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初めての旅〈ノッキングヒル2〉

周りに人の気配が無いのを確認してマントと鍋を錬成する

後は何が必要だろうか?

着替えなんかはする気はないし

手入れ用の布と油の瓶を用意しておく


暫く歩くと幾つかの切り株が見付かった

前に滞在した隊商か何かが伐採したのだろう


人の太股程の太さの木を見付けるとそれを斬り倒し2m程に切り分ける


念のため手斧も作っておこう


格納魔法が一般的なのかどうかも分からないので取り敢えず不自然にならない程度に留めておく


蔦を利用してロープを錬成し倒した木を梯子状に繋ぐそこに束ねた丸太をくくりつけて運ぶことにした


ー・ー


コンコンコン

コンコン

コンコンコン


ガッゴッガッゴッガッ

ゴコッゴッ


クレイルが扉を開いて迎えいれてくれた


「この小屋は旅人の避難場所としても使われる」

「だから扉は閉めるが一応見張りは必要だ」


塀の中で持ってきた丸太を手斧で薪の長さに切り別けていく

本当は鋸の方が良いのだが鋸を持った旅人なんかいないだろう

切り別けられた丸太を小屋の軒下へと積み上げる

軒下には左右にしきられた薪置き場が有りその片方へと積んでいく


小屋に入ると


クレイルとヘッグスは鎧を脱いで手入れを始めていた

ニーズは未だ鎧を着ており火の番をしている


「たまに夜中に魔物や盗賊に追われた旅人が逃げ込んで来る」

「そんな旅人に化けた盗賊もな」

「だから夜の番は野営と変わらないと思ってくれ」


「わかった」

「順番はどうするんだ?」


「俺は最後にする」


順番を聞くとクレイルが自分が最後だと応えてくれた


「クレイルはリーダーだからいつも眠くなる夜明け前をやってくれるんだ」

「別に俺がやっても構わないんだがなw」


笑いながら応えるヘッグスは丁寧に装備の手入れをやっていた


「なら初めは俺がやろう」


「なら頼むよ」

「外に行くのか?」


「中だと塀の外の音が分かりにくい」


「そこまで神経質にならなくても大丈夫だろう」

「この街道は比較的安全だからな」


「そう言うものか?」


「そう言うものだ」


改めて部屋の隅に雑嚢を下ろす


テーブルには昼間作った干し肉が並べ別けられており自分の取り分を受け取った


「皆より多くないか?」


「ラックが仕留めたんだから当然だろ」


肩をすくめるクレイルに礼を言うと雑嚢から革を取り出し干し肉を包んで入れる


「ラック」

「兜くらい脱いでも良いんじゃないか?」


その言葉に一瞬戸惑うがこんな風に言われるのは予測済み

兜の下に口許を覆うマスクを造って着けていた


兜を脱ぐとテーブルの隅に置く


「見張りがあるから今は鎧は脱ぐわけにいかんだろうが寛いで身体を休めてくれ」


ニーズが湯気の立つポットを持ってきた


「カップはないのか?」


忘れていた


雑嚢に手を突っ込んで探すフリをしながら木のマグカップを錬成する


取り出すと井戸まで行き軽く濯いだ


「見張りがあるから酒は程ほどになw」


そう言いながら注がれた液体は温かいハーブティーのようだった


「コイツは見た目によらずハーブティーなんかを作るのが得意なんだよw」


「親が庭師でな」

「母親が作ってた物の見様見真似だ」


ニーズは全員にハーブティを注ぎ終わると再び水を足してポットを暖炉の前に置いた

暖炉には燻製釜が併設されていてそこに4本の脚を吊るしてあるらしい

この世界では日常的に燻製を作る文化があるのだろう

日本にいた時にはこんな暖炉があるなど聞いた事もなかった


「燻製が旨そうだからってつまみ食いはダメだぞ?」

「なぁヘッグスw」


どうやらヘッグスには前科があるらしい

苦笑いしながらもうしないと言っている


晩御飯はヘッグスが背負っていた大鍋で作ったシチューと黒パン

竈のほうも横にある小さな鉄扉を開けるとオーブンになっていてその気になればパンが焼けるようだ

そのオーブンで少し水に浸した黒パンを焼くことで硬い黒パンは食べやすくなっていた


夕食を食べ終えると各々装備の手入れを始め脱いだ鎧を革で磨き剣や斧の刃に石を当てる

一通り研ぎ終わると各々壁際で眠りに就いた


どの世界でも隅の方が落ち着くのだろうか?


