町へ 〈ノッキングヒル3〉
初日こそ魔物の襲撃にあったがその後は順調だった
松葉杖のお陰でそれ程遅れる事もなく街道を進む事ができた
普段のこの街道は平和そのもので魔物に遭遇する方が珍しい
定期的に隊商も通るため定期的に旅人の小屋が設置されているのだとか
「見えてきた」
「今回は大変だったな・・・」
「報告する事が増えたから町に着いたら直ぐにギルドへ報告に行かなくては」
見え始めてから到着まで半日近くかかった
それだけ町の周りは平坦で見通しが良かったのだ
そこかしこで麦が栽培されていて緑の穂が風になびいている
収穫はまだ先のようだ
麦以外に何種類かの野菜が実っている
水田らしきものは見当たらない
麦の穂が色付いていないのにカボチャらしきものやトマトのような物の実がなっている
日本とは季節や温度が違うのだろう
道すがら話をしていると旅人と言うのはそれ程多くないらしい
特に国を跨ぐような旅は冒険者でも滅多に無いのだとか
何でも国や島単位で守護する神が変わるため友好的な守護神同士の国で無ければ移動することも難しいのだとか
そして国の広さや多さがその守護神の力を示している
だから大国や複数の国を司る神は力が強く人気があるとの事
それとは別に領土を持たない神もいるらしくこの世界の信仰事情は色々と複雑なようだ
領土を持たない神々には幾つか種類が有るようで大別して
・火水風土光闇と言うような根源たる元素を司る神
・嵐雷雪崩のような事象を司る神
・若い流浪の神
・領土を奪われた没落した神
の4系統に別れる
そこで気になったのは流浪の神と没落した神
どのような経緯かは分からないが神になった時には領土や司るものは無く場合によって領土を奪い合っていると言うこと
この世界は神々が競い争いあっていると言うことか
しかし神々は直接戦ったりはしない
天啓を授け人間達に代理戦争を行わせるのだ
それとは別に人間達の意思でも戦争が起きる
現世の人間文明と変わらないようにも思えるが力を持った神々が存在している分たちが悪く感じてしまう
この2日間はよく話をして色々と教えてもらった
会話の中で転生者であることはほぼバレている
しかしそれでも
いや
だからこそか
色んな事を教えてくれる事で命を救われた恩に報いていたのだろう
「やっと着いたな」
ノッキングヒルの町は小さな城塞都市である
4m程の木の壁に囲まれており幾つかの門があるようだ
そして門には衛兵が両脇に立っている
長槍で武装しており門の直ぐ脇には詰め所があるようで何人かが出入りしているのが見える
「止まれ」
「手形は有るか?」
「迷宮調査隊の伝令係だ」
「至急報告がある」
「この4人の身許は私が保証する」
クレイルが首から下げていた木の鑑札を見せながら告げた
「わかった」
「通ってよし」
鑑札をチラッと見ただけで私達を通してくれた
「ここは平和だから見せるだけでほぼ素通りだw」
私の疑問を察してクレイルが答える
「悪いがギルドで質問責めにあってもらう」
「隠さず素直に答えて貰えると助かる」
質問責めって・・・
事情聴取とかなんとか言い方は有るだろうに
まぁ分かりやすくて良いのだが
クレイルに連れられて真っ直ぐギルドへと向かう
そこで待ち受けていたのはマリー達が何処でどの様にして狼猿に襲われたのかと言うことだった
狼猿は気性が荒く攻撃的で狼を従えることがある
時に群れを成すがその時には危険度は何倍にも跳ね上がる
