お洒落は難しい
「ただいまです」
「お帰りなさいアリエル」
応接間へ通されるとヴァレンシアは例の椅子に座っていた
左肘を付いて足を組む姿はなんとも美しく艶かしい
流石エルフと言ったところか
「貴女の部屋を用意したから暫くそこを使って」
「ディナーまでは自由にしてて良いわよ」
「ありがとう」
「服とか買うお金有る?」
「普通の服はリグル商会では扱ってないけど隣の仕立て屋で作っても良いんじゃないかな?」
「普通の服ねぇ」
とりあえず用意して貰った自室で服を作る
材料は狼猿の毛皮
創造魔法を駆使し腹の柔らかい部分を鞣して革のベストを作る
素肌にベスト1枚を羽織りマントで隠すと言うのはいかにも変態のようだが今は仕立て屋とリグル商会に行ければそれで良い
カーゴパンツはこの世界では存在しないのだがマントで隠すから良しとしよう
マスクを装着してフードを目深に被ると怪しい人完成である
「仕立て屋まで行こうかな」
部屋を出て裏口へ向かう
人の多いロビーは通りたくない
裏口を抜けて裏庭へ出るとそこには何台かの馬車が停められており馬屋では世話係が忙しそうに働いていた
裏路地を一気に走り抜けリグル商会の裏庭についた
この町、実は裏通りの方が広い
それは物流を担う馬車が往来する為だ
なので馬車が優先であり商店は裏口があるだけなので一般人は通らない
コンコン
「誰ですか?ここは裏口なんで表に回ってください」
奥で商品の手入れをしていたマイロがやってきた
「リグルに用があるから通して貰える?」
「親方ぁー」
「裏口からお客さんなんですけどー」
小走りに中へ入っていくマイロ
ここは水場のようで井戸があり傍らの大きな桶に水が張ってある
排水溝が裏に伸びているところを見ると桶は常設してあるようだ
マイロはここで綺麗に水拭きした瓶と表の瓶を取り替えたり荷受けした品物を拭きあげたりしたいるのだろう
他にも油の入った瓶等手入れに必要な物が置いてあり壁にかけてある店内図をみると毎日ローテーションで手入れしているのがわかる
「あぁ」
「アンタか」
「こっちへ来い」
ぶっきらぼうに手招きするリグルに従い奥へと進む
「マイロ」
「使いに出てくれ」
リグルは小さな黒板に何かを書き出しマイロに渡すとそれを持ったマイロは小走りに店を出ていく
「今日はグレッグが店番しとるからこれで暫くは裏手に人はおらん」
「さて」
「ラックで良いのか?」
「今はアリエルと名乗る事にしてる」
「やはりなw」
「ギルドの連中がラックを探しとったからな」
「何でも調査隊を派遣したダンジョンがもぬけの殻だったそうじゃ」
リグルがニヤニヤ笑いながら話を始めた
「どうせお前さんじゃろ?」
「まあね・・・」
「そう言うわけで暫くラックの鎧を着て出歩けなくなったから服が欲しい」
「そのマント姿じゃ魔法使いか暗殺者じゃな」
「仕立て屋は隣じゃがこっちに来たのは何か理由があるんじゃろ?」
「一通り裁縫は出来るから素材が欲しい」
「何がいるんじゃ?」
「木綿と絹を分けて欲しい」
「後は金を少し・・・」
マントを脱ぐとリグルの目がカッと見開き食い入るように見つめてくる
「どうかしたのか?」
「そ・・・・・」
「それは・・・・」
「まさか狼猿のベストか???」
「そうだ」
「そっそれを持っていたから前の毛皮を売ろうとしたのか・・・」
「しかし・・・」
「あぁ ・・・・」
「なんとも良い色合いじゃ・・・」
「欲しいのか?」
「売ってくれるのか?!」
食い気味で詰め寄ってきた
余程欲しいのだろう
ベストを脱ぐとリグルに渡した
「サイズは合うのか?」
自分用に仕立てたので胸回りがかなり大きめだったのだがリグルは年の割に胸板が厚く違和感がない
「こっこれと交換でどうじゃ?」
「それで良いなら私は構わない」
「そっそうか!!」
「なら待っとれ!!」
大急ぎで奥へと消えたリグルが戻ってきた時には綿と絹の反物を両手に抱えていた
