表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/147

実演販売員

「旨いなコレ」

「何て言うんだ?」

「値段と見た目で敬遠してたがこれはまた・・・」

「茹でて食べたことしかなかったけど焼いたほうが好きかも?」


焼いた肉の薫りは凄いものであっという間に人集りは大きくなりやがて食べたいと言う者が出始めた


と言っても焼いてやる義理はない


しかしそれは勿体無いので即席の屋台をでっち上げる


「食べたい人は並んで」

「空き箱貰ってきてテーブル代わりに積んでちょうだい!」

「誰か酒屋に走って樽で買ってきて!」


屋台その物はソーセージ屋の店主の物を使い土系魔法で地面を隆起させ上に穴の空いた焼き窯を作り出す


ソコに店主が護身用に持っていた剣を橋渡しにしてソーセージを吊るしていた鍵付きの鎖を垂らして完成

熱源はサービスで〈加熱付与(ヒートエンチャント)〉をかけてやった


オーダーが入ればソーセージを吊るして焼き上げると言うものだ

聞けば今朝スモークした物だと言うので皮目が焼けて温まれば良いだろう


「吊るす時は熱いけど我慢してね」

「焼きすぎたら脂が落ちちゃって味が落ちるから気を付けるのよ?」


一通り店主にレクチャーすると仲間のところで自分達のを焼いて食べ始めた


窯を作って僅か30分程で周りの飲食店を捲き込んだ宴会場が出来上がっていた


「アレって即席のタンドリー窯かしら?」

「アレで焼くのも美味しそうね」


「生地が有ればナンドックが作れるからきっと飛ぶように売れるんじゃない?」


「今日の出来事は伝説になると思うなー」


シンシアが頬杖をつきながらニヤニヤと笑っていた


「まさか?」


「おいお前達!」

「ここで何をしている!!」

「営業許可は取ってあるのか?」

「勝手に道のど真ん中に窯を作るんじゃない!!」


「あらら?」

「無粋な騎士様のご登場か・・・・」


慌てふためく店主に横からフォローを入れる


「店主さんはオーダーをお願い」

「騎士さんの相手は私が変わるわ」


「お前は誰だ?」

「この違法酒場を始めたのはお前だな?」


「なーにを言ってるのかしら?」

「ここの店主は食べ物を売る許可を得てるのよね?」


「そうだ」

「だがこのバカ騒ぎは何だ?」


「それはね」


パリッ

モグモグモグ

ングッ


「この実演販売してるソーセージが激ウマだからよ」


「話ながら食べるな!!」

「お前はふざけてるのか?!」


「ふざけてるのは騎士様の方でしょ?」

「こんな美味しいものを冷めさせるなんてあり得ないじゃない」


ガブリ

モシャモシャモシャ

ゴクゴクゴクッ


骨付きソーセージに噛りつき一気にエールを流し込む


「プハァー!」

「おかわり♪」


「おかわりじゃない!」

「だいたいそんな変な物が旨いわけ無いだろう!」


「んまっ」

「失礼な人ね」

「ソコまで旨いからこんなになってんじゃないのさ」


チラリと店主を見る

戸惑う店主に目配せして窯を見た


小さく頷いた店主は蓋を開け焼きたてのソーセージを窯から引き上げる


焼けた脂が湯気となり辺りを香ばしい薫りが支配した


その場にいた全員が生唾を飲み込む


「とっ」

「とにかく違法な営業は直ぐにやめろ!」

「だいたいそんな物が旨いわけが・・・・・」


「なら食べてみてはいかが?」

「この骨付きは1本銀貨4枚」

「奢って差し上げますわよ?」


吊り下げられていた骨付きソーセージを1本手に取り騎士へと差し出す


「そんな得たいの知れんもの食うか!」


「知らずに否定する事こそ愚かなのでは?」

「一度食べればわかる筈」

「逆に・・・・・・」

「食べなければこの騒動の原因はわからないのでは?」


眼前に突き付けられた骨付きソーセージは湯気をあげながら朝日を照り返す


香ばしい薫りが胃を刺激してたまらない


グゥゥゥ・・・・・・


「食べるのが怖いの?」


