加護 と絆
「それで」
「今更アタシにアリエルの信者になれと?」
「どうせ・・・・」
「もういっぱいいるんじゃないの?」
「知らない間に崇め奉られてただけだよ」
「それに信仰して欲しいわけじゃないの」
「加護を与えるために便宜上どうかなって話し」
「信仰する神は1神だけじゃなくても良いんでしょ?」
「加護だって複数得られるに超したこと無いわけだし・・・・・」
加護を与えるためシンシアを勧誘しているわけだが頑なに難色を示している
まぁ
旅の仲間がいきなり神様になったから入信してよと言ったところで二つ返事にはならないだろう
ぶっちゃけ一方的に加護を与えることも可能なのだが本人の承諾が有るにこしたことはない
「アリエル」
「シンシアを勧誘するのは良いがどのスキルを主にするのか決めたのかや?」
バステトに言われる通り主となる加護を決めなければならないのだが未だに迷っていた
戦闘系か補助系か
それとも生活系か
「今のところ信者の大半はヴァンデラーブルクの民よね?」
「彼等は元々普通の状態異常はかからないし不死だから色んな知識も持ってる」
「彼等に益する加護スキルとなると戦闘系かなぁ?」
「でも民衆を戦闘に捲き込みたくはないのよ・・・・」
普通の種族であれば状態異常耐性は有効なのだが彼等には無用の長物
かと言って身体強化も無意味だし
「状態異常付与なんかどうかな?」
「麻痺とか睡魔なんかを付与できるようになるの」
「戦闘にも役に立つし」
「いやダメじゃろそれは」
「どう考えてもその加護は邪神っぽいし使用者の闇落ちが起こりそうじゃ」
無下もなくバステトに却下されてしまった
まぁ
好きに麻痺や毒が使えるのは悪用するなと言う方が難しいかもしれない
「やっぱり無難なところだと状態異常無効と身体能力向上に魔力増幅くらいか」
「いやいや」
「さらっと言っておるが状態異常無効はかなり強力じゃぞ?」
「せめて状態異常耐性向上くらいじゃろ」
「そうね」
「無効だとお酒も楽しめないから嫌だわ」
「入信してあげない」
シンシアは丸まったままボソッと呟いた
「全員に無条件で付与するわけじゃないから勘弁してよ・・・・」
「とりあえず耐性向上にしておくわ」
「司祭クラスには上位加護を与える方が良いのかな?」
「固有奇跡って言うのもあるわね」
「固有奇跡って・・・・・」
固有と聞いてシンシアが眉間にシワを寄せた
「我の固有奇跡は〈突風〉と〈暴風〉を代表とする風魔法の無償行使である」
「司祭達は風属性魔法の適正が無くとも魔術スキルが低かろうとも使えるようになる」
「高位司祭ともなれば〈真空裂斬〉等が使える戦力としても期待できる」
風魔法と言えば効果まで時間がかかったり今一火力に頼り無さを感じる
戦闘用と言うよりも諜報等の裏方の使い方の方が向いているがこの世界ではあまりそのような使われ方はしていないようだ
「ウェンディアには後で面白い魔法を教えてあげるわ」
「同じ風系統だから使いやすいだろうし楽しいわよ」
「そうか」
「それは楽しみだな」
ウェンディアは満面の笑みで頷いているが身体を動かすと時折御本尊が顔を出す
指摘した方が良いのだろうか?
バステトやアムネリアは何も言わず視線を反らしているところを見るとやはり見えているようだ
「それはそうとウェンディア」
「なんだ?」
「ノーパンだから時々チ○コ見えてるわよ」
「んなっっ!!!」
ウェンディアは気付いていなかったらしく慌てて後ろを向いた
ー・ー
「わざと見せてたわけじゃなかったのね」
「ちょっとホッとしたわ」
「もっもっもっ」
「もっと前に気が付いていたのではないか?」
「我は・・・・」
「我は下半身丸出しだったのであるか?」
「チラチラ見えてただけよ」
「ご立派だからその腰布じゃ隠せなかったみたいね」
「んなっ」
「なんとっ!!」
「確かにちとスースーするなとは思っておったが」
「まさか下着を着けておらぬとは思わなんだ」
下着を創造すれば良いものを
ウェンディアは腰布を脚に捲き込み内股になって座っている
屈強なオッサンがである
それはそれでオネェっぽい
「んぁーもぅ」
「これでも穿いてなさいな」
私はストレージから絹糸を取り出すと褌を作ってウェンディアに渡した
「ぬぉ?」
「絹であるか」
「これはまた贅沢だな」
「恩に着る」
褌を受け取るとウェンディアはそそくさと柱の影へ走っていった
「どうせもう皆が見てるんだからそのまま穿けば良いのにw」
「アリエル」
「それはそれで見ている方が恥ずかしいわ」
「あまり見たいまのでもないわ・・・・」
バステトとシンシアは否定的だったがアムネリアは沈黙したままだった
もしかして・・・・?
