ヴァレンシア
「隔絶結界」
「魔力の祭壇」
部屋に物理・魔力遮断の結界を張り魔力で満たす
「んっ・・・」
「この魔力濃度は久し振りね」
「一般人には高濃度の魔力は毒だろうが短時間なら問題ないだろう?」
「こちらの正体を曝すのだから我慢して貰いたい」
鎧を脱ぎ1つに纏めて部屋の隅に置く
「あんた女じゃったんか・・・」
リグルの言葉に眉をひそめるヴァレンシア
「貴女何者?」
身構えるヴァレンシア
どうやら椅子に仕込み武器が有るのだろう
「鎧を脱いだ私はどう見えますか?」
「ギラギラしてて気持ち悪い」
「なんでチェインメイルまでミスリルなのよ」
「しかもソレ魔法付与されてるでしょ」
「まさか恩恵を装備で貰ったの?」
「いや・・・・違う」
ミスリル銀のチェインメイルとカーゴパンツを脱ぐと下着だけの姿になる
「カーゴパンツなんて久し振りに見たのw」
「リグル下着姿に鼻の下伸ばさないの」
「下着もミスリルとか・・・」
マスクを外すと意識を集中して翼と尻尾を生やす
2人とも言葉がでない様子だったのでこちらから話し始めた
「転生した後色々とトラブルがあってね」
「今やってるみたいに結界張って魔力を満たして・・・」
「気絶して気が付いたらこんな身体になってた」
「・・・・・・・・・」
「嘘は言ってない」
「けれど気絶して気が付いたら魔族に転生とか普通あり得ない」
「ワシも初めて聞いたわ」
「私の仮説では高濃度の魔力に汚染された人間は魔物や魔族に変貌してしまう」
「それって・・・」
「狼猿のような知能の低い魔物は元々この世界で生まれたのかも知れないが知能の高い魔物や魔族は元々転生者の可能性がある」
「やっぱりそうなるのか」
「この世界にはスキルや魔法を使いすぎると魔物になるって昔話があるんだ」
「・・・・・・・・」
「もしかして魔王も・・・?」
「その可能性は否定できない」
「私はこの世界に召喚された時、女神が胡散臭かったからその言葉を疑ってね・・・」
「恩恵スキルを使って保険をかけた」
「そしたら逆上した女神に呪われて殺された」
「今のも嘘じゃない」
「けど女神に殺されたってどう言うこと?」
「そのまんまの意味だよ」
「恩恵スキルを奪われて呪いを受けた上に地上に落とされた」
「スキルを駆使して死なないように足掻いたらいつの間にか人間じゃ無くなったし性別も無くなった」
「と言うわけ」
「これは・・・」
「またハードな・・・」
「ところで2人も転生者なんだって?」
「そう」
「私は別の大陸で転生したの」
「エルフの子供として産まれたのよ」
「じゃから歳は聞いちゃいかんw」
「ワシはこの国に転生した」
「転生と言うか召喚なのやも知れん・・・」
「現世と同じ姿じゃったからな」
「この世界では転生や召喚は良くあることなのか?」
「そうね」
「珍しいと言えば珍しいのだけれど・・・」
「神々がそれぞれ呼んでるから世界的に見たら頻繁に呼ばれてるかもしれない」
「正体を明かしたからには協力して貰いたい」
「女神に殺された身分としては知識の神殿なんかは利用出来ないんでね」
「協力するしか無さそうね」
「それはそうとラックは何のスキルを持っとるんじゃ?」
「恩恵スキルは〈女神の呪い〉」
「保険で獲得したのは〈スキル創造〉」
「だから大抵の魔法は使える」
「正にチートだわ」
「ワシなんか恩恵スキルは〈鑑定〉しか持っとらんのに」
「じゃあリグルは俺のステータス見れるのか?」
「無理じゃ」
「じゃから不思議に思ってここに連れてきたんじゃ」
「勿論マリーの件でのお礼がしたかったからなんじゃがな」
「完全に予想外の方向へ逸れてしまったわい」
「鉄靴のリグルも形無しだねw」
「よせやい」
