語り部が結ぶ花束
語り部でありたい。
英語だと、ストーリーテラー。
物語りのはじめからおわりを繋ぐ道のような
花園からエピソードを摘みとって
花束を結ぶのが 私たち語り部の役目
語らねばならない一輪を選びそこねることなく
彩りとなる一輪を飾ったり
遊び心に満ちた一輪を忍ばせることも忘れずに
さかのぼって語らねばならない花があれば
その回想の一輪を摘むためにひきかえして
物語の花園がおわりへと道を閉じるまえに
語り部は花束を結ぶのだ
すべての花を花束に結んで
語り尽くしてやることはできないけれど
語り足りないことが残っていれば またの機に
べつのちいさな花束を
結んでみるのもいいだろうし
ひとつの物語のおわりが
つぎのはじまりになっていて
新たな花束を結ぶ道が開 けることもあるだろう
そして 私たち語り部は その生涯に
いくつもの花園の道を渡り
いくつもの花束を結んでいく
ひとつでも多くの花束を
ひとりでも多くのひとの
手に 心に 届けるために
綴り手でもいい。