「アムネリア」
「一応聞いておきたいんだけどさ?」
「却下」
「却下したって事は図星って事で良いのかな?」
「ノーコメントですわ」
アムネリアのよそよそしい態度に疑問に感じたシンシアが眉をひそめた
「2人して何よ?」
「ハッキリ言いなさいよ」
「シンシア」
「世の中無理に聞かぬ方が良いことも有ると思うがの」
バステトの言い様は何か知っているのだろうか?
「何よ・・・・・・」
「皆してまた私を除け者にするのね」
シンシアは丸まったまま再び後ろに転がり拗ね始めた
「んー」
「ちょっとタイミング悪かったかな」
「聞こうとしてゴメン」
「アリエルは悪くないのじゃ」
「悪いのは隠しておるアムネリアじゃ」
バステトはいつになく辛辣な言い方をする
やはり何か知っているな?
「うっ・・・・・・」
「いっ」
「虐めないで欲しいの・・・・」
「お願いだから・・・・・・」
今度はアムネリアも俯いてしまった
どうやらアタリか
本人を前にして言わないと言うよりも言えないと言うか言いたくない
それは自分だけの秘密ではないから
そして当事者はまだいるからか
「すまぬな」
「これで見せずに済む」
朗らかに戻ってきたウェンディアは皆の雰囲気が悪くなっているのに気が付いた
シンシアに至っては再び頭から布団を被り天岩戸状態に戻ってしまっている
「すまん!」
「気付かなんだとは言え見たくもないモノを晒したことは詫びる」
「許してくれ」
ウェンディアは頭を下げた
本当に気さくと言うかなんと言うか・・・・
実直なのは見て取れるので悪い気はしない
「そう言うのじゃ無いのです」
「全て私が悪いのです・・・・・・」
俯き小刻みに震え始めたアムネリアは泣くのを必死にこらえているように見える
ウェンディアは気まずそうに私の方を見るが私はわざとシンシアの方へと視線を反らした
これで気付けば良いが
この朴念仁がわかるなら奇跡と言えるかもしれない
だが・・・・・
「うむ」
「以前とは事情も変わったのであったな」
「そろそろハッキリさせねばなるまい」
何かを察したのか唐突にウェンディアは話し始めた
「皆には言っておかねばならぬ事がある」
「重要な事だ」
神妙な面持ちで話し始めたウェンディア
瞳を閉じて一呼吸おいた後
再び目を開いた時その表情は穏やかでとても深刻な話をする雰囲気には見えなかった
だが
このウェンディアの表情は
私がアムネリアに聞こうとした問いが
予想通りの答えだと物語っていた
ー・ー
「アムネリア」
「長きに渡り司祭として我を支えてくれて有り難う」
「流石我が妻」
「良くやった」
「我が娘オルフィーナ」
「大きくなったな・・・・」
ウェンディアの言葉に全員の息が詰まる
私を除いて
そして間髪入れずシンシアが飛び起きた
「ちょっ!」
「ちょっとどう言うことよお母様!!」
アムネリアを見ると先程までの苦悶の表情は消え微笑みながら嬉し涙に変わっていた
ああ
やはりそうか
ウェンディアに夫婦である事を
父親である事を伏せるように言われていたのか
恐らく先の大陸での戦乱のせいだ
シンシアに危険が及ばない為の配慮だろう
神の子と知れれば狙われる
苦渋の選択だった筈だ
「お帰り・・・・」
「なさいませ・・・・・貴方」
そのまま2人はしっかりと抱き合ったのだった
ー・ー
「なんなのよもう!」
「いったい!!」
こうなるともうシンシアは面白くない
自分を守るためとは言え200年も知らさせず生きてきたのだ
「そりゃ荒れるわよね」
「これはちょっとフォローのしようがないわ」
「なによ!」
「アンタだってアタシを除け者にしようとしたくせにっ!!」
また振り返してしまった
「シンシアに危険なことをして貰いたくないって気持ちは分かるわ」
「でもねシンシア」
「アムネリアの場合はそれだけじゃなくてウェンディアの封印がいつ解けるかも分からない状況だったから言い出せずにいたんだと思う」
「分かった風に言わないでよ」
シンシアは低い声で唸るように吐き捨てると私を睨んできた
ここで怯むわけにはいかない
「私もシンシアには危ないことして欲しくない」
「でも私はシンシアを信じてるから私の背中を守って貰いたいって思ってる」
シンシアの唇が震え何かを言いたいのかも知れないが言葉にならない
私はシンシアをそっと抱き締めた
そして彼女はそれを拒まなかった
「私を貴女に・・・・・・」
「貴女を私に」
「絆紡ぎ相果てるまで共にあらん」
「久遠の果てまで互いを繋ごう」
「たとえ時が別とうとも」
「たとえ彼方に別たれようとも・・・・」
「互いの絆切れること無し」
「互いを想い合う限り途切れること無し」
私の呪いにも似た言葉が終わると2人を暖かな光が包み込みやがて消えた
「今の・・・・・は?」
「私とシンシアの魂を奇跡の絆で繋げたのよ」
「これでお互いが生きてるかどうかは直ぐ分かる」
「勝手にやっちゃったけど・・・・・」
「迷惑だったかな?」
「そっ」
「そんな事は・・・・・・」
「無いけど」
シンシアは私の腕の中でモジモジしている
流石に皆の前では恥ずかしかったか?
