鎧武者
ギィンッ!!
カンッキンッ
シャガッ!!
「手強いわね」
「でも不思議なのは・・・」
キィィンッ
カカカッ!!
数合打ち合い間合いを取る
再び切り結び離れると構えて隙を伺う
「この大鎧を着た鎧武者は一騎討ちしかしてこんな」
「こっちの兜飾りの無い鎧武者は纏めてかかってくるが・・・」
ガシャアンッ!!
比較的簡素な鎧に身を包む鎧武者が吹き飛ばされ壁に叩き付けられた
空かさず手を突っ込み魔石を剥ぎ取る間も兜飾りの有る大鎧は手を出してこない
「武士道ってやつ?」
「でもその分格段に強いけどね」
前衛が劣性でも加勢する事はなかったが最後の一体が倒されるや否や抜刀して襲い掛かってきた
「一騎討ちか」
「受けて立とう」
リグルが前に進み出て初太刀を防ぐ
数合斬り結び再び間合いを取るとリグルと大鎧
身の丈程の長太刀を構える大鎧は歴戦の剣士のような印象がある
攻撃方法も袈裟斬りから切り払い突いて来たかと思えば切っ先が跳ね上がり大上段から振り下ろしてくる
「この剣技は・・・・」
「間違いない」
「日本の剣術だわ」
「確かにそうじゃな」
「じゃがっ」
ギィンッ
ドシャッ!
リグルは鎧武者の一撃を弾き左の小手に一撃を加える
鎧武者は後ろへ飛び退くと再び長太刀を構えた
「それだけに太刀筋が読めるわ」
「しかしこの世界で剣術を使う魔物等初めて合うのぅ」
リグルは目を細め金砕棒を構える
互いに長い武器を木の枝を振るかのように扱い打ち据え切り払い受け流し弾き返す
命のやり取りだと分かっていても思わず見惚れてしまう程の太刀捌きが繰り返されている
「アリエル」
「こっちは片付いたけど・・・・」
「リグルの一騎討ち」
「凄いわね」
シンシアとラルクも周りの武者を倒し合流するが加勢するかどうかを悩んでいた
「アレだけ長い獲物を振り回されちゃあ手出しできないわ」
「下手に近付けばミンチになっちゃうわよ」
「あの大鎧タイプが一斉に襲い掛かってきたら結構厳しいですね」
「武士道とかじゃなくて合理的に一騎討ちを仕掛けてるのかしら?」
「あの威力だと単騎の方が強そうだし」
「それは分からないわね」
「でも単騎の方が強いって言うシンシアの意見には同意だわ」
「乱戦になればあんな風に振り回せないもの」
ガギィンッ!!
「フンッ」
「魔物にしては良くやるわ」
「ワシも本気で掛からねばならんか」
この4階層は天井が高い
壁に囲まれた迷宮なのに天井が見えない
どう言うセンスなんかは分からないが幅が広い通路も長い武器を活かすためならば合点がいく
フロアも複雑さは無く迷わせる意図は感じられない
だが袋小路に入ると必ずと言って良いほど背後に鎧武者が出現する
初期配置は無く待ち伏せの罠が仕掛けられている印象だ
「そろそろ終わりにするかの」
ガランッガラガラン
リグルは静かに呟くと金砕棒を捨て背中の大剣を引き抜き大上段に構えた
あの構えには見覚えがある
切っ先を下げず高く掲げた大上段
「ねぇシンシア」
「リグルの出身地って聞いたこと有る?」
「いえ」
「戦時中の日本から来たとしか聞いていないわ」
「それがどうかしたの?」
「九州の人なのかなって・・・・・」
「あの構えは薩摩示現流蜻蛉の構え」
「初太刀に全身全霊を乗せる必殺の技」
一瞬リグルの身体が揺らめいたと思った瞬間リグルの一太刀は大鎧を真っ二つに切り伏せていた
ー・ー
「思ったより良い刀のようじゃな」
先程切り伏せた大鎧の持っていた長太刀を見るやリグルの顔から笑顔が溢れる
「じゃあ持って帰って手入れしなきゃね」
雑兵クラスの武器はそれ程でもないが指揮を取る大鎧が持つ武器はどれも質が良かった
痛みの少ない刀や長巻を回収してストレージに入れておく
この迷宮内部では身体能力が著しく低下するがこの手の魔法は問題なく発動するのは便利だ
「大体のマッピングは終わったわね」
「あとはこの右奥の角とこの怪しい扉ね」
