式典と決闘と
「流石に来賓も多いですね」
「伯爵も対応に忙しそうです」
中庭を埋め尽くす煌びやかなドレスを身に纏った貴族達
賑わう人々を見渡しながらラルクが呟いた
「それはそうと」
「花嫁は控え室とかにいないのね」
「そうじゃな」
「特に此度は婚姻の決闘じゃからの」
「決闘は儀式ではあるがその起源は花嫁を奪うことにある」
「花嫁はある意味トロフィーのようなものじゃからの」
「ああやって皆にお披露目するのが慣わしじゃ」
「トロフィーですか」
「アルベルトが血塗れのスーツなままなのはどうして?」
「決闘がいかに壮絶じゃったかを示すためじゃ」
「そして花嫁がそのままのドレスを着ているのは同時に花嫁に傷をつけず勝った証しにもなる」
バステトは誇らしげに語っているが周りの反応から見てそれだけの意味では無いようだ
「もしかして」
「こうやってお披露目されるのって花嫁には嬉しいことなの?」
「当たり前じゃろう?」
「今は儀式化しておるとは言え花婿が命懸けで迎えに来た証じゃ」
「花嫁が嬉しくないわけがなかろう」
バステトは上機嫌にコロコロと笑った
見ると会場には2人が決闘で使用した楯が飾られている
伯爵が投げ捨てた時に付いた土も払われずそのままだ
「となるとあの楯は互いの家名を尊重した証ってわけね」
楯の前ではアルベルトが多くの友人達に囲まれていた
肩を組まれ小突かれているところを見る限り仲の良い友人なのだろう
「ジンも大人気ね」
「笑いながら小突かれているアルベルトに対してジンの周りは泣いている人多いわね」
「年齢層も高いし」
「まぁの」
「ジリエラには何度も再婚を薦めたのじゃが本人が頑として拒んでいたのじゃ」
「それでも何人かはプロポーズしたのじゃよ?」
「ワシが知る限り10人以上はフラれとるな」
「やはり不死となったのが思い止まらせた理由の一つじゃろう」
「バステト様っっ!!」
「仲裁をお願い致します!!」
私達とバステトの周りには会話中も女神への挨拶のために多くの人が訪れていた
その人垣を分け入るように1人の従事が飛び込んできた
「どうしたのじゃ?」
「決闘ですっっ!!」
「旦那様が決闘を申し込まれているんですっっ!」
急いで駆け付けると飾られた両家の楯の前で2人の貴族らしき男がアルベルトに詰め寄っていた
「お主のような若造が敬愛するジリエラ殿の夫とは納得できぬ!!」
「我等は決闘の機会すら与えられていない!!」
「承服しかねる!!」
「なんじゃお前等は」
「妾が立ち合った正式な決闘に文句があるのかえ?」
人垣をかき分け到着したバステトが仲裁に入った
「いかにバステト様とて承服しかねます!」
「本来ならば婚姻の決闘は公示期間が設けられ異論ある者はその決闘の権利をかけ剣を交えられる筈ではありませぬか!」
見るからに初老の獣人の男性が食って掛かる
「そうじゃのぅ」
「確かに公示せなんだは妾の落ち度か」
「じゃが妾立ち合いのもと行われた婚姻の決闘を覆せと言うのはどうかと思うのぅ?」
「ぐっぬっ」
「しっしかし!」
尚も食い下がり引こうとしない貴族にリグルが割って入った
「このままでは気が収まらんのじゃろう?」
「ならば代理人としてワシが相手をしてやろう」
「バステトもワシがジリエラの後見人なら文句あるまい」
リグルがズイッと前に出る
バステトは楽しそうに笑うとリグルの申し出を快諾した
「何故この場に人間が?」
「人間如きが我等の刃に敵うとでも言うのか?」
若い方の貴族がリグルに挑発的な声色で言い放つ
「・・・・・・」
「相手の力量も計れぬ若造は引っ込んでおれ」
若者を左手で制し初老の貴族が進み出た
「久しいな」
「リグレット」
「グルンガストは何をやっとるんじゃ?」
「今さら若い嫁を欲するとはのぅ」
「なぁに」
「ケジメじゃよ」
「ワシは人生の大半をジリエラへの想いに捧げて来た」
「じゃが」
「いかに後見人と言ってもお主とアルベルトでは力量に差がありすぎはせんか?」
