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「グガァアアアアッ!!」

「こんなチビの身体の何処にこんな力があると言うのだ?!」

「熱耐性のある俺の身体が焼かれるのは何故だ?!」

「何故俺はこんな奴に勝てない???」


「アンタがザコだからよ」


クァターロフは火炎旋風を纏い攻性防壁として利用していた

しかしプラズマを纏った私に火炎等障害にもならない


そもそも私はクァターロフの炎を打ち消す必要すら無い

逆にクァターロフの炎では私の熱を遮断する事が出来ず近付くだけで皮膚を焼かれる


「なっなっなっ!」

「何で火炎属性を得たのに身体を焼かれるのだ?!」

「何故お前には俺の炎が効かない?!」

「何故だっ???」


「フンッ」

「そんな事も分からないの?」

「纏う炎の温度が違うからよ」

「確かにアンタの赤い炎は鉄を溶かせる程の高温を発しているわね」

「でもね」


不敵に笑う私は右手を差し出し火力を上げた


「私の青い炎は桁が違うのよ」

「岩をも溶かす超高温にさ」

「アンタのヘボい炎が通るわけ無いでしょ」


溶断剣(トーチソード)


私は魔法で炎の剣を作り出すとゆっくりクァターロフを斬り刻む


「うっうわっっっ!!」

「やっやめっっっ!!」

「止めろぉおおおおおっ!!」


絶叫するクァターロフ


既に脚や腕は焼き切られ大半の触手を失っている為立つどころか逃げることも出来ない


斬り刻まれ徐々にその身体は小さくなっていく


「ふふふっ」

「これに懲りたら2度と私に逆らわない事ね」


怯えるクァターロフを前に踵を返す私

纏っていたプラズマを解いた


「さぁ」

「クァターロフの信者達よ」

「私を崇めよっ!!」


クァターロフを背に両手を広げ宣言する私


その時


「油断したな小娘!!」

「喰らうが良いっ!!」


背後で魔力が爆発的に大きくなり濃い殺気が迫りくる


「単純」


わざと見せた隙に飛び付いたクァターロフ

予め予測していればどうと言う事はない


「バカは死んでも治らないってね」


振り向くと予想通りクァターロフは奇跡により身体を回復すると同時に魔力と筋力を増強していた


そして全ての触手に炎を付加し口からは火炎旋風を吐き出した


重力操作(グラビティウェル)


パチンッ


私が無詠唱で魔法を発動させ指を鳴らすとクァターロフの動きが止まった

それ以上一歩も動くも触手を伸ばすことも出来ず藻掻くクァターロフ


「グッぐばっっ!!」

「なっ?!」

「何が・・・・・・・」

「起こっている」

「何故前に進めん?!」

「胸が痛い!!」

念動(サイコキネシス)か?」


クァターロフが止まった瞬間吐き出した火炎旋風はそのまま口へと戻っていった

苦痛を感じたのか僅かに顔を顰める


「何故俺の吐いたに炎が戻って来る??」

「何をした?」

「お前!!」

「俺に何をしたのかと聞いている!!」


屈強な腕と無数の触手を私に向け睨み付けてくるクァターロフ

たがその表情に反して一歩も前に進むことが出来ないでいた


クァターロフは念動と誤認していたが私の仕掛けたのは重力を操作して創った〈重力井戸(ダークボイド)

胸のあたりに発生させた重力特異点はブラックホール程ではないが全ての物を強力に引き付ける


並の龍種であれば瞬く間に肉塊と化す強力な範囲攻撃魔法である


それに耐えて尚念動と間違うくらいなのだからクァターロフの強度は驚異的と言えなくもない


しかし耐える為に急速に神力を消費していた


「その程度で動けないなんて不甲斐無い男ね」

「後ろから不意打ち仕掛けて失敗してるのも情けないわ」


「なっ?!」

「何をっっっ!!」


私の安い挑発に乗ったクァターロフからは更に強烈な憎しみを感じる

恐らく呪いも発動しているだろう


だがそんな物はお構い無し

神格に圧倒的な差がある私には何の影響も無い


「チクショウ!!」

「ちくしょう畜生チクショウ!!」

「何で俺がこんな奴に!!」

「こんな奴に負ける筈が!!」

「負けるはずが無い!!」

「そっそうか!!」

「こっこれは夢か幻覚か?」

「そうだ!!」

「そうに違いない!!」

「でなければ俺様が一方的にやられる筈がない!!」


クァターロフは一人でひとしきり取り乱した後

何かを悟ったかのように目を見開いた後不適に笑った


「ならば・・・・」

「こうしてやる!!」


バギンッッッ!!


