超機動要塞
「取り敢えずここに義体の製造装置を作るわね」
創造魔法で2つの装置を作り出す
一つは義体を作るための装置でもう一つは宿魂石を作り集合体から魂を移し変える装置だ
「使い方はマニュアル的な補助システム付けておくから適当に頑張ってね」
「今は魔力濃度も魔素も多過ぎるから問題ないけど・・・・・・」
「この魔力濃度計で確認するように」
「必要量が足りないと作れないようには設定してあるけどどうなるか分からないからね」
義体は一般用と戦士用に魔法使い用が作れるようにはした
しかしどれもミシェルの義体に比べれば見劣りする性能しか出せない
勿論宿す魂の強さは義体の強さに反映される
しかしそれには限度と言うものがある
やはり強い魂には強い義体が必要になるだろう
「基本仕様は3種用意したわ」
「特殊仕様は製造するために3人の認可が必要になるようにしてあります」
「高性能な義体はそれだけ素材も多く使うから良く考えて作りなさい」
「この装置で魔力を集めて 実体化するのですね・・・・・」
「以前は私とクラートの魔力も流用していたのですがそれはどう対処したのですか?」
このミシェルは元々人外の魔力量を有しており結晶化した後も都市に魔力を供給し続けていた
それも果てしなく続くであろう長い時間の中いずれ限界が来るだろうと予測して対処はしていたようだ
「魔力回路の高効率化で必要な魔力量が半分以下になってるから大した問題は起きないと思う」
「半分以下ですって???」
「ぶっつけ本番で魔力回路を作りながら修正を加えていたでしょう?」
「アレのせいで魔力の浪費や減衰現象が起きてたからね」
「全部直して最適化して組み直すのには苦労したわ」
「魔力回路の中心核はほぼ新造したんだから」
「たった数秒でそこまでの事を???」
「どれだけ凄い魔法使いなんだ・・・・」
ラインハルトの呟きに答えるかどうか迷った
これだけの魔力回路を一瞬で作り替えるのと時間を操作する魔法が使えるのではどちらが凄いのだろうか?
この世界において時間と空間を操作する魔法は存在しない
そして創造やゴーレム関連の魔法も無い
ゴーレム製造は創造魔法で誤魔化したとしても既に存在しない筈の創造魔法を固有スキルとして所持しているとバラしている
ここは一つ無理矢理言い訳でもしてみるか
「解析で魔力回路がどうなっているのか把握できたからね」
「元々が優秀な回路だったからそれを設計図にして創造魔法で丸ごと作り替えただけよ」
「元の回路が無ければ流石にこんな真似出来ないわよ」
肩を竦めて言っては見たものの3人とも納得とは程遠そうな表情を浮かべていた
それでも言葉を飲み込んだのは私への忖度なのだろう
「そうそう」
「私の固有スキルにストレージがあってね」
「途中で手に入れたこれを貴方達にあげるわ」
「好きに使って」
そう言って取り出したのはこれまでの階層でで手に入れた状態の良い魔石と大量の魔晶石だった
大きい上に状態が良すぎてギルドで換金する事は難しい
さらに数も大量に有りすぎて使いきれないので大半を渡しても問題ないだろう
「こんなにたくさん・・・・・・」
「これまでもストレージのユニークスキル持ちはいましたがこれだけの量を持ち運べる人は稀でした」
「しかもこの魔晶石と魔石の量・・・・」
「品質も最上級クラスだな」
「これだけの品物ならば外で売れば良い財産になるのではないか?」
ラインハルトが魔石を鑑定したようだ
もっとも鑑定などしなくてもある程度見慣れた者ならばその輝度と大きさで品質を推し測る事は出来るだろう
「こんな品質は逆に売れないわ」
「もし売ったとすれば入手経路を聞き出すために監禁されてもおかしくないわ」
「少なくとも今は宝の持ち腐れね」
「では有り難く頂こう」
「代わりに我々が所有する宝物を選んでくれ」
「気にすることはないから全て持ち去ってくれても構わない」
「見せては貰うけどどれだけ頂くかはその時に決めるわ」
「別にお金には不自由してないからね」
「そうか」
「そう言えば何故このダンジョンに挑んできたのだ?」
「アリエル程の技量ならダンジョンに挑まなくとも生きていけように」
「あ」
「忘れてたわ」
「最後にアタックかけてもう3日はたってるか」
「でもこの彷徨える都市を報告するわけにはいかないものね・・・・」
「問題があるなら我々は直ぐにでも移動できるが?」
「報告と言うことは調査なのだな・・・」
「都市が移動すれば報告する必要は無くなるだろう」