「かっかっかっ」
「アルベルトはジリエラ本人と決闘して射止めたんじゃぞ?」
「ジリエラ殿本人とか・・・・」
「・・・・・・・・・」
「ならばお主が代理人として相応しかろう」
「おいっ!」
「グルンガストの爺さん!」
「何を勝手に納得してるんだっ!」
「まだ分からぬか」
「この方は龍殺しのリグレット」
「バステト様の盟友にしてジリエラ殿と共に戦った戦友」
「不死の大英雄じゃぞ?」
「なっっっ!!」
若造扱いされた貴族も若いと言うには程遠い
どう見てもアルベルトよりは歳上だろう
口調から察するにこのグルンガストと言う老貴族はリグルと面識があるらしい
と言うことは平均年齢をとうに超えているとみて間違いないだろう
「ワシの200年に及ぶ恋慕の終焉が・・・・」
「まさか貴方とはの」
グルンガストはポケットからハンカチを取り出すとリグルへと投げた
「フンッ」
「いかに初恋の相手と言えど生涯を捧げる等」
「フラれた男としては潔く無いのぅ」
空中でハンカチを受け取ったリグルは静かに丸めるとグルンガストへ投げ返す
「まぁそう言わんでくれ」
「決闘を受けてくれて感謝する」
グルンガストが合図をすると直ぐに使用人が駆け寄り細身の長剣を手渡した
「加減は抜きで良いな?」
「望むところ」
リグルの問いに目を光らせるグルンガスト
遅れて差し出されたレイピアを受け取ったリグルは少し離れて抜刀する
「両者構え」
バステトの合図に2人は胸の前で剣を掲げると同時に右下へと剣を払う
「まさか貴方とこうしてやれるとはな」
「良い冥土の土産になりそうじゃ」
「縁起でもないこと言うで無いわ」
シャッ
シャシャッ!
老骨とは思えない鋭い斬撃を連続で放つグルンガスト
細身の刀身はしなりながらリグルに襲い掛かる
キンキシッ
キキンキンキンッ!
息もつかせぬ斬撃がリグルに迫るが全てをいなしていく
「衰えてはおらぬようじゃな」
「まだまだ若い者には負けぬよ」
「じゃがそう言うリグレット殿も中々どうして!」
右から襲い来る切っ先は翻り左の斬撃へ
鋭い突きは横に薙がれると再び突き出される
両者互いの剣を逸らし受け止めフェイントを交え斬りかかる
「あの老人」
「凄いわね」
「あ奴は若い頃2つ名付きの冒険者じゃった」
「閃空のグルンガスト」
「閃く剣撃は疾風より速いと吟われた剣士じゃ」
「その武威を知らぬ若者もおるがの」
「未だ妾の国でも屈指の実力を持つ騎士じゃ」
確かに並の戦士では瞬殺されるだろう鋭い太刀筋
多彩な軌道変化に合わせられているのはリグルだからだろう
壮絶な打ち合いに刃は風を斬り弾かれる度に火花が散る
「流石に凄いわね」
「相手のグルンガストって人も流石2つ名持ちって感じね」
「あの剣裁き」
「私より上手いんじゃない???」
シンシアは思わず呟いた
だが彼女の剣技が低いわけではない
グルンガストの剣技が熟練者を超え達人の領域に達しているだけだ
「ふぅむ」
「流石に強いな」
「このままでは決着がつきそうにない」
「ワシの剣撃をこれだけ捌いておいて余裕じゃな」
「これでもまだそんな口が利けるかな?」
グルンガストのスピードが更に速くなる
だが捌くリグルも負けてはいない
「おっほほ」
「これでは反撃出来んな」
グルンガストの猛攻を捌くリグルの顔はまだ笑みが残っているがその手元に余裕が失われていた
「じゃが」
「そろそろ終わりにしようか」
それまで一進一退を繰り返していた2人だが受け手の筈のリグルが押し始める
「なっなんとっっ!!」
攻めながらも押されていくグルンガスト
防御側が押すと言うことは攻撃の起点を抑えられていると言うこと
そして太刀筋を見切られていると言うことでもある
「お主は良い剣士じゃ」
「じゃが強い反面」
「型に縛られ過ぎじゃ」
次第に剣を受ける場所がグルンガストに迫っていき更に押し込まれる
気が付けば一方的にリグルが攻める形になっていた
ギンッ
シュリンッ!
