規格外
「ううむ」
「この量の神力が微々たる物とは・・・・」
「これで驚いてるようならアリエルのステータスは見ない方が良さそうじゃの」
「バステト殿は見たのか?」
「勿論じゃ」
「見ておかねばいざと言う時困るかも知れぬのでな」
「ならば我も・・・・」
「・・・・・・・・・」
「いや」
「止めておこう」
「あまりとんでもない物を見れば同じ態度では接せぬやもしれんからな」
ウェンディアは腕を組んで1人頷いていた
「ん?」
「んんん???」
「そう言えばバステト殿」
「先程アリエル殿が魔法で褌を造ったと言っておらなんだか???」
「そう言えば・・・・・」
「バステト様はアリエル様は魔法で何でもしなさると仰っていたような?」
「料理に関しては食材を調理していただけだから気になりませんでしたが・・・・・」
2人は顔を見合せ首を傾げた
そのまま同時に私の方を振り向く
「なっ何よ」
「絹糸を持っていたから生地を織り込んだだけよ」
「創造魔法じゃなくて念動だってば」
良く見ていればそうでないことは一目瞭然
ただし高速で動く複数の糸の動きを見極められればの話し
再びアムネリアはジト目で睨んでいる
バステトは知らん顔
ウェンディアはとりあえず気にしないことに決めたようだ
「アリエルがやることを一々気にしてたらキリがないわよ」
「そういうものとして流さないと身が持たないわw」
私の膝の上で何故か得意気にシンシアが2人を諭した
「まぁとにかくじゃ」
「加護もある程度決まったようじゃし」
「・・・・・・・・・・」
「そう言えば」
「まだ不穏なスキルを何処で手に入れたのかを聞いておらなんだなぁ?」
バステトの瞳が光り私を睨む
その言葉に興味をそそられたウェンディアとアムネリアも瞳を爛々と輝かせたのだった
ー・ー
「ぅだあー」
「もう良いでしょ?」
「許してー」
「ダメじゃ」
「まだ隠しておろう?」
「切り札迄は曝さぬで良いがロクでもないスキルはまだまだあるじゃろ」
「ほれ」
「早う白状いたせ」
バステトはニンマリ顔で問い詰めてくる
ウェンディアもアムネリアも興味津々だ
「だが入手方法に関してはほぼ参考にならぬな」
「真似しようにもそのような魔物は稀少で見付からぬ」
「ゴブリンウォーロードなら10年探せばなんとかなるやもしれぬが他のはなぁ・・・・」
「何者かが召喚した固有種ではなぁ・・・・」
ウェンディアが落胆するのも無理はない
あの変化した特殊ダンジョンは普通の魔物では有り得ない者ばかりだったそうだ
何れかの神が関与したのは間違いない
だがどうやればあんな特殊な進化を起こせるのか皆目検討がつかなかった
「まぁ良いじゃない」
「あ!」
「そうだそうだ」
「確か同盟結んでいたらスキルやアイテムも引き渡し出来たわよね?」
「むむ?」
「確かにコピー出来るモノはあるの」
「じゃが自らリスクを犯してライバルに塩を送る奴はそうそうおらぬ」
「何処まで渡せるのかわからぬぞ?」
「まぁまぁ」
「良いんじゃない?」
「それにこの魔法は今のウェンディアにはピッタリだと思うな」
私はウェンディアとアムネリアに〈風の運び手〉のスキルを譲渡した
一度に複数の相手を選べることから譲渡と言っても自分のスキルは残ると確信していた
やはりそうだ
譲渡してもオリジナルは失われない
譲渡と言う名目だがラーニングさせると言った方が正しいだろう
「感謝する」
「ふむ」
「この魔法は名前から察するに輸送用の魔法なのか?」
「あらあらあら」
「この魔法はもしかして?」
「目標物を浮かせるだけの魔法よ」
「推力は他の魔法で補う必要はあるけど・・・」
「風に乗れば推力は不要と言うことか」
「話が早いわね」
「アムネリアは経験済みだから後で教えてあげて」
「わかりました」
「後程2人で散歩しましょうか♪」
このプレゼントは気に入ってくれたようだ
さっきまでのぎこちない雰囲気はだいぶ和らいできた
とは言えシンシアが私の膝の上にいる以上微妙な空気は漂う
「フィーちゃん?」
シンシアを呼ぶアムネリアのこめかみは僅かにヒクついている
シンシアはそ知らぬふりしてスルーした
「フィーちゃん?」
