第14章:揺れる王都と賢者会議(2)
学院関係者が動揺するなか、その騎士は王国の紋章を掲げた。
会場は一気に騒然。
封印派の賢者は「これ幸い」とばかりに「王国と連合軍が求めるなら、学院も逆らえぬ。さあ、早く拘束しろ!」と再び声を上げる。
リオネが慌てて「待って、いま話し合いの真っ最中です!」と訴えるが、騎士たちは剣を抜き、連合軍士官も「誰が話を聞くか」と手をかざす。
今にも会議が崩壊し、レイジが強制連行される危険が迫る。
そこへ、長老が再度杖を振りかざし、強力な結界を張る。
「王国の使者と連合軍とやらが入るのは構わぬが、学院の会議を壊すなら、わしも容赦せんぞ!」と威圧的に宣言する。
騎士や士官が一瞬怯んだところで、セトがここぞとばかりに声を張り上げる。
「そちらこそ、王や陛下から正式な命令を受けたという証拠はあるのか? ただの暴走部隊じゃないのか?」と突っ込む。
騎士は憤慨し、「馬鹿を言うな。陛下はレイジ封印を望んでいる!このままでは連合軍に利用される恐れがある」と理屈を並べる。
連合軍士官も「いや、連合こそがレイジを管理すべきだ。王国が独占するなど認められん!」と譲らない。
結局、両者はレイジの扱いをめぐり対立し、賢者会議の場で言い合いを始めてしまう。
リオネは呆れ、「これじゃ会議どころじゃないわ……ユダの影響かしら。戦乱を煽る思惑が透けて見える」
レイジは歯を食いしばり、「なんで人間同士がこんなに争うんだ……」と胸を痛める。
長老が「静粛に!」と怒声を上げるも、騎士と士官は小競り合いを続ける。
封印派の賢者たちも、ここぞとばかりにレイジに『拘束呪』を打ち込もうとする気配がある。
まさに学院会議が崩壊寸前、会場全体を揺るがすほどの巨大な爆音が聞こえた。
「な、なんだ!?」
「この音は外から!?」
「まさか襲撃か?!」
一斉に視線が入り口に注がれる。
どうやら学院敷地の外で大きな爆発が起きたようだ。
焦げ臭い匂いが漂い、魔力の歪みが大講堂にも伝わってきている。
セトが血相を変え、「爆弾か……ユダの手下か、連合軍強硬派の仕業か」と声を震わせる。
長老は「まさか賢者会議を破壊しに来たか?」と眉をひそめる。
封印派賢者たちも驚き、「我々も狙われているというのか……?」と困惑する。
王国騎士は「騎士団を呼ばねば!」と言い、連合軍士官は「俺たちはここを脱出する!」と勝手に動き出す。
会場は完全にパニックだ。
リオネがレイジの腕を掴み、「外に出るしかないわ。このままここにいても封印派と騎士・連合軍が入り乱れて、あなたが捕まるだけ!」と大声で呼びかける。
セトも賛同し、「長老、申し訳ないが退避します。学院が破壊されたら元も子もありません!」と伝える。
長老は苦い表情をしつつ、「わしも一緒に行く。こんな暴挙、絶対に許せん……賢者会議を乱す者が誰か、突き止めねば」と杖を握り締める。封印派の何人かも動揺していて、「学院が破壊されるのは困る……」と後に続く者もいる。
そして、学院外で待ち受ける何者かの襲撃へ向かうために、セトやリオネ、長老と共に大講堂を飛び出すのだった。
アリシアは王の前で訴えを続ける最中、大広間に急報が入る。
「学院で大爆発が起きたようです!」
「連合軍が大規模に動いたとの情報もあります!」
宰相や騎士団幹部が騒ぎ出し、王は苛立ちをあらわにする。
「……このタイミングで賢者学院か。まさかレイジが学院に潜んでいるのか……?」と鋭い眼差しをアリシアに向ける。
アリシアは一歩も引かず、「もしレイジが学院にいるなら、なおさら『封印』ではなく、彼と話し合ってください。いまは闇商人ユダや連合軍の脅威を差し置いて、同士討ちしてる場合じゃありません!」と大声で主張する。