「こっ怖いわけあるか!!」


騎士は私の手から骨付きソーセージを奪い取ると暫く見つめていた

店主はさりげなくお供である4人の衛兵に1本ずつ手渡していく


ほぼ全員が固唾を飲み込み騎士を注目する中衛兵達は自分の手の中のソーセージと騎士を交互に見比べもどかしそうにしていた


「ええいっ!!」


パジュッ


「あっっつ!!!」

「何だこれはっっ!!」


慌ててはなしたソーセージには騎士の歯形が付いていた

そしてソコから滴り落ちる肉汁が鎧を濡らしキラリと反射する


それを皆が勿体なさそうに見ていた


「あっ熱いではないか」

「危うく火傷するところであったわ」


そう言いながらもその手はしっかりと骨を握って離さない

更に溢れる肉汁がポタリポタリと地面を濡らす


「フンッ」


憮然とした態度で口に運ぶ騎士

その後ろでは堰を切ったように食べる衛兵達


1本食べ終わる頃にはその顔に笑みが溢れていた


ー・ー


「ゴホンッ」

「とっとにかくだ」

「道を塞ぐのは止めろ」

「ここで騒ぐと周りの店にも迷惑がかかるだろう?」


勝ったな


騎士達の表情に思わずドヤ顔で仁王立ちしてしまった


「まっまぁ気持ちは分かるがほどほどにな」

「くれぐれも周りに迷惑をかけるなよ?」


それだけ言い残すと騎士達は去っていった


大方この広場の外れで細々とやっていた店が大繁盛して客を奪われた店が通報でもしたのだろう


とは言えお隣の野菜売りの女性もあまり嬉しくは無さそうだ

反対側の果物売りのオジサンはまだ売れているようだが野菜は伸び悩んでいる


エールやワインの小売りをしているお陰で急遽カップや皿を買い求める客が出来て近くの工芸品売りの店主達はホクホク顔になっていた


「さてと」


隣で縮こまっている少女を見る


野菜は丁寧に洗って土が落とされ木桶に積まれている

買い置きよりも直ぐに使えるようにとの配慮だろう


ならば


「あっ!!!」

「ごめんなさい!!」

「〈冷却(コールド)〉の魔法が暴発してしまったわ!!」

「冷えてしまった野菜は私が責任持って買い取ります!」


わざとらしい大声に皆が振り向く


慌てふためく少女の店で胡瓜やトマトを包んで貰っていると周りの冒険者達が群がってきた


「俺にもその冷えたトマトと胡瓜を分けてくれ!!」

「アツアツのソーセージと合わせたらきっと最高だ!!」

「私にも分けて!」

「ちょうどあっさりしたものが食べたかったのよ!」


私のわざとらしい演技にグラムが乗っかると周りの冒険者達も一斉に群がり冷たく冷えた野菜を買い漁った


あっという間に野菜はトマトと胡瓜が無くなりニンジンとトウモロコシにキャベツが残った


私は少女にウィンクして更にキャベツを買う

まだギリギリ残っていたソーセージを買ってキャベツでくるんで食べ始める


「おいっ」

「アンタ今さらそれは無いだろ?!」

「肉をキャベツで巻いて食べるなんて!!」


目ざとい冒険者が同じように真似をする


あっという間にキャベツも売りきれた


しかしソーセージも売り切れてしまい焼くものがなくなってしまった


「もうこれで今日は仕舞いだな」

「お陰で大繁盛だ」


「貴方」

「この足で店を出せば大繁盛間違いないと思うんだけど?」


「よしてくれ」

「俺はソーセージを作るのには自信があるが店はやれる自信がない」


「そう」

「なら今夜シュテッヒパルムシュロスに来なさいな」

「フロントでアリエルに呼ばれたって言えば中に入れるようにしておくから」

「ソーセージも忘れず持ってくるのよ?」


「わかった」

「必ず持って行く」


店仕舞いする男を尻目に隣の少女を手招きする

トウモロコシと人参をロープで括り窯に吊るした


「これで10分したら美味しく焼けるわ」

「早く用意なさい」


少女は目を見開き何度も頷くと急いで野菜をロープで縛り始める


「なぁアンタ」

「今度は何をやるんだい?」


ソーセージが無くなり立ち去った者はたくさんいたが一部の飲んだくれはそのまま残っていた