「そろそろアリエル様から下りませんか?」
「お父様も困惑なさってますわよ?」
真面目な話しも一段落ついたので流石に注意しようと言うわけか
逆にシンシアは真面目な話が終わったので好きにさせろと言わんばかりにスルーしている
「あの・・・・・」
「アムネリア?」
「様付けはちょっと違和感あるし居心地悪いから敬語とか無しの方が良いんだけど・・・」
「そうは申されてもアリエル様は信者もおられる神様です」
「今までのようには示しがつきません」
「あー」
「その事なんだけどさ?」
「私がイシュタルって事は当面の間隠すわけだから敬語とかは逆に困るのよ」
「同じ理由でウェンディアに対しても畏まったりせず接したいんだよね」
「どうかな?」
「うむ」
「アリエル殿の言は一理有る」
「我はそれで構わない」
「ならその殿もやめて貰えると助かるかなぁ」
「だってバステトと同じ敬称と言うのもね」
「うっ」
「うむむむむむ」
「仕方有るまい」
「よろしいのですか?」
「私は構いませんが・・・・・・」
「うむ」
「本来ならば父親として我を倒せと言いたいところだが力の差は歴然としておる」
「おそらく瞬殺だろう」
「それに惜しげもなく神力やスキルを分け与えて下さる器の大きさ・・・・」
「婿殿として何の不足があろうか?」
「それに我はオルフィーナに父親らしいことを何一つしてやれておらぬ」
「今更父親面するのも良くなかろう・・・・」
「素直に祝福しようではないか」
ウェンディアの言葉は自虐的なものも無くその笑顔は嘘偽り無い晴れやかなものだった
ー・ー
「してアリエル」
「いつ式をあげる?」
「ぶふぉっっ!!」
「なっなっなっ!」
「何をいきなり?!?!?!」
「私はそんなに気にしないけど・・・・・」
バステトの問いにシンシアは笑顔で答えているが・・・・・
絶対違う
気にしないなんて嘘だ
式をあげなきゃ一生言われ続けるヤツだ
「まぁちょっと」
「時期を見計らってしようかと・・・・」
「んぁ?」
一瞬本音が垣間見えたが再び笑顔に戻るシンシア
「まぁ・・・・・」
「アリエルとして式を挙げるなら喚ばねばならぬ者も多かろう」
「ヴァンデラーブルクの王夫妻に例の村の弟子達もおろう」
「ん?」
「んんん???」
「ザグルの子達は別に良いんじゃないの?」
「あら」
「呼ばないにしても後で報告しに行かなきゃね」
「アタシの商会の子達も呼んであげないと可哀想だし・・・・・」
ガチャ
「こんなところにおったのか」
「長いこと見なんだから心配しておったぞ」
「むむ?」
「そちらの御方は?」
気付けば日も傾き宴も落ち着いているのだろう
民衆から逃げてきたリグルが合流した
「此方は風神ウェンディア様にあらせられます」
「この度はアリエル様にお助け頂きました」
「ああ」
「その事なら全体告知である程度の予想はついておる」
「それもあって探しに来たんじゃ」
そう言えばリグルには私が禁忌の秘密を共有し亜神候補になっていたから聞いていても不思議ではない
「んぁ?」
「なんですって?」
「なぁんでリグルが全体告知聞いてんのよ?」
「貴方いつ誰から禁忌の秘密を聞いたって言うの?」
「すまんな」
「実は以前から禁忌の知識は知っておったのじゃ」
「知らぬ存ぜぬでしらばっくれておったが・・・・」
「このタイミングで風神ウェンディア殿を助けて亜神への昇神からの飛び級じゃろ?」
「そんなヤツはアリエルしかおらん」
「じゃから慌てて探しておったんじゃ」
リグルはシンシアの剣幕に臆すること無くいけしゃあしゃあと説明して見せた
それも巧妙に嘘は言っていない
シンシアが嘘を見抜くことはリグルも重々承知している
そのため嘘はつかない
詳しく説明しないだけだ
「ふぅーん」
「誰から聞いたのかしらぁ?」
「ワシからも聞いて良いか?」
「なぁによ」
「いや」
「ワシは以前からウェンディア殿とアムネリアの事は知っておる」
「その前でアリエルの膝の上にいると言うことはじゃなぁ・・・・・」
「公認の仲よ」
「アタシはアリエルの特別な人になったの」
そう言うとシンシアは私にしなだれかかった
「でもシンシアに秘密は明かさない」
