表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/146

逃避の末

「なんとか生き延びてたどりついたものの」

「そこは荒れ果て定住すること等出来なかった・・・・・」

「海を渡った逃亡者である我等を受け入れてくれる村や町も少なく魔物や魔獣に脅えさすらう日々・・・・・・」

「倒れる者や離脱する者もいた」

「そして我等は5年の歳月を費やしてエルフィンドへとたどりついた」


その頃にはヴァンデラーブルクを出た避難民も半数までその数を減らしていたと言う


戦闘や事故で命を落とす者

天候や病で力尽きた者


そして何より


飢餓で息絶えた者


「だがそこには絶望しかなかった・・・・」

「かつて美しく栄えていたエルフの王国は滅び荒れ果てた廃墟となっていた」


「木々は焼かれた後芽吹く事もなく枯れ朽ちていたわ・・・・・」

「そこかしこに引き裂かれて黒く汚れた衣服が散乱していました」

「打ち捨てられた武具は砂や埃に埋もれ時折見つける白骨化した遺骸には醜い歯形が刻まれていました・・・・・・・」


「滅ぼされた後」

「遺体は放置され獣や魔物に喰い荒らされたのだろう」

「人の形を保ったものはソコには一つも有りはしなかったのだ」


アムネリアは天井を仰ぎ閉じた目蓋からは涙がこぼれ落ちた

胸の前で組まれた両の手は微かに震えている


ウェンディアはアムネリアにそっと寄り添い肩を抱いた


「皆で遺骨を集め弔った後」

「遺品を集めて使わせて貰うことにした」

「街は長らく魔物達の縄張りとなっていたため長居は出来ない」

「我等は再び旅に出た」

「険しい山を越えて南へと・・・・・」


「私達がこのシエラ皇国に辿り着いた頃には更に3年が過ぎていました」

「ですがエルフィンドで手に入れた武具や道具は私達の旅路を助けてくれました」


「おかげで全員がシエラ皇国」

「当時はまだ皇国ではなかったが・・・・」

「とにかくたどり着いたのだ」

「この世界樹のたもとに」


シエラ皇国が獣人やヴァンデラーブルクを受け入れた理由が何となく分かってきた


グークスニルによる災禍に見舞われるずっと前から避難民を受け入れていたのだ


「シエラ皇国が民を受け入れてくれたおかげで私達はある決断をしました」

「ゼノの討伐です」


「それまでは民の安全を優先してゼノの情報を手に入れても討伐には向かえなかった」

「だがシエラ皇国で民が暮らせるようになった時点で我等はケジメをつけねばならん」

「5人の思いは一致していた」


「それで討伐に成功したのね?」


「そうだ」

「色々とはあったが・・・・・」

「結果として討伐に成功した」

「誤算だったのはアニムスだ」

「あ奴は亜神となる前からミリアと名乗っていたのだ」

「あの時は疑いもしなかったが・・・・・」


「ゼノの討伐はアニムスに利用されたのです」

「初めからゼノの討伐はアニムスの仕組んだことだったのです」


ー・ー


アニムスは事前にミリアと名乗ることにより人望がミリアへ集まるよう画策していた

レムナリア大陸で手に入れた宝珠(オーブ)には禁忌の知識とプレイヤーになるために必要な事が記されていたようだ


そして膨大な力も


それを受け継いだアニムスは女神ミリアとなるべく行動していたのだ


「もしかしてシエラ皇国がミリア教の傘下に入ったのは・・・?」


「初めから女神ミリアへの反抗組織を匿うため」

「そしてそれを勘繰らせなかったのは私達5人とシエラ皇国の関係性のおかげです」


「我とアムネリアはまだこの大陸出たまま戻っておらぬ事になっておる」

「ゼノを討伐した後亜神となったミリアから逃れるため大陸を渡ったのでな」


「ところで」

「ウェンディアはいつ神になったの?」


私の問いにウェンディアは一瞬アムネリアの顔を見た

そして目を閉じると静かに答えた


「ゼノを倒した時だな」

「トドメを刺せずにいたライルの代わりに我がその首を跳ねた」

「あの2人は幼馴染みでな・・・・」

「親友でありライバルであり良い相棒だった」


「ゼノが魔王になってしまったのも自分の責任だとライルは自分を責めていましたわ・・・・・」