ソーセージ屋の店主には箱の片付けをお願いしているので彼等が帰るまでは居残りになるだろう


だが


「野菜を低温で焼いたら甘くなるって知ってる?」


「何だそれ?」

「確かに人参なんかは火を通すと甘くなるが・・・・」

「まさか今その窯で?」


話す内に時間がたち野菜が焼き上がる


焼き目こそ付いていないが艶やかに蒸し上がったトウモロコシは間違いなく美味しいだろう


ゾブリッ


「ングング」

「あっまぁーーーーい」

「このトウモロコシ最高だよ!」

「こっちの人参も甘くて美味しいわ」


甘いと言う言葉に冒険者達の目が光る


冒険者は仕事柄疲れやストレスに晒される

故に酒と甘味には目が無い


時折塩を振り掛けながらトウモロコシを食べる私を見てあれよあれよと言う間に列が出来野菜は完売してしまった


胃袋を満たし食べ物がなくなると自然に人は去り私達だけが残された


「ありがとうございますありがとうございます」

「お陰さまで完売できました!」


少女に何度も礼を言われたがこちらも美味しいものを食べれたのでお礼を言われるのもむず痒い


窯を元の地面に戻すと再び朝日に目を向けた


「もう10時くらいかしら」


出店も減って代わりにお昼の屋台が支度を始めていた


ー・ー


「それでぇ」

「アリエルちゃん?」

「ソーセージ屋さんをホテルに呼んでどうするのかなぁ?」

「食べちゃうの?」


「シンシアが雇いたいんじゃないかなって」


ニヤニヤと笑うシンシアに真顔で答えた


「まぁ」

「良くわかってるわね」

「夜のお楽しみってことで」


誘ってはみたものの結局はシンシア頼み


珈琲もソーセージも好きだろうから御抱えにすると決めつけていたところはある


勝手に呼びつけて雇わせようとしているのにシンシアは何故か嬉しそうだった


ー・ー


「リグル商会は工房も持っているのね」


「此処等は開拓すれば豊かな穀倉地になるからな」

「ロスガルンへの要所でもあるし防具の需要も高い」

「ここで工房をやらぬのは損じゃろう?」


「って事はもしかして・・・・・?」


「グラムの持ち込んだ外皮や毛皮は全て言い値で買い取ったわ」

「ちょうどドルジュで稼いだ金貨が有ったから苦もなく買えたわい」


満足そうに髭を撫でるリグル


グラムはグラムで満足気に笑っていた


「それって」

「結局グラムは輸送料貰っただけで私達に支払った金貨は全て回収できたってことかな?」


「そうじゃな」

「まさかリグルが全て買うとは思わなんだが・・・・・・」

「予定通り大儲けじゃw」


「そしてその金貨でリグル商会との提携店を出店する」

「リグルの方が丸儲け?」


「ガッハッハッ!」

「流石アリエル殿は分かっておられる」


「じゃがワシの独り勝ちでは無いぞ?」

「ちゃんとグラムも儲かる」

「・・・・・これからな」


こうなるなら初めから運賃払えば良いのに


「じゃあリグルの所で工房借りようかしら」

「ちょうど状態の良い貴重な素材が入荷してるはずだし」


「それはアリエル」

「リグルを熊にするの?」


シンシアの問いに微笑みで返したのだった


ー・ー


カチャカチャカチャ

コンコンコン

カリカリカリカリ


「よしっ」

「出来た」


リグルが着ていた鎧に鎧熊の素材を継ぎ足した鎧はかなり大型で威圧感も増している


元々は魔魚人(ダゴルク)の鱗革をふんだんに使った全身甲冑(フルメイル)狼猿(ウルフエイプ)の革を重ねて補強していた


その狼猿の部分に今度は鎧熊(アーマードベア)の甲皮を加工して取り付ける


「これはまた・・・・・」

「なんと言うか荘厳じゃなぁ」


「魔魚人の青と鎧熊の黒のコントラストが綺麗ね」


狼猿で補強された部分はそのまま緩衝材として残しその上から鎧熊の甲皮を追加する事で高い防御力と耐熱性を獲得した


外からは狼猿の素材は見えなくなってしまったので傍目にはほぼ鎧熊だろう


「もっと鎧熊みたいな見た目になるかと思ってたにゃ」