「もうそんな2つ名を覚えとるのもお前くらいなもんじゃわ」
「鉄靴?」
「そうよ」
「私達は若い頃冒険者をやっててね・・・」
「ギルド公認の2つ名を持つのは冒険者として光栄な事なんだよ」
「ワシは冒険者としてダンジョンに挑みながら鑑定を駆使して良質な物を行商するようになったんじゃ」
「戦う技術には昔から自信があったしな」
「どんな戦場でもたとえダンジョンの奥地でも現れる鉄のグリーブを履いた商人」
「だから〈鉄靴のリグル〉の異名を与えられたのよ」
「2人は随分仲が良いようだな」
「ヴァレンシアと出会ってもう80年になるか・・・」
「リグル・・・?」
「もうラックには歳を隠しても無駄じゃろ?」
「それでも良い気はしないわ」
「エルフは長寿だけどいつまでも若くいたいのよ」
「2人とも不死同士で気が合うんじゃわ」
「結婚はしないのか?」
「ワシは若い頃結婚したし子供もいた」
「じゃがこの呪いのせいで皆見送るはめになった」
「じゃからもう結婚はせん」
「私は子供を産む気にならないわね」
「エルフとは価値観が違いすぎて結婚したいと思わないし・・・」
「やっぱり親しい人を見送り続けるのは辛いものよ」
「そうか」
「悪いことを聞いたな」
「すまない」
「別に謝る事じゃないわ」
「ところで何が聞きたいの?」
「兎に角この世界の事を聞きたい」
「今は情報量が足り無さ過ぎる」
話が長くなるので酒を飲みながら話す事になった
一度結界を解き別室に移動する
酒と料理を用意して貰いリグルは帰宅してヴァレンシアと2人きりになった
リグルは長時間強い魔力に曝される事に耐えられなかったのだ
ー・ー
ヴァレンシアの寝室で夜通し話ながら酒を酌み交わす
お互いの知りたい情報を交換して最終的には互いの利益のため協力することを約束した
「ラックはこれからどうするの?」
「この鎧とラックの名は目立ちすぎたかな・・・」
「軽装備に変えて女として旅をしようかと思う」
「そう・・・」
「・・・・・・・・・」
「まさかついてくるとか言い出さないよな?」
「それも面白いかも」
「ウチは幾つか支店があってね」
「久し振りに様子を見に行くのも悪くない」
「・・・・・・・・・・」
「リグルも行くとか言い出さないだろうね?」
「リグル商会も支店が多いから言い出す可能性は有るわね」
「・・・・・・・・・」
「はぁ・・・」
「ところで」
「なんで2人はこの町に居るんだ?」
「さっきの話ではこの辺りは田舎なんだろ?」
「田舎だからよ」
「辺境は危険だし中央はめんどくさい」
「めんどくさいって・・・」
「そう言うものか?」
「私もリグルも中央だと取り入ってくる連中が多くて正直ウンザリだわ」
「この国では町の周辺に幾つかのダンジョンが有るのは話した通り」
「そのダンジョンで手に入るドロップアイテムやアタックする冒険者向けの商売で経済が回ってる」
「そして強力なダンジョンは大都市のある中央や辺境に多い」
「その中間に位置する田舎が1番平和なのよ」
「強力なダンジョンは魔物は強いがドロップも稀少で価値のある物が多い」
「それを売買する冒険者相手に街が栄えると言うわけか」
「アンタの仮説を当て嵌めると案外しっくりくるんだよね・・・」
「危機と平和のバランスをとるために神々に調整されてるって話、なんとなく実感しちゃうわ」
「それでアンタはこれから何て名乗るの?」
「考えてなかったな」
転生者は年代を超越して召喚されるようでヴァレンシアも日本出身で現世では年下だったのには驚いた
逆にリグルはかなりの年上で戦前の生まれらしい
転生者は比較的日本人が多い傾向にある
もしかしたら宗教観念的に宗旨替えしやすいのかもしれない
「この世界は中世ヨーロッパに近い世界で剣と魔法が物を言う世界」