「直ぐ支度に取り掛かろう」
ラインハルトの言うことはもっともだ
私としてもこの都市に長居する必要は無いのだからこの申し出を拒否する意味はない
「ちょっと待ってね」
「取り敢えず外界の状況を説明するわ」
自分達が何故このダンジョンの来たのか
調査を終らせるには最低10階層まで踏破する必要がある事
魔物に転生していたミーナを仲間に加えたが調査隊がいる限り連れて出られない事
最後のアタックから既に3日以上経過している事
そのためいつ大規模な調査隊が編成されてもおかしくない事
私達とダンジョンの状況を出きるだけ詳しく話した
「うぅむ」
「外ではそんな事になっているのか」
「このヴァンデラーブルクは移動は出来るがどこに出るかは分からぬ」
「今は魔力濃度の高いダンジョンへ自動的に向かうようになっておる」
「浮遊都市から分離した時点で自由意思で移動する機能は無くしたのね?」
「まぁそう言うことだ」
「取り敢えずこの部屋を出ようか」
「この部屋は都市の動力源であると同時に民の魂の保管所でもある」
「今は義体を製造できる最重要施設になった・・・・・・」
「これまで以上に入室を制限し厳しく管理する事になるな」
そう言うとクラートは出口に向かった
入り口で服を手にしたヒースと出会ったが服だけミシェルに渡すと共に上へと向かった
ー・ー
「この辺りで良いか」
「アリエルさんどうしたのですか?」
「この街は自由意思で動けないって言うから不便だなって」
「だからちょっと改造しようかなと思うのよ」
この街全体を解析したところ地下はあまり作られてはいない
元々浮遊都市の地下施設だったことも関係しているのか厚い外殻に覆われている
都市の入った巨大な岩塊は幾つかの鉱脈も含まれていた
これだけの鉱物資源を外殻だけに使うのは勿体無い
「先ずは外殻ね」
創造魔法を駆使して外殻を透明度の高い水晶へと変化させる
水晶と言っても圧縮して硬度を増し魔力回路を刻み込んでいるのでもはや水晶とは呼べないのだが便宜上は水晶とでもしておこう
「これで良いかな」
「今はダンジョンに重なっているけれど離れれば外の景色が見れるようになるわ」
「見て楽しいかどうかは分からないから景色を投影する機能も付けといたから後で試すわね」
ここからが本番である
外殻は分厚く鉄や貴金属の鉱脈もあったためそれらは分解してストレージに押し込めておく
更に都市機能の地下部分にも手を加え圧縮して強度を上げる
それと同時に地下空間を作り出す
これで広大なスペースを手に入れたわけだがどう活用するのかは彼等に委ねよう
王族の管理する階層と一般人が利用できる空間とは隔離して中枢部を挟んで上下に2層ずつ合計5層作り出しある程度の部屋を作り倉庫や工房として使えるように整備していく
中枢部の下にも配置するのは将来的に異空間を出た後、浮遊都市として機能する事を踏まえた防御措置でもある
中枢機能に対し下からの防御が手薄では話しになら無いからだ
「アリエルさん?」
「膨大な魔力が働いているのは分かるのですが何をやっていらっしゃるの?」
「このヴァンデラーブルクは外見的には大きな殻に閉じ籠った都市なのよ」
「今の状態ではダンジョンに重ならない限り外にも通じない」
「そして自らの意思で動くことが出来ない漂流船のようなものよね?」
「だから魔力回路の最適化も含めて都市全体を改造してるのよ」
「もう何がなんだか理解出来ないわ」
「でもアレだけの事をやってのけたのだから貴女の言うことに間違いはないわよね」
ミシェルは幽体を重ねて具現化したため美しい女性の姿になっていた
その美女が眉を寄せて困ったような顔をしているのは何かゾクッとする感覚を覚える
「私は神から身を隠すのではなく神を墜とすのが目的だからね」
「これぐらいの事が出来ないと女神と相対しても手も足も出ないでしょう?」
「貴女は強いのですね」
「私達は神々から逃げる道を選びました」
「それから千年の時を彷徨っていた・・・・」
「民には負担を強いてしまったのではないでしょうか?」
「人は必ずしも不老不死が良いわけではないと・・・・・」
「今は思います」
「ここでも精神が年老いてしまえば死を迎えると聞いたわ」
「やりたい事をやり遂げたら寿命を迎えるのよね?」
「逆に言えばやりたい事をやり尽くすまで不老不死でいられるのだから良いことだと思う」
「神の摂理には反するだろうけどそんな国が一つくらいあったって良いじゃない?」
