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ザグル村 ~夜襲

「アリエルさん・・・」


「来たわね」


夜襲の報告に来たアルスを見ると簡素で粗悪な装備を身に付けていた


この村は街道沿いで普段平和なため大した武装は無い

なので仕方無くゴブリンから剥いだ装備を手直しするしか無かったのだ


それでも素人の集まりなのでショートソードは木の柄に縛り付け簡易のショートスピアにしてある


「指示通りオフェンスは私達3人が務めます」

「無理と油断はしないように」


「はいっ!!」


シンシアとラルクは既に準備を整えており私が来るのを待っていた


「2人とも早いわね」


「アリエルからも言ってやってよ」

「ラルクが寝る必要ないって横にすらならないのよ」


「ラルク・・・」

「避難民も多いんだから寝るフリくらいはしなさい」

「助けた人達に攻撃されたくは無いでしょ?」


「はい・・・」


魔族化して睡眠が必要無くなったラルクは皆の負担を考えてずっと見張りを続けていた


「今夜は・・・」

「やっぱりゴブリンか」


ゴブリンにしては統率がとれている

おそらくこの襲撃を指揮する存在がいるのだろう


「アリエル」

「ゴブリン達は村の中心から展開しているように見えるわ」


村の中心へ向かう道を隊列を組んで歩く姿は既に村をあさりこっちへ向かって来たように見える


「奴等の斥候が見張りを見付けたのかな?」

「指揮官がいるなら搦め手にも注意が必要ね・・・」


シンシアとラルクに散会して貰いそれぞれ鍛冶場の北側の森と西側の守りに付く

私は本隊が来るだろう正面に陣取った


「さてさて」

「何が出てくる?」


注意を引き付けるため鎧を外し薄衣のようなチェインメイルだけになった

ミスリルが月の光を反射して艶かしく身体のラインを際立たせる


今回は混戦になるだろう


普段は背負いっぱなしの方楯に左手を通し剣を抜き放つと自然体のまま眼前に迫る4匹のゴブリンを見据えた


どうせコイツ等アタシが強すぎたら速攻で逃げるよね?


「オンナダァ!!」


襲いかかるゴブリンの一撃を楯で受け流し後ろへいなすとよろけたように右方向へスライドする


「オレガモラッタ!!!」


2匹目のゴブリンが抱き付いてくるのをバックステップで躱すと剣の腹でゴブリンの顔を殴った


「グガッ!!」

「コイツ・・・」


頬を押さえるゴブリンの顔に下卑た笑いが浮かび上がる


「武器の使い方も分からねぇメスだ!!」


他の2匹も笑いながらだらしなく垂れた長い舌から唾液が滴り落ちる

何も聞かなくてもこの後のお楽しみを妄想しているのが分かる


後続が追い付き私を取り囲むゴブリンは10匹を超えた


「所詮ゴブリンなんてこの程度よね・・・」


目の前のゴブリンを逆袈裟に斬り上げて屠ると返す刀で後ろの2体を撫で斬りに斬り伏せる

そのまま勢いを加速させ残りを回転斬りで葬った


「ガッ?」

「ナニガ・・・?」


唯一の生き残りは踵を返し逃げようとしたが一足飛びで間合いを詰めると後ろから斬り倒した


悲鳴をあげる間もなく斬り刻まれたゴブリン達に同情する気は更々無い

村の中心へと歩を進めると更に4匹のゴブリンに2回出会ったがこれも瞬殺して歩を進めた


「ちょっと小出しにしすぎじゃない?」

「この指揮官はボンクラも良いとこね」


ゴブリンロードの軍は潤沢な戦力を有する統率された軍勢だった

たまたま布陣の後ろからロードを討ち取れたから撃退出来たものの

単純に数で押しきられていれば村人を救うのは難しかっただろう


ダンジョンから溢れたのであれば比較的規模も小さいがダンジョンを攻略しない限り定期的に溢れてくる事になる


そうなればこの夜襲のボスがロードの副官か別のロードかで扱いが変わってしまう


「副官が率いる残党軍か・・・」

「この有り様は村人には見せられないな」


体格の大きなホブゴブリンは教会の壁を破壊し中に安置されていた遺体を貪っていた

その傍らには死姦するゴブリンの姿もある


「お前らってホントにバカね」


広場を風のように走り抜けホブゴブリンに肉薄する


何かに気が付き頭を上げたところに方楯が振り下ろされた


ゴシャッ!!