これまでの探索でボス部屋らしき場所は既に見当がついている
右奥の探索を終えれば問題なくボス部屋の攻略に専念できるだろう
「他にも良い薙刀や十文字槍持った大鎧出んかのぅ・・・」
「リグルってこう言う良質な武具好きだもんね」
「まぁな」
「長く生きとると収集ぐらいしか趣味も無くてな」
「そう言うシンシアはどうなんじゃ?」
「私?」
「私はそうねぇ」
「服にお酒に装飾品」
「それと美味しい食べ物があれば良いかな」
「何か女性の贅沢フルコースみたいだねw」
「恋愛が無ければそんなものじゃない?」
「今はこの旅が楽しいから他の物はそこまで重要じゃないかな・・・」
なんだかんだと話ながら迷宮を進む
攻略完了を示すため壁に魔法の明かりを付着させて進んで来た
そのため道に迷うことはない
「良かった」
「目印にした鎧の残骸はちゃんと有るわね」
「これがあれば待ち伏せの袋小路に間違って入る心配ないものね」
「アリエルて迷宮探索の経験豊富なの?」
「若い頃TRPGとかにはまってたからねw」
「こう言う迷宮探索って好きなのよ」
「TRPGって何?」
「シンシアは分からないか」
「歳の差感じちゃうなw」
「TRPGは進行役が用意したシナリオに沿ってマスターとプレイヤーが会話で進めるゲームなの」
「ルールは有るけど人間同士だから自由度が高くてね・・・・」
「良くマスターを泣かせたわw」
「なんだか良く分からないけど冒険の擬似体験って事ね?」
「そうそう」
「スマホなんか無かった時代からあるゲームで人気は有るんだよね」
「今度やってみたい気もするわね」
「リアルに魔物のいる剣と魔法の世界では楽しめるかどうか分からないわね」
「でも一般人の娯楽としてはウケるかな?」
話ながら歩いていると明かりの届かない通路へとたどり着いた
「話しとる所悪いんじゃが・・・」
「この通路はちと勝手が違うようじゃぞ」
暗い通路の先に目を凝らすと大きな影が1つ通路の真ん中に立っている
高さは1mちょっとぐらいで人が立っている感じではない
「門番?」
「どうじゃろうなぁ・・・」
「見た感じ正座しとるように見える」
シンシアが魔法の明かりを飛ばして通路を照らし出す
明かりが進むにつれて姿を現したのはリグルの言う通り正座した大鎧だった
他の大鎧に比べると鮮やかな装飾が施され身分の高そうな印象を受ける
「床に置かれているのは十文字槍のようね」
「リグルがフラグ立てるから早速出てきたわよw」
「腰には小太刀か」
「他の大鎧よりも格上な感じがするわ」
「アリエルもそう思うか」
明かりが近付いても正座した大鎧は微動だにしない
やがて明かりは大鎧を通過して通路の先を照らし出した
「扉?」
「このフロアで扉を見付けたのはこれで2つ目ね」
「向こうの扉には門番なんぞおらんかった」
「もしやこっちの方がボス部屋か?」
「念のため後回しにしましょう」
私の提案にシンシアは弱い明かりを床に付着させ大鎧の手前にも魔法の明かりを付着させた
「とりあえずマッピングを終わらせましょう」
ー・ー
「どう言うことじゃ?」
「今度は仁王立ちで道を塞いどるぞ?」
探索を続けていくと再び通路に影を見つけた
先程の影よりも明らかに大きく遠目からでも仁王立ちしているのが分かった
「金砕棒を持っているわね」
「こっちはパワー系か」
大柄なその影は全身鎖帷子で出来ており鉄の胴鎧を身に付け兜の代わりに白い頭巾を被っている
「あれはもしかして・・・・」
「武蔵坊弁慶と言ったところじゃな」
リグルが進み出て目の前の武者と同じく金砕棒を地面に突き立て仁王立ちして見せる
ギギッ
ギチッ
すると弁慶は会釈をした後金砕棒を先端を下に向けて構えた
「律儀な奴じゃのぅ」
「対峙すれば直ぐに襲い掛かってくるもんじゃと思っとったのにな」
リグルは静かに左足を踏み出し金砕棒を立てて構えた
「八相の構え・・・」
「様子見で軽く打ち込むつもりなのかしら?」
ヒュバッ!!
