出発準備
「んー」
「今日も良い朝だ♪」
「アリエル」
「昨日のリリア、白目向いてたけど大丈夫なの?」
「その代わり吹きガラスの初歩までこじつけたから後は自己研鑽有るのみだよ」
思わずドヤ顔をしてしまう横でシュネーは縮こまっていた
「やっぱりアリエルは鬼にゃ・・・」
この世界にも「鬼」と言う概念があるのは驚きだ
やはり相当古くから日本人が召喚されてきたのだろう
それにしては日本刀も太刀も無いとは如何に?
鎧も西洋甲冑だしどうにもアンバランスだ
朝の散歩がてらに工房を見て回る
朝も早いのに工房には日が入り白い煙が上がっていた
その隣では炭窯が煙を上げ寝ずの番をしている若者がウツウツと船を漕いでいる
静かに近付くと薪をくべて火の番が座る小さな椅子を蹴飛ばした
「あいたっ!!」
「ここでアンタが寝たら折角の炭が燃えてなくなるでしょ?」
「しっかりなさいな!」
ピシャリと言い放つと若者は姿勢を正して眠い眼を擦りながら炎を見つめ直した
「おはよリリア」
「今朝も早いわねー」
「おはようございます!!」
自分だけの役割が出来たことが嬉しいのか溌剌とした表情でテキパキと働いている
「頑張ってる貴女に仕事を増やしてあげるわ♪」
「えっ?」
元気に動いていたリリアが一変して此方を振り向き固まっている
「そんなに難しいことじゃないわよ」
「昨日蝋型の使い方を教えたわよね?」
「今度はその応用で量産用の木型を作るの」
原型に使う木を取り出し大まかな形を削り取ると内側に細かな模様を彫り込んで行く
「この型は同じ物をたくさん作るときに使うものよ」
「こうして彫って重ね合わせると1つの形になるの」
実演しながら彫り進め炉の温度が上がる頃には完成していた
「私は作るのが特別早いから短時間でやって見せるけど・・・・」
「普通はこの型だけで何日もかかったりするわ」
「だから焦らず根気よく彫るのよ」
「リリアにはギオールやリンツにはない繊細なデザインが作れると思うの・・・」
「彫り終わったらコレ」
「漆なんだけど使ったこと有る?」
「それはかぶれ草ですか?」
「知らずに触ると真っ赤に爛れちゃう毒の草ですよね・・・」
「この草を絞った汁に顔料を混ぜた物が漆って言うの」
「塗って乾かせば水を弾くのよ」
「そうなんですか?」
「この毒草がそんな力を持ってるなんて初めて知りました」
「触る時は必ず手袋しなさいね」
「こうやって木型の内側に塗っておけば何度か蝋型を作ることが出来るのよ」
「アリエル先生が持っているそれは何ですか?」
「コレは刷毛よ」
「動物の毛を使ってこう言う漆や墨を塗るのに使うの
」
「墨?」
「絵や字を書くためのインクね」
「インクですか・・・」
識字率のそれ程高くないこの世界では墨やインクは高級品である
書くのも羽根ペンが主流で筆や刷毛はあまり知られていない
「そうそう」
「これなんだけどね?」
「蝋型を反対に使ってこうやると・・・」
眼にも止まらぬ早業で蝋型の内側に腕輪を削り出す
同じく猛スピードで砂型へと写し取ると砂型を半分に割って石のテーブルに置きその周りを木枠で囲んだ
「ちょっと待っててね」
ガラス炉に行くと程よく溶けたガラスを見付け砂型の上にドロドロに溶けたガラスをかけていく
「あっ・・・・・」
「そんなことしたら・・・」
程なく固まったガラスから砂型を壊して取り去り水で綺麗に洗い流す
「綺麗・・・」
金型ならぬガラス型が完成した
「これを使えば簡単に蝋型が作れるでしょ?」
「繊細なデザインには向かないけど・・・」
「これで作った蝋型に手を加えたら早く作れるから上手く使いこなしなさい」
「余裕が出来たら鉄で作って貰えば良いと思う」
「使う時はこうして革紐で固定して使うの」
「自分でも出来そう?」
「今は自信無いですが・・・」
「でもがんばります!!」
小気味の良い返事に頑張れと発破をかけるとリリアは嬉しそうに吹きガラスの練習を始めた
綺麗な玉が出来るまで何度も何度も・・・
続いて鍛冶場に入るとギオールが一人でハンマーを持ち換え相槌まで打っている
奥を覗くとリンツが真剣な眼差しでゴブリンの屑鉄を出来の悪い剣に研ぎ直していた
