決闘
「庭でBBQと言うのは実に久し振りじゃ」
「と言うよりもこの世界でBBQをやると言うのは初めてではないかの?」
「バステト様」
「BBQとはなんですかにゃ?」
「私も初めて聞く言葉にゃのですが」
「ふむ」
「確かにこの世界でBBQをやろうだ等と考えた者はおらぬのう」
「ワシの知る限り野外で料理しながら酒を飲む等野営以外ではした事が無い」
「そうね」
「野外でのパーティーだと料理を持ち込むかシェフなんかの料理番がいるものね」
「こうやって好きな物を好きなように調理して食べるなんてしないわね」
「野営だと独りでもない限り炊事当番が全員の食事を作りますからね」
「そもそも料理しながら食べるのが目的の行為事態が記憶に無いです」
「野営でキャンプファイアを囲んで食事をする時もこんな豪華な食材を用意したりしないもんね」
「祭りなんかだと似たようなことはするかな?」
バステトの発したBBQと言う言葉に皆が思い思いの事を話し始めた
魔物のいるこの世界ではそもそも野外でBBQ等やろうと言う者はいないだろう
魔物や野獣を呼びかねないからだ
「まぁ昼食にはちと豪華すぎじゃな」
「じゃがBBQは豪華過ぎるくらいでないとのぅ」
バステトは上機嫌でワインを飲み干した
私達は芝生に囲まれた東屋を占拠しストレージから取り出した大型のBBQコンロやピザ窯を設置して好きなように焼いて食べていた
食材はストレージから出した物の他に館の使用人達が色々と揃えてくれた物を焼いている
「獣神様」
「こちらは新酒のワインと今朝作りましたシェブールチーズに御座います」
「うむ」
「気が利くの」
「妾への献上品確かに受け取った」
「ソチとソナタの家族に幸あらんことを」
「こっ光栄でありますっ!」
「ご祝福頂けるなど夢のようですっ!」
「ありがとうございます!!」
執事長と思われる初老らしきその男は来る時こそ気取った仕草で執事全としていたが帰りは同じ方の手と足が同時に出てしまいぎこちなくなっていた
「気を遣わせてしまったのぅ」
「じゃがこの国の民ならば妾の祝福なぞ当たり前の事であろうに」
「直接お会い出来ることこそ一生に一度有るか無いかの幸福ですのにゃ」
「それをお声までかけて貰い祝福までされたとなるとあの者の一生の宝物ですにゃ」
フェリシアの言う通りバステトはこの国の生きる神様なのだ
平民にとっては雲の上の存在でしかない
それが今この庭で寛ぎ酒を煽り肉を食む
遠巻きに見ている使用人達も推しのアイドルを見るのと同じ気持ちなのだろう
「でもねぇ」
「遠巻きに見られるのも居心地悪いのよね」
「そうか?」
「まぁ妾は神じゃから見られるのには馴れておるが・・・」
「気になるようなら止めさせようや」
合図しようとしたバステトを私は止めた
「違うのよ」
「見られるのが嫌なんじゃなくてね?」
「遠巻きに見るくらいなら一緒に食べれば良いのにって・・・・」
「そう言うことか」
「アリエルは変わっておるの」
「じゃがそう言う考え方」
「妾は嫌いではないな」
使用人達を呼ぶため手を上げようとした時
にわかに使用人達が動き始めた
「先触れー!!」
「決闘だー!!」
「総員支度に取り掛かれ!!」
「決闘だー!!」
一人の使用人が慌ただしく叫びながら走り回っている
「そう言えばこの中庭って・・・・」
「そうじゃな」
「決闘場でもあるのぅ」
しれっとバステトが答えてくれたが手にした皿を置く様子は無い
それどころか東屋を出て決闘場の前のベンチへ移動してしまった
「どうやら観戦する類いの決闘らしいわね」
「いやはや決闘か」
「アルベルトも古風なものじゃの」
「どれ」
「ワシ等も観戦に行くとしようか」
我々が向かおうとすると使用人達が慌ただしく観客席を作ってくれていた
バステトの座るベンチにも日除けのパラソルが立てられ小さなテーブルまで置かれている
「これから始まるのは何かの儀式?」
「それともショーかしら?」
さりげなくバステトの隣にシンシアと共に座る
リグルの呟きから察するにこれは通過儀礼的な決闘なのだろう
使用人達も慌ただしく走り回ってはいるものの鬼気迫ると言う感じはなく寧ろ楽しそうだ