「お熱いことじゃのぅ」
独りシングル確定のバステトが不機嫌そうに呟いた
アムネリアは複雑な顔をしていたが
ウェンディアのほうがもっと複雑な顔をしていた
ー・ー
「ぐむむむむむむ」
「我は長きに渡って・・・・・」
「およそ200年もの間眠っておった」
「故に我の中では未だあの時から大して時はたっておらぬ」
「だからいきなり我が娘が大きくなっているのには違和感があった」
「オルフィーナと一緒に過ごせた時間も短い・・・・・」
「だがっ!」
「しかしっ!」
「だからと言って目の前で娘が・・・・・!」
「しかし相手は大恩有るアリエル殿・・・・・・・」
「ぬがぁあーーーー!」
頭を抱えて悶える父親と冷ややかな目で私を見る母親
「アリエルちゃん?」
静かに歩み寄ったアムネリアが私の前で止まった
パシィンッ!!
何の予備動作も無く右の平手打ちを喰らう
これには全員が凍りついた
「貴女」
「そう言うのは先ずプロポーズが先じゃなくって?」
「それから私達への挨拶とか・・・・・・」「は良いにしても」
「せめて誓いのキスくらいはしなさいな」
腰に手を当て仁王立ちで静かに言い放つアムネリア
激怒と言うわけではないが・・・・・・
嬉しさと怒りがせめぎ合っているようだった
「あっ・・・・・・・」
「アタシは別に」
「そう言うの気にしないし」
強がっているようだがシンシアも斜め下を向いて目線を合わせようとしない
手持ち無沙汰な左手は私の服の裾を摘まんでいた
「言葉は苦手なのよね・・・・」
「でもアムネリアの言う通りだわ」
私は裾を摘まむシンシアの手を切るとそのまま腰に手を回して抱き寄せた
「なっ何よ」
「母様に言われたからってプロポーズとかし・・・・・」
私はシンシアの言葉を唇で遮った
ゆっくりと
優しく
互いの気持ちを確かめるように唇を重ね合わせたのだった
ー・ー
私はくちづけの後離れようとしないシンシアを抱き抱えたまま話を続けようとした
しかしその姿にウェンディアは悶えアムネリアはあきれ顔
バステトに至っては視線が泳ぎ遠くを見ていた
これではとてもじゃないが話しにならない
「え・・・・・と」
「加護なんだけどね」
「基本的には状態異常耐性向上にしようと思うのよ」
「それでヴァンデラーブルクの人達には魔力増幅」
「司祭クラスにはこの二つに加えて念話あたりを付与しておこうかな?」
「随分と現実的な加護スキルじゃな」
「他の神なればハズレスキルも用意しておくものじゃが」
「ハズレの加護は嫌だなあw」
バステトの軽口に私の笑い声が響く
そのバステトの目は虚ろで心ここに非ずと言った感じがする
そんなやり取りを続けていてもまだウェンディアは頭を抱えアムネリアはジト目で私を睨んでいる
「アリエルちゃん?」
「神様だからハーレム作ろうがなんだろうが構わないけどさ?」
「ウチの娘を泣かせたら承知しないからね?」
かろうじて笑顔は見せているが目が笑っていない
承知しないとはどう言うことだろう?