一瞬の隙を突いたリグルの剣はグルンガストの剣を捲き込むように弾きあげその剣は彼の手を離れて宙を舞う
「これで納得言ったかな?」
グルンガストの喉元に切っ先を突きつけたリグルは軽く笑ったのだった
ー・ー
「いやぁ強い」
「強すぎるわw」
先程まで決闘していた2人は一緒にジョッキを突き合わせてエールを酌み交わしている
周りの人達も絶賛し互いの健闘を讃えていた
「あれ?」
「もう一人いなかったっけ?」
「あぁあの人ね」
「2人の決闘がハイレベル過ぎて途中からいなくなったわ」
ジンへの恋慕の情が絶ちきれず勇んで名乗りをあげたものの異次元なレベルで剣を打ち合う2人を見て勝ち目がないのを悟ったのだろう
会場を見渡しても彼の姿はどこにもなかった
「ジリエラはアレで人気者じゃからのぅ」
「もっと決闘を申し込む者が出ると思ったのじゃが」
「流石に一番手がグルンガストでは後が続かぬの」
「つまらぬ」
頬を膨らませ椅子に深く腰掛けるバステト
決闘をツマミに飲みたかったのだろうか?
「じゃがアレではリグレットが強すぎてアル坊の実力を認められん者もおるやも知れぬな」
バステトの言は一理有る
ざっと会場を見渡すとやはり不満そうな男共の姿がチラホラ見える
「ジンってそんなに人気なの?」
「当たり前じゃ」
「妾の戦友にして大戦の大英雄」
「400年もの間その美貌を保ち容姿も剣技も皆の憧れそのものじゃ」
「じゃがジリエラは一夜を共にする事はあっても結婚の申し出は一度も受け入れたことが無い」
「獣人族は結婚と離婚には寛容だって聞いた事があるけど本当にそうなの?」
「そうじゃな」
「妾の民達にとって離婚や再婚は大した事ではない」
「共に暮らすかどうか程度の認識じゃ」
「じゃから婚姻の決闘で得た花嫁が他の者に奪われるなんて事も昔はあった」
「えっ?」
「それって花嫁はモノ扱いされてるってこと?」
「いいやそうではない」
「より強い相手と結ばれるのは獣人にとって誉れじゃ」
「決闘を受けるかどうかの決定権は指名された側にある」
「その場で決闘を受けると言うことは不満があるか負けぬ自負があると言うこと」
「結婚したとて決闘を受け妻を守るのも夫の勤めじゃからな」
「まぁ申し込む方も野暮な真似はしてはならぬと言う不文律はあるのじゃがな」
獣人社会における武力はそれだけ大事と言うことか
「でもそれだと決闘代理人が強すぎると納得出来ない人が出るってことよね?」
「そうじゃ」
「じゃが人脈もその者の力量の内」
「強き者が理由もなく弱気者に加担したりはせぬ」
「それに決闘代理人は縁者にしか許されぬ」
「今回はリグレットじゃからジリエラの縁者として認められるのじゃ」
決闘も終わり肩を組んで笑い合う2人を見ながらワインを飲むバステト
「おや?」
「アルベルトの方でも問題が発生しているみたいね?」
遠くを見やるとアルベルトの前にドレスを着た数人の女性が詰め寄っているのが分かる
「これ」
「あの者達はどうしたのじゃ?」
「はい」
「バステト様」
「ミルカ公爵令嬢を筆頭にアルベルト様へ抗議なさっておられるのです」
傍に控えていた従事長が静かに応えた
「あぁあの者達か」
「あの朴念仁め」
「娘達に道理を通さずジリエラに決闘を持ち掛けたな?」
「バステト様」
「それはどう言うことですか?」
バステトの言葉にシンシアが聞き返す
「実はな」
「婚礼の決闘は最近行われておらぬ古い伝統なのじゃ」
「じゃが貴族として皆作法は周知しておる」
「それで?」
「この決闘」