数十数百の狼を従える巨大な群れともなれば近隣の騎士団と冒険者を動員する事にもなる緊急事態だ
今回は狼を使役して襲ってきている
もしはぐれ者が狼を使役していたなら差程問題ではないが・・・
それでも街道沿いや近隣の村等にはかなりの驚異となる
群れの規模や構成も気になるところ
早急に調査を行い場合によっては討伐する必要性が有る強い魔物なのだ
その聴取の最中マリーとクレイルは口裏を合わせ私の身許を誤魔化してくれた
鑑札も狼猿に襲われた時に失くした事にしてくれた
そこまでする必要は無いようにも思えるのだが・・・
その甲斐もあってギルドは近隣のギルドに通用する手形を用意してくれた
「ありがとう」
「俺達は狼猿調査隊に編入されたから今夜はゆっくり酒を飲んでる暇が無くなっちまった」
「今度会ったら一緒に酒を飲もう」
そう言って握手をするとクレイル達と別れた
「では私達もこの辺りでさようならです」
「これから隊商の雇い主と遺族に報告しなければなりませんので・・・」
マリー達は襲われた隊商の生き残りなのでこれから隊商ギルドと通商会に行く必要があるらしい
そして最も辛い仕事
遺族への報告が待っているのだ
3人と握手して別れると独りになった
とりあえずマリーに教えてもらったお店に行くことにする
何せこの世界の通貨を持っていないからだ
そこで担いで来た毛皮等の素材を買い取って貰うのだ
ー・ー
その店は比較的町の中側にあった
こう言った店は中心部程質が良く高価な物を扱う
そこは現代と変わらない
利便性もだが中心部程地価が高いからだ
〈リグル商会〉
それがこの店の名だ
幾つかの店が建ち並ぶ商店街のような場所で大通りに面している
他の店に比べても大きい方だろう
隣には服の仕立屋らしき店と食料品を扱う店が並んでいる
「いらっしゃい」
「見かけん顔じゃな」
扉をくぐり中に入ると白髪頭を帽子に押し込めた老人が声をかけてきた
長い白髭を撫で付けながら私を値踏みしているようだ
黒ずんだ白いシャツに茶色い革のベストを羽織り茶色の長ズボンを履いている
靴は木靴だろうか?
椅子に浅く腰掛けている事から見慣れぬ私を警戒していることが伺える
その彫りの深い眼は鋭くこちらの挙動を追っていた
「隊商のマリーから紹介して貰ったんだが・・・」
「コイツを買い取って貰いたいんだ」
そう言って店主らしき老人のいるカウンターに背負っていた毛皮を置いた
「ほぅ」
「平原狼の毛皮か」
「コイツはノッキングヒルバックスだな」
「コイツは・・・?」
「狼猿じゃないか!?」
「お前さんさっきマリーと言ったな!!」
「あの姉妹は無事なのか?」
「残念ながら生き残ったのはマリーの他にアレックスとトーマスだけだった」
「そんな・・・」
「そうか」
「残念だが仕形がない」
「しかし他のルートで逃げ延びた可能性はゼロじゃない」
「俺達のいた小屋に逃げ込めたのが3人だけだったと言う話だ」
「他のメンバーの死体を見たわけじゃない」
「そうか・・・」
「生き残っておるのを祈るしかないな」
「と言うことはお前さんは3人を助けてくれたんじゃな?」
「そうだ」
「その時に仕留めたのがこの毛皮だ」
「山分けしたから他の連中も何枚か持っている筈だ」
「もしマリー達が売りに来たら色を付けてやってくれないか?」
「その分はこの毛皮の買い取り額から引いてくれれば良い」
「まぁ待て」
「マリーはワシの孫のような娘でな」
「この町の商工ギルド専属の護衛達の家系なんじゃ」