仮にも同盟の盟主だし圧倒的な力量差があるが・・・・・
アムネリアの目は本気だ
多分命がけで刺してくる気がする
「ところでウェンディアはなんで自分でパンツ造らなかったの?」
「奇跡を使えば造れたと思うんだけど」
未だ父親としての葛藤に悶えているウェンディアに声をかけるが・・・・
返事がない
ただの嫉妬親父のようだ
「いや」
「そもそもアリエルが気軽に何でも造りすぎるのじゃ」
「いかに素材が有ると言うても神はどんな些細なことにも神力が必要となる」
「つまり何をするにも魂を削るのじゃ」
「じゃがアリエルはどうじゃ?」
「奇跡ではなく魔法とは言え相当な対価を支払わねばならぬ筈じゃろ?」
言われてみれば気軽に創造し過ぎなのかもしれない
けれどシステムからは何のペナルティも無い
システム的にはこの程度は何の問題も無いのだろう
「んーー」
「その辺はまぁ」
「いっぱい魔力持ってるからかな?」
「食べ物からの魔力変換効率も良いからあの程度の物なら痛くも痒くもないわ」
「そうっ!!!」
「それじゃっ!!!」
「妾が聞きたかったのはその事じゃ!」
バステトは声を張り上げ詰め寄ってきた
私に張り付くシンシアが威嚇するがお構い無しである
「アリエル」
「お主はどうしてそれ程までに魔力を有しておるのじゃ?」
「魂の強度も妾達とは比べ物にならぬ」
「本来ならば数万人規模の教圏を所有しておらねば届かぬ高みじゃ」
「何をやった?」
「どうしてそうなった?」
困った
私の核心でありチートの元凶である
全てを曝すことは出来ない
だが既にもう下手に誤魔化せないところまで来てしまっていた
「バステトには前に話した通り」
「ダンジョン殲滅した時の魂が生け贄の供物になってる」
「他にも特殊化したダンジョンの攻略時に倒した者達の中に転生者が混ざっていたり・・・」
「スタンピード起こしたゴブリン軍を倒した分が全部生け贄の供物になってるのよ」
「それ以上でもそれ以下でもないわ」
詳細は話していないが嘘は言っていない
その事はバステトも察したのか釈然としないまでも引き下がった
「そう言えば・・・・・・」
「確か同盟結んでいたら信仰力の受け渡しが可能になったのよね?」
「正確には神力」
「魂の力じゃな」
「天使兵も神力で生み出すわけじゃから援軍を送ると言うことは神力を送るのと同義じゃ」
「ならばタイムラグの発生せぬ神力の受け渡しと言うのは道理に叶っておろう?」
「まぁ確かにそうではあるんだけど」
「なんだか神力って貨幣みたいな一面あるよね」
「ある意味そうやもしれぬな」
復活して間もないウェンディアは神力が心許ないため満足に奇跡を使えない
それはそれで今後困ることもあるだろう
「なら早めにやっておこうか」
私はステータスメニューを開き神力を見る
数字が天文学的で今一その価値がわからない
奇跡一覧から消費量を調べある程度余裕を持たせて譲渡する
譲渡候補には同盟全員の名前があるためアムネリアと眷属であるミシェルの名前もあった
「ぬおっ???」
「こっこれは?!」
「力が漲る!!」
「何が起きた???」
「まさか?!」
ウェンディアは慌ててステータスを確認していた
その譲渡された数値をみて卒倒しかけた
「あっ貴方!!」
慌てて抱き止めるアムネリアの腕の中で持ち直したウェンディアは驚きの表情で私を見ていた
「こっこれは?」
「何故唐突にこのような施しをなさるのか?」
「あー」
「結納金代わり?」
「・・・・・・・・・・・」
「ウソウソ冗談よ」
「復活したてで不便でしょ?」
「だから当面の保険として渡しただけよ」
「たいした量じゃないから気にしないで」
「大した量ではないと???」
「これがか???」
ウェンディアの態度から見るにちょっと多すぎたようだ
奇跡の消費量からすればそれ程多くはないと思ったのだが・・・・
「ウェンディア」
「アリエルの神力は規格外じゃ」
「それこそ創造の奇跡を気軽に使えるぐらいにはな」
「有り難く貰っておけ」
「どうせアリエルにははした金程度じゃ」
「そっ」
「そうなのか?」
「信者数からすれば途方もない量の神力だぞ???」
「そうなの?」
「当たり前だ」
「駆け出しの神はただでさえ神力が少なく信者も少ない」
「だから普通は魔法を併用するものだ」
「そうせねば直ぐに枯渇するのでな」
「だがこの世界には創造魔法と言うものがない」
「奇跡を行使しなければ無から造り出すことは出来ぬ」
「故に衣服等は供物を流用するものだ」
「下着一つとて軽々しく創造したりはせぬ」
「そーなんだー」
「妾もべんきょーになったー」
バステトの白々しいまでの棒読みが部屋に響いたのであった




