表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/146

放浪者達

「本当にありがとうございます!!」

「この御恩は一生忘れません!!」


義体を手に入れたイプシロンはナイスミドルのおじさまになっていた


やはり女の子の人形のままと言うのは何かと問題なのだろう

元の身体は記念に置いておきたいとの事だったので私が強度強化の魔法を付与しておいた


「しかしイプシロン」

「本当にこの街に残っても良いのか?」

「その身体なれば自由に外の世界を旅することも出来ように」


「いえ」

「200年もの間ダンジョンを彷徨っていた私には外の世界は眩しすぎるのです」

「何れ時がたてば旅に出る事をお願いするやも知れませんが・・・・・」

「今は陛下とアリエル様への恩を返すため尽力させて頂きたく思います」


「そうか」

「感謝する」


イプシロンとクラートの感動の対面はイプシロンが緊張しすぎて哀れなほどだった


帰還の時間もあるのでさっさと義体を作りイプシロンに与えるとそこから感謝と感嘆の言葉が小一時間ほど続いてしまった


放っておいたら感謝と御恩の応酬で日が暮れかねないのでこのあたりで2人を放置する事にした


「アリエル様は今後どうされるのですか?」


「このダンジョンが危険だったから踏破しようかなって思ってたんだけど・・・」

「異常だったのは10階層までだったみたいね」

「この階層の魔物はそれ程強くなかったもの」


「それはアリエルだからでしょw」

「何にしても前の階層に比べると弱いのは確かよね」

「それでも中位のダンジョンに匹敵する強さはあるけど」


「なんで11階層から普通になったんだろ?」

「そう言えば第10階層もそんなに強くなかったのかな?」


「それはたぶん我々の影響だと思われます」

「アリエル様が立ち去られた後痕跡を調べていたのですが第9階層に融合した際にかなり多くの魔力と魔素を得る事が出来たようです」


「ほほぅ」

「あの状態は普通ではなかったわけか」

「結構魔素濃度が濃かったから普通の人間なら変異する可能性あったからね」


私の言葉を引き継ぐようにミシェルが言葉を繋ぐ


「その後の改造も含めてかなりの魔力と魔素を使用していますから・・・・」

「この先の階層はかなりの魔力と魔素を失っていると思います」


「それなら良かった」

「このダンジョンを踏破する必要は無くなったって事よね」


「じゃあこれで皆とはお別れになるのかしら?」


ダンジョンの踏破が必要無くなったと言う言葉にシンシアが反応した


「そうね・・・・・」

「取り敢えず早く帰還して探索隊を追い払わないとね」

「ミシェルは通信機の使い方覚えたよね?」


「はい」

「あの取り扱い説明書を読むのは大変でしたが・・・・・」

「一通りの機能の使い方は覚えました」


「よしよし」

「ならあの通信機を使えばいつでも私と会話出来るようになってるのには気付いたかな?」


「申し訳ありません」

「説明書を読んで使い方を覚えただけなのでまだ実際には使っていないのです」


「了解」

「取り敢えずアレでいつでも話が出来るのは覚えておいて」

「それからレーダーの使い方は分かったよね?」


「はい」

「アリエル様の現在地もちゃんと把握出来ます」


「OK」

「じゃあその2つを応用したらいつでも合流出来るわね」

「誰かに使い方を教えておいて」

「たぶん有事になるとミシェルは火器管制で忙しいだろうから」


「承知しました」

「火器管制の方はどうしましょう?」


「かなり魔力を使うからね」

「クラートとラインハルトに加えて何人かには教えるべきかな?」


「そうですね」