「元々は親許から花嫁を拐ってくる儀式なんじゃが・・・・・」
「実はな」
「花嫁が花婿を奪うことも出来るのじゃ」
「・・・・・・・・・」
「獣人らしいと言って良いのかしら?」
「そうじゃの」
「有る意味獣人らしい」
「そして多くの獣人族は重婚に寛容で群婚もある」
「群婚???」
「そうじゃ」
「元々獣人族は一夫多妻も多夫一妻も認めておる」
「じゃから正妻に認められれば妻として迎え入れられるわけじゃし強い女は男を侍らすことも出来る」
「それってもしかして」
「結婚式の最中でもそう言う決闘があり得るってこと?」
「まあそう言うことも有るわの」
「じゃがアルベルトの坊やは外界に出て冒険者をやっておった故に外界の愛の形に感化されておる」
「じゃからな」
「ちと考えが固いんじゃ」
バステトがワインを飲み干すと従事長がワインを注いだ
「つまり」
「アルベルトは複数の女性に言い寄られていたのに袖にしてジンに婚姻の決闘を申し込んだと?」
「袖かw」
「本人はちゃんと断ったつもりなのじゃろう」
「じゃが複数婚が認められておるのに他の娘を娶らんのは納得できぬ者も多かろ」
つまりは正妻の座は譲るが2人目3人目の妻として一緒に結婚したいと
そう言うことか
「それはなんとも」
「男としては羨ましいのう」
「なんじゃ?」
「リグレットがその気なら妻を娶らんか」
「何ならこの場で妾が選んでやろうか?」
ニタリと笑うバステトの申し出を慌てて断るリグル
「ちっ違うっ」
「そんなつもりではないわい!」
「ワシは一般的な意見をじゃなぁ・・・」
しどろもどろになり否定するリグル
明らかにからかわれているだけのようだが少し違和感を感じた
「確かにリグレット殿が妻を娶りこの地に定住してくれるなら・・・・・」
「立候補する娘達も沢山おるじゃろうw」
「さっきの決闘を見てお主を見つめる娘も一人や二人では無いぞ?」
ニヤニヤと笑いながらリグルを肘で小突くグルンガスト
「よせやい」
「お主の方こそ何人かのご婦人が熱い視線を送っておるぞ?」
「それこそ冗談じゃろうw」
笑いながら辺りを見回したグルンガストの動きがある場所で止まる
とある婦人と目が合ったのだが相手の女性が慌てて目を反らした
「ほらのw」
「お主もまだ捨てたものではないなw」
豪快に笑うリグルにグルンガストは戸惑いを隠せなかった
ー・ー
「バステト様」
「何とかして下さいっ!」
4人の女性に詰め寄られアルベルトは逃げ出して助けを求めてきた
「別に・・・・・」
「私は2番目3番目がいても気にしないが?」
後から追ってきていたジンは微笑みながらアルベルトに応えた
だが言葉の何処かに棘を感じずにはいられない
「だっっっ!」
「だから私は2番目も3番目も要りませんっ!」
「ジリエラだけで良いと言っているのに誰も聞いてくれないんですっ!」
アルベルトは跪きバステトに懇願し始めた
余程切実なのだろう
「ちょっとアルベルト様っ!」
「バステト様に泣きつくなんて卑怯ですっ!」
「バステト様!」
「私達もアルベルト様を敬愛しているのです」
「直ぐにとは申しませんが私達もアルベルト様と添い遂げとうございます」
「どうか御慈悲を・・・・」
両膝をついて願う娘達
カオスだ・・・・・
修羅場と言うよりカオスだ
何を思ったのかチラリを私を見るバステト
女神が仲裁に入ったところで蟠りは残ると言うことか
なら・・・・・・
「お嬢さん達?」
「失礼ですが私のアルベルトとはどう言ったご関係で?」
