兵器じゃない
「ほらほらシンシア」
「貴重な蟹の素材がいっぱいあるよー♪」
「誤魔化そうったって無駄」
「今は何なの?魔族?」
「あーうんうん」
「そんな感じ」
「絶対嘘付いてますよねこの答え方」
「そうじゃな」
「嘘は良くない嘘は」
「観念した方が良いぞ?」
ラルクとリグルは助け船をだしてくれそうにない
おそらく2人も気になっているのだろう
「えーっと」
「超時空汎用恒星間航行マスターマシン」
「なにそれ?」
「何かのアニメのパクり?」
「嘘じゃないわよねぇ?」
ジト目で詰め寄るシンシアから思わず目を逸らしてしまう
「嘘です」
「ごめんなさい」
「何それ?」
「そこまで言いたくないの?」
「言いたくないと言うかなんと言うか」
「言いにくい言うかなんと言うか」
「ハッキリしなさいな」
「はぃ・・・・・」
溜め息を付いて覚悟を決めた
「魔法駆動式自立稼動型人造兵器2号機」
「?」
「だから」
「魔法駆動式自立稼動型人造兵器2号機」
「それが私の種族的分類らしいわ」
「え・・・・・・・と?」
「ちょっと待ってね」
「色々理解が追い付かない」
「アリエルさんはアンドロイド的な兵器なんですか?」
「分類上そうなるみたい」
「てっきりゴーレム系の魔物扱いなんだろうって思ったら分類上兵器になるらしい」
「何処のどいつが分類したのか知らないけど失礼な話よね」
「兵器とな?」
「つまりアリエルは物扱いなのか???」
「それも2号機とはなんじゃ?」
頭を抱えるシンシアに続きリグルも両腕を組んで考え始めた
「AIやアンドロイドに自我が芽生えて命の定義を問うフィクションは有りますが・・・・」
「命の器としてのアンドロイドって扱いになるんですかね?」
「しかも2号機ってなんでしょう?」
「それって人間なの?」
「いや、でも」
「アリエルは確実にアリエルよ」
「魔族だった頃と何も変わってない」
「いや変わってるけどそれは外見的なもので・・・・・」
「もう良いよシンシア」
「自分でも自分が本当に自分のままなのか不安になるもの」
「我思う故に我あり」
「私が私であると思う以上は私であることを誰にも否定させないわ」
「たとえ肉体を失った時に魂も失ったのだとしても私はここにいる」
「私としてここにいるのよ」
「・・・・・・・・」
「なんか」
「ごめんなさい」
「シンシアは謝らなくて良いのよ」
「私は正真正銘の化け物だし魔族や魔王より遥かに危険で既に人間と呼べるかは怪しい存在なんだし」
「それは事実だから何の問題はないわ」
事も無げに明るく言ったつもりだったが逆効果だったようだ
シンシアは私が強がっていると勘違いしたのだろう
シンシアは私の頭をそっと抱きしめた
その頬を一筋の光が伝い落ちた
ー・ー
「別に気にしてないんだからそう言うの止めてよ」
「人じゃないとか生き物じゃないとか兵器扱いだとか大したこと無いじゃないw」
「それよりそんな風に頭を抱えられたら色々困っちゃうじゃんかw」
逃げようとするがそれも気丈に振る舞っている痩せ我慢とでも捉えたのか反対側からラルクも抱きついてきた
仕舞いにはリグルまで頭を撫でる始末
「3人ともさぁ」
「アタシが50手前のオッサンだってわかってやってる?」
「400超えたワシから見れば赤子同然じゃ」
「エルフの私と年齢で張り合うの?」
「50歳くらいなら私の方が歳上ですね」
3人が一斉に応えるがそうじゃない
「いや」
「子供扱い云々じゃなくてさ?」
「妙齢な年頃の身体をした女の子に抱き付かれたらって話ししてんの」
「それがどうしたの?」
「別に構いません」
「カッカッカッ」
「アリエルはまだ若いのぅw」
うん
この3人には何言っても無駄なのは良くわかった
男扱いも大人扱いもする気はないらしい
まぁ身体は女の子だけどね
これは心の問題
とりあえず頭を抱えられたまま無視して引き摺りながら蟹に向かって歩きだす