一撃で頭を粉砕されたホブゴブリンの身体は不規則に暴れまわり周りのゴブリン達が狼狽えるが次の瞬間そのゴブリン達の頭は宙を舞う


辺りを見回し動く影を見付ける度に襲い掛かりゴブリンを殲滅していった


「今回の夜襲ってもしかしてコイツらだけ?」

「何だか拍子抜けしちゃうわね」


教会の尖塔に駆け登り〈生命力感知(センスライフ)〉の魔法で辺りを見回した

するとやはり3方向から鍛冶場に向かったのだと分かる


「このままだとラルクが無理しかねないわね」


3方向共数は似たようなモノだったが大将からして油断していた正面に比べラルク側は少し数が多くも感じる


森を駆け抜け布陣の後ろに立つ頃にはラルクも雑魚を粗方片付けていた


「改めて見ると・・・」

「かなり恐いわねあの娘(ラルク)


新装備も軽装系で深い青と黒が基調なため夜間の森だと見付けるのが難しい

ソレに加え暗殺者のように背後に周り両手の短剣を駆使して命を奪って回る


彼女の動きを追えなかったゴブリンからすれば急に仲間が血を吹いて倒れたように感じただろう


「何がオコッテイル?」

「オマエ行ってミテコイ!!」


取り巻きを小突くホブゴブリンに気乗りしない感じで従うゴブリン

そのゴブリンの目が驚愕に見開かれ此方を指差し雄叫びを上げた


シュリンッ

ボドッ!!