「だから名前はそれっぽい方が良いわよ」
「わかった」
「それと本名は言わない方が身のためよ」
「呪いや特定の魔法に利用されるから」
「だから本名に因んだ名前もやめた方が良いと思うわ」
「そうなのか・・・」
「もしかしてラックは本名から取ったの?」
「幸の字が入るからとか言う安直なネーミング?」
「咄嗟だったからね」
「現地人はともかく転生者や関わりがあった人達には気を付けないと漢字の概念を理解してる人もいるわ」
「悩むな・・・」
「私は赤ん坊だったからエルフの両親がつけた名前も有るけれどそっちも隠さないといけないからね」
「ヴァレンシアは転生前オレンジが好きだったからつけた名前よ」
「アナタも好きなものからとったらどう?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・アリエル」
「人魚の?」
「アリエルは元々ヘブライ語で〈神のライオン〉や〈燔祭で使われる全焼の供犠を行う炉〉と言う意味がある」
「男女の別無く使われる名前だ」
「神のライオンね・・・」
「何だか意味深だわ」
「この世界では基本的にファーストネームしか名乗らないわ」
「貴族でも無い限りね」
「なら暫くはつけなくても良さそうだな」
「冒険者なら魔法使いは珍しくないんだったな?」
「けどこんな田舎じゃ見かけないわ」
「この町から行けるダンジョンはそんなにランクが高くないもの」
「軽装の剣士と言う事にするか」
「マジックバックのような物はレアだったか?」
「町中で使ってたら強盗に合いかねないレベルよ」
「と言っても足がつきやすいから転売目的と言うより自分で使うためかしらね」
「何かと不便そうだな」
「まぁね」
「でも勝手気儘に旅する人なんてほとんどいないからね」
「トライするダンジョンを変えるために町から町への移動とか商隊の護衛くらい」
「根無し草で転々とするのは珍しいわ」
「冒険者ギルドにも登録しなくちゃいかんね」
「その辺りはウチのグループかリグル商会で口添えすれば話が早く済むでしょう」
「でないと出身地だとか編入試験とか面倒だから」
「テスト受けたいなら口添えしないけど」
「どう?」
悪戯っ子のように笑うヴァレンシアは時折少女のような印象を受ける
しかし最低でも80年は生きた先輩だ
現世では娘ほどの歳だったとしても・・・
「口添えはお願いしたい」
「りょーかぃ」
グラスのワインを飲み干すと次をなみなみと注いでいく
「ところでラック・・・じゃなくてアリエル」
「貴女現世では何してたの?」
「接客業から製造業まで色んな職種で働いていた」
「近々では鉄工所だな」
「ふぅん」
「転々とね」
「料理とかはやらないの?」
「若い頃居酒屋でコックだった」
「居酒屋?」
「でもコックならお酒の製法とかはわからないよね・・・」
「何が知りたい?」
「ここには麦があるのにまともなビールが無い」
「少量だけど米も有るのに日本酒が無い」
「蒸留酒の類いもない」
「そうか」
「新規事業を兼ねて醸造や料理の分野を開拓したいんだよね」
「ふむ」
「醸造所はたくさん欲しいのか?」
「まぁね」
「皆お酒は好きだけど原始的なエール酒とワインぐらいしか無いのよ」
「エール酒も醸造方法で進化した飲み物だからね」
「原始的製法だと味も良くないだろ」
「私は元々未成年だったからお酒の味もこっちで知ったわ」
「エルフのワインは美味しかったけどこの辺りでは作れないし流通もしてない」
「ネックは防腐処理か?」
「そうなのよね」
「その方法がわからない」
「他の国では日本酒に似たお酒を作ってる所もあるみたいだけどね」
「この町にも醸造所はあるのか?」
「あるよ」
