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加護

「結局加護は何を選ぶのじゃ?」


「そうねぇ」

「とりあえず付随スキルのある加護から選ぼうか」

「名前は略すけど・・・・・」

「戦闘系だと〈殲滅〉〈滅殺〉〈暴虐〉あたりかな」


「ブフッ!!」

「いっいきなり物騒なラインナップじゃな」


明かに闇落ちしていそうなスキル名にバステトは思わず吹き出してしまった


「補助系だと〈犠牲〉〈覚醒〉〈魔眼〉くらいか」


「いやいやいや」

「事も無げに言うておるが恐ろしい加護スキルばかりじゃぞ?」


今度は眉根を寄せて腕を組んで憮然としている


「魔法系だと〈匠の理〉〈魅了〉〈賢者の理〉〈大災害〉ってところね」


「ちょっ!!」

「ちょっと待てぇーい!!」

「なんじゃその〈大災害〉とは?!」

「妾は聞いたことも無いぞ???」


バステトでさえ聞いたこともないようなスキル名に思わず身をのりだし詰め寄ってきた


実はこの〈大災害〉と言う加護スキル


魔物由来で魔王クラスに与える上位加護スキルのようだ


附帯スキルの多さもトップクラスで攻撃系が多い反面回復系統は少ない

範囲攻撃スキルや疫病に加え一部の昆虫を操る能力もある

だがデメリットして破壊衝動が付きまとう


この加護を受けた者は間違いなく災害級の大魔王と呼ばれるだろう


「まぁ」

「ろくでもない加護なのは確かね」


「ところでじゃな」

「・・・・・・・・・」

「そのろくでもないスキルはほぼ全てお主が保有しておると言うことなんじゃが間違いないか?」

「基本的に神が与える加護は自ら保持するスキルの中から選ぶものじゃ」

「システム的には加護専用スキルを魂のポイントで買うこともできるわけじゃが・・・・・・」


「あ」

「バレた」


「バレたじゃないのじゃ!!」

「何処でそんな外道スキルを手に入れた?」

「それとも加護専用スキルなのかや?」

「妾は購入一覧でもそんなスキル見たこと無いぞ???」


詰め寄って来るバステトの勢いに押され後退りしてしまう


だがバステトは尚も詰め寄り壁に追いつめられてしまった


「壁?」

「逃げ場が・・・・・・」


ドンッ!


「さぁ観念して白状するのじゃ」

「妾に隠しだてするでないぞ?」


バステトは詰め寄る間に体型を変え大きくなると壁際に追いつめられた私に壁ドンして睨み付けてきた


それも壁に右肘をついているため顔が非常に近い


「ホレどうした?」

「早う言うてみぃ」


そして左手て私の頬をペチペチと叩いてくる

まるでカツアゲする不良のようだ


「えっ・・・・・・」

「えーと・・・・・」


あまりの顔の近さに思わず視線を反らすとバステトはすかさず左手で私の顎を掴み視線を合わせてくる


「視線を反らすな」


んー


これは完全にどこかのヤンキーのカツアゲじゃないか


これは意表を突いて逃げるしかない


チュッ♪


「ンゴッ!!」


冗談で軽くキスをしてみた


するとバステトは離れるどころかおもいっきり押し返してきた


そのまま頭を壁に押し付けられ舌を捩じ込んでくる


「ンンーーーッ!」

「ンッンッッ!!」


私は右手で振り払おうと踠くがバステトに腕を掴まれ壁に押し付けられている


本気で抗えば逃れられなくもないがどうしたものか?


ゴソッ


「なぁーにしてるのかなぁー?」


バステトは背後に強烈な殺気を感じ素早く飛び退く


ゴスッ!

「ぐげっ!!!」


ベッドから跳んできたシンシアの跳び蹴りは私の鳩尾に深く突き刺さったのだった


ー・ー


「い・・・・・・」

「痛い・・・・・」


「生身じゃないのに痛いの?」


「基本的に人間の感覚は全て再現してるからね」

「寧ろ敏感なくらいよ」


私は鳩尾を擦りながら涙目で答えた


「・・・・・・・・で?」

「人が寝てる横で何をイチャコラやってくれてるのかしらぁ?」


ベッドの縁に座るシンシアの前で私達2人は正座して頭を垂れている


神様なのに


「えっと・・・・・」

「その・・・・・・」

「シンシアが寝ている間に色々ありまして・・・・」


「ぁあん?」

「誰が言い訳しろっつったよ?」


「いや、その」

「説明を・・・・・・・」


「だぁーらっしゃい!」

「いつから御二人はそんなに親密になったのかしらぁー?」


腕を組み不機嫌丸出しで見下すシンシアに私達は萎縮して縮こまっている


バステトなんか元のチビの戻ってしまっていた


「シ・・・・・シンシア殿?」

「わ・・・・妾達は決して疚しい事をしていたわけでは・・・・・」


「ん゛ぁあ゛?」

「なぁにがやましくないですってぇ?」


シンシアの柳眉が逆立ち全身の毛が逆立つのを感じる


ヤバい


ゴッッ!!


