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かみさま

「彼がウェンディア?」


「そうじゃよ?」

「なんじゃ」

「イメージと違うか?」


真剣な場面なのにバステトは少し楽しそうだ


小屋は簡素な作りではあるが窓にはガラスのようなものが使われ部屋の中は明るかった


そう明るかった(・・・・・)のだ


「外からは中の明かりは見えなかったけど」

「もしかしてこの中は隔絶された結界の中なのかな?」


「そうじゃな」

「この小屋には隠蔽隠匿探知阻害に物理魔法防御がかけられておる」

「妾でなければ辿り着くのも困難じゃろう」


傷ついた神を隠すならばそれくらいは当然と言えば当然か


私は部屋を見回した後再びベッドの上に横たわる彼に視線を落とす


「何度見ても変わらぬわw」

「どうせ風を司りエルフを従える風の神と聞いて細面の華奢な少年か美しい風の乙女とか思っておったのじゃろ?」


バステトの言う通り


エルフと風と言われれば爽やかなイケメンを想像していた


だが目の前に横たわっているのは爽やかさ等微塵もない


例えるなら猛々しく荒れ狂う暴風の化身


エルフとの共通点は白い肌と長く尖った耳くらいなモノだろう


筋骨隆々とした分厚い胸板

丸太のような手足

陰影の深い筋肉はまるで格闘漫画に出てきそうだ


「これで逆立った金髪だったら国民的アニメの登場人物だわ」


「妾もそう思う」

「では起こそうかの」


「いいえ」

「このままの方が都合良いわ」


封印を解除しようとしたバステトを止めてウェンディアを解析する


「ふむ」

「こうなってるんだ」

「それで・・・・・」

「ほぉう」


私は独り呟きながら身体の隅々まで観察した


何故か上半身裸で腰布しか身に付けていないため脱がす手間もかからない

下着も身に付けていないのはちょっとビックリしたが


とりあえず見終わった


「どうじゃ?」

「なんとかなりそうかや?」


バステトが問い掛けてくる後ろでアムネリアが胸の前で両手を合わせ祈っている


「まぁね」

「色々と神様の身体の構造が分かったわ」

「・・・・・・・」

「この呪いの厄介な事はその呪力源ね」

「これは非常に厄介だわ」


「ふむ」

「仮にも神が仕掛けた呪いじゃからな」

「厄介なのは当然として・・・・・」

「解呪は無理かの?」


やはり


と言うような諦めた感じのニュアンスに後ろのアムネリアは目を閉じ天を仰ぐ


「無理とは言ってないわ」

「けどコレを奇跡で解呪するには相当な力が必要だと思う」


「なんと?!」

「お主解呪出きるのか???」


バステトは驚きのあまり私の声が耳には言っていない様子だった


この呪いを奇跡で解呪するには膨大な力が必要なのだ


それは単純な呪いが幾重にも折り重なり絡み合い相互干渉しながら発動しているから


呪いの本質に対処せず奇跡で結果を求めればその対価は計り知れないだろう


「一番の難関はその呪力源がウェンディア自身に注がれる筈の信仰力を奪っているってことかな」


「なんと?」

「この短時間でそこまで分かるのかや?」


「折り重なった呪いの一つ一つは大した問題にはならないけれど」

「手順を間違えば暴走したり悪化したりするでしょうね」


私はウェンディアを視ながら考えを巡らせていた


一つ一つの呪いを解くのは難しくない

だが雪崩を起こしてしまっては取り返しがつかない


おそらくバステトもその手順の難解さから奇跡による一括解呪を選んだのだろう


だが・・・・・・・・


「神族って皆この核を持っている感じかな?」


ウェンディアを視た流れでバステトも視る


「あぁ」

「やっぱりそうか」

「魔石に相当する機関で魂と繋がっているわけか」


「うむ」

「気持ちは分かるが妾を勝手に視るのは止めて貰いたいものじゃ」


バステトは不機嫌にはなったが必要な事でもあるので我慢してくれている


「厄介なのはこの神核から伸びる魔力の動脈と外から神核に力を注ぎ込む経路の双方に呪いが癒着していることね」


「何とかなりそうかや?」


「OK」

「やれるだけやりますか」


幸いこの小屋はバステトの力で隔絶されている

全力を出しても問題ないだろう


魔力の祭壇(マナリチュラル)


