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【後編】 母

 日常的に繰り返される罵倒、暴行、そしてネグレクト。そのトラウマで彼女は成人するまで人の怒声や大声を聞くだけでフラッシュバックし、髪を掴んで引きずり回されたりタバコを押し付けられた火傷の痕はいくつも残っていた。やせ細った幼少時代の影響か、彼女の身長は平均を下回っている。


「どうして分かった?」

 当然の疑問を彼女は女にぶつけた。変装まではいかないが印象を変える程度はメイクをしていた。

「どうして、って? あんたの母親なんだから分かるわよ」

 舌打ち。

(母親面して)

 相変わらずの酒焼け声も、彼女の苛立ちと、未だに残る恐怖心を増幅させた。知らず知らず彼女の心拍数は上がり呼吸は上がっていた。

 それでも思い出す記憶があった。「母親なんだからかぜで調子が悪いぐらい気づくわよ」とかけられた言葉。

 彼女は再び舌打ちをした。

 それから麻痺したかのように彼女の動きは止まった。しかし困惑した女は彼女を跳ねのけようという発想もなく、組み敷かれたままただただ命乞いを繰り返す。

 近くの建物の窓から漏れ出る光が不規則に点滅していた。

 もういい、と彼女は呟いたが女には聞き取れない程の声量しかなかった。

 そして引き鉄から指を放そうとした時、ある物が彼女の目に入った。


 銃を持つ彼女自身の手、その甲に未だに残る――、タバコの火で作られた無惨な痕。


「――っ!」

 彼女の感情は一気に沸騰した。




          終わり

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