。


 そこで長老が音頭を取り、まだ騒然とする学院の面々に訴える。


「見たか、おぬしら。破滅をもたらすと恐れられた魔力が、ここまで穏やかに制圧に使われたのだ。もしレイジを封印していたら、この場はもっと多くの死者が出ただろう!」


 封印派もさすがに言葉を失い、中立派や興味派の賢者は「確かに……」「これが精霊王の加護か」と感嘆する。

 連合軍士官までもが「お、俺は聞いてないぞ……」と目を白黒させ、結局引き上げざるを得ない。


 学院内では、レイジに対する『破滅の象徴』イメージが大幅に崩れ、「彼は本当に世界を再生する可能性を持っているのでは?」と認識が変わり始める。


 セトはそんな様子を見て安堵し、「さあ、ここからが本番だ。学院として正式に『再生の力』を公表し、王都にも提言しなければ」と息を弾ませる。


 リオネは微笑み、「アリシアさんも同じことしてるかな。これで王都が動いてくれれば……」と呟く。


 レイジは内心アリシアの姿を思い出し、「きっと、あの人なら大丈夫だ。僕も、学院で証明してみせるよ。封印しなくても世界は守れるって」と拳を握る。



 一方、王都の王宮では、アリシアと王が最終的な協議に入っていた。

 宰相や騎士団強硬派がいまだアリシアを疎んじるが、王は考え込んだ様子で「もしレイジが学院で『再生』を証明したのなら……封印は必ずしも必要ないのかもしれない」とぽつり。


 アリシアは背筋を伸ばし、「ええ、賢者学院の長老が動いてくれれば、正式な研究発表が近いはず。連合軍がレイジを恐れるなら、むしろ『再生力』を外交カードにしませんか。レイジを敵ではなく味方として迎え入れれば、連合軍もそう簡単に侵攻できなくなるはず」


 宰相が難色を示そうとするが、王は冷ややかにそれを制し、「陛下、駄目です、騎士団にもメンツがあります!」という声を押し返す。


「メンツなど、国の存亡に比べれば些細なことだ。……アリシア、もし本当にレイジが破滅しないと証明されるならば、私は方針を変えよう。――お前にも騎士として再び責務を与えたい」と宣言する。


 アリシアは目を潤ませ、「ありがとうございます、陛下……。私は必ず、レイジが世界を救う力を持つと証明します。騎士団も守りたい。これが私の願いです」と深く頭を下げる。


 王は静かに頷き、「ただし、賢者学院が実証を完成させるまでは油断ならん。連合軍が戦端を開こうとしているし、闇商人の影もある。――アリシア、お前には再び『レイジ監視』の役目を与える。わかるな?」と告げる。


 アリシアは感謝を込めて「はい、承知しました。彼を監視しつつ、王国として共に世界を守る道を探します」と応じ、騎士団強硬派が「くそっ……」と悔しげにするのを横目に見下ろしながら、密かに勝利を噛み締めた。



 こうして、王国は条件付きながらも『封印』を一時保留、学院は『再生理論』を正式に展開し始める方向で動き出し、世界は大きく好転しかけている。

 しかし、連合軍の強硬派や闇商人ユダが黙ってそれを見過ごすわけがない。


 ユダは混乱を加速させるため、各地で私兵を動かし、連合軍への虚偽情報や騎士団強硬派への過激な支援をばら撒く。

 連合軍上層には「レイジが王国の兵器となって連合を滅ぼす」という噂を広げ、最終的な軍事衝突を誘う戦略を進めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