「操船方法もトレーニングモードの使い方とシュミレーター室の使い方も覚えましたので順次訓練していきます」


「うん」

「私達がいなくても大丈夫そうだね」

「今は封印してある機能も幾つかあるから有事の時は連絡して」

「状況に応じて解放するから」


「封印・・・・・・」

「ですか」

「どうも私が考えている以上にオーバースペックなようですね」


「一応神々に狙われた時の対策はしてあるのよ」

「でもそれは平和な時には無用の長物でしょう?」


「願わくばそのような事態には陥らないことを願っています」


「私も願ってるわ」


ー・ー


「さてと」

「そろそろ帰還しますかね」


「ちょっと長居しちゃったわね」

「それじゃあ皆さんお元気で!」

「ミーナも無理しちゃダメよ?」


シンシアが差し出した手をしっかりと握るミーナ

彼女をもう少し人間に近い身体に構成し直してあげたかったがそれは彼女に拒否された

今はまだ魔物だからこそ出来ることもあるだろうと


「イプシロンも元気でね」

「そうそう忘れるところだった」


私は中庭を横断してイプシロンの騎兵の脚に触れた

瞬時に3次元構成された魔方陣が展開し更に2次元構成の魔方陣が折り重なり発動する


「まぁこんなもんかな?」

「全身に対物理対魔法防御の魔法陣を付与しておいたわ」

「それとオマケに関節の最適化と強化もしておいたから」

「前より動かしやすくなっていると思う」


それからイプシロンに1本の巻物を手渡した


「これが関節の設計図」

「壊れたらミシェルに修理して貰いなさい」


「ありがとうございます」

「この御恩は・・・」


「忘れて良いから」

「私が物好きでやってるだけなんだから恩義にまで感じなくていいわよ」

「それとイプシロン」

「あの単眼にはこだわりがあるの?」


「いえ」

「俺の技術ではレンズが作れないんであの珠を使っているだけです」


「そう」

「なら・・・・・」


再び脚に触れると頭に魔方陣が描かれる

魔方陣が消えた後は単眼が3連レンズに変わっていた


「こっこれはっっ!!」

「正しくスコープ・・・」


「取り敢えず各々望遠と至近用広角と多用途の3種類装備してる」

「一眼でも可能なんだけどそれはお約束ってヤツで」

「使い方は体で覚えなさい」


イプシロンの言葉に被せるようにたたみかける

気持ちはわからなくもないけれど放っておくと話が長くなるだろう


「ありがとうございますっっ!」


「それはもう良いから」

「ちょっと遅くなっちゃったからもう行くね」


クラート達と握手を交わしミーナと軽くハグをして別れの挨拶を済ませると振り向かずヴァンデラーブルクを後にした


ー・ー


「アリエルって結構あっさり別れるよね?」

「やっぱり次にあった時恥ずかしいから?」


「別にそう言うんじゃないよ」

「生きていればまた会うこともあるだろうし2度と会わないかもしれない」

「転生前から何百何千と言う出会いと別れを経験してるから麻痺しちゃってるのかもね」


「惜しむ程の時間を共有していなかったと言うことですか?」


「そう言うのは時間じゃないと思う」

「数時間の出会いでも別れが惜しい時もある」

「でもそれを表に出しても辛くなるだけでしょ?」


「そう言うものですか・・・」


「少なくとも私はそうよ」

「まぁ」

「さっぱりしてる方が格好いい気もするしw」


「そっちが本音か?」

「男は背中で語るのが良いと言うのはいつの時代も変わらんものじゃなぁ」

「かっかっかっw」


リグルが意地悪そうに笑っている


だがこの老人が茶化して話を流す術を心得ているのだと最近思うようになった


聞きにくいこと

言いにくいこと


そう言う話題だと察した時は茶化して有耶無耶にすることが多い

これもリグルの年の功と言うヤツだろうか?