リグルが先に仕掛け金砕棒が袈裟の軌道を描く
ギィンッ
ジャオンッ!!
弁慶は金砕棒で軽くいなし翻してリグルの頭を打ち据えにかかる
「中々やるのぅ」
「力技だけではないと言うことか」
リグルは頭上で金砕棒を振り回すと遠心力を乗せて打ち据える
弁慶はそれをひらりと躱し大上段から打ちにかかる
それをリグルは金砕棒で受け流し横に薙ぐと弁慶はそれを左の籠手で弾き返す
「やはり軽い一撃では効果無しか」
今度は先に弁慶が仕掛けリグルに躱された横薙ぎに一閃を翻し真正面から打ち込んでくる
ヒュオンッ
ビヒュッ!
リグルは太刀筋を見切り右に躱しつつ金砕棒を翻し下から逆袈裟に打つ
これを弁慶は左の籠手で受け止めると同時に金砕棒を振りかぶり横に薙ぐ
ガギャンッ!!
「ガハッ!!」
リグルは横薙ぎの一撃を鎧の脇で受け止めると金砕棒を手放し弁慶の右肩と足の付け根を掴んで一気に持ち上げた
踠く弁慶をそのまま角度を変え勢いを付けて頭から叩き落とす
ゴッシャッ!!
投げられた弁慶の頭は無惨にひしゃげ弁慶は背中から地面に倒れ込んだ
「トドメじゃ」
素早く金砕棒を拾い上げたリグルはゴルフのスウィングのように弁慶の頭を吹き飛ばし翻して胸を打つ
ガゴォォオオンッ!!
銅鑼を鳴らしたような爆音が鳴り響き大鎧はそのまま動かなくなった
リグルは大鎧の傍らにしゃがみこむと胸への一撃で剥離した魔石を拾い上げたのだった
ー・ー
「ふぅむ」
「まだ先があるのぅ」
「マップから予測すると何かあってもおかしくないわね」
「それでアリエル」
「このまま進む?」
「正座していた奴とこの弁慶はどっちが強かったんだろう?」
「門番のいなかった扉はボス部屋じゃなかったのかな?」
「見た感じでは先程の弁慶は他の大鎧と比べ物にならないくらい強かったように感じました」
「そうじゃな」
「ラルクの言う通り力も技も他より数段強かったわ」
「脇で受けてたけど大丈夫?」
「ちと痛いがまだ平気じゃ」
「踏み込んで根元で受けてたとは言えリグルが痛いってことは相当よね」
「ワシを何だと思っとる?」
「金剛力士」
「青銅の巨人」
「龍殺しの英雄」
「・・・・・・・・・」
「頑丈なのは確かじゃな」
リグルは私達3人の返答に苦虫を噛み潰したような顔をしたが気を取り直して弁慶の傍らに跪く
「全身が鎖帷子で出来ておるな・・・・・」
「こやつの金砕棒の方が良い物のようじゃ」
「頂くとしよう」
リグルは一回り大きい弁慶の金砕棒を掴むと弁慶の腰に差された小太刀を鞘ごと引き抜いた
「これも貰っておこう」
「ワシが貰わんでも後続が剥ぎ取るじゃろうしな」
リグルが弁慶を見ている間私達は奥を見て回る
そこは扉で仕切られていない大広間で奥の方に建物のような物が見えた
「迷宮の中に建物・・・」
「アタリね」
「多分こっちが正解路だと思う」
「じゃあ引き返して他の扉を攻略しなきゃね」
早足で来た道を戻ると後続の支援部隊と出会った
簡単に状況を説明して地図を共有すると門番のいない扉へと急いだ
ー・ー
「この部屋は何なの?」
「後続も入ってないって言ってたけど・・・」
そこは柱の無い大きな部屋だった
シンシアが魔法の明かりを飛ばすとその全容が見えてくる
「何もないな」
「罠がある風でもない」
そこは奥まで30mぐらいはあるだろうか?