「じゃからお前さんの毛皮はキチンと買い取る」
「マリーの事は心配せんでええ」
「お前さん名前は?」
「ラックだ」
今回狼7頭に狼猿1頭を倒した
皆は私が倒したので肉だけ分けてくれたら良いと言っていたのだが三等分にした
それでも多目に持っていけと言うので狼2頭と狼猿の分を貰いクレイル達に3枚マリーにも2枚渡した
干し肉の方はキッチリ人数分で分けた
多目に貰っても仕形がないし情報料も含めてある
なのでここで売れるのは狼猿1匹と狼2頭分の毛皮に牙と爪
そして鹿の角と毛皮である
「お前さん狼猿の毛皮は要らんのか?」
「この辺りでは高価な毛皮じゃし冒険者や傭兵をやっとるならこの毛皮がどんな価値かわかるじゃろ?」
「それも首と腹の2ヵ所にしか傷がない」
「これは相当な手練れの仕事じゃ」
「俺にはこの鎧が有る」
「毛皮は要らない」
「そうか・・・」
「この毛皮には本当ならもっと高値が付く」
「こんな田舎じゃあ頑張っても金貨1枚しか出してやれん」
「狼猿素材だけはもっと大きな町で売るがええ」
「平原狼の毛皮を先に見させて貰おうか」
「少し時間がかかりそうじゃてそこの椅子にでも座って待っててくれ」
「わかった」
ここは冒険者向けの雑貨屋らしい
棚には何種類かの小瓶が並びロープや袋が積んである
楯や武器も何種類か置いてあり何れも埃等被っておらずキチンと手入れされているようだ
「なんと・・・」
「ふむ・・・うぅむ」
「ほぉぅ・・・」
カウンターの向こうで何やらゴニョゴニョと言っているが気にしないことにした
空樽に突っ込まれた剣を手に取り抜いてみる
手入れはされているが刃には欠けた所を研ぎ直したような痕がある
この樽の物は中古品のようだ
剣を樽に戻すと今度は壁に掛けてある剣を掴む
静かに鞘走ると凛として美しい刀身は窓から入る夕日を反射してキラリと光る
手の中でクルリと回してみるが軽い
私には軽すぎて心許ない
「その剣はこの店で一番高価なヤツじゃ」
「しかしお前さんの腕にその剣は役不足じゃ」
「確かに軽すぎて扱いづらい」
「軽いとな?」
「良かったらその剣を見せてはくれんか?」
別に減るものでもないので鞘ごと店主に手渡した
「これは・・・」
「んん???」
「変じゃな・・・・・・・」
「お前さんこの剣は初めからこうじゃったのか?」
「と言うと?」
「この剣は変じゃおかしい」
「見た目を偽装されとるとしか思えん」
「ほぉぅ」
「先ず」
シュリンッ
店主は剣を抜き剣の腹を人差し指の上に慎重に乗せた
「このバランスじゃ」
「この刀身の長さで束に金を使っとらんと言うのにバランスの中心が束に寄っとる」
「鉄じゃこうはならん」
「長さ幅共に有るのに全体的に軽い」
「いや軽すぎる」
「売り物の剣は鋼の長剣じゃがあんたのこの剣は幅広の長剣」
「それも両片手剣じゃな」
「鋼ならもっと前に中心が来るし重さも倍ほどになる」
「じゃがこの剣は鋼の長剣に比べ幾分重い程度」
「その上・・・」
カウンターに刃を立てて置くとカウンターの下から干し肉を取り出した
30cmほど上から刃に落とすとコスンッと言う音と共に真っ二つに切れて落ちる
「やはりな」
「鋼にしては鋭すぎる」
「偽装魔法のかけられたミスリル銀かも知れん」
「お前さんに相応しい剣じゃの大切になされよ」
「ありがとう」
店主から剣を受け取り腰に吊るす
「さて毛皮なんじゃが・・・」
「剣を見て得心がいった」
「この狼はお前さんが仕留めたんじゃったな」