「お帰りなさいアリエルさん」

「今日はもしかして・・・・・」


話ながらダンジョンを出ると直ぐにガードナーが駆け寄ってきて期待に満ちた目を向けてくる


「やったわよ」

「第10階層を突破して第11階層まで行ってきたわ!!」


ガードナーの問い掛けにわざと大きな声で答えた


「うぉーーー!!」

「やったぜ!!」

「神よっっ!!」


私の声を聞き付けた冒険者達は雄叫びをあげ腕を突き上げ跳び跳ねたり抱き合ったりしている

ザイドスや神官職に至っては跪いて神に感謝の祈りを捧げていた


「良かった!」

「本当に・・・・・良かった」


涙ぐむガードナーが全員に明日の撤収を告げた


「もうこれ以上滞在しなくて済む」

「今夜は皆の労を労ってささやかではあるが宴にしよう」

「食料は帰りの分だけ置いておけば良い!!」

「だが酒は控えろよっ!」

「無事帰還するまでが探索だからなっっっ!!」


その後ガードナーから何度も何度も礼を言われ入れ替わり立ち替わり冒険者達が挨拶に来た


確かにこの難易度では彼等だけでは踏破を諦め他のクランに優先権を奪われていたかもしれない


しかしそのクランもただでは済むまい


複数のクランで甚大な被害が出れば街の力も衰える

そうなれば最早彼等のクランだけの問題では無くなってしまうだろう


「まさかこのような難易度の高いダンジョンを10階層までクリアしてしまわれるとわ」

「いやはや我々とは次元が違いますなぁ」


ガードナーを初め見知らぬクランメンバー達に囲まれて絡まれるのはあまり嬉しくない


踏破して疲れているからと早々に天幕へと向かったが彼等の宴は夜明けまで続いていた


ー・ー


「先発隊出発しました!!」

「よしっ!」

「総員撤収準備!!」

「こんなダンジョンからはとっととずらかるぞっっ!」


早朝から慌ただしく撤収を始めた探索隊のメンバー達

だが我々は天幕も借り物だしこれと言ってすべき事はない


「さてと」

「ガードナー、ザイドス」

「私達は先に出ますね」


「そんな」

「ゆっくりしていって下さい」

「昼までには馬車も出ますから」


「別に良いよ」

「私達は歩いて帰るわよ」

「元々旅程を止めてこの依頼を受けたんだし」

「早く報酬貰って街を出たいのよ」


「そう・・・・・」

「ですか」

「では残念ですがここでお別れですね」

「本当にありがとうございました」

「貴女達は命の恩人です」

「何かあれば遠慮無く言って下さい」


「また会うことがあったら宜しくね」

「それじゃあねー」


軽く手を振り街への帰途に付く


「総員手を止めー!!」

「恩人達に敬礼っ!!」


後ろから叫ぶガードナーの声に慌ただしく動いていた冒険者達の手が一斉に止まる


口々に感謝や称賛を叫ぶ声の中我々は足早に去っていった


ー・ー


「うへぇ」

「アレ以上一緒にいるとか拷問だわ」


「何だか大袈裟だったのぅ」

「じゃがワシ等が着くまでの被害を見れば納得と言えば納得かのぅ」


「ホントにアリエルはああ言う歓待とか苦手よねw」


「ああ言うのはホント勘弁して欲しいわ」

「ミリアに感謝のお祈りしてる奴とかいたからまた信仰心増えたんじゃない?」


「それはどうでしょう?」

「でもアリエルさんの人外の強さを見て神の使いと思う人もいるかもしれないですね」


「それは勘弁して」

「と言っても止められないよね」

「でもこんな事で敵に塩を送るなんて願い下げだわ」


「じゃがまぁ」

「彼等がアリエルを称賛するのも仕方ないことじゃろう」

「クランの威信がかかった新規ダンジョン攻略じゃからな」

「引くに引けず挑むにも絶望的な強さの魔物ばかり」

「命の恩人と思う者も少なくあるまいて」


新規ダンジョンの優先権とはそれ程重要なのか

クランメンバーが何人命を落としても優先権を欲するのは私から見れば異常だ


けれどこの世界ではそれだけダンジョンによる収益は無視できない事なのだろう


ー・ー


「ところでアリエル」

「来る時は馬車で2日の旅程じゃった」

「普通に考えれば途中で追い付かれるぞ?」


「別に」

「あのまま馬車に乗って帰るのは居心地悪いかなって」


「それは言えてるわね」

「あんなに英雄扱いされたんじゃあ落ち着かないもの」


「確かにシンシアの言う通り落ち着かんな」

「じゃがこのままじゃと何れ追い付かれるぞ?」


「んー」

飛行(フライ)の魔法は一般的じゃないんだよね?」