「こんなに?」
「流石にリグルが損してるんじゃないのか?」
「いやいやいや」
「そんな事はない」
「狼猿単体ならワシでも狩れる」
「じゃが奴等は群れか狼を連れとることが多い」
「そうなればソロ狩りは無理じゃしパーティーを組めば取り分は減る」
「それにじゃ」
「この腹革は戦闘で傷が付きやすい部位じゃからのこんな綺麗にベストを作れるなんて滅多に無い事なんじゃよ」
「それがお前さんの持ち込んだ毛皮が相場より高値で取引される理由じゃ」
実は腹開きした狼猿の毛皮を創造魔法で繋ぎ直して1枚革に仕立て上げたのだ
縫い目を少なくした方が着心地が良いと言う理由なのだが考えてみれば1枚革で仕立てるのは高級品しかない
しかし実際は伸び方や動きやすさを考慮して何枚かを張り合わせるのだが・・・
そう言う作り方がめんどくさかったのだ
「この仕立てじゃと金貨10枚・・・いやもっとするかもしれん」
「本当に良いのか?」
「構わないが絹の反物も結構するんじゃないのか?」
「1反で金貨10枚じゃ」
「やっぱりするじゃないか」
「じゃが絹も綿も金を出せば手に入る」
「このベストはそうはいかん」
「そんな物か?」
「そんな物じゃよ」
こうして綿と絹を手に入れたので早速帰って服を作る
とは言え奇抜なデザインも何なので少し町を見て回ろうか・・・
ー・ー
流石に暗殺者と言われた格好では町を歩けない
別にお店を回るわけではないので気配を殺しつつ屋根づたいに観察して回る
冒険者たちは如何にもファンタジーな服装である
露出は少なめ
まぁそうなのだろう
露出が高いと言うことは怪我も増えやすいと言うことなのだから
かと思いきや少数だが露出の高い人達もいた
それだけ強いのか?
はたまた町から出ないのか?
わからないが多種多様である事は確かだ
しかし
全体的にボタンが少いように感じる
貫頭衣や布を身体に巻き付けている人も少くない
高級な衣服にはボタンが付いているのだが・・・
やはりコストの問題なのだろうか?
リグルの店で革鎧を見た時もボタンではなく革紐で縛る感じだった
ベルトもほぼ革の帯で結ぶものばかり
衣服の文化はそれほど発達していない印象を受ける
危うくボタン付きのブラウスを作ってしまうところだった
細かいところは今夜ヴァレンシアに聞いてみよう
ー・ー
自室に戻りテーブルの反物を置く
マントを脱いで椅子の背にかけてカラフェからグラスに水を注ぐ
「美味し」
「まだ冷たいわね」
定期的に交換してくれているのだろうか?
ヴァレンシアがお金持ちなのだと痛感する
「汗かいたしシャワーでも浴びようかな・・・」
常春と言うのは案外暑い
夏ほどではないが運動すると程よく汗をかく
〈清潔〉の魔法も作ってはいるが折角部屋に浴室が有るのだから水で汗を流そう
蛇口から水が出るのが有難い
汗を流しさっぱりしたところで服を作ろう
ベットルームに魔力結界を張り魔力を満たす
反物を掴んで部屋に入ると鎖帷子とカーゴパンツを脱いで楽になる
この身体になってからと言うもの別段疲れを感じたりはしないのだが下着姿になると解放感があって良い
「どんな服にしようかな?」
「貫頭衣だと動いたら横からはみ出しそうだしなぁ」
「やっぱりボタン欲しいな」
ファスナーは流石に文明チートだろうからホックを使うことにする
どうせブラには使っているし問題ないだろう
鎖帷子の上に着るのを前提にすると結構ゴツゴツした印象になりそうだ
かと言ってこの鎖帷子は自信作
これを着ないのは勿体無い
とりあえずは綿で白いシャツを作る
ボタン無しの前あわせで紐で止める仕様だ
重ねて着るためのビスチェも作る
少し硬くても良いので狼猿の革を黒く染めて使うことにした
「村娘的にはスカートが一般的みたいだけど・・・」
悩んだが結局ガウチョを作ることにした
かなり余裕を持たせた作りなので一見してスカートに見えなくもない