「全部ほぼ一撃」
「1頭なんかは頭もついとった」
「本当にここで売っちまって良いのか?」
「大きな町ならもっと高値で売れるぞ?」
「すまないがソレが売れなければ今日の宿代も無いんだ」
「なんとまぁw」
「わかった」
「首の無い方が銀貨20枚」
「頭付きは40枚」
「爪と牙を合わせて50枚」
「合計で金貨1枚と銀貨10枚でどうじゃ?」
「構わない」
「それと・・・」
「マイロォーー!!」
「マイロはよこんかぁーー!!」
「はい親方!!」
マイロと呼ばれた少年は息を切らせて走ってきた
「ワシは今からこの人と〈草原の木陰亭〉に行ってくる」
「支度する間にグレッグを呼んでこい」
「急げよ」
マイロは弾かれたように奥へと走って行った
店主が頭付きの毛皮を括り身支度する10分足らずの間に今度は2人で走ってきた
「はぁっはぁっ」
「おっ親方!」
「急用ですかい?」
「応よ」
「見ろグレッグ」
「こんな上物の毛皮なんざ滅多に手に入らねぇ」
「今から木陰亭のヴァレンシアに見せに行ってくる」
「帰ったら直ぐに仕立てる準備しとけ」
「それとマイロ」
「今日はもう店仕舞いだ閉めとけ」
そう言うと毛皮を担いでついてくるように促された
店を出ると更に中心地へと向かう
個人的には町外れの安宿が良いんだがついて来いと念を押されたので断りきれなかった
ー・ー
「知っとると思うがワシはリグル」
「リグル・ランドストーン」
「リグル商会はワシが一代で築き上げた店でな」
「まぁ何でも売っとる雑貨屋じゃ」
「そんな偉い人が店番を?」
「マリー達の隊商が到着する予定じゃったからの」
「あの子達はいつも真っ先に挨拶に来てくれる」
「家に帰るより先にな」
「じゃから待っとったんじゃ・・・」
「今はたぶん通商ギルドで事情聴取を受けている筈だ」
「なら帰りに寄るとしよう」
「ここじゃ」
その店には大木の透かし彫りが見事な看板が掛けてあった
〈草原の木陰亭〉聞けばノッキングヒルで1番の食事を出す料亭であり1番高級な宿屋なのだとか
そして1番の高級娼館でもある
「ワシじゃ」
「リグルが来たとヴァレンシアに伝えてくれ」
「かしこまりました」
周囲を見回すと上品そうな身なりの人達に混じり上等そうな剣を持った人達が行き来している
その中では皺だらけの上衣を羽織ったリグルとくたびれた全身鎧を身に纏った自分が酷く浮いて見えた
「ご案内致します」
仕立ての良い白いシャツに黒のベストを着た男性に連れられて階段を登り奥の部屋へと案内された
状況から考えればこの宿のオーナーの部屋だろう
カツカツ
重厚な印象のある扉に据え付けられた黄金のノッカーを叩くと返事も無く扉が開いた
「久し振りねリグル」
「ヴァレンシアはいつも麗しゅう」
武骨そうなリグルが洗練された身のこなしで一礼をする
私もそれに習い兜を脱ぐと一礼した
「今日はソレを売り付けに来たのかい?」
玉座のように据えられた大きな椅子に座った女性が問いかけてくる
腰までスリットの入ったスカートから覗き見える組まれた脚が艶かしい
座っているため背丈は分からないが覗く細い脚の長さらか見て背は高いのだろう
座っていても分かる括れたウエストライン
豊満な胸
透き通るような白い肌
艶かしい紅い唇
均整のとれた美しい顔立ち
尖った耳
そう
耳が尖っていた
この世界に来て初めての見た目で分かる亜人種である
と言うことはこのヴァレンシアと言う人はエルフかハーフリングか?