もし襲撃にあった場合壁際の方が危険な気もするのだが・・・


取り敢えず皆が手入れをしている間剣を研ぐフリはしておいた


寝ている間に物音を立てるのも何なので寝静まった後はあまり動かないようにする


ー・ー


ゴンゴンゴンゴンゴンッ


「開けてくれ!!」

「誰か!!」


激しいノックと声に即座に起き上がるクレイル

その姿を見て直ぐに外に出た


「外を見てくる!!」


「わかった!!」

「気を付けてくれ!」

「おいっニーズ!ヘッグス!起きろ!!」


外へ出ると扉が激しく揺れていた

かなり切羽詰まった様子だ


「今開く!!」

「下がってろ!!」


急いで駆け寄り閂を開けて扉を蹴り開く


「うわあっ!!」

「たっ助かった!!」

「早く閉めてくれ!!」


言われるまでもない

扉にはロープが結わえてありこう言う時は引いて閉める事が出来る


ガサササッガコンッ

ガウガウガウガツガウッ!!

ガッガシッガッガッ


扉の外では狼らしき鳴き声が響き扉や塀を引っ掻くような音が続く


「大丈夫か?」


「たっ助かった」

「あっありがっゲホゲホッ」


駆け込んできたのは3人組の男女だった

2人の男は腕や脚に傷を負っており激しい戦闘の痕が窺える


「敵は狼か?」

「何匹くらいいる?」


「うっううう・・・」

「クリミアが・・・クリミアが・・・」


「クレイル!!」

「後は頼む!!」


「ラック何をする気だ?!」


クレイルの言葉には答えず壁へと走る

助走を付けて飛び上がると壁を掴みその勢いのまま壁を乗り越えた


「ラック!!!」


クレイルが叫ぶが構う事はない


降り立った先で見回すと10頭程の狼が待ち構えている

その後ろにいるのは・・・

獣人か?


剣を抜き放つと手近な狼に斬りつける


ギャウッ!!


断末魔の鳴き声をあげる狼は怯むこと無く同時に2匹が襲いかかる


「これは普通じゃないな・・・」


仲間を斬られても怯まない

野生であれば身の危険を感じ警戒するものだろうが・・・


襲い来る狼の一匹を楯で弾き飛ばしもう一匹は一刀の元に斬り伏せる


すると今度は3方向から襲い掛かってきた


「鬱陶しいっっ!!」


大降りに薙ぎ払い2匹同時に斬り飛ばす

残りの1匹は後ろへと回り込み噛みついてきた


ガッギッ


足に噛みつくが歯が立つわけもない

しかし離さず噛みついたまま後ろへと引っ張り倒そうとして来る


「フンッ」


剣の腹で頭を殴り飛ばし無理矢理引き剥がした


残りの狼達は少し警戒したのだろう遠巻きに威嚇している


「ゴゥアッ!!」


暗闇から咆哮が上がる

狼達は身を震わせ身構えた


やはり何かに率いられている・・・


軽く剣を廻し威嚇する

それでも尚間合いを詰めて来る狼達


何頭か斬り倒した筈なのにまだ10頭はいる

生き返ったわけではない


増えているのだ


「もう少し数を減らしておく必要があるな」


バックステップで攻勢を誘うとあっさり乗ってきた


「所詮は獣か」


左右へステップを交えながら剣を振るう

一振ごとに狼は斬り飛ばされ宙を舞う


半数を斬り捨てた頃

暗闇から紅く光る目が急速に近付いてきた

素早く剣を巡らせ牽制する


ガギンッキンギンッ


硬い物に当たる甲高い音と衝撃が走る


「やっとお出ましか」


連続で3合斬り結ぶと飛び退き間合いを取る


「コイツは何だ?」

「ノールにしては戦闘力が高そうだ」


聞こえるように呟くが反応は無い


「知能は無いか」


ヒュヒュンヒュン


剣を振るい風切り音を響かせるが相手に怯む様子はない

楯を前に付きだしながら半身になり切っ先を相手に向けて構える


ゴルルルルルル


「狼男や狼もどき犬男なんかは話せるだけの知性があると思うんだがこの世界では違うのか?」


楯を構えながら切っ先を後ろへと流し突撃する


「ハッ!!」


獣人に正面から楯打突撃(シールドラッシュ)を仕掛け連続で斬りかかる


右から袈裟斬りに斬りつけるが浅い

楯で吹き飛ばされたと言うより当たった瞬間後ろへ跳んだのだろう


ガアウッ!