魔法を発動させると爆発的に魔力が生み出される


「本気で行きます」

「魔道回路全開!!」


生み出した魔力を喰い両足の回路が全力運転を開始する


瞬時に増幅された魔力が部屋を満たしバステトとアムネリアに襲いかかる


「なんじゃこれは?!」

「この魔力濃度は・・・・!!」


バステトはアムネリアを護るため防御結界を張る


その瞬間


加速(アクセラレート)

時間圧縮(クイックタイム)


2つの魔法を使い時間を支配した


「さぁてと」

「どうやるかな?」


分子(ディスイン)分解(ティグレート)


先ずはウェンディアの肉体を分解して神核だけを残した


これに伴い肉体に作用する呪いは消え失せる


「残ったのは呪力回路と神核か」

「経路が無くなってるのにまだ張り付いてるな・・・・」

「切り離すしかないか」


私は魔力を圧縮して針のような刃物を作ると細く絡み付いた呪いの管を一つずつ切り落としていった


ー・ー


「クッ!!」

「アリエルお主!!」

「何を考え・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「ぬっ?なっっ???」

「ほぇ?」


生み出した魔力をウェンディアの解呪と肉体の再構成に使い果たし時間圧縮を解いた


膨大な魔力が必要だった為一瞬ではあるが先に魔力を増幅しておく必要があったがそれは既に圧縮された時間の中で使いきっている


それを事前に言うのは手間だったので事後承諾で有耶無耶にすることにした


「うっ・・・・・・・ぷ」

「うぇ・・・・・・・・」

「これは・・・・・・・」

「気持ち・・・・・・・」

「悪いの・・・・・・・」


アムネリアが床に両手をつき項垂れている


一瞬ではあるが高濃度の魔力に当てられ魔力酔いを引き起こしたようだ


「グブッ」

「え゛ろえ゛ろえ゛ろ」

「ぅげぇぇ・・・・・」


たまらず吐いてしまったようなので〈清浄(クリンナップ)〉の魔法で綺麗にしておく


「あ゛」

「ありがとう・・・・・・」


アムネリアは完全にダウンしてしまったようだ


「アリエル・・・・・・・」

「お主」

「時間を操れるのか???」

「これは最早〈加速(アクセラレート)〉の域を超えておる」


「それは・・・・・まぁ」

「少々」

「嗜む程度には」


まるでお見合いの時に趣味を聞かれたかのような答え方をしたのには理由があった


・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・

・・・・・・・・・・・・・


「何?」

「このアナウンスは」


「何じゃ???」

「妾達には何も聞こえんぞ?」


どうやら私だけに聞こえるらしい


聞き逃したのでもう一度聞きたいと念じると再びアナウンスが始まった


わーるどあちーぶめんとの

たっせいをかくにん

じあいみちたるかみがみのいやして

のしょうごうと

たっせいほうしゅうをふよします

ほうしゅうをえらんでください


「ワールドアチーブメント???」


「なっ!!」

「なんじゃと???」

「しまった!迂闊じゃった!!」

「まだ隠された未達成のワールドアチーブメントが有るとは思わなんだ」

「アリエル!」

「達成報酬は慎重に選ぶんじゃ」

「達成報酬で得られる能力(アビリティ)はスキルや魔法とは違う」

「選び方一つでパワーバランスは変わってしまう!!」

「神名も慎重に選ばぬと恐らく全体アナウンスで晒されるぞ!」


私の呟きに対しバステトは明らかに狼狽していた


ワールドアチーブメント


そんなモノまであるのか

正にゲームだな


「どうも今回は達成報酬は選べないみたい」

「まだ説明のアナウンスは続いてるわ」


とっさにバステトに嘘をついてしまった

しかし直ぐに報酬を選ぶのは危険な気がする


・・・・・・は

きょうめいしたあいてをれいぞくし

そののうりょくをうばいあたえるものとする


あびりてぃぜんのうとは

このせかいのあらゆるじしょうを・・・・


不穏な説明が続いているがゲームの説明書よろしく専門用語を交えられているため良く分からないモノもある


いじょうでせんたくかのうなたっせいほうしゅうのせつめいをおわります


・・・・・・・・・


たっせいほうしゅうのうけとりはほりゅうされました


わーるどあちーぶめんとのたっせいにより

ありえるふぉんいるしゅたんとを

あしんへとしょうしんします


しんめいをささげよ


「亜神への昇格ですって?!」

「ちょっ待って!」

「そんなの望んでない!!」

「頼んでない!!」


わけの分からないシステムに怪しげな称号と能力を与えられ昇格まですると来た


思わず叫んで頭を抱えてしまった


この上何が起こるのか???


