学校までの慣れた道のり
グラム魔術学院
このグラム王国で最古の魔術を専門的に扱う教育機関であり、研究機関でもある。
魔術に魅せられた者たちは必然的にこの場所に集う。
魔術を極めるため、魔術の本質を知るため。
現代では成し得ない、夢や幻、馬鹿な妄想としか思えないことを実現するため。
そのために自分の人生、いいや、それだけでは足りない。
自分の大切な人も含めて、何もかもを犠牲にする覚悟をもって。
全ては偉大なる魔術師となるために。
後世に語り継がれ、歴史に名を残す。
妄想を実現し、夢を夢で終わらせない。
グラム魔術学院初代創設者 エアリアル・リップが校訓として残した言葉
【 未来に繋ぐ想像力を育てよ ただ我々の未知のために 】
この言葉を胸に刻み、魔術は進歩してきたのだから。
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クルス寮を出発したアリーシャたちは、通い慣れた通学路を歩いて学院に向かっていた。
今日から入学の彼女たちが、なぜこの道を歩き慣れているのか。
アリーシャやルビー、今日入学するほぼ全ての学生たちは、昨年度までグラム魔術学院の高等部に通っていたからである。
高等部での三年間をかけて、魔術に関するありとあらゆる知識を学ぶ。
詠唱学、歴史学、生物学・・・この国の学問で魔術が関係していないものを探す方が難しいだろう。
それゆえに、膨大な知識を頭と体に叩き込まれる。
高等部とはいえ、この王国で最高水準の魔術教育を受けることとなる。
そうして、高等部三年間の集大成をもって、内部進学試験に臨むのである。
試験を突破した彼女たちには、晴れてグラム魔術学院の新入生としての称号が与えられる。
ほぼ全ての学生たち・・内部進学試験・・・
ここまで聞くと当然ある疑問が湧いてくる。
今日入学する新入生全員が高等部に通っていた、内部進学試験を合格したものではない?
内部進学試験という言い方をするのであれば、外部進学試験もあるのではないか?
その通り、この学院には内部進学試験と外部進学試験の二つのルートが用意されている。
内部であろうが外部であろうが、一定水準を満たす魔術の腕前さえ持っていれば入学することができる。
外部進学試験の受験者にも要求される実力は同じ。
高等部で三年間かけて到達する魔術の実力を持っているかどうか。
つまり、外部入学試験を突破できるのは、王国最高水準の教育を享受することなく、それと同等の実力をつることができた人物、ということになる。
無茶な話だ。
だから一般人はこの学院の高等部に入学し、三年かけて魔術と向き合い、内部進学試験を突破する道を選ぶ。
そして忘れてはいけない。
彼ら、彼女たちにとって、あくまでここは通過点。
ここからが本当の研鑽の道となるのである。