クァターロフは勝ち誇ったように叫びながら奇跡を行使した

幻覚を打ち破り眠りから覚醒する奇跡を


その瞬間何かが割れる音が鳴り響いた


ー・ー


「フッ」

「フハハハっっ!!」

「やはり」

「やはりな!!」

「お前は姑息にもこの俺様に幻覚を仕掛けたのだな?」

「油断してハマってしまったわ」

「だが惜しいな」

「俺は幻術を見破れず討たれる程愚かではない!!」

「幻覚等破ってしまえばどうと言う事もない」

「覚悟しろよ」


クァターロフの濁った瞳が怪しく光る

その縦に虹彩の入った金色の瞳は憔悴した私を映していた


「わっ・・・・・・・」

「私の術が破られるなんて」

「なんて奴!!」


右手で頭を抑えながらフラつく私

その視線は焦点が定まらず術が破られた反動でダメージを負っているのは明らかだった


それを見て勝ち誇ったように嗤うクァターロフ


「どうやったか知らんがどうせミリア辺りの作ったアーティファクトだろう!!」

「だがそれも失くなれば打つ手は無いのだろう?」


クァターロフが笑いながら打ち出す無数の触手は唸りを上げて襲い来る


私は魔法を駆使して対抗するが全てを打ち消す事など出来るはずもなく打ち漏らした触手が掠めた所に鮮血の花が咲く


「か弱い人間風情がナメるなよ?」

「お前は特別に俺自身が凌辱し尽くしてから食ってやろう」

「なぁに」

「人外の快楽を味わえるのだ」

「死んでも本望だろう?」


掠めた触手が腕に絡みつき体勢を崩す私


その隙を逃さず四方八方から襲いかかる触手が私の両手両足に巻き付いて自由を奪う


「捕まえたぞ」

「手を煩わせやがって・・・・・」


静かに私へと近づくクァターロフ


「やっ!止めろっっ!!」

「お前みたいなバケモノに好きにされてたまるかっ!!」


私は意を決し舌を噛もうとした


「おっと」

「そう簡単に自害等させるものかよ」

「ゆっくり楽しんでやるから覚悟するんだな!」


クァターロフの触手が私の口を塞ぎ顎を押し広げた

舌を噛んで自決する事も出来ずクァターロフの触手はゆっくりと身体中を弄る


「ンッ!!」

「ンググッッッ!!」


私は必死に藻掻くが屈強な触手に捕まってしまえば抗う術は無い

その触手は力強く私を捕らえ体の隅々まで這い回る


終わりだ


私は抗っていたが抵抗も虚しく絶望が心を支配していった

次第にありとあらゆる穴へと粘液でヌメる触手が入り込んでくる


私は口を塞がれ嗚咽をあげることも許されずゆっくりと

ゆっくりと凌辱されていった・・・・・・・


ー・ー


「ほんっと」

「こういうバカって他にやること無いのかしらね?」


私は床で蠢き悶えるクァターロフを見下しながら呟いた


「妄想とは言えこのタコスケに蹂躙されてると思うと嫌な気分 になるわ」

「・・・・・・・」


ブルッ!!