「なんじゃと?」

「亜神への昇格???」

「おそらく最速記録じゃな」

「神名を決めねば今の名前のまま公開される」

「アリエル」

「心して決めよ」


バステトが説明してくれたと言うことは彼女も経験が有ることなのだろう


神名・・・・・・


神としての呼び名?


冗談じゃない

私はこの世界で覇権を争いたいわけじゃない


「・・・・・・・・・」

「我が神名はイシュタルなり」


しんめいをうけつけました


かつてどうめいのかみがそんざいしましたがげんざいはめつぼうしています

どうめいのかみのしんこうりょくやりょういきはひきつげませんがよろしいですか?


「構わない」


りょうしょうしました


貴女はこれより称号と合わせ

〈慈愛満ちたる神々の癒し手イシュタル〉

と呼称されます


以上で称号の授与とチュートリアルモードを終了します


頭の中に響いていた声が急にたどたどしい合成音声的なモノから流暢な言葉遣いに変わった


「チュートリアルモードが終了したって言ってるけど何これ???」


「それはなアリエル」

「禁忌の知識を知り神々の黄昏(ラグナロク)への挑戦権を得ても神格を得るまでは正式な参加者ではないのじゃ」

「そして一番下の神格が亜神じゃ」


バステトの説明が終わるとほぼ同時に再び脳内に音楽が流れ始めた


「何このファンファーレは」


「アリエルが正式なプレイヤーになった証拠じゃ」

「システムからのアナウンスとサポートを受けられるようになったわけじゃ」


私達のやり取りにアムネリアはキョトンとした顔で居心地悪そうにしている


「悪いなアムネリア」

「これは亜神以上の者にしか共有出来ぬ事なのじゃ」

「許せ」


「許すだなんてとんでもない!」

「神様には神様の都合があるのですからお気になさらないで下さい」


アムネリアは慌てて手を振りながら答えた


「そろそろ起きませんか?」

「ウェンディア殿」


私の言葉にバステトとアムネリアは慌ててウェンディアを見る


「うむ」

「もう起きて良いのか?」

「取り込み中だったように感じたので暫く様子を見ておったのじゃが・・・・」


そう言うとゆっくりと上体を持ち上げベッドに座るウェンディア


その顔は未だどこか虚ろで状況が飲み込めていないようだ


《慈悲深き神々の癒し手》

《のワールドアチーブメント達成を確認しました》

《これによりミリア教圏内にて新たにイシュタルが亜神へと昇神》

《このアチーブメントの過程で激神ウェンディアの復帰を確認》

《ワールドアチーブメント達成によりイシュタルの昇神を確認》

《亜神より正神となりました》

《イシュタルが史上最速で亜神から正神と昇神した事によりワールドアチーブメント》

《一足飛び》

《の達成を確認》

《ワールドアチーブメント達成により慈愛満ちたる神々の癒し手イシュタルは》

《神速の気鋭》

《の称号を獲得しました》


「うわぁ」

「開始早々ド派手な花火ぶち上げちゃたわのぅ」

「正確な居場所は秘匿されておるがこのミリア教圏内にイシュタルがおる事は知れ渡ってしまもうた」

「ミリアは血眼になって探すやも知れぬ」

「気を付けねばの」


「むぅ」

「我も復帰を知らされてしまったのう」


「アリエル関連での復帰じゃから同じ場所におるのは誰もが分かることじゃな」


「それはそれでやりにくいような気もする」


覚醒早々にアチーブメント達成の通知を受けウェンディアも状況が飲み込めてきたようだ


「うむ」

「礼が遅くなってしまったようだな」

「我は中位神格〈激神〉の位を持つウェンディアである」

「呪いを解いていただき感謝する」


ベッドから降りたウェンディアは両膝を付き頭を垂れて感謝の意を伝えてきた


「そう言うのはやめて下さい」

「私にもメリットはあるので」

「ところでさ?」

「このアチーブメントの達成とかのアナウンスって止められないの?」

「さっきからずっと続いてて頭痛いんだけど」


「なんと?」

「まぁワールドアチーブメント達成するくらいじゃからユニークアチーブメントやタスクも達成するじゃろうな」

「それはコンフィグ画面を呼び出して設定すれば通知をオフに出来る」


「うわぁ」

「完全にゲーム仕様じゃんかそれ」

「ついさっきまで異世界転生した冒険って感じだったのに台無しだわ」