柱1つ無いただ広いだけの空間だった
「普通は真ん中ぐらいまで進んだらボスが出るとかそんな感じだよね」
「確かにそんな演出の迷宮とかあるわよねw」
「あれって迷宮製作者の趣味なのかな?」
「ゲームあるあるだけどそう言うお約束ってやっぱりあるんだw」
「罠としては効果的だもんね」
「アリエルもシンシアも入り口で話しとらんで早う奥まで来んか」
「見た目で何もないからと探索せんわけにもいかんじゃろ?」
「リグルの言う通りね」
ラルクは既に壁際のチェックを行っている
おそらく隠し通路や扉を探しているのだろう
シンシアは天井に明かりを飛ばし上に何か無いかを調べている
私は地面に目を凝らし石畳に段差がないかを入念に調べていく
「床に罠がある感じは無いわね・・・」
「この部屋は何なのかしら?」
見回すが柱すら無い部屋は荒涼としており暗い室内は不気味だ
「何もないな」
「天井にも異常は無いわね」
「壁にも仕掛けは有りません」
「何もないようだから次に行こうか」
わざと先頭を歩き扉に手を掛けた
シュバッ
扉が完全に開かれた瞬間上から何かが滑り落ち床に突き刺さる
ギロチンだ
「悪趣味な罠ね」
「何も無い部屋の帰り際に発動とか・・・」
微かに震え上へ跳ね上がる刃を蹴り飛ばして罠を破壊する
続いて扉を壊して閉まらないように細工すると部屋を後にする
「次はあの正座してた門番のいる所ね」
「地図を見た感じでは行き止まりかな・・・」
「別エリアの可能性も無くはないわね」
「やめてよシンシア」
「そんなフラグ立ててホントにあったらどうするのよ・・・・・」
「馬鹿な話はその辺で終わりにしてくれ」
「奴はお待ちかねのようじゃ」
再び正座する武者の前に立つ
自然に落ちていた肩はしっかりと上がり太股に置かれた手は握られていて前回見た時よりも明かに雰囲気が変わっていた
「弁慶が倒されたのを知っているのかしら?」
「もしかしたら先程の部屋の罠やも知れんな」
警戒しながら武者へと近付くが反応は無い
武者は座布団に座っておりその正面には少し埃っぽそうな座布団が置いてある
リグルは座布団を持ち上げると軽く叩いて埃を落とし武者の前に置いて正座した
カタッ
カタカタカタッ
鎧武者は微かに震え俯いた顔を上げる
その眼窩に紅い火が灯り面頬が口のように開いた
「ナンジハ・・・・・」
「イヅコヨリキタリヤ・・・・」
何かを擦り合わせたような耳障りな低い声が響く
「我は異界より罷りこしたる戦士である」
リグルの凛とした声が響き渡り闇に溶け再び静寂が辺りを閉ざす
カタッ
キシッ
「ワガトモヲウチシハナンジラカ?」
「我が打ち倒したり」
「これがその証なり」
リグルは弁慶から奪った金砕棒を目の前の武者に差し出した
「・・・・・・・・・・・・」
「ハラカラハトキハナタレタカ」
「ナラバワレモカタキヲウタネバナラヌナ」
武者は傍らの槍を手にすると静かに立ち上がった
それを受けてリグルも立ち上がる
「いざ尋常に」
「マイル」
ヒュンッ!
武者の手にした槍は柄が太目の十文字槍
そこから繰り出される突きは鋭く紙一重で躱そうものなら左右に突き出た三日月状の刃に切り裂かれる
リグルは大きく避けざるを得ず反撃の糸口が掴めない
「アレはヤバイわね」
「魔法で援護した方が良い?」
「やめておいた方が良いと思う」
「多分だけどあの武者の有効殺傷範囲は15m近くある」
「私達もここから動けないわ」
ラルクの額に汗が浮かび頬を伝って床に落ちた
リグルと武者の攻防は凄まじく振るわれる槍と金砕棒は風を切り裂き唸り声を響かせる
そんな最中であっても鎧武者の殺気はこちらにも向けられていた
「この鎧武者は他と何もかもが違うのよね」
「動く鎧が言葉を話すなんて聞いたことがないわ」
「普通の動く鎧ではないって事?」
「そもそも動く鎧自体どんな魔物か良くわからないのよね・・・」
「鎧その物が魔物なのか何かが憑依しているのかも判明していないわ」
「この個体差から考えると・・・・」
「普通の動く鎧は鎧その物が魔物でこの強い個体は誰かの魂が憑依しているのかも?」
「似ているけれど別の魔物って事?」
「アリエルの推理ってだいたい当たるから今回も多分そうなんだろうね」
「やっぱりあの鎧武者や大鎧は転生者の成れの果てだと思う?」
「たぶんね」
「私も詳しい訳じゃないけれど明かに日本の武術を使う相手がいるもの」
「ほら」
「今リグルが戦っている鎧武者なんて明かに達人の槍捌きでしょ?」
素早く繰り出され薙ぎ斬り上げ叩き付ける
その動きは流麗で隙がなく槍をしごく音と風を切る音が絶え間無く続いている
「これは・・・・」
「勝てんな」
防戦一方のリグルが呟いた
鎧武者の攻撃は全て逸らし躱し続けているが反撃が出来ない
突きが鋭すぎて間合いが詰められないのだ
「ヌゥゥウンッッ!!」
ガッ!!
