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聞き覚えのない声と見覚えのある姿

制服から動きやすい服装に着替えを済ませ、アリーシャは裏庭へと向かう。

ネスさんに帰ってきたことを伝えるのと、日課である剣術の自主練習をするために向かっていた。


クルス寮の裏庭には、簡易的な机やハンモックなどが設置されていたり、ネスさんが趣味で始めた野菜畑もある。

あとはネスさんが作った魔術練習用の結界を張れるスペースも確保されている。


 

玄関を出て裏庭に近づいていくと、聞き覚えのない声が聞こえてくる。

「ネスさーん。土のチェック終わったよー」


ネスさんの者ではない男の人の声。 

そもそもネスさんが客人を裏庭に入れること自体滅多にないのに、この声の主は一体・・

 

「どうよノア。初心者にしてはよくできてるんじゃない?」

「いーやまだまだだね。害虫だけじゃなくて益虫も駆除してるでしょ」

「当たり前でしょう。気色悪いのよあいつら」

「なんでその図体で小さな虫気にしてるんだよ」

「あらひどい!乙女に向かってプロポーションにケチをつけるだなんて!」


なにやら言い合いをしている様子が遠くから分かる。

喧嘩をしているようでもなさそうだし、仲のいい喧嘩のような会話だった。

ネスさんの姿はアリーシャから見て手前側に見える、というかガタイのいい体がはみ出している。

聞き覚えのない声の主の姿は見えなかった。


  

こちらからネスさんを呼ぼうとしたら、その前にネスさんがこちらに気づいたようだった。


「おかえりアリーシャ」

とネスさんがこっちに気づいてアリーシャに手を振ってくれた。

アリーシャもただいまネスさん と返す。


近づいてから分かったが、何やら奥にある野菜畑の裏がごそごそとしている。

そこに声の主はいるのかなと思ったりしてた。



「今日も自主練?ルビーも誘えばよかったじゃない」

「誘ってもどうせ来てくれないの分かってるからいいよ。それより今何してたの?」

「今はね、この野菜畑の状態をノアに確認してもらってたのよ」

「ノア?」

「あ、そうだったわね。紹介するの忘れてた」


ネスさんは振り返って、先ほどからゴゾゴゾと動いていた方へ声をかける。

「ノア。前に話してたアリーシャよ」


野菜畑の裏から聞き覚えのない声の主が現れる。

「おお、君がアリーシャか!俺はノア・イルカルト。これからよろしく!」

「初めまして。アリーシャです。よろし・・・」


え?

聞き覚えのない声だった。

でも私は彼を見たことがあった、それもつい最近。


「もしかして今日の入学式で・・」


最後に一人で入場して注目を集めた彼であった。


「あ、ちょっと!その話は・・」

「何?ノア入学式でなにかしたの?」


ノアくんが話を止める前にネスさんに話を遮られた。 

そのまま今日入学式で見たことをネスさんに話した。 


「実は・・・」


ーーーーーーーーーーー



「あら、そんなことがあったの!ノアも目立ちたがり屋だったのね」

「やろうとしてやったわけないでしょ。だいたい、入学式で入場してくるのが四人だけとかおかしいでしょ」

「エスコートの人を含めれたら七人だったんでしょ?」

「俺にとっては四人も七人も一緒なんだよ!!」


入学式で目の当たりにしたことをネスさんに話すと、ネスさんが急にウッキウキでノアくんのことをいじり始めた。


・・・ネスさんとこんなふうに話せる人初めて見た。

入学式でノアくんが一人で入場してきてたよね?という確認をとったところ、間違いではなかったらしいのだが。

ノアくん本人的にはあまり話したい話ではなかったらしい。

まあ、今目の前でネスさんに思い切りいじられてるのを見ると、話したくないというのにも納得がいく。


「ノアくんとネスさんって知り合いとかなんですか?」

「知り合いというか、俺にとってはお客さんだよね」

お客さん?と、その言葉にアリーシャが困惑する。


「ノアの家はシオリ村の農家さんなのよ。そこの野菜を私がよく仕入れていたのよ」

「シオリ村ってのは、この国東にあるド田舎な場所だよ。老後の余生を過ごしたいーって老人がたくさん引っ越してくるし」


シオリ村 グラム王国の東端にある小さな集落

自然豊かで野菜を作ったり、牧畜をしたり、のどかな雰囲気が流れる場所


「じゃあ、ノアくんもおうちのお手伝いで野菜作ったりしてたんだ」

「手伝いっていうか俺がリーダーだったんだよ。よくこっちの王都にも野菜持って営業かけたりとか色々やってた」

「それでネスさんとも知り合いになったんだ」

「そうそう。それで住む場所がないってネスさんに相談したらここで生活していいよってネスさんから許可が出たってわけ。流石にあの村からこの学院に毎日通う、なんてのは無理すぎ」

「うちはこれ以上人受け入れない予定だったんだけどね。カイレンがいなくなって人が減ったから、ノアが受け入れできるようになったのよ」

 

なんとなく分かってきた。

ノアくんはシオリ村の出身で農家さんをやっていた。

ネスさんと知り合いになって、この寮で生活することになった・・・ん?


「ネスさん。うちの寮って男女共用だったの初めて知ったんだけど」

「あら、女性専用にした覚えはないわよ」

「まあ、ネスさんが寮母やってたら男の入寮希望者なんてそうそう来ないでしょ」

「あら?それはどういう意味かしらノア?」

ネスはポキポキと指を鳴らしながらノアに詰め寄ろうとする。

ノアは聞こえるか聞こえないかくらいの声で ナンデモナイデスって言ってた。


「てなわけで、なんか細かいルールとかあったら教えてもらえると助かる」

「分かった。なんか聞きたいことがあったら私か、髪が真っ赤でとっても元気なルビーって子に聞いたらいいよ」


オッケー、とVサインを私に向けてくれる。

どんな人なのか気になってたけど、こんなに早く話せるとは思ってもいなかった。

しかもこれから一緒の寮で生活するなんて。


そのあと私は、ネスさんの野菜畑の手入れの仕上げをついでに手伝った。

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