バステトが教えてくれたように目を瞑り頭の中で〈設定〉と念じると画面が認識できるようになった


目で見ているようではあるが実際は視覚情報ではないため目を閉じていても開いていても同じように認識出来ている


「ありがと」

「とりあえず通知音は消したわ」


それでも通知内容に関しては文字として認識できる


「うわ」

「何これ?」

「2階級連続昇神したからアチーブメント達成してるんだってさ」

「その報酬が〈死亡フラグ〉って称号らしいわw」


「なんじゃそれは?」

「2階級特進と言うヤツか」

「相変わらず悪趣味なアチーブメントと称号じゃのう」


「2階級特進で死亡フラグか」

「我なんぞ長期間きの休眠からの復帰だとかで〈浦島太郎〉だそうな」

「日本人以外に誰が分かるのだ?」

「言い得て妙ではあるが嬉しくはないな」


ウェンディアは不満顔で腕を組み鼻息をならした


「それよりどう言うことじゃ???」

「アリエルが正神じゃと???」

「確か昇神条件に信徒1000人と言うのがあった筈じゃが・・・?」


バステトは怪訝そうに首をかしげ私を見ている

そしてバステトの言葉にアムネリアとウェンディアも私を見詰めた


「そんなに見たって何も出やしないわよ」

「って言うか」

「私に信者とかいるわけないじゃん」


私は呆れて両手を広げながら薄ら笑いを浮かべた


「じゃがそうでも無いんじゃよ」

「何せ正神の昇神条件は1000人の信徒の他に拠点となる正殿の建築と言うのがあってじゃなあ」

「亜神達は先ず拠点の候補地を探すことになるのじゃ」


「何それ???」

「じゃあ何処かに私の・・・・」

「アリエル神社かイシュタル神社があるって言うの???」

「バカバカしいわねw」


・・・・・・・アリエル様


「・・・・・・・・・」

「呼んだ???」


「誰も呼んどらんぞ?」

「と言うか会話中の妾達が呼べば直ぐに分かるじゃろ?」


「それもそうなんだけど・・・・・・」


・・・・・・・・アリエル様

・・・・・・・・イシュタル様?


「なんか呼ばれてる」


「おおそれはもしや・・・?」


ウェンディアが話そうとしたがバステトが割って入る


「誰かが祈りを捧げておるんじゃろ」

「答えるかどうかはお主次第じゃ」

「社で祈るとその思いの強さで妾達神の耳に届くようになっておるんじゃ」


なんとまあご都合主義な

まぁそう言うシステムなのだろうが


「ところで」

「アリエルった呼んでからイシュタルった呼ばれたんだけど?」


「それは先ず間違いなく関係者じゃな」


「うう・・・・・」

「既に身バレしてるし」

「神名変えた意味ないじゃん」


・・・・・・・イシュタル様

・・・・・・・放浪者たる我等に御加護を


「んぁー」

「こればアレだね」

「うん」

「確かに関係者だわ」

「どうやったら会話出来るの?」


「対話したいもしくは御告げを下したい相手を念ずるだけじゃ」

「発信源を念じれば映像まで出てくるおまけ付きじゃw」


なんとまぁ


神様のお仕事をゲームシステムに落としこむとこうなるのかな?


味も風情も無い気もするが実用的だとは思う


「じゃあちょっと試してみようかな」


バステトの言う通り念じてみると両手を合わせ目を瞑る1人の女性の姿が認識できた


画像がそのまま視覚情報として現れるのではなく知覚情報として並列処理されておるようだ


なるほど


これはマルチタスク化が出来なければ色々と不便になりそうだ


「やっぱりミシェルじゃん」

「御告げを伝えるって・・・・・」

「あぁこれか」


伝える意思を示すとコマンドが現れた

丸っきりゲーム仕様だが便利ではある


「我が名はイシュタル」

「イシュタル・ユング・シュワルツ・ノイシュヴァンシュタイン・ルクニエッカ・エヴァスキュレーゼ・ルナ・マリア・ロイエンタール・エロフ・アルアジフ・ヴェロエルコ」


「えっ?」

「イシュタル・ユング・シュワルツ・ノイシュヴァンシュタイン・・・・・・」


突然告げられた長い名前に戸惑うミシェル


「嘘よ」

「やほー」

「ミシェル元気?」

「私よ」

「わ・た・しw」


おふざけが過ぎたのか


ミシェルはブツブツと愚痴を言いながら暫く口を利いてくれなかった


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