「ごめんなさい!」

「バステトに詰め寄られて誤魔化すのに軽くキスしたらやり返されたんです!!」

「別に他意は無いし親密になったとかそう言うんじゃないんです!!」


私は床に勢い良く額をぶつけ土下座すると早口に捲し立てて謝った


「んぁ?」

「まぁた軽々しくキスとかしてるわけぇ?」

「人の気も無視しといてぇ?」

「はぁあ???」

「つか今何気に呼び捨てにしてたわよね?」

「バステトって」

「親密になってないのになんで呼び捨てなのかなぁ?」


シンシアは静かに立ち上がると音も無く私に歩みより目の前で立ち止まる


怖くて頭を床に擦り付けたままだが気配で腕を組んで見下ろしているのだろう事は分かった


シンシアはそのまま横に回り込んだ


ドスッ!


背中に衝撃と重みを感じた

同時にシンシアの温もりが伝わってくる


「んでぇ?」

「アタシが寝ている間に2人でなぁにしてたのかしらぁ?」


シンシアは私の上に座ると脚を組んでバステトの方を向くと頬杖を突き話し始めた


うぐっ

身体のおかげで苦ではないがこの体勢のまま話させて貰えないのは辛い


「それは・・・・・・じゃな」

「アリエルは妾の頼みを聞いてくれたおかげで色々と厄介な状況に追い込まれたんじゃ」


「そんな事聞いてないっっ!!」

「アタシはなんでアタシだけ寝かせておいてその横で2人でいちゃついてたのかって言ってるのよっ!!」


シンシアの剣幕に思わず口を閉ざしたバステト


とにかく落ち着かせなければ話を聞いて貰えそうになかった


ー・ー


「はぁぁああああああっ」

「どうやってもアタシは又蚊帳の外なわけね?」


酔っていると言うよりもあの酒の効果で感情の制御が出来なくなっているようだ


一度昂った感情の落としどころが分からず当たり散らしているように見える


「いや」

「シンシアだけではないのじゃ」

「妾とアリエルとアムネリアの3人でしか・・・・」


「んぁ?」

「なんでお母様は良くてアタシはダメなのよ?」

「ねぇ?」


「それは・・・・・」

「今から説明するのじゃ・・・・・」


隠し事をしたのは事実


かと言ってプレイヤーやその候補者以外に秘匿されている内容が含まれている


迂闊に全てを話すわけにはいかないしどうしたものか?


ガチャ


「失礼する」


タイミングを見計らったかのようにウェンディアとアムネリアが部屋へと入ってきた


「んまっ!!」

「フィーちゃん貴女いったい何て事をっ!!」


慌てて駆け寄ろうとするアムネリアを威圧的な眼光で制したシンシア


私の上で身じろぎ一つしていないのが彼女のお尻から背中へと伝わってくる


「ぃいーところに来たわねお母様」

「こんな事になってる理由を聞かせて貰おうかしら?」

「何があったかは知らないけど何故アタシが仲間外れでお母様は良いのかしらぁ?」


「それは我が話そう」


「んぁ?」

「さっきから貴方だ・・・・・」


割って入ってきたウェンディアを見てシンシアに緊張が走る

僅かな身じろぎから気まずさが感じられた


ウェンディアが誰か気付いたのだろう


「すまぬがその辺りで許してやっては貰えぬだろうか?」

「全ては我のためである」


ウェンディアの低く通る声は威圧的なところも尊大なところも無く優しく諭すように語り始めた


アムネリアが自分の最後の司祭である事

呪いに蝕まれ力尽き封印されていた事

それを私に助けて貰った事

その時に偶然が重なり亜神となった事

更に原因不明だが昇神を果たした事

そしてそれ等は全世界の神々に告知された事

自分達3人で秘密裏に同盟を結んだ事


全てを聞き終える間にシンシアは我に返ったらしく緊張して身体に力が入っていくのが分かった


ー・ー


「と言うわけなのよ」

「あらあら」

「どうも私が用意したお酒が悪さをしているようね?」


ウェンディアの説明の後を継いで話し始めたアムネリアは緊張して固くなっているシンシアにゆっくりと歩み寄るとその額に指を当てた


指先に魔力の明かりが灯り一瞬で消えるとシンシアの頭を軽く抱きしめた


「酔いは覚めたかしら?」


む・・・・・・


モゴッ!

