当たれ!!
バコンッバシャッ
バシャッバシャッ
「ねぇアリエル」
「なぁに?」
バコンッバシャッ
「私達ってついてきてる意味ある?」
「んー?」
「一緒にいたくないの?」
「戦闘だけがパーティーの役割じゃないでしょ?」
「そらまぁそうだけど・・・・・」
「そのショルダーガン?を使い初めてからガーゴイルの姿すら見ないからさ」
「暇なの?」
「そうよ」
「暇なのよ」
言いたいことは分かるがここまで直球で答えられると笑うしかない
「まぁもう少しの辛抱だと思うよ」
「ここは枝道も少ないしあっても短いし」
「戻ったぞー」
「やはり向こうの道は行き止まりじゃったわ
」
「宝箱は有りましたがお金と魔晶石に呪われてそうな剣だけです」
「また呪物?」
「この階層の宝箱って高確率で呪われてるよね」
「まだあるだけマシじゃない?」
「第7~9階層は宝箱無かったもん」
「第7階層はあっても気付かなかっただけかもだけどねw」
「さっきから時々変な目みたいなのが通路脇から出てるんだけどアレって何?」
「はて?」
「ワシ等が言った時にはガーゴイルぐらいしかおらんかったぞ?」
「んー」
「なんかこう・・・・・」
「ガーゴイルじゃなくて何だろ?」
「何かの目みたいなヤツ」
「ビホルダーですか?」
「アレとも違う気がする」
「何だろね?」
「それと時々何か重いものが擦れるような振動もあるんだよね」
「なんかゴリゴリ言ってるヤツね」
「トラップにしたら変だものね」
「何かのギミックなのかしら?」
「あるいは警戒させるためのトラップなのかもしれません」
「音だけってヤツ?」
「ラルクはそう言うの見たことあるの?」
「はい」
「シンシアとリグルは覚えていないかもしれませんが・・・・・」
「あぁアレじゃな」
「地龍がいたダンジョンじゃな」
「滝の裏にあったヤツよね」
「懐かしいわね」
3人しかわからないネタで盛り上がられるとちょっと淋しい
でも私は私でさっきからスコープを覗きながら狙撃して前進の繰り返しなので皆は退屈だろう
「ん・・・・・・」
「やっぱりアレって何だろ?」
「何か・・・・・・・・・・」
「甲殻類の目っぽい」
「何じゃそりゃ?」
「あ」
「それってもしかして・・・・・」
「ストーカークラブの種類かしら?」
「ちょっと望遠で見てみようかな・・・・」
シンシアは短く呪文を唱え目を瞑る
再び開いた時には青い魔力が灯っていた
「やっぱり・・・・・」
「迷宮蟹の中で冒険者の付きまとって背後から襲ったり通路の角に隠れて不意打ちしてくる蟹よ」
「目だけじゃ分かりにくいわね」
「ソレって不死系なの?」
「いいえ」
「アレは普通の魔物よ」
「ただし雑食性の王者で無機物でもお構い無しに食べることが出来るって話よ」
「うへぇ」
「悪食にも程があるわね」
「でもアイツ目が良いみたいで撃っても逃げるんだよね」
「じゃあ無視して近付いて・・・・・」
「出てきたところを倒すしかないわね」
「先程から聞こえている音はもしかしてあの蟹が隠し通路を移動している音なのでしょうか?」
「それはあるかも」
「あの蟹は意外と知能が高くてダンジョンのトラップを起動させたりトラップに追い込んだり・・・・・」
「場合によっては挟み撃ちとかしてくるらしいわ」
「蟹だけに挟み撃ち?」
「バカ言ってないで」
「もしアレが宝飾蟹だったら貴重な宝石が手に入るわよ」
「普通ソコは大金持ちになれるって言わない?」
「あら?」
「この中で大金持ちじゃないのはラルクだけよ?」
「そのラルクだって私といればお金には不自由しないわ♪」
楽しそうにラルクの腕に抱き付くシンシア
そのラルクの方は困惑した表情を浮かべていた
「金は要らんが・・・・」
「もし宝飾蟹じゃったらヤツの纏う宝石は千金の価値がある」
リグルの斧を持つ手に力が入るのがわかる
「そんなに貴重なの?」
「あの蟹は強いのよ」
「勿論アリエルや私達には雑魚同然だけどね」
「アレが食べた物はその身体に反映されるのよ」
「つまり希少鉱物を食べていたらその殻は希少鉱物で彩られるってこと?」
「それだけじゃないわ」
「食べた量以上に身体に纏うのよ」
「自分で生成してね」
シンシアの瞳がギラリを輝く
望遠の魔法の影響ではない
シンシアの殺気が漲っている
狩る気だ
「それじゃあちょっとその殺気抑えてくんない?」
「そんなに殺気だっていたら蟹も逃げちゃうわ」
私達と蟹との間にはガーゴイルやスタチューはいない
無防備に気付いていない風を装って歩いていく
と言ってもシンシアとリグルのギラついた目と雰囲気は尋常ではなくとても隠せたものではないが
「視線をずらして」
「蟹の目を見ちゃダメよ」
他愛の無い話をしながらゆっくり歩いていく
武器には手を掛けず私が蟹のいる左側
シンシアとラルクが真ん中でリグルが右側
「目を引っ込めたわ」
「・・・・・・・・・」
「岩の音がしない」
「・・・・・・・・・来るわね」
銃をしまい自然体で近付きながら足音を忍ばせる
踵を浮かし臨戦態勢を整えいつでも抜刀できる体勢のまま歩いていく
ガサッ
「来たっ!!」
先ずは飛び込みながら居合いで右足を斬る
上手く間接を狙った一撃は見事に脚を斬り落とした
ギギッ!!