「もうこの子達は大丈夫そうね」
私は満足げに微笑むと工房を後にした
ー・ー
昼を過ぎた頃急いで到着した馬車隊があった
リグル商会である
「意外と早かったなw」
「それはもうっ」
「会長が先に行かれたんですから我々もゆっくりしていられません」
「おぅアリエル」
「コイツはここの支店長をやらせるグルードだ」
「グルードですっ」
「よろしくお願いします」
深い茶色の髪が印象的な好青年で彼の連れてきたメンバーは主に近隣の町へ定期的に巡回する商隊のメンバーらしい
「よろしくお願いね」
長身で金髪のグルードは青い眼をした好青年と言った印象で華奢な肩を上下させて息をしている事からかなり急いできたのが見て取れる
その長い髪が乱れた所も絵になる美青年だ
「その耳・・・」
「貴方はもしかして?」
「そうです私はエルフです」
「まだ100歳の若輩者ですがお見知り置きを」
「コイツは放浪中に拾ってな・・・」
「もう80年になるかの」
「そうですね」
「今年で82年になります」
「グルードは18歳そこそこで旅に出ていたの?」
「いえ・・・」
「私の里が帝国に襲われて皆散り散りに逃げたんです」
「その時に私達の一族はリグル会長に助けていただいたのです」
「そうだったの・・・」
「80年前と言うことはリディア戦役?」
シンシアの問い掛けにグルードが少し驚いたように答えた
「良くご存じですね」
「もっとも、シンシアさんもエルフに似合わず旅を続けておられるのなら当然と言えば当然でございますか」
「ねぇシンシア」
「エルフの集落ってそんなに頻繁に襲われるものなの?」
「アリエルは知らないだろうけどエルフは元々この大陸にはいなかったの」
「1000年以上昔に大陸から渡ってきた移民なのよ」
「一番初めに来たエルフは物凄い迫害を受けたらしいわ・・・」
「なんせこの大陸には亜人と言えば獣人か魔族だったから」
「そうなんだ」
「獣人は昔からいたんだ」
「昔からいたと言うより元々は獣人達の大陸だったと言うべきね」
「その割には今獣人の地位は低くない?」
「アリエルの疑問は当然ね」
「獣人達の創造主の多くがミリア達後から来た神々に負けてしまったのが原因で獣人達は虐殺されたり奴隷にされたり・・・」
「辛い時代ね」
「そうね」
「だから・・・・」
「と言うわけでもないんだけれど」
「私は人間よりエルフや獣人達の方が信用出来るわね」
「ワシの場合はの」
「人間は寿命が短いから長く協力して貰うには亜人の方が都合が良いだけじゃ」
少し遠い目をして話すリグル
そこへシンシアが私に囁いた
「あんなこと言ってるけど人間も亜人もお構い無しで助けて回るお人好しなのよw」
「聞こえとるぞシンシア」
ジト目でシンシアを睨むリグル
そのやり取りを見ながらクスクスと笑うクロエとシュネー
2人とグルードの表情を見るとこう言うやり取りもいつもの事なのだろう
心地よい昼の陽射しを受けながら暫く2人のやり取りを見ているのも悪くない気がした
ー・ー
「リグル商会の店舗もすぐに建ちそうね」
「アリエルの言う通りホントに建つの早いわね」
「まさか部品を持ってきて組み立てるだけとか思わなかったわ」
「私もそれには驚いたわ」
「戦前生まれのリグルが現代と同じ工法を選ぶなんてね」
「考えれば当たり前じゃろ?」
「おはようリグル」
「おはようアリエル、シンシア」
「クロエとシュネーも元気そうじゃの」
「安全で人手の有る町で作っておけば時間は短縮できる」
「じゃがそれが叶うのはワシやシンシアのように重い荷物を確実に運べる力を持った者だけじゃ」
「今回は通いの商隊を連れていたからの・・・」
「空荷で来させるより効率が良かろう?」
「その通りねw」
「やっぱりリグルはこう言うところは合理的よね」
「私だとそこまで気が回らないもの」
「しかし・・・」
「思いきって伐採したもんじゃのぅ」
「まぁね」
「今後の発展も有るけれど木炭が必要だったからね」
「伐採してまだ木炭にしない木は何にでも使えるように乾燥させているわ」
「アリエルは彼方で何をしてきたんじゃろうなぁ」
「何かとソツが無い」