ムグググッッッ!!!

ングゥーーーーッ!!


アムネリアの胸に抱かれたシンシアは苦しそうに踠き始め一頻り抵抗するとやがて動かなくなったのだった


ー・ー


「ん・・・・・・・・」

「ここは?」

「なんだか悪い夢を・・・・・・・」

「見てたわけじゃなかったみたいね」


アムネリアに落とされた後


ベッドに寝かされたシンシアの横で私達は打ち合わせを済ませていた


そして眠り姫は目が覚め今に至る


「・・・・・・・もう良い」

「寝る」


私達の気配を察知したシンシアはこちらを向こうともせず反対側を向き布団を被ってしまった


「寝るんだからさっさと出ていったら?」


低く不機嫌な声が布団でくぐもって良く聞こえない


「先程の説明で事情は分かって貰えたかの?」


バステトがか細い声で問い掛けるが返事はない


もしかして布団が邪魔して聞こえなかったのだろうか?


「フィーちゃん?」

「さっきのウェンディア様の説明で・・・・」


「うっさい!」

「聞こえてるわよ!」


アムネリアが話し掛けると大きな声で返してきた

まるで機嫌を損ねた思春期の子供である


「うむ」

「困ってしまったな」

「シンシア殿が参加してくれぬと話が進まぬ」

「どうしたものか?」


ウェンディアの言葉に一瞬布団が蠢いた


「そうねぇ」

「ここからは重要なお話あるからフィーちゃんには参加して貰いたかったんだけどなぁ・・・・」


アムネリアの言葉にはより一層深く布団を被ってしまった


こう言うときは母親だと抵抗があるのだろうか?