素材は欲しいわけだから全てストレージへ入れておく
取り敢えずどう使うかの方針が決まるまでは仕方が無い
槍蟹の方を収納し終えたので再び2人を引き摺って楯蟹の方に歩み寄る
「おや?」
「なんか金属っぽいツヤがあるね」
キンキンッ
剣を抜いて叩いてみると固そうな音が返ってきた
「この殻には金属が混ざってそうね」
「そうみたいね」
ラルクは途中で離れたがシンシアはまるでコアラのようにしぶとく後ろからしがみついている
そのため首を動かす度に豊満な胸の感触が伝わってくる
「シンシア」
「ちょっと動きにくいんだけど?」
「お構いなしに動いてるくせに」
「まぁそうなんだけどさ」
「そろそろ放しても良くない?」
「良くない」
「何で?」
「だってアリエルは人間だし」
「兵器じゃないし」
「2号さんだって言うならアタシのだし」
「だから気にしてないって」
「って言うか2号機略してさん付けるの止めてw」
「それに私が2号だとしてシンシアに正妻なんていないじゃんかw」
シンシアのような美女に後ろから抱き付かれ至近距離で顔を覗き込まれて嫌な人はそういないだろう
だがそれをネタにつけこんでいるようでなんだか居心地が悪かった
「とりあえず蟹は回収し終わったから先に進みましょうか」
「そうじゃな」
「アリエル」
「さっきの銃を貸してくれ」
「今度はワシが撃つ」
シンシアが離れない状態でリグルに銃を撃つと言われると最早渡すしかない
「はい」
「セミオートだから初めの装填だけで後は撃てるから」
「マズルブレーキ付いてるけど結構反動あるから気を付けてね」
「スコープの距離感覚はシュトリヒ見ながら撃って覚えて」
「うむ?」
「スコープはこの単眼鏡じゃな」
「シュトリヒとは?」
「むむむ」
「この印の事か」
「先ずはアレを撃ってみるか」
バコンバシャッ
「ぬおっ???」
「アリエルお主涼しい顔してこんな銃を撃っとったんか?!」
「そうよ?」
「あらま」
「ちょっと手前に落ちたみたいね」
「衝撃で銃がブレたのかな?」
望遠の魔法で着弾確認をすると弾丸はガーゴイルの腰の辺りを砕いたいた
「どれどれ」
「うぅむ」
「真似して歩きながら撃ってみたがワシには無理そうじゃな」
「頭を狙った筈が腹に当たっとる」
「少し先行するからゆっくり来てくれ」
そう言い残すとリグルは一人で走っていった
「元気なお爺ちゃんだね」
「そらね」
「あの歳で急激にレベルが5も上がったんでしょう?」
「筋力や敏捷性が上がってたら元気になるわよ」
同じ背丈のシンシアが抱き付いていると歩きにくいので少し背を低く変えた
この身体は変装するためある程度身長を変えられるように作ってある
脂肪代わりの魔力を蓄積する結晶は柔らかいため見た目に違和感は無い筈だ
「やっぱりアリエルは器用ですね」
「身長まで変えてしまうんですから」
ラルクが微笑みながら話し掛ける
シンシアは何も言わず小さくなった私を軽く抱いている
歩調を合わせて脚が当たらないようにタイミングを上手く調整していた
こう言うところを見るとラルク達が小さい時もこんな感じで歩いていたのだろう
「なんかダンジョンってよりピクニックみたいだよね」
「あら」
「お弁当がないわ?」
「おやつは300円までですねw」
「ラルクそれだとピクニックじゃなくて遠足だよw」
ついさっき迷宮蟹と戦った事など無かったかのようにゆっくりと歩いていく
これが薄暗いダンジョンじゃなかったらと思わずにはいられない
バコンバシャッ
バコンバシャッ
「もう追い付いたのか」
「もっとゆっくりでも良かったのに」
うつ伏せになっていたリグルは起き上がり軽く砂や埃を払う
ラルクは途中で見付けた魔物の残骸から魔石を拾いながら付いてくる
2人が働いている間私たち2人はのんびりと他愛の無い話をしながら歩いてきた
端から見ればいちゃつくバカップルだったろう
ゴゴンッ
ギュィィイイイイイン!