「冒険者達が追い求める理想郷の一つとして」
「生きる伝説として」
「そう言ってくれるなら嬉しいわ」
「私はただ・・・・・」
「クラートを独りにしたくなかっただけなの」
「独りよがりだって分かってる」
「そんな事に民を付き合わせてしまったのよね・・・・・」
「それを望まない国民は逃げ去った筈よ?」
「今も不老不死で生きている人達は少なくとも貴女達を怨んだりしてないと思うわ」
気休めにしかならないような言葉だがあながち間違いではないだろう
それでも少しは気が紛れることを願わずにはいられない
「概ね設計は出来たわね」
「後は実行するだけよ」
立体的な魔方陣を形成すると起動させてエラーが無いかを確かめる
「これで暫くすると改造は終るわ」
「それほど時間もかからないと思う」
「えっ?」
「もう終ったのですか???」
「中枢部に関してはこの通路からしかアクセス出来ないようにしてある」
「けれど他の4階層分の地下スペースは地上からアクセス出来るようにしてあるから後で確認してね」
ミシェルを促し通路を上り皆と合流すると改造に関しての説明を行った
階下に立ち込めていた銀色に輝く魔素の霧はすっかり無くなり通路本来の姿を晒していた
ー・ー
「なんと・・・・・・」
「これは最早今までのヴァンデラーブルクではないな」
「ベースは変わらないけれど全く別の物になってしまったわね」
「取り敢えず新たに作った設備の説明をするからついて来て」
既にこの都市の地図や間取りは全て記憶している
幾つかの建物は勝手に改造してしまったが別に問題はないだろう
「まずはここね」
「館中央の屋上に塔を建てて作ったの」
「お・・・・・おう」
「これは・・・・?」
「部屋の殆どがガラス張りの開口部?」
「何かSF映画に出てくるような机もあるな」
「あの壁に付いているメーターのようなものは何じゃ?」
「父上」
「メーターとは何ですか?」
「うむ」
「計測器なのじゃが・・・・・」
「どう説明すれば良いのか我にも分からぬ」
クラートが困っている
それもその筈
壁に配置されたメーター的な物は雰囲気を味わうための飾りに過ぎず実際に何かを計測しているわけではない
「壁のメーターは気にしないで」
「ほぼ飾りだから」
「飾りとな?」
「飾りの計測器に何の意味が有るんじゃ?」
「あ・・・・・」
「リグルは戦前の生まれだから分からないか」
「クラートは少しは分かりそうね」
「あぁ」
「壁のメーターは雰囲気と言うか男のロマンであろ?」
右の口の端を上げてニヤリと笑うクラート
彼は千年前の転生者のようだが元いた世界ではリグルより年下らしい
あちらの世界とこの世界では時間軸に同期性が見られない
召喚の際に選択された時間軸から喚ばれると言うことなのだろう
「父上達だけで盛り上がらないで下さい」
憮然とした表情でラインハルトが言い放つ
彼は異世界の事情についてはある程度知っているようだが彼自身はこの世界の生まれのようだ
魂が転生者と言うわけでもない
それだけにこう言う異世界ネタは分からないのだ
「この機械を使えば音声システムを使えるようになります」
「取り敢えず手本として使ってみますか」
マイクの付いたインカムを耳にかけボタンを押す
「音声アシストシステム起動」
《音声補助機能起動します》
「全天モニター起動」
「各部詳細データを提示」
《全天モニター起動します》
《都市改造部分の地図を表示します》
《周辺の魔力量とエネルギー残量を表示します》
壁と窓全体に周囲の状況が映し出され手元の空間に地図とエネルギー残量等のゲージが現れた
「概ね問題ないようね」
《各部オールグリーン》
《破損箇所無し》
《備蓄が足りないと思われます》
「了解」
「航行装置スタンバイ」
《異空間航行システム起動》
《移動と同時にダンジョンとの融合を解除します》
「主機点火、抜錨」
《主機始動を確認》
《抜錨》
「ヴァンデラーブルク発進!」
「両舷微速」
ゴンッ・・・・・
僅な振動が響くが問題は無いようだ
《各部異常無し》
「左舷回頭取舵と同時に潜航を開始」
「下方第11階層に接舷する」
音声入力をしながら部家の中央付近に有る舵輪に手を掛ける
すぐ近くのレバーの一つを前に倒した
「風景が・・・・・」
ダンジョンの壁が見えなくなると赤黒い空間がむき出しになる
青や紫等暗く濃い色が混ざり合い気持ちの良いものではない
ゆっくりと旋回しているが風景が変わらないためどちらに進んでいるのかいまいち良く分からない