「亜神候補にはしたくないから」
これにはシンシアも不服そうだったが仕方無い
「ところで社と信者はどうした?」
「おらねば亜神にすらなれぬだろうに」
リグルにも簡単な説明をしてあげた
「そうか」
「道理でヴァンデラーブルクが付け狙われるわけじゃな」
「じゃがクラート達が捲き込まれた以上状況はガラリと変わる」
「・・・・・・・・・」
リグルは眼を閉じ深呼吸をして何かを決意したようだった
「アムネリアよ」
「流石にもう話さねばならぬのではないか?」
リグルの言葉にアムネリアは深い溜め息をついた
「リッくんの言う通りね」
「もぅ黙っていても仕方無いわぁ」
アムネリアが何か観念して話し始めた
ー・ー
「あまり昔の話しはしたくないのだけれど」
「仕方無いわね・・・・・・」
何か嫌な記憶を思い出しているのだろう天井を見上げたアムネリアの顔にはいつもの微笑みはなかった
「あれはそう・・・・・」
「まだ私が北の果てで暮らしていた時の事」
「ライル、ウォーレン、ゼノ」
「そしてもう1人の仲間アニムスが里を訪ねてきたの」
「そこは始祖の里エルフィンド」
「旧支配者の一柱テイターニアス様が治めていた太古のエルフ国だったわ」
要約すると
古代エルフの里で暮らしていたアムネリアは4人の冒険者に誘われ旅に出たのだとか
それから艱難辛苦を乗り越えて行き着いた先は大魔王ゴランの城
討伐には成功したもののパーティーは致命的な痛手を被ったのだった
「ちょっと待ってお母様」
「まさかその離反したゼノって?!」
「後の大魔王ゼノンディアス」
「神話に吟われる最悪の魔王の1人よ」
その言葉に私とウェンディアを除く全員が驚きを隠せなかった
私は分からなかっただけなのだが
「ちょっちょっちょっと待ってくれるかな?」
「お母様っていったい何歳なのよ???」
「あらぁ?」
「それを聞いちゃう?」
「いくら親子でも女性の年齢を聞くのはダメよぉw」
どうも思っていたよりもアムネリアは歳上らしい
おそらくだがウェンディアやバステトよりも・・・
「あっあっあっ」
「アムネリア?」
「さん?」
「様?」
「まさかとは思っておったが」
「神代の英雄の名前にあやかってつけられたのかと思ったが」
「まっまさかご本人???」
流石にバステトも驚きを隠せない
旧支配者と呼ばれる本来のこの地の神々
その時代に生きた英雄や眷属達は遥か昔の神話として
外なる神々
つまり神々黄昏の参加者が現れても尚その勇姿や逸話は途絶えそうになりながらも姿を変え語り継がれてきたのである
「つまりお母様は神代の古代種妖精なの???」
「まさか・・・・・・」
「でもそれなら転生者の事を知っていてもおかしくはないのか?」
「ちょーっとオルフィーナ」
「私の年齢を勘繰るのは止めなさいな」
「怒るよ?」
既に口調が変わっているため相当怒っていると思われる
流石にシンシアも急いで謝ると私にしがみついた
「話が反れたのぅ」
「ワシが言いたかったのは年齢の事ではない」
「分かるじゃろう?」
「まぁね」
「けれど順を追って話さないと混乱しちゃうでしょう?」
アムネリアは憮然としながらも落ち着きを取り戻しつつあった
「元々私はこの大陸の産まれなのです」
「長年幾度も仲間達を看取りながら根無し草の冒険者として各地を放浪していたわ・・・」
「その末にこの人と出会ったのよ」
この話の間アムネリアは険しい顔をしていたがこの時は屈託の無い笑顔で話した
「けれど・・・・・・・」
「第一印象は散々だったわよねw」
「そうだな」
「何せ我は風呂に入っている時に召喚されてな」
「この地に降り立った時は無一文どころか文字通り裸一貫からの旅だった」
「当時冒険者をやっていた私でも人間が召喚される瞬間を見たのはこの人が初めて」
「しかもこの人ったら素っ裸で片膝ついたまま空間を割って現れたのよ?」
「変質者か魔物だと思ってしこたま攻撃呪文を叩き込んだわw」
「今思っても背筋が凍る体験であった」
「生きていたんだから良いじゃないw」
和気あいあいと馴れ初めを聞かせてくれているがどう聞いても物騒な殺人未遂
転生チートのおかげで生き残れたわけか?