前方で何か重い物が落ちたような振動の後何かが擦れるような嫌な音が近付いてくる
「ちょっとヤバそうな気配がするわね」
「皆気を付けて」
非常事態に流石のシンシアも私から離れレイピアを抜く
リグルとラルクも各々武器を構えた
「何が来るんじゃ?」
「こんな音は聞いたことがない」
「私は嫌な予感しかしないわ」
「あら奇遇ね」
「私もよ」
「アリエルとシンシアが悪い予感しかしないって言うと本当にヤバい奴が来ると言うわけですね」
ラルクの額に汗が滲む
リグルの構えが前に傾き始めた
敵は近い
そしてリグルは出会い頭に仕掛けるつもりなのだろう
ギュァァァアアアアアン
ギュィィイイイイイン
どうもこの音には聞き覚えがある
昔見たアニメのアレだ
ギュィィイイイイイン
ズシュゥウウン
轟音を立てて現れたソレは1つ目の緑の機械だった
ー・ー
ゴズンッゴズンッ
ガゴン
全高4m程の人型のソレはアニメやSFで見たことのあるロボットその物だった
頭に刻まれたレールに沿って動く1つ目を動かしこちらを見ている
「ねぇ」
「アリエルアレってもしかしてボ・・・」
「シンシア気を付けて」
「飛び道具は無さそうだけど普通のゴーレムにしたら生物的と言うより工業製品のような感じがする」
「あの擦れるような音は多分車輪か何かで高速移動できるんだと思う」
「だからアリエルアレってスコ・・・・・」
「リグル!」
「相手のパワーがどれだけあるかわからないわ」
「あの巨体が見た目どおりの強さだとしたら手強いと思うから気を付けて!」
シンシアの言いたいことはわかる
アレが鉄の棺桶なのだろうと言うことも
しかしアレの力が未知数な以上は気を引き締めてかかるしかない
ギョゴン
ギョゴン
ガゴン
しかし何故こう言う人型兵器は歩く度に音がするのだろう?
そもそもこの音は何の音なのだろうか?
シュイン
シュイン
「これは驚いた」
「コイツを見ても取り乱さない人間がいるとはな」
緑色のソレは単眼を数度横に往復させた後言葉を発した
「まさか知能があるの?」
「もしかして有人型兵器なの?」
「はははっ」
「コイツを見て直ぐ様兵器と呼ぶか」
「さてはお前は転生者か召喚者だな?」
間違いない
コイツは転生者が作った物だ
「まさか貴方も?」
「日本人とか?」
「驚いたな」
「日本が分かるのか」
「確かに俺は日本から来た」
「まぁそうでしょうね」
「そんなトルーパーに乗ってフランス人とか言われるより日本人の方が納得できるわ」
「そうか」
「俺はそうだなぁ・・・・」
「イプシロンとでも呼んで貰おうか」
「ソコはキリコじゃないんだ」
「まぁなw」
「ところで・・・・・」
「良かったら食料を分けて貰えないか?」
「このダンジョンは喰えるものが殆ど無くてな」
「それは良いけど」
「なんでこんな所にそんな物に乗っているの?」
「あぁ」
「やっぱり気になるよな」
イプシロンから詳しい事情を聴いた
どうも彼は呪いによって転移障害を起こしているらしい
階層を移動しようとする度に別の場所に飛ばされるのだとか
転移先で同じ結晶に触っても別の場所に飛ばされるため転移障害なのは間違いないらしい
「それでなんでそんな装甲に乗ってるの?」
「いやまぁ」
「乗っていると言うか乗らざるを得ないと言うか・・・・・・」
どうも歯切れが悪い
おそらく魔物に転生したのだろう
「その分だと魔物に転生したみたいね」
「私達も全員転生者だし他にも魔物に転生した人を知ってるから安心して良いわよ」
「そうか」
「そうなのか」
「俺以外にも人間以外に転生した人はいるのか」
バクンッ
彼の乗っていたソレは上半身の上部分が大きく上へと開いた
「完全に信用したわけじゃないが」
「取り敢えず話が出来そうで安心した」
そう言ってヘルメットを取った彼の顔は綺麗な女性の顔をした彫像だった
ー・ー
「そう言うことか」
「なんで私が2号なのかと思ったらこう言う自動人形の2体目だったってことね」
「自動人形?」
「あんたもそうなのか?」
話が進まなくなりそうなので一度偽装を解いて見せた
「私の場合はゴーレムと言うか義体になるのかな?」
「と言うか」
「この世界にゴーレム技術は無いって聞いていたのにそのロボットは何?」
「あぁ」
「これは俺のユニークスキルだ」
「物質操作と言ってな」
「触れている物は大きさや重さ関係無しに動かすことが出来る」
「転生する時に事故で俺の身体はバラバラになったらしくてな・・・・・」
「どうせならロボット生命体みたいなのになってみたかったんだが・・・・・・」
「依代になったのがこの球体関節人形でな」
「石の彫刻で出来ているから力も強度も無い」
「散々考えた挙げ句中からコイツを動かすことにしたんだ」
「ならこれ自体は動いたり出来ないの?」
