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たまごサンド

ノア君がクルス寮に来てから、学院での生活が始まってから一週間が経った。

授業のガイダンスや新しく行けるようになった研究室の見学などをしていたらあっという間に時間は過ぎ去っていった。


そして今はノア君を連れて学院の食堂を案内していた。

なんでもこの一週間行こうと思っていても提出書類や面談などで行く時間が取れなかったんだとか。

そして今朝、クルス寮の食堂でご飯を食べている時に案内をお願いされて今に至る。

ルビーは授業の都合で来れないらしい。


「うわ・・・ひっろ」

学院の中で大講堂の次に広いのがこの食堂エリア。

学院生だけでなく、高等部生が食事をしに来ることもある。

価格は安く、かといって味が悪いこともない。

学生たちにとっては憩いの場である。


「広くて迷っちゃいそうになるんだよね」

「どの店もうまそうで迷うなぁ・・アリーシャのおすすめ聞いてもいい?」

「おすすめかぁ・・」


うーん、と悩み並んでいる店を眺める。

過去の記憶と味覚を巡る。

「あそこのたまごサンドかな。私はたくさん食べられないからノア君には物足りないかもしれないけど」

アリーシャが指差した先にあったのは【パンパカパン屋】と書かれた店。

店名の隣にはホットドッグのイラストも描かれている。


「ホットドッグ屋なのにたまごサンドが美味しいのか」

「ソーセージの代わりにたまごを挟んであるんだよ。パンもフワフワで美味しいよ」

「そんなん買うしかないやん」


と、いうわけでノアはたまごサンドを買うことに。

アリーシャは先にテーブルを確保しに行き、交代で注文しに行こうという話になった。



【パンパカパン屋】の前は学生たちで賑わっていた。

メニューを見るとたまごサンドの他にも美味しそうなメニューが並んでいた。

ノアの食欲がそそられるが、意思を固く持ちたまごサンドを注文すると決めていた。


しばらくしてノアが注文する番になった。


「次の学生さーん。ご注文どうぞ」

「たまごサンド一つください」

・・・一瞬の沈黙。

そっと振り返る店員さんと奥でパンの仕込みしている料理人の一瞬の目くばせ。

ノアの頭によぎる嫌な予感。


「ごめんね!たまごサンドちょうど今売り切れちゃったんだよ」

やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁ

注文した時の反応的に気まずさを感じたが、やっぱり売り切れだったか。


「ごめんね!でも他も美味しいから!」

「えーと・・・・じゃあ、スイートチリドッグください」

「あいよ!次来た時にはたまごサンド準備しとくからね!」


すこしがっかりしたが、渡されたスイートチリドッグはそれはそれで美味しそうだったので、すぐに気分が戻った。


アリーシャを探し、窓際のテーブルにいたのを発見する。

「買ってきたよ〜」

「結構早かったね。目立ちそうな席選んだけど、迷ったりしなかった?」

「すぐ見つけられたよ。まあ、たまごサンドは見つけられなかったけどね」

そういって買ってきたスイートチリドッグを見せる。


「売り切れだってさ。次来た時に買うことにするよ」

「そっか。今日はいつにも増して人が多いから売り切れちゃったのかな」

「かもね。アリーシャも売り切れになる前に買ってきたら?」


そうするね,と言ってアリーシャと席番を交代する。


スイートチリドッグの個包装を剥ぐ。

中からチリソースの食欲そそる香りが鼻腔を刺激する。


大きく一口かぶりつく。

フワフワ食感のパンとプチッと始めるような食感のソーセージ、染み込んだバターと辛すぎないチリソース。

スイートチリドッグを構成する要素が互いに作用して、絶妙なハーモニーを完成させていた。

これもめっちゃ美味いじゃん・・・

一人で黙々とかぶりつき、あっという間に完食してしまう。


「アリーシャが戻ってきたらもう一個買ってこようかな」

と、一人ぽつりと呟いた。


「それだけじゃ足りないんじゃねえか?」

アリーシャではない声がのあにかけられた。

それと同時にテーブルに置かれる個包装されたパン。

それは今さっき買えなかったたまごサンドであった。

ノアは視線を目の前に置かれたパンから、パンを置いた人物に移す。


「いきなりで悪いな。これが食いたかったんじゃないかと思ってな。お節介だったか?」


かなり身長が高い。

ネスさんほどじゃないけど、ガタイも学生にしてはそれなりに仕上がってる。

ニカっと歯を見せ笑みをこちらに向けてくる。


変だけど嫌なやつではなさそう、という印象だった


「さっきうちのがたまごサンドをたくさん買ってきてな。その直後に売り切れたって声が聞こえて、見てみたらあの時の外部入学生じゃねえかと思ってよ。いい機会だから話をしたいと思ってな。まあ受け取ってくれや」

確かにさっきの店の店員さんの声でかかったな。

「そういうことなら遠慮なく受け取るが、代金くらい払うぞ?」


「それならよ、金はいらないから俺の頼みをきいてくれよ」

頼み・・?

「一応聞くけど頼みってなんだ?」

「お前、模擬戦(プラゲーム)って知ってるか?」

プラゲーム・・?

ノアにとっては知らない言葉だった。


「いや、分からないな。なんなんだそれ」

「簡単に言ったら魔術戦闘の練習だな。実践訓練場とかを借りて、学生同士が好きに戦えるんだよ」

「この学院そんなことまでできたのか。知らなかったよ」

「伝統みたいなものだな。明日の昼にも模擬戦(プラゲーム)の予定が入っててな。少しでも興味が出たら見学しにきてくれよ」



「で、その勝負を俺に受けて欲しいってのが頼みなのか?」

ニヤッっと笑みを浮かべる。

「そうだ。俺はお前とやり合ってみたいんだよ」

目の奥からたぎる闘志をひしひしと感じた。

「まあ急にこんなこと言われても困るだろうしな。この場で答えてくれなんて無茶は言わないから、ちょっと考えといてくれ」


そういって彼はノアの元から立ち去っていった。

たまごノアの前にはたまごサンドが残されていた。


これ勝負受けなかったらこのたまごサンド代金請求されるのかな、とか思っていたらきいき覚えのある声がした。


「あれ?ノア君たまごサンド買えたの?」

アリーシャが昼食をトレーに乗せて戻ってきた。


「買ったというか・・貰った」

「貰った?誰から貰ったの?」


誰って・・・ん?

そういや名前聞いてないじゃん。

というか、俺も名前教えてないじゃん。


「心優しき大男が手土産としてくれた」

「ごめん。なにも分からなかった」


まあ今はこのたまごサンドを食べるとしよう。


・・・・・・え、待ってうますぎないこれ?

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