「それで」
「2人の馴れ初めがどう関係あるの?」
「これから話すことはとても勇気のいることです」
「・・・・・・・・・・・・・」
「先に話したように私が旅に出た切っ掛けは里に4人の冒険者が訪れその誘いを受けたのだと説明しましたよね?」
「その冒険者は後の7大英雄の1人」
「3人の魔王を倒した稀代の勇者ライル」
「大陸を渡り歩き魔法を広めた始祖の魔法使いウォーレン」
「パーティーの要の剣士ゼノ」
「彼は旅の果てに闇へと誘われた大魔王ゼノンディアスとしてライルに討たれたわ」
「そしてもう1人・・・・・・・」
「その名を呼ぶのも忌々しい女」
「煌炎の魔女アニムス」
「後の女神ミリアよ」
アムネリアの言葉に全員の息が止まった
ー・ー
「まさかアムネリアがあの阿婆擦れと同じパーティーメンバーだったなんてね・・・・」
「驚きだわ」
「信じられないかもしれないけれど・・・」
「出会った頃はまだ真理を追い求めるただの少女だったわ」
「長いから途中は省くけど」
「5人で旅をしている内に私達は西の果てから海を越えて新天地レムナリア大陸に渡ったの」
「レムナリア大陸って・・・・・」
「確かラインハルトが言っていたヴァンデラーブルクの有った?」
「ヴァンデラーブルク?」
「そう・・・・・・・」
「今はそう呼ばれているのねあの街は」
アムネリアは遠い目をして何かを思い出していたようだった
「あの大陸で全ては変わったわ・・・・・」
「ライルはこの大陸に続いて2人目の魔王を倒した」
「その時手に入れたオーブから得た力によってアニムスは煌炎の魔女と呼ばれるようになった」
「その頃からかしら」
「彼女がミリアと名乗り始めたのは」
「おそらくその頃だな我が皆の前に召喚されたのは」
「そう」
「皆が驚きを隠せない中・・・・・」
「今思えばアニムスだけが冷静だった」
「この人を守るため私の雷撃を散らしゼノの剣を結界で防いだ」
「だが雷撃は散らしきれず我を襲いライルは我を地面に叩きつけた」
「あの時ライルが日本語を理解できなければ我は確実に殺されていたであろうな」
ウェンディアは豪快に笑った
しかし雑な召喚をしたものだ
まるで死んでも良いとでも言うかのようなやり方はミリアだけでなく他の神も同じような召喚をしてきた事の証明か・・・・
「まぁとにかく半信半疑ながらもこの人をパーティーに迎え入れたの」
「あの時は靴くらい欲しかったものだw」
「しょうがないじゃない」
「靴の予備なんで誰も持ち歩かないんだもの」
「パンツも穿かずににマントだけ」
「何だか今の状況に似ておるなw」
ウェンディアは再び豪快に笑った
昔話に花が咲くのは悪くはないが
今は脱線ばかりしたいても話が進まない
「とりあえず」
「2人があのミリアと同じパーティーメンバーだったのは分かったけど」
「それが何か関係あるの?」
「それはね・・・・・」
「ゼノはレムナリア大陸で魔族の罠にかかり私達を裏切ったの」
「それはあの英雄譚で吟い継がれている物語?」
「まぁね」
「だいぶ脚色されちゃって彼は酷い悪役にされちゃってるけど・・・・・」
シンシアの問いにアムネリアは寂しそうな顔をした
「真実は必ずしも正しく伝えて良いものではないのだ」
「少し我から話そう」
ウェンディアはアムネリアに目で合図をすると低いが良く通る声で話し始めた
「アレは最果ての迷宮での事だった」
「ライルを襲った矢を・・・・・」
「ゼノが身を挺して庇った」
「なんとか敵を撃退したが彼は呪いに犯されてしまったのだ・・・・・」
「心を蝕む呪いにな」
そこまで言うとウェンディアは少し呼吸をおいて皆の顔を見回した
そして何か言おうとしたが言葉を飲み込み再び話し始めた
その話しが飲み込んだ言葉でない事は誰の目にも明らかだった
ー・ー
「こうして闇に飲まれたゼノを我々は討とうとした」
「だが彼は逃げ切った・・・・・」
「信じられないことだったが彼は闇に飲まれる前に比べ格段に強くなっていたのだ」
「そして逃げる彼を庇うかのように戦火が押し寄せてきた」
「クラート王の国を天使兵が攻め立てていたのだ」
「我等は大恩あるクラート王に合流し彼等の為に戦った・・・・・」
「だが結果は知っての通りだ」
「我等は囮となった王達と別れ都を捨てて逃げる者達を率いて包囲網を突破したのだ」
「その後私達はゼノを追うようにレムナリア大陸を後にしたの」
「彼は単独であの海を・・・・・」
ウェンディアに続きアムネリアが言葉を紡ぐ
そして再びウェンディアが後を継いだ
「奴のせいで港町は壊滅していた」
「追手を足止めするためだったのだろう」
「だが我等も天使兵から追われていた」
「一度北へと向かい魔法で海を凍らせ筏を作ると無我夢中で海へと飛び出した」
「誰が見ても自殺行為・・・・・」
「その為なのかかの都市から離れたせいかは分からないけれど」
「私達は洋上で天使兵の追手を振り切り脱出に成功したの」
「あの後の苦難も凄かったなw」
「何せ絶え間無く氷結魔法を使わねば沈むのだからな」
「皆必死だったよ・・・・・・」
聞くだけでも恐ろしい逃避行だった
その後何とか近くの島にたどり着き船を建造してこの大陸まで渡ってきたらしい
そしてアムネリア達がこの大陸に帰還しても苦難は続いたのだった