「そうですね」

「遠目で見ると金属鎧に見えます」


シュネーとクロエの評判も悪くない


「だいぶ重そうですね」

「リグルでもなければちょっと装備できないかもです」


大きな鎧熊の毛や甲皮は魔鋼が含まれる


成長の過程で毛が多くの鉄分を含み金属化しその魔力に当てられて魔鋼となるのだ


その為討伐難易度は非常に高く1頭でも小さな町を壊滅させてしまう程危険な魔物でありその素材は非常に高値で取引される


「しかしこれはまた・・・・・」

「豪華な鎧に仕上がったのぅ」


「魔魚人と狼猿でもいい加減鋼かなのに鎧熊までって・・・・・」

「リグルは体格が良いからこれ着てたらハッタリだけでもやっていけそうねw」


「確かに」

「この鎧を見て襲い掛かる野盗はおらんじゃろうな」


深い青の鱗を持つ魔魚人の革


それはしなやかで水や冷気の耐性を持つが討伐が難しくどうしても傷だらけになったり弱点属性である炎を使われその耐性を落とす


一般に流通する鱗革は鎧として使うには大きさが物足りない

リグルのように全身甲冑にするには莫大な費用がかかる


しかも継ぎ接ぎは強度が落ちるため楯や部分鎧等に使われる


この青い甲冑の上に鎧熊の艶見を帯びた黒い甲皮を部分鎧として身に付ける


この鎧熊は大きく甲皮も魔鋼として変質していた


ソコに魔力付与した金や宝石で装飾しているため一国の親衛隊でも身に付けることが叶わない豪華な仕上がりになっていた


「ちと豪華すぎんか?」


「全部魔力付与してあるんだから使いこなしてよね」

「それでもあアノ鎧に比べたら見劣りするんだから」


「まぁアレは特別じゃて」


「それにしても後ろ姿はまるで鎧熊ですね」

「体毛が無いからかろうじて人間に見えますが・・・・・・」


「これでフルフェイスなんか被れば魔族と間違われそうじゃなw」


グラムの言葉に一同は笑ったのだった


ー・ー


「さぁて」

「ワシはそろそろ店の方に戻るかの」

「準備も出来た頃じゃろうて」


「そう」

「じゃあグラムも元気でね」

「二度目のお別れだけどw」


「案外近いうちに合うやも知れんな」

「その時はまた酒を酌み交わそう」


最後にグラムはリグルと拳をぶつけ合うと笑みを交わし去っていった


「私達は明日ぐらいに発つ?」


「そうね」

「なら今夜はみんなで過ごせる最後の夜ね」


「シンシア様」

「その言い方は死亡フラグみたいで嫌です」


「ごめんねクロエ」

「シュネーもそんな顔しないで」

「明日からは頼むわよ?」


「はいですにゃ・・・・・」


クロエとシュネーはこの街で別れることになっていた


シエラ皇国はエルフの国


ホテルヴァレンシアの系列店も少なく彼女達の管轄である中央都からも遠い

流石に店を離れている期間が長くなりすぎるのだ

2人はこの街からホテルヴァレンシアの物流便に乗り央都へ帰る


名残惜しいがこればかりは仕方がない


「今日は送別会ね」

「夕方までは自由時間にしましょうか」


夕飯の時間まで2時間くらいある

私は皆と別れて独りになる


しかし行くあてはない


「もう一度工房借りようかしらね」


工房に行くと職人達が出迎えてくれた


彼等は最初会長権限で渋々場所を貸してくれたに過ぎない


しかしあの鎧の加工と仕上がりを目の当たりにして態度は一変していた


「こっ今度はどんなご用件で?」

「工房なら何時でも使ってくださって結構です」


職人のくせに腰が低いとは思うが悪意があるとは思えない

この職長も名工と呼べるだけの技術がある


「少しだけ工房を借りるわ」

「作りたいものが出来たのよ」


そう言って借り賃として金貨を差し出す


「お代なんて滅相もない!」

「少しだけ横から見させていただければ十分です」


その見られるのが嫌なんだけどなぁ・・・


ともかく場所は借りられた


午後の鍛冶仕事の最中だったらしく2人が赤熱した金属を金床にハンマーを振るっている


「さてと」

「何を作ろうかな?」