色はグラスグリーン
裾には絹で花の刺繍を施す
ここまで作っておいて何だが・・・
だいぶスイスやドイツの民族衣裳の影響を受けているな
まぁ町用の服装だし良いか
勢いでもう一着作ることにした
綿も絹も反物でくれたのだが・・・
この反物はかなり太い
ここまで作っているがまだ半分にもなっていない
と言っても楯を小さく作り替え余った素材を糸に錬成し直して織り込んでいるので純粋に反物だけを使っているわけでも無いのだが
創造魔法フル活用である
この世界では存在しないはずの魔法なのでバレると良くないのだろうが・・・
まぁ構いはしない
どうせ女神に楯突いてる時点でアウトなんだから今さら気にすることでもない
メインは絹
それに楯を作り替えた際に出た端材のミスリルを織り込み光沢を増すと同時に強度を増していく
生地を織り直す際に薔薇の地模様を織り込み仕立ててゆく
ナイトドレスのように艶やかで際どいスリットを入れて露出を高めに
全体はワインのように紅く
スリットには紫に染めた絹糸の組み紐をクロスさせる
肩をだして胸元も大きく開く
こんな服どこに着ていくのやら・・・
完全に脱線してしまった
とりあえず完成したので残りの材料と一緒に収納魔法でしまっておく
ミスリルの鎖帷子を着込むとその上から先に作った方の服を着る
そう言えば靴を作ってなかった
今までは全身甲冑のグリーブだったので気にしていなかったのだが・・・
流石にこの服にグリーブはダメか
狼猿の足の部分の革を切り取る
足の裏の皮は分厚く柔らかい
これをソールに使って靴を仕立ててみる
綿と組み合わせて簡単な紐靴を仕立ててみるがやはり現代っぽくてダメな気がするが・・・
それでも完成したし勿体無いのでこれを履くことにしよう
ー・ー
「履き心地は良いね」
狼猿のソールはグリップも強く走った時の衝撃も少ない
思ったよりも良い仕上がりだ
綿のガウチョパンツも動きやすくて良い
実験的に魔力を結晶化させる事に成功した
それを飴のように舐めてみるとどうなのか?
早速試してみると案外良いかもしれない
少しずつ染み出してくる魔力が口の中で広がり呼吸が楽になる
仮面やマスクの方が楽ではあるが顔を隠すと何かと面倒な事もある
衛兵には止められるしお店でも入店拒否されたりと散々だ
いっそ顔だけ魔力結界で包むか?
けれどそれはそれで結界の魔力が悪目立ちしてしまう
急場は結晶で凌げるので暫くはこの手でいくしかないか・・・
でも結晶舐めてると物を食べられない
何にしても対策は必要なようだ
木陰亭に戻ると中はお客で賑わっていた
「裏口に回れば良かったな・・・」
足早に部屋へ向かおうとすると呼び止められてしまった
「もしそちらのお嬢様」
「その御召し物はどちらで仕立てられたのですか?」
品の良い初老の男性が軽く会釈をしながら私の前に立ち塞がる
少し離れた所にドレスを着たご婦人がソファーに座ったままこちらを見ていた
どうやらあのご婦人の執事のようだ
「私が縫いました」
「私の部族では自分の物は自分で縫うのです」
とりあえず口から出任せであしらおう
「私の御主人様が是非近くで拝見したいと仰っておいでなのですがお願い出来ますかな?」
ムムム
食い下がってくるなよ
「私、人を待たせておりますのでお断りいたします」
「後でお時間は頂けませんでしょうか?」
尚も食い下がる執事
「本日は時間が御座いませんので悪しからず」
「失礼!」
サッと翻り執事を躱すと足早にロビーを通り抜け自室へと逃げ込んだ
流石にここまで追っては来ないだろう
胸を撫で下ろし椅子に腰掛ける
カラフェからグラスに水を注ぎ少し口に含む
「あ・・・」
「レモン水じゃん」
少しぬるめではあるが爽やかなレモン水が汗ばむ身体に染み渡る
カッ・・・カッ
「どちら様で?」
「ヴァレンシア様がお呼びです」
「りょーかい」
何の用だろう?