ザッ
ザカッ
ザッ
ザカッ
暫くすると規則正しい足音をたてながら館の方から騎士が2列縦隊で歩いて来た
右手に旗の結わえられた槍を掲げ、左腕には伯爵家の紋章が刻まれた儀礼用の楯を構えて歩く姿は荘厳でいかにも大切な儀式を司っているのが伝わってくる
ザッ
ザカッ
ザッ
ザカッ
ゆっくりと歩調を合わせて歩く姿は何処と無く花魁道中のようにも見える
2列目と3列目の騎士は槍ではなく剣と楯を掲げ同じく膝を曲げずゆっくりと行進して来た
「あれ?」
「3列目の騎士達の持ってる楯」
「伯爵家の紋章じゃ無いわね」
「アレはの」
「ファルスカイン家の紋章よ」
「ファルスカイン・・・・・って」
「もしかして」
「そうじゃ」
「ジリエラの家の紋章じゃ」
「本来ならファルスカイン家の敷地でやるのが良いのじゃがな」
「ファルスカイン家は事実上滅亡しておるでの」
「嫁に来たジリエラを除いてな」
そう言えばジンの家は邪毒龍の襲撃により滅ぼされその復讐に駆られ討伐隊に入りリグルと出会ったんだったな
バステトの声色は哀しそうに聞こえたがその眼差しは逆に嬉しそうに見えた
「うむ」
「古き慣わしに従い受ける側であるジンが先に決闘場に入ってきたの」
「綺麗な鎧ね」
「装甲の施された純白の戦闘儀礼服か」
「まさかボンネットスカートにハイヒールで戦うの?」
「それで戦うのは流石ジンと言えば良いのかなんなのか・・・・」
「ハンデキャップなのかしら?」
「アレは妾が預かっておったジリエラの第一礼装じゃ」
「あのドレスを身に纏うジリエラを再び見ることになるとわの」
ゆっくりと歩くジンの腰には装飾された細身の長剣が下げられており左手には紋章の施された楯を携えている
決闘場の中央に到達したジンは踵を返し決闘の相手を待ち構えた
「続いてアルベルトが来るぞ」
続いて現れた伯爵は黒いスーツを着て楯を携えただけの姿で鎧は身に付けていなかった
「ねぇリグル」
「なんであの2人は決闘なんか始めちゃったわけ?」
「さっきは膝枕とかして良い雰囲気に見えたんだけど・・・・・」
「それはなシンシア」
「・・・・・・・・」
説明しかけたリグルはバステトの視線に気づき話すのを止めた
「まぁ」
「黙って見守ってやってくれ」
リグルの態度に釈然としないまでも誰も止めないどころか楽しんでいる風でもある
シンシアは違和感を感じながらも見届けようと心に決めたようだ
「これよりグリムワース伯爵アルベルトの申し入れにより決闘を執り行う」
「此度の決闘は我等が女神バステト様の御前で執り行うものである」
「双方禍根の無いよう全力で当たるように」
「双方我等が女神に礼」
伯爵は足を半歩下げると右手を胸の前に当てお辞儀をした
ジンは両手でスカート左右をつまみ上げ持ち上げながら膝を曲げて礼をする
2人の間には司祭が立っており儀礼様式に則り決闘の進行を司っていた
その司祭が2人に問い掛ける
「ファルスカイン伯爵婦人ジリエラ」
「決闘の申し入れに応えるや否や」
司祭が儀礼様式に則りジンに問い掛ける
「我が一族」
「我が家名にかけて決闘を申し受ける」
「グリムワース伯爵」
「果し状をこれへ」
司祭の言葉に懐から取り出した書状を司祭へと差し出す
司祭はそれを両手で受け取り使用人が用意した台へと置いた
「・・・・・・」
「双方構え」
ガチャッ
2人が同時に楯を構えてレイピアを抜いた
正面を向き切っ先を下へ向けるジンに対し伯爵は半身となり剣を立てて構える
全面投影面積を減らす事で攻撃を避けやすくすると同時に積極的な攻撃が出来るよう半身に構えた伯爵
対して即応性を高めるため敢えて自然体で迎え撃つジン
静かに右手を肩の高さに上げた司祭は一呼吸置いて真上へと跳ね上げた
チャリッ
「フッ!!」
短く吐き出された息を掻き消すかのように一気に間合いを積めた伯爵
そこから繰り出された鋭い突きをジンは難なく躱した
「シャッッ!!」
薙ぎ気味に引いた剣を翻し袈裟に斬りかかる伯爵
が
防御の為引き上げられたジンの楯に当たる寸前剣は軌道を変え回転斬りを放つ伯爵
シャリンッ!