そう言って髭を撫で下ろす姿は機嫌が良さそうだ
建物の基礎部分は土魔法で作っていた
それはこう言う遠征に連れて来れるだけ人材が豊かだと言う証拠
改めてリグル商会の巨大さと懐の深さを思い知らされる
「ところで」
「どうしたの?リグル」
「発つのは今日か?明日か?」
「後2日かな・・・・」
「多分教えた子達はもう自分達でやっていけるだろうけどね」
「やっぱりお手本はいるでしょ?」
「それよりも」
「リグルの装備見せてよ」
「ワシのか?」
「まぁパーティーを組むわけじゃしな」
「皆にも見せておこうか」
そう言うと宿に使っている部屋から大きな袋を担ぎ出し鍛冶場へと向かった
ー・ー
「初めて見る鎧にゃ」
「なんと言うか・・・・・」
「禍々しい鎧ですね」
「かっかっかっw」
「シュネーの言う通りこの鎧は特別でな」
「前の旅の時は使わなんだ」
「クロエの言う通りこの鎧は曰く付きじゃ」
「この鎧はもしかして・・・」
「そうじゃ」
「邪毒龍グークスニルを倒した時に着ていた鎧じゃ」
「そしてボロボロに壊れて呪われたこの鎧はグークスニルの素材で作り直してある」
「!!!!!」
その言葉にラルクとクロエ、シュネーの3人は眼を丸くしていた
かく言う私とシンシアは鑑定である程度見えているので3人ほどは驚いていない
「驚いたわ」
「毒と腐蝕の完全耐性に魔法拡散ですって?」
「応よ」
「元々は完全耐性ではなく魔法拡散なんてのも無かった」
「じゃがグークスニルの素材でそうなったんじゃよ」
「かっかっかっw」
「凄いじゃろ?」
「いや・・・」
「リグルそれの魔法拡散って邪毒龍の呪いが強すぎて魔力が通らず拡散してるだけじゃない?」
「それってアリエル」
「もしかして邪毒龍に効果の有る魔法ならこの鎧は防げないってこと?」
「たぶんそうね」
「しかも・・・」
「アリエルは流石に気付くか」
「そうじゃ・・・・」
「この鎧は命を喰らう」
「ちょっと待ってリグル!!」
「まぁまぁ皆落ち着け」
リグルの言葉に心配そうな顔を向ける皆をなだめてリグルは続けた
「ワシはグークスニルの呪いで不死になった」
「寿命に限りの無いワシにはこの鎧は性能の良い鎧でしかない」
「じゃが普通の者が着れば瞬く間に年老い干からび死に絶える」
「恐ろしい・・・」
「じゃが着ている者にしか呪いの効果は無い」
「そしてこれじゃ」
リグルはミイラのように布で巻かれ封印された武器を取り出した
リグルは小さく呪文を呟くと封印の要となるブローチを外しビッシリと呪文が書き記された布をほどいていく
「コイツの封印を解くのは何百年ぶりじゃろうか・・・」
リグルの目に浮かぶは懐かしさや哀愁と言う感情ではなく厳しい眼差しだった
どこか緊張したような表情で丁寧と言うより恐る恐ると言うような手付きで布をほどいていく
その指先が僅かに震えているのを見逃さなかった
「リグル」
「その武器は呪われているのね?」
「あぁそうじゃ」
「今コイツを解き放つとどうなるのかワシにも分からん」
念のため鍛冶場を結界で覆い薄く魔力を満たしておく
「コイツはな・・・」
「幾つもの死線を潜り抜けたワシの相棒なんじゃが・・・」
「グークスニルを倒した時に受けた呪いが酷くてな」
姿を現したソレは巨大な鉄の塊のような剣だった
「ミスリル銀が変質してる・・・」
「数多の魔物を斬り伏せグークスニルの血を浴びその首を切り落としたこの剣は今では呪いの塊のような物じゃて」
「禍々しいけれど強力な武器には違いない」
「先ずはその剣に相応しい安全な鞘を作らないとね」
「その邪悪なオーラは剥き出しには出来ないわ」
私は保管魔法からミスリル銀を取り出すと炉にくべる
「創造魔法で造らないの?」
「魔法を付与するような繊細な作業は魔法だけでやるより材料を用意して動作を組み合わせる方が効果的なのよ」
シンシアの問いに答ながら魔法で炉の温度を上げ作業効率を高める
炉と金床の周りに断熱結界を張りヤットコは使わず念動で材料を掴む
「さて・・・」
「いきますか」
右手にハンマーを掴み金床へ赤熱したミスリル銀の塊を置く
ギィィンガンッギィィンッ!!
