久しぶりの騒がしい食卓
「ねえ、どんな気分だった!?一人でさライトアップされて視線を独り占めにしてあの瞬間!最高の気分だった!?」
「そんなわけないだろ!最悪だったよ!!!」
・・・仲良くなるの早いなぁ。
クルス寮に戻って夕飯の時間になり、食堂に集まってネスさんの料理を囲む。
ノアくんとルビーが初めて会った時には「入学式の子じゃん!」とテンション高く指さしてた。
そしてすぐに意気投合(?)して、すでにこの有様である。
「っていうかネスさんも!なんでもっと早くうちとかアリーシャにノアが来ること教えてくれなかったの!」
「私もバタバタしてていうタイミングがなかったのよ。ルビーたちだって入学前のいろんな準備であまり話せなかったじゃない」
確かに最近は私たちもネスさんも忙しくて、作り置きされたご飯を食べるみたいな生活だった。
最後に集まったのはカイレンのお別れ会の時かな。
そんなこんなで準備を進めて、みんなで席に着く。
「それじゃあ・・
「「「「いただきます」」!!」」
本日のメニュー
・たけのこご飯
・アスパラのベーコン巻き
・ナスと肉の挟み揚げ
・春野菜のポトフ
「待って!超うまいんだけど!ノアが持ってきた野菜うますぎ!!」
「いつもネスさんに売ってるから多分一緒だぞ」
「なんでそんな冷めること言うの!」
「でも本当に美味しいよ。ネスさんもノアくんもさすがですね」
「旬の野菜は旬の時期に食べるのがやっぱりいちばんね」
そこからルビーはノアくんに質問攻め。
ネスさんと知り合った経緯とか、農家やってた時の話とか。
「あ!そういえば聞きたいことあるんだった!」
「今ずっと聞きたいこと聞いてるんじゃなかったのか」
「それもそうなんだけどさ。ノアって魔術の勉強どうやってしたのかなって」
そういえばそうだった。
さっき裏庭で聞こうとしていたことをアリーシャも忘れていた。
「あー。うちの村はさ老人ばっかりって話したじゃん」
「余生のスローライフを送るため、だっけ?」
「そうそう。で、その中には元々魔石隊に入ってた人、退役軍人みたいな人もよくきてたんだよ」
魔石隊を退職した者はカラミ学長のように後学の育成に務める者もいれば、疲れてしまってシオリ村のような自然豊かな場所を求める人も同じくらいるらしい。
「それで、土いじりがしたいからやり方教えてくれーって頼まれるのよ。快く引き受けて、仕事しながら色々教えてたんだよ。」
「そんな人生の先輩に何か教えるとかうちは無理かも・・」
「そしたらある日急に「もらってばかりじゃいかん!」って言い出したんだよ。俺としては出来上がった野菜少し食わせてもらえたらと思ってたのに、魔術の講義を受けることになった」
「経験豊富な魔石隊の人につきっきりで魔術を教えてもらえる・・・いいな・・・」
「アリー、心の声漏れてる」
「でもそんないいもんじゃないよ。最初は座学だけだったのに、体術とか叩き込まれるようになったり、挙句ワシと戦えとか言い出すんだよ。で、最初はその爺さん一人だったのに「血が疼いてきた」とか「あたしにもやらせなさい」とか村の爺さん婆さんが集まってきたんだよ」
「魔術に疲れてスローライフを求めていたのにね。若い子を見てたらあの人たちも動きたくなっちゃんでしょうね」
マジで最悪だったよ・・・とポロッとノアの口から口が漏れた。
「ノアは高等部に来るつもりはなかったの?」
ルビーの質問にノアが少し言い淀む。
「・・あの頃はそんなに魔術が好きじゃなかったからさ。今は違うけど」
「そうだったんだ。じゃあこれから一緒に頑張ろ!」
おー!っと拳を上に突き上げたルビー。
その時のノアくんの顔が・・なんというか・・・
「じゃあ、みんな食べ終わったみたいだから片付けしちゃいましょう」
ネスさんの一声でみんなが立ち上がり、食堂を片付けた。
そのままアリーシャ、ルビー、ノアは自室に戻って行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
チャポン・・と浴室に水音が響く。
アリーシャは自室の浴槽で湯に浸かって、今日の疲れを癒していた。
「ノアくん・・かぁ」
それも自分と同じように小さな村の出身、少しばかり重なる部分があった。
それにさっきの顔・・・
魔術が好きじゃなかったんだ
私も昔似たようなこと言ってたことあったっけ・・
なんて思いながら1日のことを振り返っていた。
思い出したのは、野菜畑の作業を手伝ったりして、日課の自主練習をやり忘れたことだった。