王は怒りを含んだ声で「しかし、レイジを連れて来るでもなく、ただ『再生できる』などと言うだけでは、信用できん」と吐き捨てる。
そこでアリシアが決死の一言を放つ。
「だったら、私を人質にしても構いません。騎士団や国民の前で『レイジが味方である』証拠を示せばいい。レイジが世界再生を願うなら、国に危害を加えないで済む。――もし万一、彼がまた破滅の道へ戻るなら、私の命を差し出しましょう。それでも、王国とレイジが手を結ぶ道を開いてください!」
宰相や騎士団幹部が「バカな!」と口々に非難するが、アリシアの覚悟は揺るがない。
王は複雑な表情を浮かべ、「そこまで言うか……」と呟く。
評定の場は波立ち、ガロンの囮行動で外から叫び声が響いているが、それを無視して王は思案に沈む。
結局、王は宰相と短く視線を交わし、「よかろう。だが、今すぐレイジを連れて来ることは不可能なのだろう? 賢者学院で起きた騒動と関係があるなら、いずれ向こうから何らかの動きがあるはず。そのときこそ、お前の命で保証させてもらう」と冷たく宣言する。
アリシアは背筋を正し、「はい、私をどう扱っても構いません。ですが、レイジと話をする機会だけは必ず作ってください。世界は再生に向かう可能性があるんです……!」と目を潤ませる。
王は重々しく頷き、「わかった。しかし、もしレイジが虚報を流しているだけなら、騎士団総出で封印し、そなたも責任を負うことになるぞ」と忠告する。
アリシアは構わないと示す。
一方、賢者学院外で起きた爆発は、やはりユダの私兵が魔道爆弾を起動したものだった。
彼らは学院の守備を撹乱し、混乱を拡大しようと目論んでいる。
騎士団や連合軍の部隊も入り乱れ、まさに学院は戦場と化す寸前だった。
レイジとセト、リオネ、そして学院長老が駆けつけると、そこには多数の私兵が闇商人の紋章を隠し持ち、禁呪を使って警備員を追い詰めている光景が広がっていた。
さらに、連合軍の偵察兵や騎士団の強硬派までもが乱入し、「レイジはどこだ!」などと叫んでいる。
「むちゃくちゃだ……ユダが火をつけて、騎士団や連合軍の駒まで引き入れたのか」
セトが激しい苛立ちを見せる。
リオネは背筋を伸ばし、「ここで踏ん張らないと、会議が完全に壊れるわ。レイジ、どうするの?」と問いかける。
レイジは真剣な目で前を見据える。
「俺はもう、破滅を振りまきたくない。だけど、ここで黙っていれば学院が潰され、世界再生の研究も止まってしまう。――精霊王の加護で、一瞬だけ魔力を解放して、彼らを無力化できないかな……」
長老が少し考え、「大規模な攻撃魔法はまた暴走を招く恐れがあるが……おぬしがきちんと制御しているなら、結界でサポートできるかもしれん」と言う。
セトも「僕も援護する。リオネの歌で心を安定させながら、短時間で敵を制圧しよう」と賛同する。
リオネは弦を握りしめ、「うん。私も歌であなたの魔力を穏やかに導くわ。……行きましょう、レイジ!」と微笑む。
こうして、レイジは学院正門前でユダの私兵と騎士団・連合軍の迷走する兵士たちを一気に鎮圧する作戦を実行する。
仲間が結界と歌でサポートし、レイジが『再生の魔力』を小規模な爆発的衝撃波として放出――周囲を巻き込まず、敵の武器だけを弾き飛ばすイメージだ。
地面が震え、空気が押し出されるように衝撃が走る。
私兵や兵士たちは「なんだ、この力は……!?」と叫んで武器を落とし、転倒し、戦意を失う。
破壊ではなく『制圧』――これこそレイジが新たに会得した技術。
暴走するほどの魔力を暴力へ使うのではなく、最小限の衝撃で敵を沈黙させるスタイルだ。
レイジは歯を食いしばりながらも、冷静を保つ。