「うむ」

「じゃがこれからの計画にはシンシアは不可欠じゃ」

「このまま進めるわけにはゆくまい」

「起きるまで待つしかなかろう」


ピピクッ


シンシアの被る布団が小刻みに震えた

興味はあるようだ


なら・・・・・・


ギシッ


ゆっくりと乗ったベッドがきしんだ


私はそのままシンシアに寄り添うように寝転ぶと肩に手を乗せる瞬間少し躊躇うが肩には乗せず軽く抱くように腕を下ろす


「なっ」

「何よ」

「アタシなんか要らないんでしょ?」

「勝手にやれば良いのよ」


「私達にはシンシアが必要なのよ」

「でもあまり深く関わらせると危険だから少し距離をおく時もあるわ」


シンシアは布団の中で手足を寄せて丸くなったが私の腕からは離れようとしない


「どうせアタシよりケモ耳の方が好みなんでしょ」


「そんな事無いよ」

「私の好みは不器用で可愛いエルフだよ」


「じゃあアタシじゃ無いわね」

「エルフだけど可愛くないもん」


シンシアはギュッと手足に力を込めて布団の中で丸まっている


「可愛いわよ」

「だって私の好みは他のエルフなんかじゃなくてシンシアだもの」


シンシアは布団の中で小刻みに震えていた


「黙って聞いていればなぁにぃ?」

「アリエルちゃんは親の目の前で愛娘を口説こうって言うのかしらぁ?」


アムネリアの声は少し震えていた

なんだかんだ言って娘が可愛いのだろう


「バカ」

「人がいる前で口説こうとするな」


布団の中から聞こえた声は

くぐもってはいたが

不機嫌さは感じられなかった


ー・ー


「じゃあ改めて」

「今日飛び級で亜神から正神になりました」

「神名はイシュタル」

「第一司祭は彷徨える都市(ヴァンデラーブルク)の王妃ミシェル」

「まだ誰にも加護を与えていない新米の神様(プレイヤー)よ」


「なんで第一司祭まで決まってんのよ」


「実はミシェル達も亜神(プレイヤー)候補者でね」

「事情を先読みして私の社を建てて祀ってたらしいのよ」

「そのせいでウェンディアを助けた時に条件が揃って昇神しちゃったってわけ」


「じゃあ神になったのは偶然って事?」

「自分から神々の黄昏(ラグナロク)に参加しようとしたわけじゃないのね?」


「そう言うこと」

「完全に寝耳に水だわ」

「それでさ」

正式な神(プレイヤー)登録されるとシステムからの補助がつくのと加護が与えられるようになるわけだけど・・・・・」


「妾がアドバイスしようとしたら規格外のトンデモスキルばかりでなぁ・・・・・」

「詳しく聞こうとしたらはぐらかすもんじゃから問い詰めようとしたらああなってしもうた」


「問い掛けるのに何で壁際でキスする必要有るのか知らないけどさ」

「アタシが止めなかったら何処までやるつもりだったのよ?」


「妾はあの後アリエルが抵抗するなら投げ飛ばして馬乗りになるつもりじゃった」

「その後はホレ」

「この液体を額に1滴ずつ垂らして自白を迫ろうかと思うとった」


拘束して額に雫を垂らす


昔から有る精神的の追い詰める拷問法の1つだ

痛みを伴わないため即効性は無いが長時間やられると精神崩壊を招きかねない


地味だが嫌な拷問の1つだ


「うわぁ」

「人でなしの拷問じゃない」

「引くわぁ」


「妾は神であって人ではない」

「強情に隠そうとするアリエルが悪いんじゃ」


揶揄されてバステトは不機嫌そうにそっぽを向いた


「ほんとにぃ?」


そんなバステトをジト目で睨むシンシア


「まぁアレ以上おかしな事にはならなかったわよ」

「だってバステトはリグルの事が好きなんだもん」


「なっなっなっ!」

「何を言っておるか?」

「アリエル!」

「妾の何処があんな爺さんを???」


慌てるバステトの顔はほんのり赤く染まっていた

こんな分かりやすい反応もあったもんじゃない


「あらあらあら」

「バステト様は隠せているとお思いでしたか?」

「お二人のやり取りを見ていれば誰でも気付くと思いますよ?」


アムネリアの言葉に耳を押さえて下を向くバステト


「なんじゃ」

「お主達は我が封印されておる間進展せずじまいか」

「何とも奥手じゃのう」

「リグル殿は不死なのじゃから神の力と権力でどうとでもなったであろうに」


ウェンディアが追い打ちをかける


どうやらバステトは200年以上前から片想いを患っているらしい

その言葉にシンシアの目が細くなった


「へぇー」

「それで告白とかしたの?」


「こっこっこっ!」

「こくひゃく?!」


バステトは恥ずかしさからか声は裏返り後ずさった


「そう言う想い人いるのにキスとかしちゃうんだぁ」


ジト目でバステトを弄るシンシアも丸まったまま布団から顔を出しただけの姿である

ウェンディアがいなければまるで修学旅行のガールズトークみたいだ


「それはその・・・・・」

「先輩の神として嘗められるわけにはいかぬであろ?」


「バステト様は昔からそうよねぇ」

「リグルとなんて別に始めての相手ってわけでも無いでしょうに」


「うっ五月蝿い!」

「アムは黙っておれ!」

「これ以上余計なことを言うな!」


バステトの噛みつきかたをみるにアムネリアは何かもっと知っていそうだ


「そっそれより!」

「さっきから黙っておるが有耶無耶に出来ると思うなよアリエル!」


おやおや

逃げるために話題を戻してきたか


「そうであったな」

「アリエル殿はイシュタルとしてどんな加護を与えるのだ?」

「1種類に絞る必要は無いが・・・・・」

「やはり代表的な加護と言うのは必要だぞ?」


ウェンディアの言うことももっともなのだが如何せんスキルが多すぎて決められずにいる


あまり強すぎる加護と言うのもどうだろうか?


「加護って一人の人に複数与えることは出来るの?」


「うむ」

「複数与えるのは出来ぬわけではない」

「普通は祈りの対価として与えるわけじゃ」

「それなりに制限を設けておる者がほとんどじゃろう」


そうか


加護を与えるのには別に制限はないが無闇に与えすぎると言うのも宗教的に長続きしない

安易に強い加護が得られれば軽い気持ちで入信しても祈りを捧げなくなると言うことか


「なら事情を知ってる信者には加護を与えたい放題ってわけね?」


「まっ」

「まあそうなるかの?」


バステトは不安そうな顔でウェンディアを見やるが彼は諦めたような顔で笑うばかりだった

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