銀光が闇を切り裂くと思い頭が地面に転げ落ち身体から熱い血が吹き出す


取り巻きも一気に畳み込み4匹目を斬り伏せると眼前にラルクが立っていた


「いきなり現れたからビックリするじゃないですか」


抑揚の無いその言葉がどれだけ真実を孕むのかは分からないがビックリさせたのは事実らしい


「ごめんね」

「ゴブリンに声上げさせちゃった」


「それは構いませんが・・・」

「その姿はまるで神話に出てくる戦乙女(ヴァルキュリア)ですね」


「そんな大層なものに例えられてもねw」

「・・・・・・・」

「この装備から神話を連想するのって・・・」

「この世界の神話には私達の世界の人間が深く関わっているのかもしれないわね」


それはとても闇の深い事なのだがラルクは何の感想も返してこなかった


ー・ー


「あーーーっもぅ」

「しっつこいわねぇ」


シンシアは左手で〈樹木拘束(ウッドバインド)〉を放つと同時にレイピアでトドメを刺していく


「めんどくさい奴!!」


シンシアの足元で草葉が蠢くのを華麗に躱し的確にゴブリンの数を減らしていた


「遅くなりましたシンシあっ!!」


草に足を囚われ転けたラルクに蔦や枝が覆い被さっていく

ラルクは踠いてはいたがあっという間に草達磨になってしまった


「油断したわね」


私は初めから眼の封印と偽装を止めて魔力感知を併用していたため難なく躱していく


「ラルクー」

「直ぐには襲われそうにないから自分で何とかしなさいねー」


ざっと周囲に敵がいないのを確認するとラルクを置いて先を急ぐ


「シンシアー」

「良い月夜ね」


「あら」

「戦乙女なんか召喚した覚えなかったけどアリエルだったのね」


「何それw」

「ラルクにも似たような事言われたわ」


さっきから森の中を絶え間無く拘束系魔法が飛び交っている

拘束魔法は見境無くゴブリンも捕えては草団子に変えていた


「ラルクはこの流れ弾にやられたわけか」


「えっ?」

「貴女まさかラルク置いてきたの???」


「この程度の魔法で彼女がどうにかなるとは思わなかったからね」


「アリエルって時々ドライよね」

「所でそっちにはゴブリンシャーマンとかいなかったの?」


「分かんないわ」

「私の方は油断しきってた所を瞬殺したし」

「ラルクは丁寧に暗殺して回ってたみたいだから」

「よっと!」

「なんだ普通のゴブリンか」


見たところゴブリンシャーマンが複数体隠れながら魔法を唱えているようだ


しかしそれにしても恐ろしい手数だ

草絡み(グラススネア)〉と〈草木拘束(バインド)〉の飽和攻撃

華麗に躱すシンシアを相手にするため目標フリーの接触起動で放っているのだろう

並列起動に無詠唱も合わせるとかなりの魔力消費の筈だが途切れる気配も無い


「コイツら隠れるの上手い上に数もいるしっ!!」

「普通のゴブリンも混ざってるから苦戦してるのよ」


無目標発動の為か獲物が2人になっても魔法密度が下がらない


「とりあえずー」

「シャーマンだけ殺れば良いのかな?」


「そんな簡単に・・・」


魔力の波動を躱さず一気に間合いを詰め隠れた木ごとゴブリンシャーマンを斬り伏せる


ドズンッ

ザササササッ


「先ずは一体目・・・」


魔法を避けず抵抗(レジスト)しつつ強引に引き千切ることで最短ルートを確保

いつものように剣を振り抜けば最早この世に斬れぬ物無し


「アリエル貴女よくそんな事出きるわねっ!!」


避け続けていることを考えるとシンシアでは同じようには出来ないようだ


「残るシャーマンっぽいのは4体かな?」


1体減り飽和仕切れなくなったゴブリン達はこのままなすがままに全滅してはくれないだろう


不意に飽和攻撃が止まった


「アリエルっ!!」


シンシアを見ると大きなゴブリンらしき影が二体シンシアに襲い掛かっているがシンシアのレイピアではゴブリンに致命傷を与えられず圧されていた


「アンタ等案外器用ねっ!!」


大柄なゴブリンに斬り付けると鈍い感触と共に刃が弾かれた


「あーもうめんどくさいな」


今度は突進力に横回転による遠心力を上乗せした一撃を放った


ガッザシュッ!!