「ほとんどが昔ながらの安エール作ってるわ」
「ホップが有れば苦味を足して劣化を抑えることが出来るんだが・・・」
「この辺りには無いのか?」
「ホップ?」
「知らなかっただけか」
「後で探してみよう」
「日本酒は麹黴が必要になる」
「温度管理が重要だから寒くなる地域でなければ作るのは難しいな」
「この辺りは年中春みたいな気候だからねぇ・・・」
「冷却魔法はどうだ?」
「それならなんとかなるかも」
「この店でも冷たい飲み物を提供するのに使ってるから」
「温度管理できるなら後は麹黴か・・・」
「リグルに色んな物を鑑定して探しだして貰うしかないな」
飲食店勤務時代に学んだ知識を総動員してエールの改良と日本酒醸造に必要な項目を書き出していく
更に蒸留器の図面を書き硝子細工で作れるのか銅板が手に入るのかとアレコレ話し合った
ー・ー
「ホントに貴女何者?」
「料理だけじゃなくてお酒の製法の器具の設計までやるなんて普通あり得ないでしょ」
一晩中私と話していたせいか日本人だった頃の口調が出ているようだ
此方へ転生するきっかけは事故死や神隠しと様々で必ずしも死んで転生するわけでは無いらしい
「単なる雑学の好きな器用貧乏ですよ」
「そう言えば召喚術とゴーレム関連の技術は偏ってて発展してないんだったね」
「それこそ貴女の仮説を裏付けることになるわね」
「ゴーレム関連もそうだけど召喚や転移等の空間魔法や創造魔法とか極大破壊魔法なんかも聞かないわね」
「そこだよ」
「通常の破壊系の魔法は色々有るのに極端な広範囲魔法は無い」
「なのに神聖魔法には広範囲攻撃魔法も広範囲回復魔法も有る」
「全ては神に依存させるような意図を感じるね」
「なんか信憑性高くなってる気がするわ」
「・・・・・・・・」
「そろそろ日が昇るわね」
ヴァレンシアはそう言うと空のグラスをテーブルに置いて立ち上がった
「汗を流してくるけど貴女はどうする?」
「俺はこんななりをしているが中身はアラフィフのおっさんだよ」
「身体の方も両方付いてる」
「私は気にしないけど?」
「こう見えてこの世界に来て200年経ってるんだからそんなのもう気にしないわ」
掌をヒラヒラさせて奥へと向かうヴァレンシア
下心は無いと言えば嘘になる
しかし風呂等の作法は知っておいて損はない
今後どのような事がおこるのかわからないのだから
ー・ー
ヴァレンシアと風呂に入っておいて正解だった
現代日本とはあまりにも違うからだ
おそらくその事を教えるつもりで誘ったのだろう
先ずお湯が無い
如何に常春の国とは言えお湯が無いのは厳しいのではないか?
普通は水も貴重なので固めに絞った布で身体を拭くのだとか
質の良くない石鹸はあるが基本的には水拭きが主流
上流階級の人達や魔法使いは生活魔法で綺麗にするのが流行りなんだとか
風呂の作法を教えて貰って身体を拭いているといきなり水をかけられた
ヴァレンシアは魔法使いであり水の魔法とその応用でお湯を出せるのだ
高級ホテルともなればそう言うサービスも有るらしい
が
ヴァレンシアの経営するホテルでは一味違う
屋上のボイラー室のような場所で一括して水やお湯を供給するので蛇口があるのだ
「これって知識チートなんじゃないの?」
「この程度の事でもマウントとれるんだから異世界ってチョロいわw」
ドヤ顔でポーズを決めるヴァレンシアがとても逞しく思えた
女子高生も200年異世界で暮らしたらこうなるのか・・・
これでエールの改良とビールや日本酒、はては蒸留酒まで独占製造販売できれば敵う企業なんか無くなるだろう
各ギルドで特許を取れれば長寿のエルフと言えど老後は安泰だな・・・
「ところでアラフィフのおじさんはこの世界でどうしたいの?」
「右も左もわからないから先ず知ろうと思う」
