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東へ・・・〈ノッキングヒル1〉

陽射しが眩しく暖かな陽気に包まれていた

太陽は女神の恩恵では無いようだ

太陽は別の神なのだろう


太陽は別の神なのに大気は別の神では無いのだろうか?

逆上していたようだから呼吸が恩恵なのではなく呪いで呼吸出来なくした可能性も有るか


風に揺れる枝葉を見上げると全身鎧では風も感じる事は出来ないのだと痛感する


結局生きていられると言うだけでありそれ以上でもそれ以下でもない


女神に復讐すると誓ってもそれは先の見えない遥か遠くの目標に過ぎない


目下の目標は見聞を広めこの世界を知る事

知らねば復讐どころか生存も危うい


ダンジョンでは魔物を口にする気になれなかったので絶食だったが・・・

食べる事は出来るのだろうか?

味がしないのか?

それとも食べても満たされる事が無いのか?


取り敢えずダンジョンと街道を結ぶ脇道を通る間に木に実る果実を見付けた

鑑定によると毒がある


だから調査隊も採らなかったのか・・・


プラムに似たその果実

この身体にはある程度の毒耐性があるようなので食べてみる事にした


異世界で初めて口にするのが毒の果実とは・・・


シャグッ

モグモグモグ


若い桃のような歯触り

瑞々しく溢れ出す果汁

濃厚な甘味の有る果肉は美味と言える


そして甘味は次第に舌を刺す痛みと苦味に変わる


「うん不味い」


口当たりこそ甘くて良かったものの後に苦味と渋みが強くなり刺すような刺激に変わる

吐き出してもソレは暫く続きやがて痺れを伴う痛みに変わる


「これは量によっては致死毒なんじゃないのか?」


味わった後吐き出し残りも投げ捨てる

兎に角味を感じるのは分かった


「アンタ大丈夫か?!」


前から戦士風の男が3人慌てて駆け寄ってきた


「コイツはポイズンリード」

「一口で死に至る猛毒だ」

「まさか知らなかったのか?」

「旅人なら誰でも知ってる常識だろ?」


先頭を走ってきた男は不躾にも面頬を上げたままの私の頭を掴み顔を覗き込んでいる


「この辺りに来たのは初めてでね」

「変な味がしたから直ぐに吐き出したよ」


「吐き出してもダメだ」

「コイツの毒は少量でも危ない」

「口当たりが良くて甘かったろ?」

「その果汁は直ぐに毒に変わる知らない奴は甘い果汁を飲んじまって手遅れになる」


「毒が回れば指先から紫に変わる」

「指は大丈夫か?」


「大丈夫だよ」


「いいや見るまで安心出来ない」

「コイツを食べて死んだ奴は猛毒を撒き散らす」

「この国では確認して治療を受けないと死罪か幽閉だ」


「毒に犯されれば直ぐに症状が出るのか?」


「そうだ」

「早ければ5分、どれだけ遅くても何時間ももたない」


私はしぶしぶガントレットを外すと両手の指先を見せた


紫ではなく白い

どちらかと言えば蒼白い


「毒は大丈夫そうだが・・・」

「別の意味で大丈夫か?」


「戦士らしくない細い指だな」

「柔らかいし・・・」


「もう良いか?」


しつこく弄ってくる手を引き剥がし再びガントレットを装着する


「一応3時間ぐらいは様子を見る必要があるんだが・・・」

「お前はこの先のダンジョンから来たのか?」


「そうだ」


「俺達は調査隊への伝令なんだ」


「なら伝令を終えたら帰ってくるんだろう?」

「独り残して先へ行けば良い」


「そうか」

「じゃあ後は頼む」


それだけを言い残し足早に去って行く2人


もし毒に犯されていれば残った1人は犠牲になる可能性も有るし毒を撒き散らす前に私を殺して焼かなくてはならない


そんな事にはならないのだが


「ポイズンリードには治療法は無いのか?」


「女神の癒ししか無い」