「周囲のレーダーを示して」
《レーダーを表示》
《有視覚モードにレーダーの立体図を重ねます》
気持ちの悪い空間に重なるように機緑色の線が現れ周囲のダンジョンを表示し始めた
「目的地はあそこだね」
「位置合わせ良し」
「接舷準備」
《強襲揚陸システム起動》
《アンカー射出》
《固定完了》
《強襲揚陸管接岸完了》
《ダンジョンへの侵入、可能となりました》
「了解お疲れ」
「音声入力システム終了」
《音声入力システムを終了します》
「何が起きたのだ?」
「移動した感じはあるがどうなっておるのだ?」
「街の空が異空間のままだわ」
「アレは大丈夫なの?」
「シンシア」
「ちゃんと防壁はあるから心配いらないわよ」
「と言ってもこの景色は気持ちの良いもんじゃないわね」
私は壁際の操作盤に向かうと幾つかの操作を行った
「まっ眩しいっっ!!」
「今度は何だ?」
「襲撃か?」
「落ち着いてラインハルト」
「球状の天井に景色を投影しただけよ」
「魔法で再現してるだけだけど太陽と時間を再現した方がいいかなって思ったんだけど・・・・・」
「要らなかった?」
「た・・・・・・・」
「太陽だって?」
「あの景色は何処の景色だ?」
「今は昼前ぐらいなのか?」
「このダンジョン付近の景色を投影しているわ」
「時間もリアルタイムだから今はお昼を少し過ぎた頃かしら?」
「・・・・・・・・・・・」
「クラート、ラインハルト良く聞いてね?」
「この国は今巨大な強襲揚陸艦のような物に改造したわ」
「近くのダンジョンを感知して自分の意思で移動することが出来るわ」
「そして固定用アンカーと強襲接舷用通路を使って隣接するダンジョンに繋げることが出来るの」
「凄いな・・・・・」
「本当に異空間の海を航海する海賊だな」
「海賊らしく舳先から突っ込む事も出来るし今までのように階層ごと入れ替わることも出来る」
「通路を繋げば自動的に魔力や魔素を吸収できるから必ずしも上陸する必要もないわ」
「上陸するかしないかは選べるわけか」
「義体にはこの都市の位置が分かるような装置を組み込んであるしここから義体が何処にいるのかも分かるようになってる」
「異空間から出てコモンスフィアに浮上する事も出来る」
「戻れるのか?!」
「勿論可能よ」
「その時は空を浮遊するか水上に浮かんだり水中に潜る事も出来る」
「ただし」
「地中だけはダメよ?」
「航行は可能だろうけどエネルギー消費が激しすぎて枯渇した瞬間圧潰するだろうから」
「それは怖いな」
「死ねない義体で永遠に地中に埋まるなんて考えたくないでしょ?」
「それは嫌だな」
「なら地中に行こうなんて考えないことね」
地中航行はあくまで理論上可能なだけで実際はどうかは分からない
しかしやるだけの価値があるとは思えないので忠告だけにとどめた
「それと念のためなんだけどね・・・・」
クラートとラインハルトを呼びつけとある席に連れていく
「この席は見晴らしが良いな」
「舵輪の真正面か・・・・・」
「航海士の席か?」
「いいえ」
「ここは簡易的な操作しか出来ないようになっています」
「完全に操作するには下のブリッジに移動しなければなりません」
「何やら不穏じゃな」
「この彷徨える都市は幻の都市から移動要塞に変わったのです」
「この席は火器管制システムにアクセス出来ます」
「武装まで有るのか?」
「コモンスフィアに戻った時に役に立つでしょう」
「ですが理論上は異空間でも使用可能でおそらくダンジョンを破壊できます」
「それは・・・・」
「勿論破壊すればただではすまないでしょう」
「けれど十分な魔力の蓄えがあれば対処できるだけの装備は有るのです」
「我らは戦争がしたいわけではないのだぞ?」
「ですが自衛の手段は必要だと思います」
「能動的に動き始めたならこの異空間も安全ではなくなるかもしれません」
「そのための武装です」
「わかった」
「使う時は気を付けよう」
「それと」
「分かっているとは思いますが攻撃には大量の魔力が必要となります」
「使いすぎると身の破滅を招くので御留意を」
「まぁそうであろうな」
「願わくば使わずに済ませたいものじゃ」
「同感です」
クラート達にも機能の全ては打ち明けていない
ミシェルには2人よりも多くの事を教えはしたがそれも基本的に秘密にするように言ってある
この要塞を私が使うようなことは無いと思いたいが備えあれば憂いなし
この要塞が単なる移動都市として機能する事を切に願う