「そうね」

「それも長距離の移動手段として使える人はごく少数だと思うわ」


「この世界にテイマーはいるの?」


「テイマーはいますね」

「あまり戦闘向きではないと言うことで冒険者達からは良く思われていないイメージが有りますが商隊や伝令には重宝されています」


ラルクが説明してくれたがやはり高レベルの魔物を使役していない限りテイマーは探索や護衛系の依頼では敬遠されるようだ


「テイマーは使役する動物や魔物次第だもんね」

「でもまぁテイマーが一般的なら問題ないか」


「何が?」


「野生の馬か何か見付けたら一時的にテイムするのも有りかなって」


「なら私に任せてほしいにゃ」


そう言うとシュネーは少し口を尖らせた

声を発するわけではないのだがスースーと空気が抜ける音がする


それから暫く歩きながらもシュネーは何かを続けていた


ー・ー


ゴルルルルルル

グルルルル


「囲まれてるわね」


「待って下さいにゃ」


武器に手を掛ける皆を制止してシュネーが前に出る

暫くクンクンと鼻を鳴らした後道の真ん中にしゃがみこんだ


ガサッ

ガサガサッ


シュネーが屈みこんですぐ草を掻き分け1頭の草原豹(グラスパンサー)が出てきた


大きい


体長は3mを超えていた


薄い緑がかった体毛は今の時期の草原に良く合っていて見付けるのは難しいだろう

所々にある薄茶色の斑点が迷彩効果を高めている


「取引成立にゃ」

「ついてきてください」


草原豹に連れられ獣道をわけいって行く


街道からは離れてしまったが構わず草原を渡り遠くの森を目指していた


「何処に行くの?」


「彼女の群れに怪我してる子達がいるから治す代わりに送って貰えるのにゃ」


どうもさっきスースーやっていたのは犬笛のようなもので人間の可聴域を超えた音だったらしい


それで呼び寄せた草原豹と交渉したのだろう


シュネーやクロエには敢えて鑑定行為を行っていなかったのだがシュネーはテイマースキルを持っているようだ


森に入り暫く行くと小さな岩屋がありその洞の中を巣穴にしているようだ


「ん?」

「何だか良くない臭いがするねぇ」


「そうなのにゃ」

「彼女達にとって深刻な問題なのにゃ」


洞窟に近付くと微か出はあるが腐敗臭がした

そして洞窟の周りには幾つか獣が争ったような跡がある


「ここにゃ・・・・・」

「アリエルさま」

「治せますかにゃ・・・?」


すまなそうに耳を垂れさせたシュネー


その肩越しに巣穴を見ると門番のように2頭の草原豹がいた


「この臭い・・・・」

「傷口が化膿して壊死してるんじゃない?」


巣穴に入ると案の定右前肢が壊死した草原豹が横たわっていた


私が来たのに反応して頭を持ち上げ苦しそうに

しかし気丈に牙を剥いて威嚇してくる


ガゥ・・・・

ゴル

フスンスン


後ろから入ってきた別の草原豹が頭を垂れゆっくりと近付いていき横たわる草原豹に頭を擦り付ける


それで落ち着いたのは以後私を威嚇しなくなった


「これはマズイね」

「予想通り壊死してるじゃない」

「たぶん毒素が全身に回ってもう長くないね」


静かに近付いて腹に手を添える


草原豹は一瞬ビクンッと身体を強張らせたが何もしないのを感じてか徐々に力が抜けていく


「傷口を洗いたいところだけど」

「洗えば前肢は取れちゃうかな?」

「それでも元気に生きれるなら良いかもしれないけれどここは自然界だもんね・・・・」


横たわる草原豹の瞳を覗き込む


おそらくこの群れのボスなのだろう

他の豹に比べ年老いた印象がある

その瞳は力を失い後は死を待つだけなのだろう

何かを伝えるかのように私を見つめた後豹は

視線を外し静かに頭を横たえた


「もう覚悟は出来てるって事ね」

「でも貴女の子供達はそう思ってないみたいよ?」


解析が終わり方針を決めた

そして傍らの豹を右手で遠ざけると豹の女王と対峙した


「覚悟決めてるとこ悪いけど完全に治させて貰うからね」


復活(リザレクション)〉の魔法を唱え女王の傷を癒していく


他の治癒魔法では壊死してしまった部位までは治せない

自己治癒能力を高める魔法でも同じ


なので強制的に魔力を注入して欠損部位すらも復元するリザレクションを使うことにした


嫌な臭いを発していた前肢の傷口はブクブクと泡立ち始める


私は女王の身体を押さえようと前肢の付け根に右手を添えていたが女王は動かない