ギギギッ!!
蟹は呻きだか唸り声だかをあげて巨大な鋏を振りかぶる
デカい
横幅は通路いっぱいの巨大な蟹
天井スレスレまで振り上げられた鋏は避けようにも逃げ場がない
シュンッ
蟹は鋏を振り下ろすと同時に踏み込んでくる
「間合いなっがっ!」
左の壁ギリギリから斜めに振り下ろされる鋏
右へ逃れても追い撃ちが来るのは目に見えている
「任せろっ!!」
リグルは前に出て鋏を真っ向から受け止める
「ふんぬぅっ!!」
受け止めた瞬間空気が震える
蟹は受け止めに来た瞬間左の鋏を構えていた
ギギッ!
受け止めたリグルに対し開いた鋏を突き出してくる
「なんのぉっ!!」
右の鋏を引くのに合わせ受け止めた斧を振りかぶり左の鋏を叩き落とす
ガゴンッ!!
重い打撃音が響くが鋏は止まらない
リグルは叩き付けた斧を軸に飛び上がり縦に回転斬りを放つ
ガギギギギギッ!
「クソゥッ!!」
リグルの渾身の一撃は天井の阻まれ蟹には届かない
その隙に身を引きながら右の鋏でリグルを捉えた
「しくじったわっ!!」
両腕で鋏に抗うがリグルですらも蟹の力には及ばない
「蟹ちゃん」
「私の事忘れてるよね?」
リグルとの攻防戦の隙を縫って鋏の下へと潜り込んだ私は鋏を付け根から斬り飛ばした
「アリエルすまん!!」
「助かった!!」
「シンシアとラルクは後ろのをお願い!!」
「後ろ?!」
驚くシンシアを背後から鋏が襲う
間一髪で逃れたシンシアと斬りかかるラルク
2匹目の蟹は目の前の蟹よりも鋏や脚が長く甲羅が小さい
「こっちはストーカータイプ?」
「コイツらは隠し通路を使って追ってきたのか!」
後ろに現れた蟹は鋏が細く縁が鋭い刃のようになっている
正面の蟹の爪はは逆に幅が広い
さしずめ楯と槍と言ったところか
「リグル!」
「後ろの二人の援護を!!」
「おぅさ!!」
蟹は私にだけ注意を払い牽制攻撃を仕掛けてきてリグルの攻撃は甲羅で防ぎまるで意に介さない
二人で相対してもあまり意味はないだろう
全力ではないにしても私の打ち込みに耐える甲羅を持つとは中々の頑丈さだ
これは素材として期待できる
「死ねっ!!」
一気に踏み込み鋏の付け根を斬り上げる
シュアンッ
すると蟹は少し身を引いて剣を鋏の表面で滑らせて躱した
ズドンッ
失った鋏の代わりに脚を振り下ろし突き刺してくる
「へぇ」
「パリィするなんて意外とやるじゃない」
「でもアンタに構ってる暇は無いんだよね」
加速を使うまでもない
パリィを使う敵にはパリィ出来ない攻撃を仕掛ければ良いだけの事
鋏と脚の付け根に連続で突きを放つ
パリィしようにも垂直に突き立てられた刃は逸らすことが出来ず間接に突き刺さる
突いて払えばやはりパリィ出来ない
「頑丈そうだからトドメは後回しにするわ」
「アンタはソコで大人しくしてなさい」
根元の間接を切り裂かれた蟹は動こうとするたび傷口が開き間接が割れていく
蟹は暫く踠いていたがやがて動かなくなった
「お待たせー」
手早く蟹を処理すると直ぐに3人の援護に回った
リグルが楯役になりラルクが斬り付ける
しかしこちらの蟹はリーチが長く攻撃速度が早い
攻撃を捌きながら反撃するもそのリーチの長さに加え鋏の攻撃を掻い潜っても近接では脚の猛攻が待っている
善戦してはいるが決定打を与えられずにいた
「お待たせ」
「早かったじゃない」
「こっちもお願い」
「同じ蟹だけど随分攻撃パターンが違うのね」
「やっぱり種類が違うからかな?」
「牽制を掛けます」
「仕留めて下さい」
左翼側から突撃するラルクの呼応してリグルが右翼側を攻める
援護するようにシンシアが稲妻の呪文を放つ
「良い連携ね」
「このダンジョンじゃなかったらこれで仕留められそうなものね」
2雷撃は甲羅で受け2人の突撃に対応する蟹
稲妻自体のダメージは無さそうだが右の爪で受けて脚でアースしているようだった
その分ラルクは間合いを詰めてアースしている脚に襲いかかる
ギギッ!