背後から襲ってくる狼はあえて無視して鎧で受ける


ガッギギッ


牙が鎧に擦れて嫌な音を立てる

先程と同じように剣を振り上げ・・・


グァオウッ!!


叩き付けようとした瞬間獣人が襲い掛かってきた


ゴッ!!


鈍い音を立てて楯のカウンターが入る


「見え見えなんだよ!!」


頭上で剣を翻し横薙ぎに首を斬り飛ばした

頭を無くした獣人に掴みかかられるが続けて放った胴薙ぎで引き剥がす


率いていた主を失い狼達は蜘蛛の子を散らすように逃げ去って行った


ー・ー


「ラック!!」

「ラァーーック!!」


夜の静けさを取り戻した後

夜明けを待ってクレイル達が扉を開けて出てきた


その頃には狼達の死骸を集め毛皮を剥ぐと積み重ねて焼き始めるところだった


「ラック?!」

「これお前一人でやったのか?」


「手負いだったからな」

「何とかボスを倒して撃退できた」


狼と獣人の頭を並べて威嚇するように吊るしておく

毛皮と牙と爪は切り取り集めておいた


「肉は旨いのか?」


素朴な質問に応えたクレイルの返事は早かった


「いや狼系はあまり旨くない」


「なら燃やしてしまうか」


3人に手伝って貰い大きな穴を掘ると真ん中に櫓を組んで火をつける

火力が上がってきた所に狼の死骸を放り込み焼いていく


一通り焼き終わる頃には昼を回ってしまい穴を埋める頃には日が傾き始めていた


「これは今日の主発は諦めた方が良いな」


死骸を焼いている間に剥いだ革を水で洗い干していた

不味いようだが幾つかは取り分けておいて昼食と夕飯に回す


「確かに臭みがあって硬いな」

「でも食えなくは無い」


昼食はあまり時間もなかったので普通に塩焼きだったのてこんな印象だった


夕飯


昨日逃げてきた3人組

アレックスは利き腕を負傷

トーマスは左脚に噛みつかれたらしく傷もさることながら熱を出して寝込んでいる

マリーは怪我こそしていなかったものの親しかった友人が犠牲になってしまったようでかなり落ち込んでいた


そんな3人に狼の肉を出すのもと言う話になり昼は昨日の鹿を振る舞った


だが・・・


臭みが強く固いと言って敬遠するにはあまりに量が多すぎる

昨日今日と小屋の周りで採取したハーブをフル活用して幾つかの料理を作ってみた

昨夜の戦闘があってからも普通に朝から動き回っていたので皆が気を遣い休むよう勧めてくれたのだ


しかし


今の私にはこの程度で休息など不要


なので採取したハーブを使い狼肉を燻製にしたりオーブンで焼いてみたりと試行錯誤していたのだ


その為小屋の周りには常に美味しそうな肉の焼ける匂いが充満しており獣や魔物ならずとも引き寄せられてしまうような状態だった


夕暮れ時には更に3人の冒険者が増えていた

本来ならばクレイル達と交替となる伝令役である


「なんか旨そうな匂いが漂ってるなぁ」

「って思ったらクレイルじゃないか」

「中間地点に来なかったかと思ったら伝令の仕事をほったらかして何してやがる」


険しい顔で訴えているのはエディ

クリスとアーノルドの2人を纏める伝令役のリーダーである


「まぁそう言うなよエディ」

「昨夜ここで魔物の群れに襲われたんだ」