それは無理な相談だ

何せ女神に呪われた上に殺されその復讐をしようとしているのだ

もし司祭に祈って貰っても癒すどころか殺しに来るだろう


自己鑑定で経過観察しているが状態異常がかかった形跡すら無い

私にとっては単なる不味い果実だ


とは言えこのステータスを見せるわけにもいかないので暫く付き合ってやるか

ガントレットを外しても大して魔力が漏れ出るわけでは無かったので暫く外しておく事にした


「良い天気だな」


「こんな日は何もせず日向ぼっこしているのも良いものだ」


私はそう答えると道端の草むらに身体を投げ出し天を仰ぐ


「日向ぼっこって何だ?」


「ん?」

「こうやって陽に当たって何もしないだけだが・・・」

「日光浴とかしないのか?」


「あぁ」

「そう言う習慣は無い」

「この辺りの魔物は弱くてあまり遭遇しない地域でもあるがたまに中級も出るし町や村なら仕事が忙しいからな」

「昼寝はするが何もしないで陽に当たると言うことはしないな」


「そうか・・・」

「だが今はどうせする事もないだろ?」


「はははw」

「確かにそうだw」


「俺はクレイル」

「見ての通り軽装戦士だ」


名乗られてしまった

本名は避けた方が良い気がする


「名乗りたくないならそれでも良い」


一瞬の思案に何か察したのだろうか

クレイルは続けて話し始めた


「なぁアンタ」

「もしかして転生者か?」


「どうしてそう思う?」


「前に1度転生者ってのに会った事がある」

「能力は異常に高いんだが常識がすっぽ抜けててな」

「お前を見てると思い出すんだ」


「その転生者は今どうしてるんだ?」


「死んだよ」

「魔王に挑んで瞬殺された」


「そうか・・・」


「お前も挑むのか?」


「俺がそんなに強そうに見えるか?」


「どうだろうな」

「くたびれた剣や鎧はベテランに見えなくもない」

「だが錆の浮き出た鎧を着込む奴が長生きできるわけ無い」


「そうだな」


「中古の鎧にしちゃあその全身鎧は物々しい」

「それにそんな鎧を着る重戦士や重騎士は中古なんか買ったりしない」

「重装甲のタンク役は命を預ける鎧にケチったりしないからな」


「駆け出しなら買うんじゃないか?」


「重戦士や重騎士は初期クラスじゃない」

「前段階で相応の稼ぎがある筈だ」

「それにその身のこなし・・・」


「・・・・・・・・・・」


「その鎧は何等かのアーティファクトだと考える方が妥当だとは思わないか?」


私は静かに起き上がり彼に向き合った


「当たらずとも遠からじと言ったところか」


そう言うとクレイルは草むらに仰向けになった


「日向ぼっこ・・・」

「良いもんだな」


大の字になり目蓋を閉じた彼は何を思ったのだろうか?


ー・ー


「クレイル大丈夫か?」


「おつかれさん」


半日もしない内にクレイルの仲間達は帰ってきた


「何やってんだお前?」


「暇だったから寝てたんだよw」

「それはそうともう一度手を見せてくれ」


クレイルの言葉に両手を全員に見えるように付き出した


「大丈夫そうだな」

「俺達は調査隊の中間報告書を持ってギルドに帰る」

「どうせノッキングヒルに行くんだろ?」

「一緒にどうだ?」


ここで断るのも不自然だしこの流れでは断れない


「ラックだ宜しく頼む」


「ラックねw」

「宜しく頼むわ」


何か含んだ物言いだったが彼の仲間は何も言わなかった


「ノッキングヒルまで2日かかる」

「ラックは食料なんかは持っているのか?」


それとなく聞いてくるクレイルに流れるような嘘で返した


「ダンジョンで迷ったせいで無くなってしまってね」

「道すがら狩りや採取をしようと思っていた」


「ほぅ・・・」

「弓無しで狩りか・・・」

「なる程」


何かおかしな事を言ったのか?