「鳥肌立ってきた」


私は身体を両手で抱えながら身震いした


暑さも寒さも数値的にしか感じない私でもこう言う精神的な悪寒を感じるのはやはり感情が魂に帰依するからなのだろうか


私はクァターロフが覚醒の奇跡を使った瞬間に合わせて幻術をかけたのだ

それもクァターロフの意思に反すること無く五感全てを惑わし自由に動いている錯覚をひき起こす


夢を見ているような幻術を


幻覚に墜ちたクァターロフは既に自らの限界値近くまで消耗している

しかしそれすら惑わされ夢の中の私をいたぶる為に力を行使し続けていた


これでもうすぐクァターロフの力は完全に尽きるだろう


「ふふふっ」

「愚かなクァターロフ」

「自分が今幻術に囚われているのもわからないのね」


勿論現在もクァターロフ信者達に対して啓示による配信を行っている

私にズタボロにされた挙げ句幻術に落ちた様子もバッチリと


その憐れな妄想の中身は公開しないがそれで悶える醜態はクァターロフの信仰を失わせるには効果的だった


「まだしぶとい狂信者もいるようだけど・・・・」

「これぐらい信仰カが減れば再起不能よね」

「そもそも格下が亜神に幻術をかけられるはず無いじゃない」

「最低でも同等の力がなければ魔法で騙すことなんか出来るわけがない」

「現実逃避とは言え幻術にかかっていたなんて暗示に簡単に引っかかるんだもの・・・・・・」

「思ったよりも弱かったわね」


私は配信中の信者達にもハッキリと聞こえるように呟いた

するとクァターロフの肌から更に精気が失われていく


やはり信仰心に訴えかけ供給を断つのは効果的なようだ


クァターロフがどんな思惑で醜悪な蛸の姿をしているのかは分からない

しかしあの姿を維持するだけで相当消耗するのだろう事は明らかだった


「クァターロフ・・・・・・」

「夢の中で腐り果てるが良い」


私は信者達にクァターロフが朽ちて滅んだように見せる為〈壊毒(フェスター)〉の魔法をかけた


すると見る間に肌は爛れ膿がわいて腐り始め端から崩れ落ちていく

異臭が漂い噴き出たガスが辺りを霞ませた


「この愚かなクァターロフは自らが腐り崩れていくのも分からず私のかけた幻術の中で下卑た妄想に浸っているわ・・・・」

「最早信ずる心も功を奏さず存在が消え失せるのは時間の問題」

「今まで戦った中でも群を抜いて愚かで弱かったわね」


私は何も無い空中に座ると右脚を高く上げて組むとそこに背もたれが有るかのようにもたれかかり退屈そうに左手で頬杖をつきクァターロフを眺めた


その肌は爛れ黒い体液が滲み出ると黄色く泡立ち煙を上げて腐れ落ちる

表皮が腐れ落ちるとその下の肉が同じく泡立ち腐っては落ちていく


見ていてあまり気持ちの良いものではない


配信の為少し眺めていたがクァターロフの回復速度が遅くなっている事から最早見る価値も無くなっている事が分かる


「飽きてきたし」

「そろそろ終わらせようかな」


私は立ち上がるとゆっくりとクァターロフに歩み寄った


そして少し考えた後魔法を使いクァターロフに触れたのだった


ー・ー


サラサラサラサラサラ・・・・・・・・


音も無く崩れ去るクァターロフ


爛れ腐れ落ちる体組織も未だ健在な内部組織も

全て灰のように崩れ落ち風に靡かれたように宙を舞う


しかし此処には風など吹いてはいない


それでも崩れ去ったクァターロフの黒い灰は舞い上がりながら

虚空へと消えて逝く


まるでその存在が世界に溶けるように


クァターロフが痕跡も残さず消えた後

信者達への配信を終了した


「もしやとは思ったんだけどね」

「まさか亜神にも〈死神の導き(タッチオブデス)〉が効くとはね」


私がクァターロフに使ったのは以前剣爪鷲獅子(レイドグリフォン)に使用した魔力を霧散させて生命活動を維持出来なくする魔法だ


即死させ輪廻の輪に戻す対人戦での究極魔法の1つ


この魔法が効いたことから考えると神ですらその魔力の全てを失うと滅びざるを得ないと言う事だ


神力と魔力の共通性についてある仮説を立てていた


それは神力とは神界つまり異世界の影響を受けた魔力なのではないかと言うもの


結果はクァターロフが滅びた事で証明された


魔力とは想いの力であり生命の源

そして神力とはその魔力を神族に馴染む形に変わったもの


又は神力がこのコモンスフィアに干渉するため変質した物が魔力であり元々は同じ物だと言う事だ


「なんかダンジョンの魔素に違和感あったんだよね・・・・」

「神であるプレイヤーが作るのに何で邪悪な意志が宿るのかって・・・・・・」

「魔素の正体はコモンスフィアの人間には過分で異質な高濃度の魔力」

「強い魔力に当てられたコモンスフィアの生物は耐えられず身体が変化する・・・・・」

「魔物達のあの姿は異質な神々の力を擦り合わせずに浴び続けた結果と言うわけね」

「そして魔力は使用者の心を映す鏡のような物・・・・・」

「クァターロフのあの姿もアイツの性根が反映された姿とも言えるわね」


私は独り言を呟きながら辺りを見回す


対象が消失した事により戦闘領域に綻びが生まれ外から浸水が始まっていた

後少しで結界が割れこの空間は押し潰されるだろう


ガシャアンッッ!!


「アリエル大丈夫?!」


派手な音をたてながら結界を突き破りGブロウが突入して来た

シンシアが操縦して迎えに来てくれたのだ


だがGブロウの突入によって結界は強度を失い不気味な唸りをあげている

もう一刻の猶予も無い


「ありがとう」

「助かったわ」


私がGブロウに乗り込みハッチを閉めるのと結界が崩壊するのはほぼ同時だった


凄まじい量の水に叩きつけられGブロウは大きく揺れた

衝撃緩和結界を張っていてコレなのだから生身では相当な衝撃だっただろう


ー全プレイヤーに伝達

ーミリア教圏内でイシュタルによるクァターロフの討伐を確認

ー現時刻より10ヶ月の間旧クァターロフ信者に対し

ー優先的に啓示を行う権利をイシュタルに与えます

ークァターロフの居城ルリィエンの所有権を削除

ーイシュタルにはその位置を開示します


頭に鳴り響く無機質な音声


クァターロフ討伐を知らせる全体アナウンスだ

コレでミリアに私達のおおよその場所を知らせる事になった


「フンッ」

「討伐すると全体告知されるってわけね」

「おおよその場所を知らせる事で疲弊した神を討たせるつもりなのかしら?」


私は腕を組んで憮然と言い放つ


「コレはマズいのぅ」

「ミリアにおおよその位置を知られてしもうたわい」


「ちょっと2人して何の話よ?」

「またプレイヤー限定のアナウンスが流れたの?」


システムアナウンスを聞けないシンシアに事情を説明しGブロウのチェックを行った


かなり強い衝撃だったため右アームの可動部と左アームの爪が損傷していた

そして各側砲のハッチが損壊し8割が撃てなくなっている


「航行には殆ど問題無いけど・・・・・」

「このGブロウは戦闘不能ね」

「一度何処かに寄港した方が良さそうだわ」


私がため息をつくと頭上に大きな影がよぎる


ークァターロフ討伐おめでとうー

ーお困りのようだが何か手伝えるかな?ー


同時に頭に響いてきたのはあの島亀の声だった


その好意に甘え島亀の背負う城塞都市へと舵を切ったのだった

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