「この平和な街道で?」


怪訝な顔をするエディにクレイルは更に続ける


「出たのは10頭以上の平原狼(プレインウルフ)を従えた狼猿(ウルフエイプ)だ」


「そんなのに襲われて無事な筈がないだろ?」


「嘘だと思うならあの入り口にある晒し首を見るが良い」


クレイルの言葉に生首を見やったエディは目を丸くしていた


「本当にアレは狼猿(ウルフエイプ)じゃないか」

「それも大きい」


「正直ラックがいなければ危なかった」


「あんなのが出るなんて何があったんだ?」

「狼猿なんてここいらでは目撃例も少ない強い魔物じゃないか」


「詳しくはアレックス達に聞くと良い」

「彼等が最初に襲われた生き残りだ」


「狼猿はアレックス達を追ってきた」

「仲間も何人か殺られたらしい」


「そうか・・・」


エディは思わず絶句していたようだ

何事か考えていたようだが・・・


「俺達は明日アレックス達を護衛してノッキングヒルへ向かう」

「エディ達は調査隊にこの事を伝えて欲しい」


「わかった」

「なら今夜は全員で夜営だな」

「それにしても・・・」

「なんだこの香りは?」

「こんな香りを嗅がされたら腹が減って死にそうだ」


「同感だ」

「助けた中にマリーと言う女がいた」

「彼女が作ったのだろうか?」


「やけに旨そうな匂いがしてるじゃないか」


クレイルがエディと共に小屋の中へと入ってきた


「あぁ」

「寝ているのも暇だから狼を使った料理を試行錯誤していたんだ」


「ラック?」

「寝ていなくても良いのか?」


「狼料理だって?」

「臭いアイツ等が旨くなるなら狼は狩り尽くされるかもなw」

「違いない」


豪快に笑うエディとクレイル

確かに普通に焼いただけでは不味かった


しかし肉を叩き隠し包丁を入れ更にハーブを擦り込む事で肉質の固さを克服した

そしてハーブを調合したスパイスで臭みを消されたその肉は最早狼と言われても誰も信じないだろう


苦心したのは料理よりも保存食である干し肉の方だった


どちらの肉も鍋に敷き詰めクレイル達から鹿と交換した林檎を搾りワインで満たす

そこに数種のハーブを加え暫く浸しておく

その後干し肉用は吊るして水気を落としマリーの持っていた乾いたハーブを砕いて混ぜ込んだ塩を擦り込んでいく

燻製室にハーブを敷き詰めると肉を吊るして燻製にしていく

旅先だからかもしれないがハーブや香木を使った燻製はあまり一般的では無いらしい

ここの燻製室も香り付けした形跡は無かった


残る食事分は一口大に切り分け森で見つけた山椒を潰し入れる

野生の人参を切って鍋に入れる

刻んで水に晒してアクを取っておいた芋も同じく中に入れ火にかける


塩を振りかけ沸騰するのを待つこと数分間


そこにヘッグスがドライトマトを持っていたので別けて貰い刻んで鍋へといれていく


沸々と沸き始めると吊り金具を調整して鍋を浮かし中火にするとそのままコトコトと炊き続ける


鍋の味見をしながら塩とハーブを足していき味を整えてシチューが出来上がる

竈から芳ばしいパンの香りが立ち上ぼり否応無しに腹が鳴る


「マリー」

「皆を呼ぼうか」


楯と剣を持つと戸口に立った


ガンガンガンガンガンッ!!