魔法で補強され重量を増やされたハンマーはたったの3撃でミスリルの塊を延べ板へと変える
未だ冷めやらぬミスリル銀を再び炉に入れ赤熱させると今度は縦長になるように叩き延ばす
「これはもう人の領域ではないな・・・」
「鍛冶の神の御技に思えてくる」
後ろでリグルが呟くが構わず鎚を振るう
付与術式を刻み込みあっという間に2枚の板を作り出した
今度は鉄を取り出し炉にくべる
すると鉄は直ぐに熔けだし白く輝いている
「無骨過ぎるのもなんだし派手すぎるのも考え物よね・・・」
魔法を並列制御しながら思案していると思わず独り言が溢れてしまう
ドロドロに溶けた鉄を宙に浮かし魔力を込めて圧縮する
魔力で変質した魔鋼を成型して金具を作り出すとミスリル銀の板に取り付け創造魔法で溶接した
淡く深い緑の光を放つミスリル銀を包むように仄かに紫の光を放つ魔鋼の金具のついた何とも無骨な鞘が出来上がった
「やっぱりこれだけじゃ面白くないわね」
私はストレージから金の塊を取り出すと炉にくべた
直ぐ様熔けた金の塊から4本の糸を作り操りながら鞘に装飾を施す
念動と付与刻印を並列処理しながら創造魔法で溶接していく姿は鍛冶仕事をしているようには見えないだろうと思い独り微笑む
「アリエルが笑ってる・・・・」
「上手く行ったのかしら?」
シンシアは勘違いしたようだが当たらずとも遠からじ
鞘は納得いく出来映えだ
最後に魔晶石を埋め込んで鞘は完成した
「リグル」
「その物騒な剣は使う時までこの鞘で封印して」
「封印は念じれば解けるようになってる」
「早いな・・・」
「まだ1時間もたっとらんのに」
驚愕しながらリグルは両手で鞘を受け取ると全体を鑑定しながらその口から感嘆の吐息が漏れる
台に鞘を寝かせると巨大な剣を鞘へと納めた
「この長さじゃと鞘から抜刀できんなw」
そう言いながらもどこか嬉しそうに剣を眺めるリグル
「何言ってんのよ?」
「鞘ごと背中の留め具に当てなさい」
リグルは柄を握ると背中へ剣をまわし留め具に鞘を当てた
「どんなイメージでも良いからソコに装備するよう念じて」
「はて?」
「装備とな?」
不思議そうな表情で従うリグル
「装備したんなら手を離しなさい」
「じゃが出来立ての鞘が・・・」
「良いから」
渋々手を放したリグルの予想を裏切り剣は落ちること無く背中に張り付いている
「何と?」
「便利な鞘じゃな」
「離れるよう念じたら取れるから」
「それと」
「封印は念じれば良いって言ったよね?」
「そのまま念じながら抜いて」
「このままか?」
剣を掴み念じると
ジャカッ!