まぁ確かに飛び道具無しで狩りと言うのは無理があるか


辺りを見回し手頃な木を見つける

さりげなく鑑定で毒の有無を確かめ、剣を抜くと切って手早く短目の投げ槍を作り出す


「こう言う狩りはこの辺りではやらないのか?」


投げ槍の石突きに人差し指を掛け左手を添えて狙いを定める

15m程離れた場所に見付けた鹿を目掛けて投げ放つ


槍は軽く放物線を描くと見事に鹿の肩口から心臓まで貫いた


「ヒュー」

「あんな真似出きる奴見たことねぇ・・・」


「あの距離のノッキングヒル・バックを一撃とは!」

「あんた何者だ?」


しまった

やり過ぎたらしい

ここはスルーで誤魔化せないか?


私は歩き出し鹿の傍らに到着すると静かに手を合わせた


「なぁアンタ・・・」

「もしかしてニッポンジンか?」

「あ、いや、答えたくなければ答えなくて良いんだ」


「自己紹介がまだだったな」

「俺はニーズこっちはヘッグス」

「良かったら肉を分けてくれないか?」

「ノッキングヒル・バックは旨いんだ」


「代わりは?」


「コイツでどうだ?」


差し出されたのは硬く焼き締められた黒パンと林檎が2つにワインの入った皮袋を一つ

このノッキングヒル・バックはそれだけ高級食材だったのか?