ならば見た目通りの年齢ではないのかもしれない
「確かヴァレンシアはこう言うの好きだったじゃろ?」
そう言うと担いで来た狼の毛皮を丁寧にほどいて行く
「ほほぅ」
「うむ」
「これは・・・」
「見事だな」
「これはどうやって仕留めたんだい?」
「楯でぶっ叩いた」
「楯で?!」
「アッハッハッハッハッ♪」
「楯とはっ」
「何とも豪快だね」
「でもどんな馬鹿力だい?」
「平原狼は打撃で簡単に倒せる魔物じゃないぞ?」
「買い取りの時に見たんじゃがな」
「打撃痕も1ヵ所しか無かった」
「それは本当か?リグル」
「嘘を言っても仕形あるまい」
「ところでヴァレンシア」
「この御仁を見て何とも思わんか?」
「眩しくて嫌い」
「なんじゃそれは」
「すまんなラック実はこのヴァレンシアは恩恵スキル〈神眼〉の持ち主でな」
「試すつもりは無かったんじゃが・・・」
「今のところ私の眼でもこの子が眩しいって事しか分かんないね」
「たぶんその装備全体に偽装魔法がかかってる」
「その上かなり上質な魔法金属・・・」
「おそらくミスリル銀で出来てる」
「〈神眼〉か・・・」
「そんなスキルが有るのか」
「かなりレアなスキルでな」
「本来の恩恵スキルは〈神速〉なんじゃが縁あって2人目の神様から得たのが」
「この〈神眼〉ってわけ」
「リグル」
「貴方が軽はずみにその話をするわけがないのは分かってるけど初見の相手にバラす話では無くってよ?」
「そうなんじゃがな」
「平原狼を一撃で倒し狼猿ですら2太刀で倒しとる」
「それだけの剛の者が可愛いマリーの命を救ってくれたんじゃわ」
「・・・・・・・」
「マリーを?」
「あの娘に何があったの?」
「街道で狼猿に襲われたらしい」
「旅人の小屋で泊まっている時に逃げ込んできてね」
「平原狼を10頭以上率いていて私がいなければ危なかった」
「その数では小屋の壁は破られたかもしれんな・・・」
「嘘は言ってないね」
「私の神眼は物事の真実を見抜く」
「と言っても全て見通せるわけではないんだがね」
「お陰で商売は上手く行ってる」
「これは・・・」
「どう言う了見だ?」
半身になり身構える
「いや誤解じゃ」
「お前さんは転生者じゃろ?」
「それを確かめに来たんじゃ」
「そう身構えんでくれ実はワシ等も転生者なんじゃ」
「はぁ・・・」
「リグルあんたねぇ」
「それこそ他言無用なんだけど?」
「・・・・・・・・」
「あんた等の読み通り俺は異世界から来た」
「だが色々問題があってね」
「2人に聞きたい事がある」
「ヴァレンシアは第2の恩恵を受けたとか?」
「あぁ」
「私は元々別の大陸で転生したんだ」
「そこでの冒険の末〈知識の神〉と出会い試練を経て恩恵スキルを授かったんだ」
「失礼」
「〈鑑定〉・対象ヴァレンシア」
名称 ヴァレンシア
種族 エルフ クラス 宿屋の主人
恩恵スキル
〈神速〉
ヴァルキュリアスによる恩恵スキル
体内時計の加速による高速行動が可能になる
〈神眼〉
知識の神アルタミラによる恩恵スキル
言葉の真偽を見破り品物の本質を見抜く
他にも色々とスキルを保有している
元々は冒険者だったようだ
「悪いが鑑定させて貰った」
「エルフのような異種族に転生出来るものなのか?」
「本当に鑑定されたみたいね」
見るからに不機嫌になるヴァレンシア
「すまん」
「前置きせんかったワシが悪かった」
「ワシに免じて納めてくれんか?」
「納めるも何も未だ始まってない」
私はそう言い放つと手近な椅子を引き寄せて座る
「立ち話も何でしょう?」
「リグルさんもお座りなさい」
「ぁあすまない」
「座らせて貰う」
「ところでリグルさんはこの土地の出身なのか?」
「出身と言うか」
「100年前に転生してきた」
「もしかしてドワーフ?」
「かっかっかっ」
「ワシは不死の呪いを受けとるだけじゃ」
「不死の呪い?」
「そうじゃ」
「病気や老衰で死ぬことはない」
「じゃが不死なだけで歳はとる」
「このままいくとどうなるんじゃろうなぁ・・・」
「女神ミリアへの信仰はあるか?」
「いいや無いね」
「ワシもとうに失ったわ」
不機嫌そうに答えるヴァレンシアと遠くを見つめるように呟くリグル
「なら隠さず話そうか・・・」
長い夜が始まろうとしていた