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お姉ちゃんの秘密

ストーンズ家の家族を紹介するよ。


まずは僕、アンソニー。『神様の贈り物(ギフト)』と金眼を持った10歳。3歳の時に病気で失明したけど、魔力感知を鍛えて不自由なく生活している。『ギフト』は父さんから3歳の時に、金眼は10歳の時に女神チル様に貰った。

街の初等学校に通うはずだったけど、金眼のせい?でいきなり都市にある中等学校に通う事になった。ここは全寮制なので今は家を出て寮生活を送っている。


母、エレノア。28歳。元冒険者で未婚で僕を産んで育ててくれた。回復魔法が得意。僕が3歳までは宿屋で働きながら僕を育ててくれた。父さんと結婚してからは森の家で僕とお姉ちゃんを育ててくれた。僕が学校に行くようになってからは宿屋の食堂で働くようになった。冒険者からの人気は高く、宿屋の食堂は繁盛している。


父、カイト。34歳。金眼と「ギフト』を女神チル様から貰った元勇者。魔王討伐後は新しい魔王になった。その後旅先であった母に一目惚れ、結婚して僕の父になった。宿屋の隣に中古の魔導具屋を開いている。能力にあった武器を合わせるのが得意で冒険者の間ではちょっとした有名店だ。最近ではあまり無くなったけど、態度の悪い客には容赦ない対応をするので冒険者からは畏怖の対象になっている。元勇者の事も現魔王である事もこの街では秘密。魔王の仕事は魔界の代理人にほとんど任せきりらしい。チル様が言うには実は異世界からの転生者らしい。転生者ってなんだろう?


そして姉のベル。12歳。この街で初めて高等学校に進学した魔力の才能に溢れた女の子。実は先代魔王に殺された先先代の魔王の娘なんだ。先代魔王に殺されそうになったところを勇者カイト(父さん)に助けられて、人間界に旅に出る事になった。魔界を出たのはお姉ちゃんの両親が人間界を知って欲しいと願ったため。

魔族なので頭にツノが生えているんだけど父さんが掛けた擬態魔法で髪飾りのようになっている。瞳の色も本当は()()()()の赤眼なんだけど、やっぱり父さんの魔法で茶色になっている。物心つく前から父さんと一緒だから小さい時は自分が魔族である事を知らなかった。



僕が病気で死にそうになった時、父さんは僕を助けるために無茶をして死にそうになった。その時魔力が暴走してお姉ちゃんは自分が普通じゃない事を知った。

父さんの本当の子供ではないことを知って落ち込んでいたお姉ちゃんを助けたのは母さんだ。


母さんは魔族である事も魔王の子供である事も、そして父さんの本当の子供でない事も全て受け入れて、お姉ちゃんを自分の子供にする事にした。

そしてめちゃくちゃ可愛がった。


お姉ちゃんは母さんの愛情をたっぷり受けてそれはそれは自由に育ったんだ。

お姉ちゃんは高等学校の一年生。中等学校と高等学校は同じ敷地にある。

それはつまり学校でも僕の先輩で頭が上がらないという事なんだ。


☆★☆★☆★


「と、父さんが魔王?じゃあ父さんは魔族なの?」

「いいえ、カイトは人間ですよ。ただ彼は私がこの世界に呼び出した異世界からの転生者だから、あなたたちとはちょっとだけ違うわ。」

「異世界?転生者?」

「詳しいことはあなたが大人になったらカイトが話してくれる・・・と思うわ。多分・・・。私が一つ教えてあげられるのは、カイトは私の願いを叶えるためにこの世界に来てもらったってこと。その代わりに特別な能力と身体を与えたの。あと、魔界のルールでその時の魔王に認められるか倒すと新しい魔王になるの。本人の意思とは関係なくね。」

「そ、そうなんだ・・・父さんは勇者で魔王を倒したから・・・じゃあ、チル様の願いっていうのは、魔王を倒すことだったの?」

「えーと、違うのよ。まさか魔王を倒すなんて思ってなくて・・・私の願いは、魔界のゲートを壊してもらう事だったの。だから魔力感知と魔法解析の上位スキルを持った金眼を与えたの。あはは。」

チル様はちょっと困った顔をして少し笑った。


「じゃあ、なんでわざわざ魔王を倒したんだろう?もしかしてお姉ちゃんが関係してるのかなあ?」

チル様を見ると、目を丸くして僕を見ていた。

「あなたはすごい子ね。そうよ、ベルを助けるために魔王を倒したの。」


チル様の話によると、魔界のゲートは突然現れる。今までも何度も開いたことがあって、初めてゲートが開いた時、チル様が異世界人を召喚してゲートを封印したんだって。その時は3人の勇者が召喚されて、ゲート封印後はそれぞれ王様になって今の世の中になったんだ。


「ゲートがまた開いても大丈夫なように、勇者の血を引く者の中に稀に『ギフト』を与えてきたの。あ、たまに生まれてくる平民の『ギフト』持ちは貴族の血を引いているのよ。隠し子のね。だからゲートは何度か開いたけど、今までは問題がなかったの。」