斬撃をレイピアで逸らし返す刀で突きかかるジン
バッ!!
喉元を狙った一撃を紙一重で躱した伯爵のシャツの襟元をレイピアが貫通する
「ハッッ!!」
体当たりで突っ込むのかと思った瞬間伯爵は後ろへと飛び退いた
一方のジンは楯で胴体を覆うように構えていた
あれでは伯爵が体当たりしたところで体勢を崩すことも出来ないだろう
だが
何か違和感を感じる
キィン
シャオッ
シュキィィン
カッッ
ヒュオンッ
目まぐるしく繰り返される攻防に思わず見る方にも力が入る
それ程までに2人の剣撃は鋭く素早かった
だが特筆すべきはジンの体捌きである
クルリを弧を描き舞うようにステップを踏む度にスカートが広がり裾に取り付けられた装甲が牙を剥く
あのドレスの装甲はエッジが刃のように鋭く攻防一体の作りになっているのだ
伯爵は次第に傷を負いスーツに血が滲む
「ジンの方が余裕あるわね」
「でも何故2人とも楯を構えられた瞬間攻撃を逸らすのかしら?」
「まるで楯を傷付けてはいけないように見えるわ」
流石シンシアと言うべきか
激しい攻防戦の最中2人とも楯に剣を当てないよう立ち居振る舞っている
「ふおっふおっ」
「アルベルトの奴やりおるわい」
「じゃが今のままでは決め手に欠けるのぅ」
「そうじゃな」
「リグルの言う通りジリエラ相手にここまでようやったと褒めてやりたいところじゃが・・・・・」
「それではこの決闘」
「終われぬよのぅ?」
あのドレスや紋章入りの楯を持参していた事と言い今の意味深な台詞と言い
バステトはこうなると分かっていたのだろう
「それにしても凄いわね」
「一撃一撃が並みの剣士なら即死レベルなのにここまで躱しながら斬り結べるなんて・・・・」
「アレでアルベルトの得意武器は剣ではないのじゃから末恐ろしいわい」
「ちょっとリグル」
「冗談は止めてよ」
「リグルの言う通りじゃ」
「あ奴の得意な攻撃は無手じゃ」
「絶爪の二つ名は伊達ではないからの」
バステトの言葉に絶句してしまうシンシア
話している間も2人は斬り結んでいたが不意に伯爵が間合いを取って息を整えた
「反撃が始まるのかな?」
ジンが呼吸を整え両手を広げた
ゆっくりと肩の高さまで上げると同時に半身になって構えた
伯爵と違い楯を前に構えレイピアの切っ先を伯爵に向ける守勢の構えだ
「フッ」
ジンが仕掛ける前に伯爵が動いた
短く息を吐いた瞬間
間合いを詰めながら左腕に装着された楯を投げ捨てたのだ
これには構えていたジンも思わず目を見開き一瞬出遅れた
「ゼアッッ!!」
突進しながら左手に剣を持ち変えた伯爵は右腕で振るうのと違わぬ斬撃を放つ
キィッッ!!
ジンは剣で防ぐしか術が無く伯爵の剣を後方へいなすように受け流した
ガッッ!!