「ぬおっ???」
小気味良い音を立てて開いた鞘から剣が飛び出した
「便利じゃなぁ」
驚くリグルに納刀をイメージしながら鞘にあてがうよう指示すると剣は鞘に納まった
「凄い鞘じゃな」
「伝説の魔剣に相応しい鞘でしょ?」
「かっかっかっ」
「伝説の魔剣か」
「もう少し待ってね」
「まさかゴブリン相手にその魔剣を振るうわけにはいかないでしょ?」
「違いない」
今度はそれ程難しい細工や付与は要らないので並列処理で剣を鍛えていく
見本用に鋼で切り裂く剣と獅子の尾を作った
リグル用には魔鋼を幾重にも折り返し大長太刀を鍛えた
「ぉお・・・・・」
「おおお・・・・」
感涙に咽ぶリグルを余所に仕上げを施す
「最後にこれね」
鋼で大きく湾曲した刃を4本鍛え上げる
その刃を1m程の木の棒に金具で止めた
「それは?」
「これはね新月斧って言う強力な斧よ」
「斧状長柄武器の中でも17世紀頃ロシアで作られたこの武器は突く斬る叩くと万能に扱える両手武器なのよ」
「短槍の扱いやすさと剣の攻撃力に斧の打撃力を併せ持った衛兵向きの強力な武器」
私は持っていた新月斧をテーブルに立て掛けると替わりに獅子の尾を手に取り鞘走る
「この曲刀は両片手剣のカテゴリーに入る曲刀でね」
「湾曲した刀身は振るうだけで撫で斬ることが出来る武器なの」
「たぶんこれを作れるようになったら片手用の新月刀や幅広の曲刀両手用の長曲刀なんかを作るようになると思う」
「でもこの曲刀はこの世界では強力だし異質だからね・・・」
シャムシールを鞘に戻すとテーブルに置いた
「ザグルはこれから発展した時に盗賊なんかの人間も相手にしないといけなくなる」
「その為の秘密兵器って事?」
「まぁね」
「2人にはこの新月斧や獅子の尾を幾つか作って有事のために隠しておくように伝えるわ」
「ちょっと疑問なんだけどねアリエル」
「配布して装備させてはダメなの?」
「ダメね」
「ヴァルムートでも思ったんだけど騎士団も衛兵も槍以外の棒状長柄武器を装備してないのよね・・・」
「武器の知識チートは戦争の引き金になると?」
「それを懸念してるのよ・・・」
「斧槍や長柄の斧は強力なのにこれまで見たことがないの」
「だったらアルフリードの斧槍はヤバいんじゃないの?」
「アレはデカすぎて真似する人は少ないでしょう」
「鉄の槍に幅広の斧を2つ取り付けた武器なんてよほどの筋力がないと扱えないわ」
「アリエルの言う通りね」
「あんなのベテラン冒険者でも扱えないわよ」
「そもそも冒険者ならそれだけの筋力を得るために別の得意武器を使っている筈だもの」
「手慣れた武器を捨てて扱いにくい重い武器を持つなんて生存率に関わるからね」
「そう」
「普通はやらないわ」
「しかもあの斧槍は熟練者が広い場所で振るう事で真価を発揮する武器」
「拠点防衛向きの武器だから冒険者には不向きだわ」
「でもあの斧は違うのね?」
「アルフリードの斧槍と違って新月斧は片刃で切っ先が有るわ」
「両手で扱うのが基本だし木柄だから冒険者じゃなくても扱える」
「対人にも強力だからね」
「ザグルが町に発展して棒状長柄武器が普及するまでは秘匿しておくべきね」
話ながらもバルディッシュを振り回していたシンシアとリグルは納得したらしい
「確かにこれは強力じゃの・・・」
「それからリグル」
「その鎧は目立ちすぎるから預からせて貰うわ」
「まぁ確かにこの鎧で旅するのは物騒じゃの」
予め作っておいた魔魚人の鱗革に狼猿の革を重ねて作った革鎧を渡す
「防御力強化と属性防御を付与してあるから使いやすいと思う」
その素材の価値が分かるリグルの目は輝いていた
「有難い」
「こんな高価な鎧・・・」
急いで着込むがどうにも苦戦していた
「サイズアップしてるのは想定外だったわ」
「前に分かれた時の体型で作ったからね・・・」
静かに両手をかざすと魔方陣が現れリグルを囲む
「ちょっと待ってね」
魔方陣を操作すると調整用のベルトが変化してリグルが着れるようになった
「すまんのw」
全身新装備に身を包み上機嫌なリグル
「とりあえずこの見本達はしまっておきましょうか」
奥の研ぎ場に魔法で地下室を作ると中に武器をしまい隠し扉で穴を塞いだ
「この地下室の武器を使わなくて良いことを願うわ」
そう呟くとギオール達を呼んで地下室の使い方と秘密を守るように約束させた