「じゃあ今回はどうして父さんが呼ばれたの?」

「今回は魔族の都市にゲートが開いたの。」

「どうゆう事?」


ゲートは今まで魔力の濃い洞窟や森なんかに突然現れていたから、人間も魔族もすぐにはゲートの存在に気づかない。たまたま気付いた少数の魔族や魔獣が人間界に現れて災害を引き起こしていた。

そのゲートが今回は何故か()()の都市に開いた。

そのため、一度に多くの魔族がゲートを潜ってきてしまった。

そうして建国以来の大きな争いが始まった・・・のだが。


実際のところ魔族にとって人間界は別に住みやすいわけではなかった。

魔族は魔力を人間より持っているから、普段の生活で普通に魔力を消費する。

人間界は魔力が薄いため、居心地が悪い。これは人間とっても同じことだった。

だから、魔族にとって人間界への侵攻は魔族の総意ではなく、暴れたい者が勝手に行なっているゲームのようなものだった。

それでも圧倒的な力の差により、一部の地域は魔族の村になってしまった。


「前のように複数の勇者を召喚してもよかったんだけど、ゲートを閉じた後が問題なの。強い勇者が何人もいるとおかしな争いが始まってしまうでしょう?」

「それなら一人だけ召喚すればよかったんじゃないの?父さんは一人で魔王を倒すくらい強かったんだから。」

「あんまり強い力を初めから与えてしまうと心がダメになってしまうのよ。だからカイトは召喚じゃなくて転生してもらったの。少しずつ力を身につけて心も鍛えてもらえるように信用できる賢者に育ててもらったの。」


「そうやって勇者として成長していく間に、魔界の方でクーデターが起こっちゃってね、魔王の家族はベルを残して殺されちゃったの。」

「それでお姉ちゃんを助けるために新しく魔王になった魔族を倒したって事?」

「うん、簡単に言うとね、そんな感じよ。」


チル様の説明は本当に簡単すぎてさっぱりわからなかったけど、こういうことは本人に聞くのがいいのよ、と笑って言われた。


「それでね、アンソニー。あなたの持っている『ギフト』なんだけど、実は金眼とセットなの。だから一応聞いておくけど、金眼を受け取ってくれるかしら?」

「嫌だって言ったら、貰わなくてもいいの?」


わざわざ聞いてくるくらいだ。きっと拒否権はないのだろう。


「うふふ、あなたの事だからもう気付いてると思うけど、あなたは溢れ出る魔力を抑えられないでしょう?だから嫌でも金眼の力が必要なの。この眼の力がなければ周りを壊すだけじゃなくてあなた自身が死んでしまうわ。」


そうなのだ。内にある魔力を僕はコントロール出来なかった。一度ちょっとしたことで腹を立てたら魔力が暴走して僕の部屋が吹っ飛んでしまった。それからは何かあると森の奥まで行ってこっそりと魔力を解放していた。こう言うと上手く魔力を使えてるみたいだけど、実際には本当にただ魔力をぶっ放していただけだった。なんの魔法でもないただの魔力放出なのに森の奥はこの一年ですっかり更地になってしまった。


「本当にそうなんだ。僕はお姉ちゃんや父さんみたいに内側の魔力のコントロールができないんだ。二人よりもずっと魔力も少ないのにね。」

僕は手のひらを上に向けてお手上げの仕草をした。


「まあ、カイトは別としても、ベルは魔眼持ちだから気にすることないわよ。」

「えっ???」

びっくりしてチル様を見た。


「あら、そういえば言ってなかったわね。魔族みんなじゃないけど人間と同じように特別な目を持つ魔族もいるのよ。魔族の中でも特に()()は強くてね、赤眼が特徴なの。ベルは魔族の中でもより強い種族の魔人なの。普段はカイトの魔法で隠してるけどね。」


サラッととんでもないことを聞いた気がする。


「し、知らなかった。じゃあ、魔眼持ちって事はお姉ちゃんも『ギフト』を持っているの?」

「うん、そうね、人間からすれば『ギフト』みたいなものかもしれないわね。違うのは神様の力じゃないってことかしら?魔人は元々が強い種族だからね。だから神の奇跡は起こらないから隠していればわからないわ。」


お姉ちゃんはどうやらとんでもない力を持っているようだ。これは気を付けないと僕が大変な事になってしまう。これは由々しき事態だ。力には力を!赤眼には金眼を!僕は初めて心から金眼を欲した。


「チル様、僕に金眼を与えてください!」

「あら、なんだかわからないけど金眼を望んでくれるのね。嬉しいわ!じゃあ、そろそろ帰る時間も迫っているし早速行きましょう!」

そう言うや否やチル様は手を僕の頭にかざした。

光が体を包み、体中が熱くなったかと思うとスッと落ち着いた。


「金眼の使い方はカイトに教わるといいわ。もし困った事があったら教会に来るのよ。少しだけ私と話ができるから。」

チル様は笑顔で手を振っていた。

「チル様、ありがとうございます。きっとまた会いにきます!」

急速に視界がぼやけてくる。

ここにいる間は目が見えているかのようだったが、元の世界に帰るのだ。


「アンソニー!金眼には『勇者』の称号がついてくるから、立派な勇者になるんですよー!」


えーーーーーっ!!!!聞いてないんですけどーーーーーーっ!!!!

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