伯爵は流された剣を手放し左手でジンの拳を剣ごと掴む
同時に右手でジンの楯を掴むとそのまま楯をもぎ取り投げ捨てた
「アルお前!!」
伯爵は楯を捨てられ驚愕するジンの腰に手を回し抱き寄せた
「これで・・・・・」
「文句無いな?」
ジンは答える変わりに唇をそっと重ねた
ー・ー
「アルベルト伯爵」
「見事であったぞ」
「ジリエラ」
「これで気は済んだかや?」
ジンは小さく頷くと伯爵の腕に手を回した
「いやはや」
「婚姻の決闘なんぞ見るのはかれこれ何百年ぶりかのう?」
「婚姻の決闘って何?」
「皆が知らぬのは仕方あるまい」
「妾が教えてやろう」
バステトの説明によると獣人族は力による序列が顕著であり獣人の娘ならば誰しも強い相手と結ばれる事を望む
そしてこの決闘儀式は元々子離れ出来ない貴族の父親が求婚者に自らとの決闘により婚姻を勝ち取れと始めたのが起源らしい
以来獣人貴族の間で好まれるようになったが長い奴隷時代で潰えてしまった習慣なのだとか
「ところでなんで2人は楯を持っているのにそれに打ち付けるのを嫌がってたの?」
「それわの」
「あの楯が互いの家の象徴じゃからじゃよ」
「互いの家名に傷を付けない戦いが最も尊いとされておるでの」
「え?」
「ちょっと待って」
「楯が家の象徴って事は・・・」
「途中で楯を捨てた行為ってもしかして?」
「アリエルは察しが良いの」
「楯を傷付けぬよう戦うのは互いの家の名誉を守ると言うことじゃ」
「つまり楯を傷付けると言うことは破談を意味する」
「そして楯を捨てる行為は・・・・」
「家を捨ててでも添い遂げる」
「そう言う事じゃ」
「アレには流石のジリエラも困惑したようじゃなw」
「婚姻の決闘は自らの力量を示し剣か楯を奪えば終了じゃ」
「そもそも本人同士が戦うこと等殆ど無い」
「伯爵家を捨ててでも結婚を申し込む・・・か」
「そんな意思表示されたらイチコロよねw」
「シンシアの言う通りね」
「そもそもこの決闘を受ける時点でほぼOKって事だもんw」
「普通は家族の年長の男子が受けるモノじゃ」
「いかにファルスカイン家にジンしかおらぬとしても決闘代理人を立てる方法もあるからのぅ」
「これでハッキリしたのは夫婦喧嘩が始まって下手に間に入ると死人が出ると言うことですね」
「ラルク」
「それは恐いから言わないであげてw」
「でも獣人最強の夫婦になるんじゃない?」
「そうじゃのう」
「妾の知る限り夫婦共々英雄と言うのは長らく聞いたことが無い」
「間違いなく2人の子供は強い戦士となるじゃろう」
「何にしても2人ともようやった」
「褒めて使わす」
「お褒めに預かり恐悦至極に存じます」
「これからも2人揃ってバステト様にお仕えいたします」
「ふむ」
「それは良い」
「じゃがのぅ・・・・・・」
「分かっておるよな?」
「アルベルト」
伯爵は1歩前に出て跪くと右の拳を地面に突き立て頭を垂れた
「ははっ!」
「咄嗟の事とは言え伯爵家を蔑ろにしたのは事実」
「如何様な処罰も受ける所存で御座います」
「バステト様」
「アルベルトは決してグリムワース伯爵家を軽んじたわけでもバステト様に背くつもりも御座いません」
「どうか御寛大な処置をお願い申し上げます」
ジンはスカートの裾を広げ膝をつくと両手を広げ頭を垂れる
それを見ていたバステトは無表情で何を考えているのか読めない
「ふむ」
「とは言えかような事を見過ごすのはのぅ・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「そうじゃ」
「アルベルト」
「お主の罰を決めた」
「何なりと」
更に頭を下げて待つ伯爵
「ソナタは今後ジリエラに従ってはならぬ」
「良いな?」
「は?」
「ハハッ!!」
「仰せのままに」
一瞬呆けたような声をあげたが直ぐ様返事を返す伯爵
「その上でじゃ」
「家名を投げ捨てたアルベルトには今後200年の懲役を命ず」
「グリムワース伯爵代理としてこの地を治めよ」