腐り果てた部位の復活は相当な痛みを伴うはずなのだが女王は必死に耐えていた


「ごめんね」

「術式始まる前に麻酔をかけたらビックリすると思ってかけなかったの」

「痛いよね」

「今麻酔を掛けるからもう少し我慢してね」


麻酔の魔法を唱えると見るまに女王から力が抜けていく


そして女王は施術中じっと私を見つめていた


ー・ー


「終わったわよ」

「他に患者はいない?」


「ありがとうございます!!」

「他の子達は軽傷だったので私達で手当てを済ませました」


「そう」

「それは良かった」


「やっぱり前肢はダメでしたか?」


シュネーの心配そうな言葉に答えるかのように女王が巣穴から出てきた


その毛並みは美しく陽光に煌めいている


「リザレクションの副作用で毛並み艶々になっちゃった」

「野生の狩人としてはダメよねw」


暖かい陽射しの中暫く眩しそうに太陽を見つめた後女王は群れの子達を見回した


そして私のもとに来ると両前肢を揃え頭を垂れた


「よしてよ」

「そう言うのは苦手なの」


私が嫌そうに右手をヒラヒラさせると女王は居直ってちょこんと座った


群れの女王とは思えない穏やかな表情で私を見詰めるとスッと近寄って私に身体を押し付けてきた


「こう言うところは猫と変わらないわねw」


擦り付けながらぐるりと1周回る彼女の背中を優しく撫でる


その手に自らの尾を絡めるように通り過ぎると群れの方から1頭の若い豹が歩み寄る


ゴルルルル


喉をならし女王の前で頭を垂れたのはシュネーの呼び掛けに応えて来たあの子だ


女王はスッと近寄ると事もあろうかその頭に右前肢を置いてグイっと押し付ける


押された方は必死に耐えるが女王は強く頭を地面に押し付けた


「ちょっ!!」


慌てて飛び出そうとするシュネーをシンシアとクロエが押さえて黙らせる


フスンッ


女王は大きく鼻息を鳴らすと足を退けその頭を嘗めた


「んー」

「勝手な真似をしたって怒ってるんだね?」

「でも助けてくれたことには感謝ってところかしら」

「まぁ群れの女王だから威厳も示さないといけないし大変だね」


私の呟きが分かったのか分からないのか


その言葉に応えるように一声鳴いた

その鳴き声は本当に猫のようだった


ー・ー


「うわぁああああ!!」

「早い速いはやいーーー!!」


女王達を治した対価として私達は今彼女達の背に乗っている


帯のような布を前肢に襷掛けしてその交点を掴む事で鞍の無い草原豹から振り落とされないようにしていた


「これはなんと言うか!」

「予想以上なんだけど???」


草原豹達は初めこそ襷を嫌がっていたが頚にしがみつかれるより走りやすいのが分かると嫌がらずスピードをあげていった


「これは!!」

「戦場の自動二輪より凄いなっ!!」


リグルは楽しそうに乗っている


彼は相当重い筈だが草原豹は全く気にした風もなく猛スピードで木々の間を駆け抜けていく


「街道は外れまくってるけど大丈夫なの?」


「それなら大丈夫にゃ!!」

「街道はこの森を迂回するのに遠回りに成ってるけどこの子達のお陰で超ショートカットですにゃ♪」


シュネーは以前にも草原豹に乗った事があるのか身体を起こし絶妙なバランスで楽しんでいる


来た時の馬車の揺れ方から察するに時速10㎞ぐらいだったのではないだろうかと

休憩等を踏まえれば街まで100㎞程だろう


森を抜けられれば距離的にも半分以下になるだろう


そして今草原豹達は自らのテリトリーを横断して森の中を疾走していた


「こんなに移動させて大丈夫かな?」

「無理させてないかな?」

「普段の縄張りなんか出ちゃってるんじゃないかな?」


「テリトリーは出ちゃってますにゃ」

「でも森を抜けるまでは乗せてくれるみたいだにゃ」


予測したところ直線距離ならざっと40㎞ぐらいだろうか?


草原豹達の速度は凄まじくこの森の中でも40㎞は出ているだろう


つまり1時間ほどしがみついていれば街道に出られるはずだ


「それにしても」

「女王自ら私を乗せて走らなくても良かったんじゃないの?」

「病み上がりなのにありがとね」


言葉は分からないとは思っていてもそのフカフカな背中に顔を埋めながら感謝の言葉を口にする


女王はゴロゴロと微かに喉を鳴らして応えるとそのま走り続けた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