「その後元の世界へ戻るのかここで骨を埋めるのかを決める」
「おじさんは手堅いね」
「私なんかエルフに産まれた時点でこの世界に順応したもの」
「誰でも赤ん坊として産まれたらそうなるだろう」
「両親や家族もいるんだろう?」
「現世にも残してきたし此処にもいるわ・・・」
「この世界に不満は無いけど両親とか友達の事は気になら無いわけじゃない」
「それはエルフになっても歳を重ねても変わらないわね」
風呂を出て部屋に戻ると飲み散らかした部屋は片付けられ朝食が用意されていた
暖かいスープとハーブティーが湯気をたてている
「魔法?」
「まさかw」
「お風呂に入る時に合図のベルを鳴らしておいたのよ」
「じゃあ一緒に入らなかったら・・・」
「鉢合わせて気まずかったかもねw」
朝食は何の変哲もない物だった
豪華でなく簡素でもない
逆にそれが1番の違和感を醸し出す
「この世界にも鶏がいるのか?」
「いるわよ」
それは養鶏等の畜産が成り立ったいることを示す
「このベーコンは・・・?」
「牛も豚も鶏もちゃんと育ててるわ」
「驚いた?」
「魔物だらけの土地で酪農は難しくないか?」
「襲われたりしないのか?」
「その為にしっかりした農園を作ってるわ」
「各支店のも含めて田舎で育てて加工まで一括でやってる」
「だからこんなソーセージもちゃんと有るのよ」
驚いた
中世ヨーロッパやファンタジーノベルの世界観に比べて食文化が発達している
旅のお供の塩漬け干し肉とはえらい違いだ
「と言っても酪農出来る人なんかそうはいないわ」
「普通は貴族様のお抱えね」
「だから獣や魔物の肉でも売れるのよ」
そうなのか・・・
「とりあえずあまり長居はしたくない」
「準備が出来次第町を出たい」
「そんなに急いで何かやったの?」
「実はね・・・」
「女神に1度殺された話はしたっけ?」
「殺されたって言ってたけど・・・」
「殺されかけたんだと思ってた」
「かけた保険の1つに〈蘇生〉があってね」
「そのお陰で死んで生き返った」
「蘇生なんて最上位神聖魔法よ?!」
「教会に莫大な寄付を行っても条件が悪ければ失敗するのに?」
「とにかく死んで生き返った」
「そこから再び死なないためにスキルを駆使したんだがやっぱり死んだっぽい」
「また蘇生したの?」
「それがよくわからなくてね・・・」
「1回目は確かに死んだと思う地上に叩きつけられた痛みもあったしね」
「けれど2回目は意識を失ったから詳細がわからない」
「ただ・・・」
「ただ?」
「目が覚めた時ミスリル鉱床の上で結晶に包まれて目が覚めた」
「それって・・・」
「気を失ってる間に張った結界の外から結晶に閉じ込められた姿を見られたらしい」
「ミスリル鉱床は装備に使い果たしたわけだけど・・・」
「そうとは知らずに調査隊がダンジョンに入って1週間くらい経つ」
「調査隊は空振りってわけね」
「そのダンジョンを出る時に調査隊の人達と会ってる」
「疑われるわねーw」
「だからあの鎧は暫く着ない方が良さそうな感じかな」
「町を早く出たい理由はわかったかな?」
「でもそれなら急いで出発する方が怪しまれるんじゃない?」
「それも・・・」
「そうか」
「1度鎧姿で町を出てから脱いで戻ってきたら?」
「それが1番無難か・・・」
「じゃあ早速言ってらっしゃい♪」
「店を出る時には気を付けてねでないと私達も聴取されるから」
「ランチには戻ってきてねー」
朝食を食べ終わると直ぐに送り出された
そのまま旅立つとは思わなかったのだろうか?
けれど聴取の為に次の町まで追われて連れ戻される事を思えばこっそり戻ってやり過ごす方が賢いのだろう
掌で転がされている感はあるが
ここはヴァレンシアの提案に乗るとしよう