表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第1話

   

 窓から見える空は、今日も雲に覆われている。私の心の中と同じだった。

 こんな日に部屋に閉じこもっていたら、ますます気が滅入るに違いない。

 ただそれだけの理由で、私は散歩に出かけた。曇天みたいな薄灰色のパーカーを着込み、それより少しだけ色の濃いリュックを背負って。



 普通の人々は学校や会社へ行っている時間帯であり、住宅街の裏通りは閑散としていた。

 元気に活動中なのは、野良猫やカラスのような動物たちばかり。人間社会の習慣に縛られず、彼らには学校も会社も存在しないからだろう。


「また会えたね」

 聞き覚えのある声が頭上から()ってくる。

 足を止めると、塀の上で一匹の黒猫がうずくまっていた。

 いつものように、左目だけ開けて右目は閉じた状態。まるで人間のウインクみたいだ。

 初めて見た時は驚いたけれど、それは私の知識不足のせいだった。猫というものは敵意のない相手にはウインクする生き物であり、特に人間に飼われている猫は、頻繁にそうした仕草を見せるという。

 だからウインクに関しては幻覚でも何でもないはず。ただし「また会えたね」の方は幻聴に違いない。いくら調べても「猫が人間やオウムみたいにしゃべる」という話は見つからないのだから。

 きっと私は、頭がおかしくなっているのだ。

   

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