「ゲァアアアア!!」


喚くゴブリンにトドメを刺すとシャーマンを追った

ゴブリンシャーマンはシンシアがレイピアなのを見てとりホブゴブリンの身体に樹木を張り付け簡易装甲を作っていたのだ


「なんかこのゴブリンシャーマン器用じゃない?」


「魔力量も半端ないし!!」

「このゴブリン達はイレギュラーにも程があるわ!!」


「中途半端に知性を感じるよね」

「2体目♪」


私がシンシアより手強いと判断したのだろう

一番魔力反応の強いゴブリンが逃げるような動きを見せ始めた


「仲間を見殺し?」

「でもそれで許しちゃうほど甘くないのよね」

「〈石噛み(ストーンバイト)〉」


一瞬の出来事だった


魔法を唱えるとゴブリンシャーマンの周囲の地面が隆起してその下半身を挟み込む

それは大きな補食生物の口のようであり小さな石の歯が獲物に食い付き放さない


司令塔が戦線を離れたことでゴブリンシャーマンの攻撃がほぼ無くなりシンシアと2人で掃討して回る


「お二人とも無事で何よりです」


そこへ何食わぬ顔をして合流してきたラルクを笑顔で迎え入れた


空は白み始め夜明けを告げていた


ー・ー


「アルス大丈夫?!」


鎧を身に付け鍛冶場に戻ると数匹のゴブリンの死骸があった

3人では討ち漏らしがあったのだろう

しかし村人だけで撃退できたようで被害は無かった


「まだ残党がいるかもしれないから日中も警戒は厳重に」

「明るくなったらゴブリンから魔石の採取をお願いします」


魔法で拘束されたゴブリン達は既にラルクが始末していた


乾燥させていた毛皮と薪を取り出すと燻製室に火をいれるると猪と鹿の肉を吊るしハーブの束に打ち水をして投げ込む


改めて見ると生き残りは100人を超え犠牲者はその数を上回る


真っ先に襲われる筈の子供や女性が多い事から村人全員で必死に守ったのだろう

男性に青年と中年層が少ないのは襲われて殺された結果と言うところか・・・


「ここはわりと大きな村だったんだね」


「もう少しでギルド支部も置かれて町になる予定でした・・・」


「アルス達の手で復興しなきゃね」


「必ずやり遂げます」


決意に満ちた言葉と裏腹に眼は赤く涙に潤んでいた


アルス達村長一家は最後まで全線で指揮を取り命を落としアルスの母も教会が襲われた際に楯となりゴブリンを防いだが命を落としてしまっていた


残されたのは16歳のアルスと8歳離れた妹の2人だけ

この年端もいかない少年の肩にこのザグル村の運命がのし掛かっていた


ー・ー


「流石にもう近隣に獣はいませんね」


熊を引き摺りながら戻って来たラルクに村人は騒然としていた


「ラルクそれは流石にやりすぎよ・・・」


呆れながらも感謝していた


ラルクの朝の狩りは同時に偵察でもある

昨夜の襲撃もラルクがある程度の動向を見ていたから対策しやすかった


「獣がいないのは良くないわね・・・」


ゴブリンの軍勢から逃げたのかゴブリン達に食べられたのか

何にしても村の食糧事情に関わってくる


この鍛冶場が本格的な復興拠点になると予想された事から切り株を掘り起こし開墾する事にした


と言っても土魔法で突き上げるので大した労力もなくただただシンシアが苦笑いをしていた


「土魔法って凄いんですね」


「アレはアリエルが規格外なだけよ」

「魔法で切り株を掘り起こすなんて出来る魔法使いはこの辺りにいないわ」


感嘆するアルスに呆れたように茶化すシンシア

いつの間にかアルスは私達と居る時間が増えていた


開墾地に深い穴を掘りソコに魔石を抜いたゴブリンの死骸を投げ入れていく


「これって・・・」


「コイツらを養分にして畑を作るのよ」


開墾作業は基本的に私が独りで魔法を使いながら行っている

村の復興を考えると今は未だ開墾に人手を割くことは出来ない


犠牲者の遺体を弔う事ととゴブリンの死骸の処理は遅れると伝染病の原因にもなりかねない急務である


そして村人達が心に折り合いを付けるためにも先に済ませるべき事だ


村の復興は犠牲者の埋葬とゴブリン達の死骸の処理に大きな課題があり犠牲者の墓は従来の墓地では狭く新たに作る事になった


ゴブリンの方は今やったように開墾地の下に埋めて畑の肥やしにする


この作業が案外手間がかかるのだ


身内の遺体を目にすれば手が止まるしゴブリンの死骸には怨み辛みで報復したい衝動に駆られる

ソコで開墾地手前にゴブリンを吊るし解体を願うと志願者は多く年齢性別も多岐に渡った


やはり時として怒りや憎しみをぶつける対象は必要なのだろう


この遺体を弔う作業とゴブリンの死骸の処理は1日では終わらず比較的外傷の少ない遺体は引き続き教会に安置せざるをえなかった


ー・ー


「あっという間に1日が終わりましたね」


「そうね」

「やる事が多すぎて大変だわ」


「いよいよ2日目か・・・」


「ゴブリンの死骸も粗方処理したから大丈夫と思いたいわね」


村人には昨夜よりも密集して寝て貰う事にしている

出なければ有事に対処できないからだ


すぅ・・・・・・・


生暖かい風が吹き抜け同時に気温が少し下がった


「やっぱりこうなるのね」


子供は母親にしがみつき女達は子供に見せまいと頭を抱き抱える

そして一部の男の子達は振り払い一目見ようと目を凝らす


ォォォォ・・・・・・・

ォゥァ・・・・・・・・

ォォオ・・・・・・・・


ナゼダ・・・・・

ナゼオマエタチハ・・・・・・


「気を引き締めなさい」

「冥府に落ちきれず彷徨う霊魂は見た目は見知った者でも生命にしがみつく亡者よ!!」


レイピアを抜き放ったシンシアが指揮を取り村人を鼓舞する

村人達の手には村中からかき集めた銀製品が握られていた


雲で月明かりが翳り暗闇の中でソレ等は青白く浮かび上がってきた


全方位から襲い掛かる幽霊(ゴースト)になす統べなく村人達が襲われる


キィィァァアーーーーー!!