断る必要は無いので交換を承諾すると解体を名乗り出てくれた


「あんた人を疑わないんだな」


街道から少し離れた場所に入ると鹿を手頃な枝に吊るし皮を剥ぎながらニーズは言った


「何故そう思う?」


「普通は狩った獲物を他人に捌かせたりしない」

「良い部位をくすねるような奴もいるからな」


「捌いてくれるんなら相応の報酬では?」


「はは」

「そんな言われ方したらくすねられる奴なんかいないかもな」


この身体になってから食べる事も寝る事も必要が無くなっていた

魔力さえ供給できていればそれで死なないのだから


とは言え本当に死なないのかは疑問が残る


ステータスを見ていて思うのだがHPやMPがMAXで状態異常が無かったとしても窒息すれば死ぬのだ


今現在魔族的要素のおかげで飲まず食わずでも死ななかったからと言って永遠に死なないのかは不明だ


そしてそんな命がけの実験をやるつもりは無い


転生前は食べる事は好きだったし唯一の楽しみだったと言っても過言ではないだろう

単純にこのノッキングヒル・バックと言う旨い鹿に興味がある


ここ暫く何も食べていなかったから失念していたが本来生きる為には何かを飲み食べなければならない


だからこそ多くの人間はその食に拘るし執着する者も少なからずいるだろう

同じ食べるならより旨い物をより多く食べたいと言うのは生き物の本能だからだ


その本能に従うならば旨い肉の切り分けを任せるのは信頼関係が無ければ難しいのかもしれない

でなければ食に拘りの無い人間と言うことになるのだろう


「周囲を警戒しててくれよ」

「血の臭いに魔物が寄ってくる」


「今のところは大丈夫そうだ」


「それは良かった」

「よしっ」

「これで全部皮は剥げた」


そう言うとヘッグスに交替し休憩する

交替したヘッグスは鹿の下に手早く穴を掘ると血抜きを始めた

そして腹を捌くと内臓を下へと落とす


「内臓は食べないのか?」


「水に余裕が無いから内臓は諦めよう」

「この胃とか腸も旨いんだがな・・・」

「洗わず食うのは不味いし最悪病気になる」


なる程

日本でも内臓料理は美味しかった


しかし特に消化器官は綺麗に洗う必要があった

大量の水が無ければ食べられないだろう


しかし新鮮な肝臓を見ていると少し勿体無い気がしてくる


「周囲を偵察してくる」


「ホントにアンタは・・・w」

「じゃあ頼むよ」


言いたい事は何となく分かる

監視どころか任せて場を離れるなんて普通はやらないのだろう


だが見ていても暇だし他の準備もある


彼等から十分に離れた所でナイフを錬成する

ナイフの鞘を腰の後ろに付けた

ここなら装備が急に増えた違和感は無いだろう


続けて火打ち石を錬成し背負い袋の横のポケットに入れる

後は適当に枯れ枝を拾い集めて彼等の元へ戻る


(たきぎ)を集めてくれたのか?」

「気が利くじゃないか」


「今のところ魔物の気配は無いな」


薪を集めながら空間収納で保管していたケイブホブゴブリンの血を撒いてきた

野生生物は捕食者の臭いから遠ざかる習性がある

魔物にも同じ習性がある事を願っての実験だが上手く行けばめっけもの


薪を組み合わせ火口を作り火打ち石で火をつける


「手慣れてるが・・・」

「そんな火の付け方見たことがない」

「どうやっているのか教えてくれないか?」


しまった

アナログな火の付け方だから大丈夫だろうと思ったのだが・・・


「クレイル達はいつもどうやって火をつけるんだ?」


「俺は生活魔法が使えるから着火の魔法でつける」


「俺はレンジャースキルが有るからこうやって・・・」

「ナイフで木に切れ込みを作って棒で擦る」


なる程

生活魔法と言うのがあるのだな?