「ジリエラ様だからと大人しく身を引くと決めましたのに・・・・」
我ながら嫌らしい物言いではあるが目を細め見下すように言い放つ
その瞬間アルベルトとジンの目が真ん丸に見開かれた
「あっっっ」
「貴女は何なのですか?」
「コモン人が獣人の貴族と結婚を望むのですか?」
「悪いかしら?」
「でもジリエラ様は強く人柄も宜しく美しいお方」
「アルベルトが私を望まない以上身を引くのは私の矜持です」
「ですが貴女方が結婚を望むのであれば2人目の座は私の物です」
静かに進み出て女性達の前に立ちはだかった
恐いのでシンシアの方は見ない事にする
「アルベルトはモテるのぅ」
「どうじゃ?」
「このアリエル嬢は南方の守護者ナハトを助けてくれた恩人じゃ」
「優れた武力を持っておる」
「その者が身を引くと言っておるのじゃからそなた等も考え直してはどうじゃ?」
「納得出来ませんっ!」
「ジリエラ様は分かります」
「強く気高く美しいですから」
「ですが降って湧いたコモン人になどっ!」
「ならば決闘かや?」
「望む所で有りますっ!」
「誰か私に剣をっ!!」
おかしな事になってきた
だがたぶんコレがバステトの筋書きなのだろう
その顔に満足気な笑みがこぼれている
対照的にシンシアの機嫌は限界突破しそうな雰囲気だった
「ありがと」
「準備は宜しいかしら?」
私はレイピアを受け取るとベルトの左側に吊るした
「フンッ」
「私はミルカ公爵の娘」
「エルサリア・ガートルード・エリアノス・ミルカ」
「私は無名の旅人」
「アリエル・フォン・イルシュタント」
「両者構え」
従事長の合図に剣を抜いて胸の前に掲げた
「貴女」
「それは男性の作法よ?」
さっき見たジンを真似したのだがどうやら間違っていたらしい
エルサリアは右手で剣を翻し目の前で十字を切って見せると切っ先を目の前の地面に突き立てた
右手を柄頭に置くと軽く膝を曲げ左手でスカートをつまみ上げながら会釈する
わたしもそれを真似て礼をした
「始めっ!」
従事長の掛け声に跳ね上がるように両者の剣が翻る
キィンッ!
ジャギイッ!
跳ね上げられた切っ先はそのまま突きへと変わり襲い掛かる
それを私は剣の腹を滑らせるようにいなしながら間合いを詰めて鍔迫り合いに持ち込む
「中々やるじゃない」
「貴女こそ」
エルサリアは軽く微笑みながら応えるとバックステップで距離をとり素早い連撃を放つ
ギンッ
ギキキキキキンッ
ギンッキシャッ!
速さだけならばさっきのリグルとグルンガストよりも速い
だが2人の斬撃は一撃で首を飛ばす威力があったのに対しエルサリアの剣にはそこまでの重みが無い
剣の軌跡が日の光を反射して花の花弁のように煌めく
「クッ!」
「私のスピードについてこられるなんて!」
「人間のクセに中々やりますわね」
「あーら」
「そわなお喋りしてる余裕有るのかしら?」
それまで受け手に回っていたが剣を受けずに躱した
エルサリアの剣が弧を描き空を斬る
パパンッ!!
カラァンカラカランッ!
「まだ続けますか?」
私はエルサリアの攻撃に合わせ右へと回り込んだ
その瞬間彼女の両腕をレイピアの腹で強打し剣を落とさせたのだ
「なっっっ」
「何が起きたの???」
「みっ見えなかった」
「私は・・・・・・」
「私はミスなんかしていない」
呆然と立ち尽くすエルサリア
彼女は暫く呆然と自分の両手を見詰めていたが差し出された手に気付いて顔を上げる
「これでお互いあんな男の事綺麗に忘れましょ?」
私の笑顔に彼女も応えるとその手をしっかりと握り締めたのだった