リグルの一撃が槍を弾き間合いを一気に詰めるが逆に石突きで弾き飛ばされる
ゴロゴロゴロドンッ
「あいたたたたっ!」
後ろに転がり倒れたリグルを鎧武者は追撃せずに槍を構えたまま立っている
「降参じゃ」
「ワシでは勝てん」
リグルは金砕棒を手放し胡座をかいて座った
ギキッ
キシッ
「ドウジニカカッテキテモカマワヌゾ」
鎧武者はヒュルンと槍を翻すと少し下がり再び十文字槍を構えた
横から突き出た三日月が魔法の光を反射してキラリと光る
「アリエル、ラルク」
「同時にかかるわよ」
「待って」
「1人でやる」
私は金砕棒を床に置くと保管魔法から先程手に入れた長太刀を取り出す
「カタナカ」
「ソレデヨイノカ?」
「構いません」
「マイル」
正面の矛先がブレて3本の槍が現れる
高速の3段突きだ
必殺の突きをサイドステップで右に躱すと一気に踏み込みお返しとばかりに3段突きを見舞う
「ヤルナ・・・」
鎧武者は巧みに槍を翻し長い柄で切っ先を逸らして防ぐ
それと同時に槍を回して斬り上げてきた
三日月が光を反射して妖しく弧を描く
シャオンッ
わざと太刀を滑らせ槍を上へと跳ね上げ間合いを詰めた
「これならどうよっ!!」
跳ね上げられた槍は直ぐには戻せず懐に入った私は太刀の束で武者の脇腹を打ち据える
鎧武者はたまらず後ろへ退き再び槍を構えた
「ナカナカテクセガワルイナ」
しゃがれた鎧武者の言葉はどことなく嬉しそうに聞こえた
「返した方が良いかしら?」
脇腹を打った時に鞘ごと引き抜いた小太刀を差し出す
「ヨイ」
「ソレハモウオヌシノモノダ」
先程と違い前傾姿勢で一文字槍を構える鎧武者
私はベルトに小太刀を差し込むと長太刀を正眼に構え徐々に重心を前へと倒していく
シャオッ!!
刃を立てた鋭い突きを左へと躱し前へ出る
すかさず引きながら薙がれた槍を太刀で上へ受け流し間合いを詰めようとするが既に武者の方から間合いを詰めてきた
「間合いを潰されたっ!!」
束で打つことも出来ない至近距離から鎧武者に押し出され再び間合いを開けられた
太刀で薙ぐ間も与えられず石突きが飛来して後へと飛び退く
そこへ先程の3段突きが襲い掛かり辛くも太刀で防ぐしか出来なかった
「この太刀では勝てないわね・・・」
ストレージに長太刀を仕舞うと2本の刀を取り出す
「アキラメヌカ」
「ヨイ」
再び鎧武者の猛攻が始まり両手の刀を使い捌いていく
警戒しているのか間合いを詰めて突きに余力を残している
その為上へと弾いても槍は伸びきらず直ぐ様取って返し石突きが飛んでくる
「まだまたぁっ!!」
しかしこちらも二刀流は伊達じゃない
右手で跳ね上げ石突きを左で逸らし放つ斬撃を槍で防がれれば刃を滑らし指を薙ぐ
一進一退を繰り返し何十合と斬り結び風を切る音が絶え間無く鳴り響いた
ガランッカラッ!
槍が落ちる音が響き風を切る音が止む
皆の視線が私達に集まり固唾を飲んだ
そこには両手の指が壊れ無手で構える鎧武者の姿があった