「関節やギミックがある方が負担がないから作ってはいるがコイツはただの置物だよ」
「ふむ」
「あ」
「勝手に解析させて貰ったけど怒らないでね」
「んー?」
「私は兵器扱いなのに貴方は人形扱いなんだ」
「なのに何で私は2号機なのよ」
「ここのシステムは人をバカにするの好きね」
イプシロンを解析して分かったことは彼は魔法駆動式自律人形となっており魔物扱いだ
胸に魔石もあってそれが中心核となっている
「そう言えば食料を欲しいって言うけど人形の身体に食べ物は要るの?」
「あぁ」
「それは俺が魔物だからだろう」
「頻繁ではないが定期的に何かを食べないと力が出なくなるんだ」
「しっかり食べたら強くなるとか?」
「そうだな」
「たくさん食べておかないと魔力が尽きて死ぬっぽい」
「そうなんだ」
「取り敢えず貴方の召喚主は滅ぼされた感じかな?」
「ソコまで分かるのか?」
「俺を召喚した神はミリアに滅ぼされた」
「その時に受けた呪いのせいでダンジョンから出られなくなったんだ」
「悪趣味な呪いね」
「ちょっと待ってね」
私は解呪の呪文を唱えイプシロンを解放した
「これで大丈夫かな」
「呪いは解いたけどこのダンジョンは今探索隊が来てるから直ぐ外に出ると討伐されるから気を付けてね」
「へ?」
「呪い・・・・・・」
「解けたのか???」
「え?」
「探索隊って何だ???」
「結構簡単に解けたんですね」
「流石アリエルさんです」
「イプシロン」
「このダンジョンは新しく見つかった特殊なダンジョンで今権利を得るために探索隊が編成されててね」
「ここはその第10階層なの」
「第10階層が何なんだ?」
「権利獲得の探索って?」
「俺は長い間ダンジョンをさ迷っていたから外の事は分からないんだ」
戸惑うイプシロンと話していて分かったのは彼は100年以上各地のダンジョンを渡り歩いてきたらしい
どれだけの時間がたったのかもわからない事
ダンジョン都市やドワーフの国等にも行ったことがあるのだとか
「ダンジョン都市はたぶんヴァンデラーブルクの事だと思うけど・・・・・」
「ドワーフってダンジョンに住んでるの?」
「ダンジョンに住むドワーフの話しは聴いたことが有りませんが・・・」
「古代都市に住むドワーフがいると言う話を聞いたことがあります」
古代都市・・・・・
転移装置を持つ都市国家と言うことか?
「そのドワーフ都市から外に出ようとは思わなかったの?」
「あの国は転移装置でしか行くことが出来ない」
「もしあの国で外に出られればどうなったんだろうな・・・・・・」
「そうか」
「でもその装備のままだとこのダンジョンからも出られないかな」
「途中の転移結晶の間が狭いところ有るから」
「そんな・・・・・・」
「コイツを手離したら生きていけないだろう」
「呪いを解いてくれたのは感謝するが代わりにこのダンジョンから抜けられなくなったわけか」
「世の中ままならんな・・・・・・」
イプシロンは俯くが表情が変わらないため感情が分かり難い
しかし話の流れから考えればショックを受けたのは間違いないだろう
「その点は心配しないで」
「ちゃんと策はあるから」
「ヴァンデラーブルクね」
「シンシアは話が早いけどネタバラシが早すぎよ」
「こう言うのは不安とドキドキがある程度有った方が解決した時嬉しいものよ?」
「言いたいことは分からんでもないが」
「それはちと意地悪が過ぎると思うぞ?」
「イプシロンはおそらくアリエルが思うとるよりずっと長く独りで彷徨っとる筈じゃ」
「そうなの?」
「間違いない」
「イプシロンはダンジョンで手に入れた物を加工してこの魔道具を作り上げたのじゃろう」
「腕や脚の関節を見れば想像が付くわい」
「色や質感の違う素材が入り雑じっておる」
「こう見れば全身継ぎはぎだらけじゃ」
リグルに言われて解析してみる
なるほど
確かに年代が合わない
単に素材の年代が違うと言うわけではない
長年の戦いによって磨り減ったり壊れたりを繰り返してきたのだろう
「どうやら本当に100年では済まないみたいね」
「イプシロンの服も200年ほどたっているみたいだし」
「砂や埃でボロボロになってるわ」
「200年もたっているのか???」
「そうか」
「陽の光を見なくなってそんなにたっていたのか・・・・・・」
「んー」
「これならいけるか」
私は紙を取り出し念写し始めた
それはイプシロンの今の構造を図面化したものであり続いて描いたのは新しい身体の設計図だった
「この図面は俺じゃないか???」
「何故このブラックボックスまで明記されてあるんだ!」
「いくら解析でもここまで分かるものなのか???」
「アリエルだからね」
「アリエルですから」
「アリエルじゃからな」
イプシロンの言葉に3人の声が重なったのだった