夕食にはまだ少し時間があるはず・・・
案内されるままにヴァレンシアの待つ応接室に入る
「あらまぁ」
「そりゃ目立つわね」
開口一番ヴァレンシアは呆れた風に言い放った
「何がですか?」
「その緑色」
「この地方ではそのグラスグリーンはまだ染料が見付かってないのよ」
「えっ?そうなの???」
「そんな服でロビーから入ってきたらそりゃ問い合わせ殺到するわ」
ヴァレンシアは片手を額にあてて項垂れる
「あー」
「ごめんなさい」
「色の事まで考えてなかったわ」
「しかもガウチョパンツに結び目をサイドに持ってきた紐靴ね」
「私も欲しいわそのセット」
頬杖を付きながらジト目で言うヴァレンシア
ヴァレンシア相手なら作ってあげるのもやぶさかではない
「はぁ・・・」
「そう言う服は私も若い頃散々試作したんだけどどうにも上手く行かなかったんだよね」
「色は染め直した方が良さそうだね」
「もう手遅れよ」
「何処でその生地手に入れたの?」
「んー」
「リグル商会?」
「そんなの扱ってるわけ無いじゃない」
「でも嘘はついてないって事は自分で染めたって事よね?」
別に嘘は言ってない
生地その物はリグル商会で手に入れたのだから
「緑色って大抵色がくすんじゃうの」
「どうやったらそれだけ鮮やかに染められるのか教えて貰えないかしら?」
「・・・・・・・・」
「鉱物系顔料で孔雀石を粉にして使う」
「孔雀石?」
「絵の具に使う顔料よね・・・」
まさか創造魔法まで作ったとは言えずシラを切り通す
「詳しくは企業秘密・・・」
「はぁ・・・」
「また怪しげなスキルか付与魔法使ったってことね?」
「でもどうしましょう・・・」
「問い合わせ来てるの常連の太客なのよ」
「はぁぁぁぁ・・・・・・・・」
「リグルに言って綿の反物用意させてください」
「私が染めますがこれっきりです」
「恩にきるわ」
「直ぐに用意させるね」
部屋に戻ると直ぐ様自分のガウチョパンツを藍色に染めた
カッカッカッ
「どうぞー」
ノッカーの音に答えると綿の反物を担いだマイロとリグルが入ってきた
続いてヴァレンシアと従業員の男が2人反物を背負っている
「どれだけ染めさせる気?」
部屋に入ったヴァレンシアが目を見開くのがわかる
1時間ぐらいしか経っていないのに私の履いているガウチョの色が変わっていたからだ
流石に従業員達の前で指摘するのは避けたようだが・・・
「貴女ソレどうやってるの?」
私とヴァレンシアのリグルの3人だけになった瞬間食い付いてきた
「魔法ですよ」
この展開はわかりきっていたので生活魔法で〈染色〉の魔法を作成しておいた
在庫を全て持ってきたのだろう
反物は20本ある
それを見て私はゲンナリしてしまった
テーブルの並べられた反物を順に染めていく
本当は全部一瞬で出来るのだがそこはソレ
苦労したていで恩を売る作戦である
「流石に20本はやりすぎだよ・・・」
「もう今日は何もしたくない」
椅子にもたれてグッタリして見せる
と言っても演技なのだが
「ホントに魔法で染めれるんだ・・・」
「流石にこれって教えて貰えないよね?」
「ユニークスキルなんで無理です」
「貴女これだけで財を成せるわよ?」
「それがどれだけ面倒で危険かはヴァレンシアの方が良くご存じでしょ?」
「そうね」
「ところで」
「なんですかぁ?」
「私の目は誤魔化せないよ?」
「その生地!!」
「地模様入ってるじゃない!!」
「何の事かなぁ?」
「その生地・・・」
「本当は何処で手に入れたの?」
逃げた方が良いのか・・・?