「そらで剣先が鈍ったと」


「そう言うことだろう」

「だが真相は誰にも分からん」


「聞かなかったの?」


「聞けなくなったのだ・・・・・」


2人の話によると


魔王ゼノディアスにトドメを刺したウェンディアは亜神へと昇神した


そして親友を倒した事で意気消沈したライルはその夜

友の後を追うように亡くなったのだ


「微かな殺気と全体アナウンスに気付いて起きた時」

「見張りに立っていた筈のウォーレンは姿を消しミリアもいなくなったいた」

「残されたのは短剣で胸を貫かれたライルの遺体だけ・・・・」

「戸惑う我等を直ぐに魔王軍の残党が襲ってきた」


「間一髪でしたわ」

「私が寝ていたところをウェンディアが抱えあげ猛然と走り出したのですよ?」

「状況が何も分からずただただ恐かったのを憶えています」


「我が亜神となっておらねば危なかった」


「それから街で装備を整え直していた時に奇妙な噂を耳にしたのです」


「それは魔王ゼノディアスを討ったのは勇者ライル」

「しかし彼は裏切り者の手にかかり生命を落としたと言うものでした・・・・・」

「屈強な戦士と」

「魔法使いのエルフに」


2人の顔は暗く唇を噛みしめていた


「その時悟ったのです」

「私達は嵌められたのだと」


つまり2人は元々女神ミリアと浅からぬ因縁があったと言うわけだ


それも一緒に旅をして魔王を倒した程の間柄


詳しく話したのは直接相対した時にミリアの虚言で惑わされないようにするためと言うことだろう


たぶんこの2人も本気で戦う気だ


私はできるだけ捲き込みたく無いんだけどなぁ・・・・


「事情は分かったわ」

「ミリアから逃れて東の大陸へ渡りそこでトラブってこっちに戻ってきたと言うことね?」


「そうだ」

「村を起こし街に発展させ平和に暮らすつもりだった・・・・・」

「少なくともあの時までは」


「運悪く街が暴龍に襲われたのです」

「普通の暴龍ならば2人で倒せたのですが・・・」


「運悪く付近に現れた迷宮(ダンジョン)が氾濫を起こしてしまってな」

「暴龍と魔物の軍勢の挟み撃ちになす統べなく撤退を余儀なくされたのだ」


「本当に運が悪かったのです・・・・」

「その時ウェンディアは呪いの毒矢を受けてしまいましたし・・・・・」

「住んでいた土地を追われたとは言え神を含む流浪の民等受け入れてくれる場所がある筈もなく」

「再び海を越えてシエラ皇国を頼る他無くなってしまったのです」


アムネリアはそこまで言うと目を閉じて一息ついた

ウェンディアはアムネリアの肩を優しく抱き締め彼女も彼の腕に身を任せた


「じゃがな」

「いくらこの2人が神と稀代の大魔法使いでも民草を守りながらの大移動じゃ」

「その上頼みの綱のウェンディアが毒と呪いに犯されておったしのぅ」

「海を渡ったところで力尽き運悪く奴隷狩りの標的にされたのじゃ」

「当時もシエラ皇国の守りは固くこの大陸では流浪のエルフは希少じゃったからな」


リグルが話を継いだところを見るとどうやら話しはこの200年に差し掛かったようだ


「そこでリグル殿が助けてくれたのだ」

「既に精魂尽き果てた我に代わりに人攫いどもを千切っては投げ千切っては投げ」

「それはもう凄まじいの一言であった」

「その後も奴隷商を襲い捕らわれた同胞を救い出してくれた」


「あの時は本当に助かりました」

「その上ミリアに見付からぬようシエラ皇国まで送り届けてくれた恩は永遠に忘れません」


リグルを見るアムネリアの顔はまるで神を見るかのように穏やかで敬意に満ちていた


ー・ー


「まぁあの時あの場所にいたのは偶然じゃったがな」

「あの頃のワシはこの大陸を放浪しておった・・・・・」

「残された獣人達を探して歩く内に他の亜人奴隷も不憫に思えてなぁ・・・・・」

「当時のワシはアラバスタ商会の一部門を担い商工ギルドで働いておった」


「え?」

「じゃあ商工ギルドを立ち上げたアフェールって言うのはもしかして・・・?」


「それはワシではない」

「表舞台には出れぬからな」

「アフェールには色々と骨を折って貰ったわ」

「あの頃はアフェールの運営するアラバスタ商会の鍛冶鉄工部門で工房を統括する長として働いておっての」