「飯ができたぞー!!」


剣で楯を叩きながら大声で叫ぶと待ってましたとばかりに皆が集まって来る


中に入るとテーブルにスカーフを敷いてパンを並べていく

皆が持ち寄った物を濡らして焼き直したのだ


皆が自分の食器を濯ぎ順番にマリーにシチューをついで貰う

テーブルのパンを掴みそのまま小屋を出ようとする


「ちょっと待て」


燻製室を開けるとハーブの香りと肉の焼ける匂いが部屋に充満する


中から狼のバラをベーコンのように燻製したものを取り出しあばら骨1本ずつを切り分けシチューの碗に乗せていく


「これは旨そうな香りだが何の肉だ?」


「狼だよ」


材料知って苦笑いに変わる面々

しかし空腹には耐えられず各々薪や台の上に腰掛け食べ始める


「ん?」

「ぉおっ???」

「これは・・・」


「ラックこれって本当に狼の肉なの?」


小屋の中で椅子に座って食べていたマリーが驚きの声をあげる


「臭みが無くなってると良いんだが」


自分用の骨付き肉に齧りつくとまだ熱いバラ肉は肉汁が飛び出し湯気を立てている


「保存食にするからまだ完成ではないが・・・」

「思ったよりは旨いな」


ワインと林檎の果汁で柔らかくなった肉はハーブで臭みも消されて何とも美味しい


竈に近付くと骨付き肉を軽く炙っていく

肉の焼ける香ばしい香りが立ち込め表面がパリッと焼け始めた


「ラック私も焼いてみて良いかしら?」


無言で立ち退くと左手で合図を送りながら焼けた肉にかぶり付く

炙られた所がカリッとしていてまた美味しい


さて


メインディッシュのシチューを頂こう


野菜が少なかったのでそれ程甘味は出ていないが獣特有の荒々しい野性味を感じられる


脂が少ないので旨味が物足りない感はある

けれど臭みは消せていたので悪くない


「旨いな・・・」


「ホント美味しい・・・」


「ん?」

「んんん?」


自己評価と周りの反応の解離に違和感を感じるが・・・


そうか


食に関してはもっと素朴で未開なのだろう

現代の飽食を味わう前ならばこれくらいでも良いと言うことか


逆に言えば私が臭み消しに成功したと思えるのだから皆にはもっと衝撃的なのかもしれない


「ラック!」

「このレシピ教えてくれないか?」

「勿論ただとは言わん」


「俺も!!」

「私も!」


あー

こうなるのね


別に未完成の狼肉レシピを隠す意味もないので希望者全員に教えた


しかしレシピを教わったからと言って再現できるわけではない


マリーは仕込みの時から手伝って貰ったので細部の手順やポイントを全て教えてある


このレシピが旨すぎて狼が狩り尽くされる事はないだろうが食料不足に陥った時、空腹を満たす助けくらいにはなるだろう


腹も満たされ人数も増えたので見張りも2人ずつに増員し警戒に当たった


しかし狼猿(ウルフエイプ)や狼の残党による襲撃は無く朝を迎えた


ー・ー


「それじゃあエディ」

「調査隊への報告頼むぞ」


「任せておけ」

「危険な狼猿(ウルフエイプ)が近くに出没したなんて話は急いで伝えないとな」


「クレイルの方もギルドへの報告宜しくな」


「ギルドに調査隊を編成するよう進言しておくよ」


伝令役のリーダー達は互いに握手をして別れた

こちらのパーティーは負傷者のアレックスとトーマスを庇いながら町を目指すため時間がかかるだろう

距離を稼げなければ旅人の小屋を利用出来なくなるため危険度が増す

何か乗り物でも有れば良いのだが・・・


野生動物を捕獲したところでいきなり乗るなんて事は出来ない

ゲームやお話しじゃないんだからそんな直ぐに懐くわけがない


そこで思い出したのは松葉杖だ


道すがら良さそうな木を探す

蔓も見付けたので適当に取っておく


「ラックそんな物どうするんだ?」


「杖を作る」


「杖?」


「そうだ」


トーマスは長い棒を杖にして寄り掛かるようにして歩いている

熱もまだ高めで万全とは言い難い

しかしトーマスの為にいつまでも留まる事は出来ないし3人だけを残せば高い確率で全滅する


しかし・・・

この世界には松葉杖も無いのか?

もし作ってしまったら知識チートになったりしないのだろうか?


だが背に腹はかえられぬ


手頃な材料が集まると休憩時間に手早く加工していく

手斧を使い切り込みを入れて組み合わせ蔓で縛る

最後に脇に当たる部分に革を巻き付けて完成した


「なんだ?」

「本当にそれが杖なのか?」


「そうだ」

「トーマス!」

「使い方を教える1度しか言わないからよく覚えてくれ」


念押ししたところで松葉杖の使い方なんか一回で覚えられる

使い方と重心のコツを教えて松葉杖を渡す


始めこそ戸惑っていたがやがて使いこなして普通に近い速度で歩けるようになった


「使えるようになったからって無理はするなよ?」


皆見たこと無いらしく興味津々だった

このペースアップのお陰で日が沈む前に次の小屋にたどり着くことが出来た

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― 新着の感想 ―
キャラを分かりやすくするためだろうけど常に語尾にwがついてるのが気になってしゃーない
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