表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

第3話

   

 その(あと)のことは、正直あまり覚えていない。

 マンションの五階まで上がり、彼女の部屋で美味しい紅茶をいただいたこと。大学時代の思い出を語り合ううちに、なぜか口論になったこと。

 はっきりと記憶があるのは、そこまでだった。

 その先は無我夢中だったらしく……。


 ハッと気づいた時には、私は肩で息をしていた。

「はあ、はあ……」

 立ちすくむ私の目前(めまえ)には、(ゆか)で仰向けのユウコ。大きく目を見開いたまま微動だにせず、胸のあたりがぐっしょりと赤く濡れている。

 脈を確認するまでもなく、彼女が死んでいるのは一目瞭然だった。

 ここでようやく、自分の右手の違和感に気づく。そちらに視線を向けると、血まみれのナイフを握っていた。

「ああ、私が彼女を殺してしまったのか」

 そんな独り言が、自然に口から飛び出す。


 しかし不思議なことに、罪悪感の(たぐ)いは全く湧いてこなかった。ただ何となく「こんな不幸な結果に終わったのだから、やはり黒猫は不吉の前兆だった」と感じただけ。

 そのまま平然と帰宅して、まるで何事もなかったみたいに、日常生活に戻ることが出来た。

   

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