生活魔法は一般的ではあるが全員が使える程には普及していないのか


「これは火口(ほくち)と火打ち石で火をつける方法だ」

「この火打ち石が無ければ難しいんだがぶつけて火花が散る物なら代用は出きる」

「この火口は良く乾いた木をナイフで割いてささくれさせるんだ」

「削った粉や火のつきやすい木を使うのも良い」

「だが火のつきやすい木はヤニや煤が出る物があるから気を付けた方が良い」


そう言って実演して見せる


カッカッ


火打ち石を打ち合わせ飛ばした火花を火口に当てて火種にする

優しく息を吹き掛け火種を大きくしたら小枝のを組み合わせた櫓の下へと入れて火を大きくしていく


「鹿を捕まえたから暫く足止めだなw」


「すまない」

「伝令は急ぐのか?」


「いや」

「中間キャンプが完成したって報告だから大して急がんよ」


「そうか」


「それに・・・」

「旅先でコイツにありつけるなんて幸運逃す手はないだろw」


そんなに旨いのか・・・


取り敢えず不思議に思ったのは生活魔法で血抜きは進められるのに内臓を洗わない事だ

言うのも何だし今回は黙っていよう


「よしっ血抜きは終わったから切り分けよう」


ニーズが集めてきた大きめの葉に切り分けた肉を置いていく

切り分けている間に何本かの細い木を切って集め肉を焼く例のアレ的な物を作る


「それは何だ?」


「こうやって肉を刺してだな」

「この両側の木に掛けて回しながら焼くんだ」


暫くすると香ばしい香りが立ち上る


「夜営でも無いのに生肉を焼くなんて贅沢だなw」


向こうでは葉に置いた肉を生活魔法で乾かして干し肉にしていた

塩漬けに出きるほどの塩もなく時間もないならハムやベーコンを作るのは難しいか・・・


取り敢えず干し肉を作ってくれている間に肉を焼き上げる


「手の空いてる奴から食べろ」

「焼けてる所をナイフで削いで塩をふって食べるんだ」


待ってましたとばかりに飛び付く2人


「俺のも残しといてくれよー」


クレイルの声にはどこか悲しそうだ

仕方がない


一口大に切り分けた肉を2つ用意するとクレイルの元へと持っていく

乾燥させるのに両手が塞がっているのでその口に放り込む


「ングッガッ」


モグモグモグ


「旨いなやっぱり」

「すまんな手が塞がってて」


「構わんよ」

「クレイルのおかげで干し肉を作る時間が短縮出来てるんだから」


「はははw」

「お前達もラックを見習えよw」


「そんな事言ってると先に全部食っちまうぞw」


皆が笑い、食べながら作業を進める

ニーズが切り分けヘッグスが並べる

それをクレイルが乾燥させてそれをヘッグスが小分けにしていく


何気にヘッグスの担当忙しそうだな


小一時間ほどたった頃バラとロースの加工が終わり4本の脚と頭が残った


「頭は食わんよな?」


「食わないがそれをどうするんだ?」


「さっきから向こうの方で腹を空かせている奴がいるみたいでな!」


鹿の頭を掴むと街道外れの草原に投げて捨てる

頭は放物線を描き20m程飛んだ


「ラック・・・」

「アンタどんな筋力してんだよ・・・」


やり過ぎたか

けれどこれくらい飛ばさなければ危なくてしょうがない


平原狼(プレインウルフ)だ!!」


遠目でも6匹の狼が頭に群がっているのが分かる

3人は手早く4本の脚に塩を塗り込み生乾きの皮で包むとロープで縛った


「今のうちに逃げるぞ!!」


クレイルの掛け声で足早にその場を去った


ー・ー


「本当は旅先であんな大物狩ったりしないんだがな」

「ラックが仕留めたからついつい保存食作りに没頭しちまったよ」


「ノッキングヒル・バック旨かったな」


狼達が追ってこないのを確認しながら道を急いでいた

生乾きの肉を担いでいるため夜営にも気を遣う事になる


「なんとか狼は撒けたようだな」


「内臓を残してきたからな」

「だが本来はキチンと埋めておかないといけないルールがある」

「まぁその為に少し街道から外れたんだがな」


街道の直ぐ脇に死骸が有ると肉食の獣や魔物が寄ってきてしまう

そうなれば街道は安全ではなくなり護衛のいない旅人は襲われる事になる

だからキチンと深い穴を掘り埋葬するのが旅人のルールだ


暫く進むと柵と塀に囲まれた建物が見えてきた


「今日はあそこで泊まる」

「あの小屋はノッキングヒルからちょうど2日ぐらいの場所に建っているんだ」


門を開けて柵の中に入る

この柵は野生の獣用なのだとか


中の門を叩いて声をかけるが返事はない


「ここは普段無人でな」

「旅人の為に解放されているんだが基本的に先に使っている奴に優先権がある」


手前に引いて扉を開ける

直ぐには入らずに周囲を警戒し変化が無いのを確認して中に入る


小屋の扉をノックするが返事はない

手前に引いて扉を開くとやはり警戒して中を伺う


「たまに盗賊や魔物が隠れてたりするから用心しないと命を落とす事になる」

「旅人のフリして盗賊が入り込むこともあるから注意が必要なんだ」


扉が全て外開きなのも防犯の為なのだろう

内開きだと突進されたら開いてしまうからだ


私とクレイルが中へと入りヘッグスは小屋の外に留まりニーズは外へ出ていく


小屋の中は中央に大きなテーブルと4脚の椅子が有り奥には暖炉と(かまど)がある

ベットのようなものは無い


小屋の奥には井戸も有るようだ


ヘッグスは井戸へ向かうと閂を外して蓋を開け桶に結ばれたロープを確認しながら中へと下ろして水を汲み上げる

井戸の隣には石造りの排水溝がありそこへ数杯水を捨てていた


「異物は無さそうだ」


「それは良かった」


外から薪を持ってくると暖炉と竈に火を点す


(まき)は使ったら拾ってきて足すのがマナーだ」

「長期滞在するなら木を伐って薪を割る方が良い」


「そうか」

「なら少し出てくる」


「ノックは3・2・3だ」

「それで声をかけなくても分かる」


「了解した」


他人と夜営する予定など無かったので少し困ったことになった

鎧を脱がない理由は適当に出来るとしても寝具は作っていないし調理器具もない


これは旅人としておかしいだろう


既に転生者だと思われているようだが不要な勘繰りは避けたい所だ

さっきの事を踏まえると鹿の頭を20m投げるのはやり過ぎたらしい

ならここで丸太を伐って持ち帰るのはやり過ぎだろう

それでもそれなりに持ち帰っておこうか・・・

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