耳を塞いでも頭り鳴り響く悲鳴に心が折れる村人達


しかし銀のトレイに阻まれ憑依出来なかったゴブリンゴーストは消滅した


「気を確かに持っえ!」

「負ければ貴方が隣の子供達を襲う事になるのよ!!」


シンシアの激励が飛び私とラルクが大きなゴーストを斬り伏せていく


シンシアが高らかに鎮魂の呪歌を歌い始める

アカペラなので効果は半減するがそれでも雑魚は一掃できる筈だ


「マチルダ・・・」

「本当にマチルダなんだな?」


「止めなさい!!」


振り向くと1人の男が周りの制止を振り切り立ち上がる


直ぐ様フォローしようとするが遠い・・・

シンシアを見るが彼女は今呪歌でそれどころではない


「逃がすかぁー!!」


目の前に吹き上がる蒼い焔が辺りを照らし出す

激しく燃える焔の中心にはあのゴブリンロードがいた


「お前はっ!!」

「お前だけは俺が殺さねば気が済まんっ!!」


ロードの攻撃が実体化して地面を切り裂く


「ポルターガイスト現象!!」

「何て強い怨念なの?!」


ゴーストとなり敏捷さが加わったゴブリンロードは矢継ぎ早に鉤爪を繰り出しその度に地面が抉り割かれていく


「お前弱いくせにしつこすぎよ」


ガヅンッ!!


「おっお前はっ!!」

「なんでゴーストの俺に攻撃出来る!!」


間合いを開けたロードの右足は私の左拳で吹き飛んだが直ぐに再生していた


「格が違うからに決まってるじゃない」


静かに鎧を脱ぎ捨て地面に落とす

そこに月明かりが差し込みミスリルが神秘的な輝きを放った


「ミスリル・・・・・銀だと」


こんなのにかまけている暇はない

一気に間合いを詰めるが更に下がるロード


「逃げるなよっ!!」


意識のあるゴーストには言葉による縛り(・・)が効果的なのだとか

精神だけになっているため言葉による影響を受けやすいらしい


この辺りの事はシンシアが事前に全員に説明していた


「逃げるかよっ!!」


殴りかかるロードの拳を左手でいなし背後に回り込み首を締め上げる


「何をっ!!」

「グガアッ!!」


ゴーストになりたてのこのロードは未だ身体の感覚に囚われており変形して攻撃する事が出来ずにいた


その為背後に回り込み首を締め上げる私に有効打を与える事が出来ずにミスリルの籠手と鎖帷子に身体を焼かれ悶絶する


「弱いくせにしぶといわね」


右手で首を掴みながら左手で抜刀してゆっくりとロードの身体へと差し込んでゆく


「ガッッ!!!」

「ウガアッ!!」

「そんなっ!!」

「2度も同じ奴に!!」


「さっさと成仏なさいな」


剣に魔力を込めてこじるとロードの零体は霧散した


「一匹に時間をかけすぎた!!」

「こんなに離れてしまえなんて!!」


私は急いで皆のもとへ走った


ー・ー


「マチルダ・・・・」

「あぁ・・・」


涙を流し立ち尽くす男の前にはっきりと姿を結ぶ女性が両手を開いていた


優しく男を包み込んだゴーストの表情が豹変し男は苦しみ踠き始める


「気を確かに持ちなさい!!」


叫ぶラルクの声も虚しく男は膝から崩れ落ちゴーストは満足げに顔を上げると首をかしげて次の獲物を探していた


グッ

ウグッ


膝から崩れ落ちた男が身じろぎし始める

その身体は仄かに蒼白い光を纏いその輪郭が暗闇に浮かび上がる


「ラルク!!」

「仕留めなさい!!」


全力で走るが遠くて間に合わない

声を張り上げラルクに一縷の望みを託す


「グルゥァアーー!!」


振り向いた男の口には泡が張り付き眼光鋭く赤い光を宿していた


ワイト・・・


殺された生き物は同じくワイトに成り果てる

ただ蠢くゾンビに比べ身体能力も高く遥かに危険だ


シンシアの呪歌も佳境に入り目を閉じて胸の前で両手を重ね合わせる


振り向いて村人に襲い掛かろうとしたワイトを横から飛び掛かったラルクが突き飛ばしそのまま臨戦態勢に入る


「アリエル!!」

「後は頼みます!!」


ワイトに対峙したラルクは背中から聖剣を抜き放ち封印を解除した


聖剣から発せられた光は次の犠牲者を捕えたゴーストを凪払い2人目のワイト化を防ぐ


「ごめんっ!!」


聖剣の力で強化されたラルクは一瞬でワイトを斬り伏せる


次の瞬間シンシアの呪歌が完成し鎮魂の魔法が辺りのゴースト達を一掃したのだった






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