左の鋏をリグルに弾かれた蟹は一瞬無防備になる
蟹は全速で後退しラルクの追撃を躱すと右の鋏を突き出してくる
「その程度下がっても意味ないのよ!!」
シンシアの稲妻が追い撃ちを掛け蟹は左の鋏で受ける
「常にアースしてるって事はダメージは消せないんじゃないの?」
「ならこの魔法はどうかな?」
それまでの稲妻ではなく放電に切り替えるシンシア
一瞬で通過する稲妻に比べ放電は威力や貫通力こそ落ちるものの継続的に電撃を放つ
ギギッ!
ギギギッ!
案の定蟹は左の鋏を動かせなくなった
「そう言うことならこれでどうかな?」
私は水撃を蟹の後ろの脚を狙って撃った
ビクンッ
ビクビクビクッ
後ろの脚が濡れた事で前の脚より抵抗が低くなりより広範囲に電撃が走る
「ならこれの方が気に入ってもらえるかな?」
続けて今度は氷冷魔法を放つ
〈凍結潮流〉
超低温の冷気の通り道を作る魔法である
本来ならば帯状に凍結させるだけの魔法なのだが今回は違う
シンシアの放つ雷撃が超電導により誘導され蟹の中心核を貫いた
蟹は一度大きく身体を仰け反らせて床に倒れると小刻みに脚や鋏をバタつかせ始めた
「終わった感じかな?」
放電を止めたシンシアが近付いてくる
蟹の口の辺りが凍り付きその真ん中が焦げて煙と共に焼けた香りを立ち上らせていた
「なんか美味しそうな匂いね」
「電撃の焼き蟹ってところかしら?」
「この蟹ってかなり強い部類なんだけどな」
「アリエルはあっさり倒しちゃうよね」
「そう言えばアリエルってレベルはいくつくらいなんですか?」
「あ」
「それは私も気になってた」
「通常の鑑定だと自分より高いレベルの人や物は鑑定出来ないのよね」
「私の場合レベル100くらいまでなら鑑定出来るスキル持ってるんだけど・・・・」
「やっぱりレベルの概念あったんだ」
「鑑定スキルで見た時に数字出てたから把握はしてたけどそのレベルがどの程度の強さなのか今一分からないのよね」
「クラスレベルとかスキルレベルとか色々あるじゃん?」
「その全部がアリエルからは見れないのよね」
「一般的にスキルやクラスのレベルは10が最高だと言われているわ」
「そのスキル強度はクラスとスキルのレベルをかけたものだと言われているの」
「だからいくらスキルレベルが高くてもその上位にあるクラスレベルが低いと大した実力は発揮できないって事ね」
「クラスとスキルの関係性は何となくわかったわ」
「それで結局個人のレベルって何なの?」
「その人のレベルは単純に強さを表していてスキルの効果に影響があるの」
「その割合は様々だけど上位クラス程補正値は大きいかな」
「となると私とラルクのクラス反逆者って言うのが気になるわね」
「どのスキルに関しても補正が入ってるんじゃない?」
「それは不思議なのよね」
「スキルって一般的には神の加護って言われているのに反逆者のクラスもプラス補正が付いてるのよね?」
「神への反逆ならマイナス補正になると思うんだけどなぁ・・・・」
「ふーん」
「私の場合クラスは反逆者でレベルは10」
「反逆者のクラスは各方面全てのスキルにプラス補正が付くのが特徴みたいね」
「それって勇者より酷くない?」
「私もそう思います」
「私も勇者の頃より確実に強くなってますから」
「ふぅむ」
「つまりレベルやクラスなんかは神の加護とは別の物なんじゃな?」
「私は女神に加護を剥奪されてから自分のステータスを見れなくなったのよね」
「それでも結局は自分を対象に鑑定スキルを使用すれば見れるから気にしてなかったけど」
「ステータスを見る力は加護に関係するけれどステータスその物は加護とは無関係なシステムって事か」
つまりこの世界をこんな風に作った又は改造した張本人は別にいると言うこと
「うーん」
「とにかくクラスとスキルからレベルは換算されると考えたら良いのかな?」
「そうね」
「私の場合クラスは魔法使いでレベル10」