けれどこの2人から逃げ続けるのも大変な気がする
今逃げても騎士団やギルドに手配をかけたりはしないだろうが今後の事を考えると仲違いはしたくない
そもそも私はこの2人には恩を感じているし好意を持っている
だからこそ話したくないこともあるのだが・・・
「それ」
「聞いたら後戻りは出来ないよ?」
「たぶん予想より遥かに闇が深いけど」
「それでも聞く?」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「その言葉で予想がついてしまったわ」
「ワシもじゃ」
「伊達に長生きしとらんでの」
「ちと考えさせてくれ・・・」
リグルは背もたれに身体を預け髭を撫でながら目を瞑った
ヴァレンシアは不機嫌そうに椅子に座り足を組んでこちらを睨んでいる
テーブルのワインに手を伸ばし魔法でコルクを抜くとそのまま口を付けて一気に半分程飲んだ
私は2人に分かるように隔絶結界を張り薄めに魔力を満たす
2人ならこれで誰にも知られることがないと分かるだろう
「ここまで来て後戻りは出来るなんて初めから思ってないのよ」
「元々この国の女神には恩恵も受けてないしね」
そう言うとヴァレンシアは残りのワインを飲み干した
「ワシはの」
「既に女神への信仰は失くしとる」
「それは400年前魔龍を討伐した時からじゃ」
「奴の血を浴び不死となってしもうた・・・」
「4年に1度しか歳を取らず本当は斬られても喰われても死ねぬのじゃ」
「リグル私もソレ初耳なんだけど」
ヴァレンシアの目が完全に据わっている
「すまんの」
「流石に誰にも話せんかった・・・」
「不死になってからじゃ」
「女神の声が聞こえんようになったのは」
「この国の転生者なら誰しも教会で祈りを捧げれば女神と対話できる」
「しかしワシの声は届かず女神の声も聞こえぬ」
「ワシの〈鑑定〉は実はユニークスキルでの」
「本来の恩恵スキルは〈超回復〉じゃ」
「今ワシには恩恵が無い」
「お前さん・・・・・」
「女神に復讐するつもりじゃな?」
「うわぁぁぁ・・・・・」
「予想してたよりリグルの闇の方が深いわ」
「今この部屋は外の世界と隔離されてるから女神すら感知することは出来ないでしょうね」
収納魔法を使い絹と銀の残りを取り出す
「空間魔法・・・」
「もうなに見ても驚かないわw」
笑いながら2本目を開けるヴァレンシア
目を輝かせて見つめてくるリグル
銀に魔力を集中させ圧縮する
暫くすると銀は蒼く輝き初め次第にエメラルドのような緑へと変化していった
「なんと・・・」
「ミスリル銀を作り出せるのか!」
次に絹とミスリルを糸に錬成しながら深い紫色に染め上げ輪違いの地模様を織り込みながら布を織ってゆく
更にそれを今ヴァレンシアが着ている服と全く同じ形に仕立ててゆく
違うところは裾にミスリルを多目に使い強度を上げた事ぐらいか
30分程の作業を終え仕上がった服をヴァレンシアに手渡す
「私に・・・?」
続けてリグルには狼猿の革の残りを使ってこの世界っぽいデザインの靴を作ってあげた
「・・・・・・・・」
「賄賂なんか無くても誰にも話さんよ」
リグルは言葉と裏腹に嬉しそうに靴を履き替えていた
「良い履き心地じゃな」
「うむ」
「これは創造魔法よね・・・」
「存在しない筈の魔法」
「収納魔法も使っとったな」
「そりゃ女神から呪われるわ」
「私の仮説が正しければ神々も転生者の成れの果て」
「条件次第で神にも悪魔にもなるんじゃないか?」
「ただ・・・」
「何?」
「神になる条件は必ずしも善人である必要は無い」
「この世界には日本神話のように多種多様な神々の伝承があるからきっとそうなのでしょうね」
憮然とした表情でヴァレンシアが呟くとリグルも目を伏せる
「あ」
「もう日が暮れてるじゃない」
「リグルも食べて帰るでしょ?」
「用意させるわ」
ヴァレンシアは壁に歩いていき合図の呼び鈴を鳴らした
「もしかして今はこの呼び鈴も聞こえないとか?」
「大丈夫よw」
「さっき解除したから」
テーブルから反物をのけて部屋の隅に積み上げる
程なく料理が運ばれてきた
時間通りに作って待ってくれていたのだ