「良いな?」
「はぁっ?」
「もっ申し訳ございません取り乱してしまいました」
「にっ200年ですか」
「私の寿命が持てば良いのですが・・・」
「心配要らぬわ」
「延命の祝福ぐらい容易いものよ」
「今後200年の間汝は歳を取ること罷り成らぬ」
「心して励め」
「それは婚礼の祝いとしてくれてやるわ」
「ハッ!」
「有り難き幸せに存じます」
「グリムワース伯爵の称号を剥奪され代理に落とされた上200年の懲役じゃのに嬉しいのかや?」
「変わった男よのぅw」
懲役200年分の寿命の追加か
流石神と言ったところか
良い見立てだ
「200年・・・・・・」
「ですか」
「アリエル」
「私の呪いを解いてくれたのは有り難いのだが・・・・・」
「私の寿命はどれくらい残っているのだろうか?」
「見た目は変わらず老いや衰退も無い」
「体調的には呪いを受けたあの頃と変わらぬようじゃが・・・・」
ジンは呪いが解けて自分の時間が再び動き始めたのを感じていた
だがそれは寿命を得たと言うこと
無限の牢獄から抜け出した今
伴侶となるアルベルトが200年もの間歳を取らないと言うのは恐ろしく感じたのだろう
かつて自分が感じた親しい者を看取ると言う苦しみ
バステトはそれをアルベルトに負わせる事になるのだろうか?
それは確かに伯爵家を捨てた者への罰としては正しいのかもしれない
だがその残酷さはジン自身が身をもって知っているのだから
「そうね」
「貴女の呪いを解くためにその呪いのエネルギーを全て魔力へと変換する術式を埋め込んだのよね・・・・・」
「どう言う・・・・・」
「事ですか?」
「呪いとはかけられた者の生命エネルギーを怨念を媒介にして引きずり出して効果を引き出すの」
「ジンの場合は衰弱死ね」
「えっ?」
「不死の呪いでは無かったのですか???」
「まぁ簡単に言うと邪毒龍の呪いとバステトとミリアの祝福が三つ巴の相互作用で結果的に永続的な不死になってたのよ」
「だからその連鎖を利用して呪いに呪いを上書きする事で衰弱死の効果を打ち消したの」
「えっ?」
「呪いは消えたのですよね?」
「そうよ」
「プロセスとして呪いを追加することで対消滅させたの」
「ミリアの祝福は邪毒龍の力を流用して強化する魔法回路だったから邪毒龍の呪いが消えた時点で効果が切れるかな」
「妾の祝福は残っておる」
「超回復と状態異常耐性じゃ」
「怪我や病に強く持久力もある」
事も無げに言い放ったバステトの顔には悪戯っ子のように笑みが浮かんでいた
「えっ?」
「不死の呪いが解けたからてっきり反動があるかと・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「そもそも不死の呪いでは無かったのでしたね」
「えっ?」
「ということは・・・・・・」
「呪いを魔力化した影響で今ジンのMPはオーバープール状態」
「ジンは獣人でコモン人よりも耐性が有るの上に不死の期間が長くて耐性ついてたのとバステトの祝福のお陰で魔族化せずに済んでるけどね」
「本当なら既に魔族になっててもおかしくないレベルなの」
「そっ」
「それは困る」
「だから魔力を効率良く循環させて祝福を強化させてるのよ」
「ただバステトの祝福だけだと消化しきれないから別の疑似祝福を付与して・・・・・・」
「なんか今さらっと不穏な事言わなかった?」
シンシアのツッコミに我に返った
「まぁ」
「魔族化を防ぐ副作用で寿命は長くなってると思う」
「そうなんですね」
「・・・・・・・・」
「バステト様はそれを知った上でアルベルトの罰を?」
「さぁの」
「何の事じゃ?」
「妾は伯爵家を蔑ろにした事は一生分償わねばならぬと思っただけじゃ」
「途中で改心が足りぬようなら容赦無く刑を増やしてやる」
「夫婦揃って我が子達が天寿を全うするのを見届けるが良い」
バステトは不貞腐れたようにそっぽを向いたが照れ隠しなのは誰の目にも明らかだった