金床から少し離れたテーブルの材料と道具を置いた

炉の中に母材を一つ放り込み待つ間に考える


元から短剣を作るのは決めていたので考えているのはその形である


「決めた」


耐火(レジストファイア)〉を唱え衣服を守ると炉に〈加熱(ヒート)〉をかけ温度を上げる

そしてヤットコで赤く熱された塊を取り出し金床に添える


ガンゴンガン

ガンガンガン


ハンマーで素早く叩いて形を整えると直ぐ様火にくべる


ガンガガン

ガンゴンガンガガン


赤熱させては取り出し折り曲げ伸ばしていく事8回

今度は真ん中で折って2つに別けた


「さてと」

「ここからが忙しいわね」


時間差で母材を加熱している間に小休憩


赤熱した材料を叩いて薄く引き伸ばす

黒くなると入れ替えてを繰り返す


ガンギンガンギンガン

ガンギンガンギンギン


目に求まらぬ速さで出しては打ち据え加熱しては打ち据える


あっという間に厚みが整い形作る準備が出来た


「ぉお・・・・・」

「バカっ!静かにしろ!」


後ろで漏れる嘆息と簡単の声


それを諌める親方の声が一番うるさいが良しとしよう


いかにレジストしていても汗一つかかないのは流石におかしい


なので汗を偽装しつつ上着を脱いで下着姿をさらけ出す


別の意味で声があがるがまぁ気にしない

お邪魔しているのだからサービスサービスw


先程よりも小さな塊を炉にくべると更に加速して刃の形を整えていく


一つは片刃で刃の薄い短刀

これはクロエにあげるもので料理がしやすいように作っている


一つは両刃の曲刀

こちらはシュネーにあげるもので料理よりも捌きやすいように作っている


「刀身はこんなものかな」


本来1本6時間以上かかる鍛造を1時間半程で済ませる

それは加熱に魔法を使い機械並みの速度で叩くから出来ること


本来の鍛冶仕事ではあり得ない速度である


炉にくべた塊が赤く輝き始めるとヤットコで取り出し一気に叩き細く長い棒状にしていく


3本の細い棒を作り上げると加熱して先程作った刀身に溶接する


「こんなもんか」

「ではこれを借りますね」


工房の隅に置いてあった折り曲げ機と楔を手にする

折り曲げ機と言っても片方を固定するだけの物で人力で曲げていく物だ


溶接した側を固定して3本の棒を捻りあげていく


すると金属の縄のような物が出来上がった


「あと少しだけど間に合うかなぁ?」


既に陽は陰り刻一刻と夜が忍び寄る


金属の縄を加熱して溶接すると切り分けもう一つの刀身にも同じく溶接して捻りあげる


再び加熱して細かく形を整えていく


クロエの方は握りやすい樽型に人差し指をかける突起を作る


シュネーの方は全体を湾曲させ指と掌に沿う形に作りこちらも人差し指をかける突起を作った


「概ね完成かな」


どちらも一体型の鍔を備えた短刀であまり飾り気は無い

柄から刀身迄溶接してあるため頑丈で壊れる心配は無いだろう


再び加熱して焼き入れを行うと刃は黒くくすんでいた


「仕上げますかね」


袋から砥石を取り出すと一心不乱に砥始める

それこそ機械のようなあり得ない速度で一次研ぎを終わらせるとそのまま第2段階へ


シャシャシャシャシャシャッ

シャシャシャシャシャシャッ

シャシャシャシャシャシャッ


カチャッ


シャシャシャシャシャシャッ

シャシャシャシャシャシャッ

シャシャシャシャシャシャッ


目にも止まらぬ速さで砥始めると後ろで気分の悪そうな呻き声が聞こえてくる


きっと見すぎて目を回したのだろう


構わず砥ぎ続け5段階の角度を砥終わる頃には艶やかな刀身が露になる


「1本上がり」


クロエの短刀をテーブルに置くと続いてシュネーの曲刀を仕上げていく


湾曲した刀身は身体を大きく動かす必要がある

更に加速して砥出し一気に砥あげる


辺りが暗くなり始め最早一刻の猶予も無い


一心不乱に砥あげると陽は山の端に隠れてしまっていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