「アラバスタって今でも大きな影響力を持ってる商会よね」

「なんで独力したの?」


「それはじゃなぁ」

「ワシのせいで鍛冶工房が組織として大きくなりすぎたからじゃ」

「当時の工房や農家には奴隷が多かった」

「ソコに目を付けたワシは大量の奴隷を長距離運んでも怪しまれぬようアフェールと協力して商工ギルドの中で人材の流通網をつくりそれを隠れ蓑にしていたと言うわけじゃ」


「でも手広く商売をやり過ぎて組織が肥大化しちゃったと」


「そう言うことじゃ」

「あの頃は亜人種を雇い入れると言うのは風当たりが強うてなぁ・・・・・」

「奴隷としてしか運べんかった」

「それでも1度に大勢は運べんかったから各地で鍛冶工房を開き従業員として働かせたわけじゃが・・・・」

「皆働き者での」

「品質も良かったのでアレよアレよと言う間に大きくなってしまってなぁ・・・・・」


「そこでアラバスタ商会の傘下として鍛冶工房を中心としたリグル商会を作ったと」


「だいたいそんなところじゃ」


リグルは得意気に腕を組んで笑っていた


「話を戻そうか」

「まぁあの頃は肥大したアラバスタ商会と独力したリグル商会以外にどうやって自然に亜人種達を移動できるのかと考えながら海辺の街を渡り歩いておったのじゃ」

「販路開拓も兼ねてな」


「そこで助けて貰ったと」


「人数が人数でしたからね・・・・」

「廃村を利用して体力を回復させたり身なりを整えたり」

「街に入っても工房の奴隷として働けるので殆ど危害を加えられること無く過ごせました」


「あの頃遊んでやったオルフィーナがまさかその後知らずに付き合うことになるとはの」

「いやはや」

「数奇なものよのぅ」

「・・・・・・・・」

「じゃが結局商工ギルドの力をもってしても移送する奴隷と現場の奴隷の数が合わぬ事に気が付いた者がおってな」


「それで?」


「商工ギルドとは別に奴隷商を運営したりもした」

「じゃが最終的にはワシが色好きの変人として亜人種を多く雇うことで移送を続けたんじゃw」


「奴隷開放戦争に参加したのはそう言う理由だったの?」


「正に渡りに船じゃった」

「あの戦争を隠れ蓑に虐げられた奴隷を開放して移送出来たからな」

「多少人数が合わぬでも誰も気にせんかった」

「戦地で死んだと思われとったからな」


実際には奴隷から開放された後戦線に参加した者も多く避難民はそれより更に多かったのだとか


リグルはバステトと連携して非戦闘員を優先的に避難させていた


あの戦争は奴隷を開放するのが目的であり開放奴隷による独立国家を作りたいわけではなかった


開放国家を樹立したところで維持するのが困難だったからだ


故に魔王はリグル達と協力することでその問題点を解決し民衆の避難を優先させていた


「何度聞いても彼が魔王と呼ばれる理由が分からないわ」


「まぁな」

「じゃが自ら魔王を名乗ったのは奴隷開放の為とは言え戦争で人を殺めるからだと言っておった・・・・・」

「助けられた奴隷には英雄でも殺された兵士の家族には悪魔でしかない」

「じゃから魔王なのだと」


悲しそうに話すリグルの言葉に頷くバステト


そう言えば・・・・・


「ところでその頃バステトはアルブリサーナとしてリグルと一緒にいたのね?」


「妾は素性を隠して合流したと言うのにすぐにバレてしまったわ」


「相変わらず隠すのが下手ねぇ」

「ラルクと出会う大分前から魔王軍に出入りしてたんでしょ?」


「うむ」

「初めこそ気付かなんだがな」

「それこそ奴隷開放戦争を拡大したのはワシ等じゃと言っても過言ではない」

「武具のみならず食糧や衣類に医療品まで補給線はワシ等が維持しておった」

「更には負傷兵を後方へ送ったり民間人の避難もな」


「妾達の後方支援があったからこそ魔物達にも十分な糧食を与える事で統制が取れておった」

「更にレイジは鉄の規律を打ち立て違反者は旗印代わりに晒させたのじゃ」

「生きたまま棒に縛り付けられ旗印として晒されるのじゃ」

「白骨化して朽ち果てるまで」

「時には捕虜とした悪徳貴族もおったの」

「・・・・・・・・・・・」

「主力攻撃部隊は魔物達」

「諜報や工作は我等獣人」