「君たちを殺す気はない!ユダに踊らされるのはやめろ!」と叫ぶ。
リオネの歌声が響き渡り、セトと長老の結界が最終的に敵を拘束。
こうして学院周辺の戦闘は、わずかな犠牲で鎮圧されることになった。
賢者学院の戦闘が収まると、封印派の賢者たちや騎士・連合兵の一部も、レイジの『制圧力』に唖然とする。
彼が本気の破壊をせず、最小限の犠牲で終わらせた事実――それは『破滅』ではなく『再生』に近い力であると理解せざるを得ない。
そこで長老が音頭を取り、まだ騒然とする学院の面々に訴える。
「見たか、おぬしら。破滅をもたらすと恐れられた魔力が、ここまで穏やかに制圧に使われたのだ。もしレイジを封印していたら、この場はもっと多くの死者が出ただろう!」
封印派もさすがに言葉を失い、中立派や興味派の賢者は「確かに……」「これが精霊王の加護か」と感嘆する。
連合軍士官までもが「お、俺は聞いてないぞ……」と目を白黒させ、結局引き上げざるを得ない。
学院内では、レイジに対する『破滅の象徴』イメージが大幅に崩れ、「彼は本当に世界を再生する可能性を持っているのでは?」と認識が変わり始める。
セトはそんな様子を見て安堵し、「さあ、ここからが本番だ。学院として正式に『再生の力』を公表し、王都にも提言しなければ」と息を弾ませる。
リオネは微笑み、「アリシアさんも同じことしてるかな。これで王都が動いてくれれば……」と呟く。
レイジは内心アリシアの姿を思い出し、「きっと、あの人なら大丈夫だ。僕も、学院で証明してみせるよ。封印しなくても世界は守れるって」と拳を握る。
一方、王都の王宮では、アリシアと王が最終的な協議に入っていた。
宰相や騎士団強硬派がいまだアリシアを疎んじるが、王は考え込んだ様子で「もしレイジが学院で『再生』を証明したのなら……封印は必ずしも必要ないのかもしれない」とぽつり。
アリシアは背筋を伸ばし、「ええ、賢者学院の長老が動いてくれれば、正式な研究発表が近いはず。連合軍がレイジを恐れるなら、むしろ『再生力』を外交カードにしませんか。レイジを敵ではなく味方として迎え入れれば、連合軍もそう簡単に侵攻できなくなるはず」
宰相が難色を示そうとするが、王は冷ややかにそれを制し、「陛下、駄目です、騎士団にもメンツがあります!」という声を押し返す。
「メンツなど、国の存亡に比べれば些細なことだ。……アリシア、もし本当にレイジが破滅しないと証明されるならば、私は方針を変えよう。――お前にも騎士として再び責務を与えたい」と宣言する。
アリシアは目を潤ませ、「ありがとうございます、陛下……。私は必ず、レイジが世界を救う力を持つと証明します。騎士団も守りたい。これが私の願いです」と深く頭を下げる。
王は静かに頷き、「ただし、賢者学院が実証を完成させるまでは油断ならん。連合軍が戦端を開こうとしているし、闇商人の影もある。――アリシア、お前には再び『レイジ監視』の役目を与える。わかるな?」と告げる。
アリシアは感謝を込めて「はい、承知しました。彼を監視しつつ、王国として共に世界を守る道を探します」と応じ、騎士団強硬派が「くそっ……」と悔しげにするのを横目に見下ろしながら、密かに勝利を噛み締めた。
こうして、王国は条件付きながらも『封印』を一時保留、学院は『再生理論』を正式に展開し始める方向で動き出し、世界は大きく好転しかけている。
しかし、連合軍の強硬派や闇商人ユダが黙ってそれを見過ごすわけがない。
ユダは混乱を加速させるため、各地で私兵を動かし、連合軍への虚偽情報や騎士団強硬派への過激な支援をばら撒く。
連合軍上層には「レイジが王国の兵器となって連合を滅ぼす」という噂を広げ、最終的な軍事衝突を誘う戦略を進めていた。