「スキルの属性魔法がレベル10だから本来の魔法の100%の威力が出せる」
「そこに私のレベルが120だからプラスで120%」
「つまり属性魔法本来の威力の220%までが私の使える魔法の威力になるの」
「改めた聞くと凄いですね」
「シンシアはやっぱり強いですね」
「アリエルと出会ってからの姫プでレベルが10も上がったけどね」
「ブフォッ」
「110も凄いのにそこから更に10も上がったのですか???」
思わず吹き出したラルク
やはり大台である3桁ともなると中々上がらないのだろう
「シンシアもか」
「ワシもレベルが5も上がって身体の調子が良いんじゃよw」
「130から5も上がったの?」
「そうじゃ」
「ってレベル130もあったんですか・・・・」
ラルクが天井を見上げて何やら呟いている
よほどショックだったのだろう
「じゃがまぁ」
「種族補正があるからのぅ」
「シンシアが使う得意属性の魔法強度は実質300%ぐらいの威力じゃろうて」
「通常の3倍か・・・・・」
「シンシア角生やす?」
「冗談でも止めて」
「赤い服も着ないからね!!」
シンシア
元ネタ分かるんだw
何となく嬉しい
「それでアリエルのレベルは?」
「いくつなの?」
「スキルレベルは軒並み10有るんだけどね」
「私自身のレベルは1です」
「アレだけ倒しても1です」
「1つも上がってませんが何か?」
「なんで???」
「これだけやって1つも上がってないの?」
「さぁ?」
「ところで今の種族って何なの?」
「やっぱり魔物系?」
「魔物って・・・」
「確かに人間や亜人じゃないけど」
「人類域で魔物だとやっぱり討伐されるのかな?」
「それはどうかしら?」
「好戦的だったり被害が出てたら討伐対象になるけど友好的なら問題ないんじゃない?」
「好戦的じゃ無い魔物もいるの?」
「最近ではオークやトロールは魔物だけどて亜人種と同じ扱いされてるわね」
「勿論ゴブリンやオーガもそう」
「彼等も文明に触れて食糧事情が良くなれば人を襲う必要は無くなるんだもの」
「と言ってもダンジョンから溢れた魔物はその限りじゃないし文明的なゴブリンが未開の野良ゴブリンを狩る事も良くあることよ」
「そうなんだ」
「でもそれってややこしくない?」
「野良やダンジョンのゴブリンはダークゴブリンと呼んだりしますね」
「彼等は人族で言うところの山賊みたいなモノですから互いに倒すことに抵抗はありません」
「そう言われると納得ね」
「私も山賊なんか何人殺しても気が咎めないし」
「じゃあ魔物っ何なの?」
「魔石を生成する生物の総称?」
「魔物だからって一概には討伐対象にならないけど敬遠はされるかな」
「特に田舎では顕著に嫌われる傾向にあるわね」
「でも魔族となるとね・・・・・」
「魔族は魔王ほとんど魔王の配下だからゴブリン達と違って警戒する人は多いかな」
「そうなんだ」
「ノッキングヒルやヴァルムートではゴブリンやオークは見なかったからてっきり魔物として町に入れないのかと思った」
「もっと大きな町や魔物の町が近くにあると見掛けるんだけどね」
「冒険者になる魔物は少ないし商人や坑夫が多いかな?」
「それでもドワーフからすればゴブリンは銀を腐らせるって敬遠されてるわね」
「そうなの?」
「ゴブリンは元々ドワーフと同じ鉱物系の妖精なんだけどね」
「闇属性を持つゴブリンは強欲なのも多くてドワーフからは嫌われてるのよ」
「でもドワーフとゴブリンは表と裏のような関係なんだけどね」
「別に邪悪ってわけじゃないの?」
「それは人間も同じでしょ?」
「でも文明レベルが低くて知的じゃないからどうしても山賊みたいになっちゃうかな」
「人間より繁殖力が高いのも恐がられる要因かもしれない」
「ふーん」
「文明的なゴブリンもいるんだね」
「まぁね」
「それでさ」
「話し逸らしてるのわかってるんだから種族教えてくれない?」
シンシアは笑ってはいるが
誤魔化せそうな感じではなかった