「魔法支援は魔族や亜人達」


「ワシの目から見ても兵達は効率的に役割分担され見事なものじゃった」

「レイジは元々軍官僚だったのかと思ったくらいじゃ」


「凄い人だったのね」


「前線でも凄いの一言でした」

「先陣を切れば城壁を打ち崩し支援に回れば雷撃が降り注ぐ」

「私でさえも息を飲む程に」


昔を懐かしむアムネリア


その表情と言葉から亜神でないのが不思議なくらいの剛の者であることが伺い知れる


もしかして今なら弱体化したウェンディアよりも強いのでは?


「ところでさ?」

「アムネリアって有名人なの???」


「あっ・・・・・・」

「そう言えばアリエルは転生したてで知らないわよね」


「そうじゃった」

「あまりの貫禄にまだ日が浅いことを忘れておったわ」


シンシアとリグルが迂闊だったとばかりに言うのだが

貫禄とか言われると中年臭くて嫌だなぁ


「まぁまぁ」

「良いじゃないですかぁ」

「今はただの主婦ですから」


「主婦と言うには些か物騒な伝説ばかりじゃぞ?」


「リッくん」

「物騒とか言わないで」

「アレは若気の至りなのですから」


頬を膨らませて拗ねるアムネリアからは見た目もあいまって年齢を感じない


だがクラート達の名前が出た時点で4桁を生きたエルフなのは確定である


「じゃが!」

「アムネリアお姉様の偉業は是非アリエルにも知っておいて貰いたいのじゃ!!」


目を爛々と輝かせたバステトは

伝説に吟われるアムネリアの偉業を語り始めたのだった


ー・ー


「凄いわね」

「世界三大賢者の一人にして紫電煌姫の異名を持つ伝説の勇者様か」

「冒険者ギルドが出きる前からの超英雄で歩く最終兵器」


「最終兵器はやめて下さいー」

「そんな呼ばれ方は確かにしましたけれど」

「決して私の本意では無いのです・・・・・」


アムネリアは顔を真っ赤にしながらテーブルの下へと逃げ込んだ


「もしかして」

「暴龍と迷宮氾濫を撃退できなかった理由って・・・・?」


「そうだな」

「本気で撃てば街ごと蒸発しかねん威力だからな」


「そんな事無いです」

「せいぜい城壁を粉砕してしまう程度ですわ」

「それも全盛期の話です」


ウェンディアの言葉にテーブルの下から応えるアムネリア


城壁を粉砕してしまう攻撃魔法って

随分な威力だと思います


はい


「じゃあ何でこの大陸で人攫い相手に遅れを取ったの?」


「それは・・・・・」


「我を生き永らえさせるために禁呪を使いその能力の殆どを贄として捧げたからだ」


ウェンディアにかけられた呪いはかなり強力なものだった


その進行を抑える為に自分の能力

おそらくスキルレベルの経験値を供物として捧げたのだろう


だが知識や経験は残った

と言ったところか


「・・・・・・・・」

「とりあえず」

「2人とミリアの因縁の深さは分かったわ」

「今は2人とも全盛期とは程遠い実力しかないことも」

「そしてバステトがアムネリアを凄くリスペクトしてることもw」


「うむ」

「すまぬな」

「神威同盟を申し出ておきながら我等が一番弱い」

「おそらく戦となれば役にはたてぬだろう」

「だが・・・・・・・」


「そう気負わないで」

「心意気は買うわ」

「それに・・・・・」

「私には奥の手があるからね」


「なっ?」

「なんじゃそれは?」

「やっぱり奥の手を隠し持っておったな」

「妾にも教えてたもれ」

「なんなら耳打ちでも構わぬぞ?」


バステトは身を乗り出してにじりよりシンシアの威嚇された


他の皆も興味津々だ



「悪いけどこればっかりは教えられないわ」

「それにこの奥の手は私にしか使えない」

「被害も相当なものになるからおいそれとは使えない」

「出きれば使いたくない」

「そんなモノよ」


皆は釈然としないまでも仕方がないと諦めてくれた


「とりあえず宴に戻りましょうか?」

「そろそろ陽が暮れてディナータイムになってるんじゃない?」


私の提案に皆が賛同した


正直なところ皆話疲れてお腹が空いていたのだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