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中古専門の魔導具屋

その後、父さんと母さんは結婚したんだけど、結婚するまで大変だったと宿屋の女将さんが教えてくれた。


実は僕が目を覚ましたその晩、父さんが倒れたらしい。

一時は心臓も止まってしまい、本当に危なかったらしい。


母さんは父さんが元気になった後も、しばらくの間は何かあると泣き出してしまい、その度に父さんがつきっきりでいたらしい。


その間、お姉ちゃんの世話は女将さんがしてくれたんだって。

お姉ちゃんはすごくしっかりしていていい子だったって、女将さんは言うけど、家族になってからのお姉ちゃんは僕にとっては暴君以外の何者でもないんだけど・・・おかしいな?


何があったかわからないけど、ある日突然、母さんが結婚宣言をして僕達は家族になった。母さんはいきなりやる気を出してお姉ちゃんを引き取ると自分の娘だと街中に触れ回ったのだ。

お姉ちゃんはそれまで居場所がなさそうにおとなしくしていたんだけど、これ以降母さんとすごく仲良くなってとても活発になったんだ。

あれ?お姉ちゃんが僕に強く当たるのはもしかして母さんのせいなんじゃ?


父さんは僕に魔力感知のやり方はもちろん、いろんな魔法を教えてくれていたんだけど、母さんは一家の大黒柱ならしっかり働きなさい!と喝を入れて働くことになったんだ。


父さんは倒れてから、今までの冒険者みたいな魔物退治とかはできなくなってしまった。これは魔力や体力が少なくなったのも理由だけど、何日も、依頼によっては何ヶ月も家を空けるのが嫌だからっていうのが一番大きな理由なんだって。


冒険者への依頼は、基本的にパーティで行うような大きな仕事なんだ。

魔物一匹とかの討伐じゃなくて群れの殲滅や撃退が普通。

だから計画を立てて、準備をしていくんだ。

それ以上の大きな依頼は街の自警団や都市の機動隊の仕事で冒険者は協力する形になるんだって。


<冒険者ランクとクエストランクの目安は以下の通り>

冒険者ランク

・Fランク 見習い 主に魔物討伐のない素材集め

・Eランク 初心者 複数でのDランク以下の魔物討伐 

・Dランク Dランクの魔物討伐 複数でのCランクの魔物討伐

・Cランク リーダーとしてパーティ結成可 単独でDランククエスト受注可

      複数パーティならBランククエスト受注可

・Bランク 単独でCランククエスト受注可

      複数パーティならAランククエスト受注可

・Aランク 単独でBランククエスト受注可

      必要に応じて魔導具の貸与 一個中隊(200人)相当

・Sランク 一個大隊(600人)相当

❇︎一般的に冒険者のみで生計を立てるにはCランク以上が必要。

      

クエストランク

・Fランク 街の依頼(清掃、肉体労働) 魔物討伐なしの素材集め

・Eランク 街の依頼(清掃、肉体労働) Dランク以下の魔物討伐や素材集め

・Dランク 街の依頼(魔物の調査、討伐) C、Dランクの魔物討伐や素材集め

・Cランク 街の依頼(魔物の調査、討伐)  Cランクの魔物討伐や素材集め

・Bランク 都市の依頼(魔物の調査、討伐) Bランクの魔物討伐や素材集め

      災害級

・Aランク 超災害級

・Sランク 国難級


冒険者への依頼にはクエストランクに見あった報酬がないものもある。そういうクエストはソロ冒険者の主な仕事になっていて父さんもそれで稼いでいた。

父さんは前の冒険者証を無くしてしまっていたから新しく登録したんだけど、この街ではBランク以上のクエストが出ることなんかなくて、一度Cランククエストをソロで解決したことでBランク冒険者で登録されていたんだ。

でも結婚後、Cランクに申請し直したんだ。なんかもったいないよね。


それで冒険者では稼げないからって魔導具屋を始めることになったんだ。

魔導具は魔力を持った特殊な魔法道具だ。


魔力が少ない平民でもこれがあれば日常生活が遥かに楽になる。


でも基本的に魔導具は高い。


魔導具は貴族用に作られた一点物で高価な装飾を施しているものがほとんど。

なので魔導具が壊れていても装飾品そのものの価値が高いため、安い物は装飾品を取られた上に壊れて使えないか、使い方が不明な物ばかりだったんだ。


もし綺麗な魔導具が安く売りに出ていたら、持ち主や使用者に災いを招く呪いの魔導具と思って間違いない。


父さんの店は壊れた魔導具や魔導武器を直して安価で売る中古魔導具屋だ。


通常魔導具は高級品で、貴族用のものが多いので装飾なんかも立派な物。


父さんは外装なんかは取られちゃって外見は綺麗じゃないものを、直して安く売ることを考えたんだ。装飾品のない壊れた魔導具は格安で手に入ったから。


でもこの店のメイン商品は生活用の魔導具ではなく安い魔属性武器だ。


父さんの魔力感知は冒険者と武器の相性を最大限に引き出すことができた。

魔力感知自体はある程度の魔力を持った者なら誰でも習得可能だ。

だから冒険者になるくらいの魔力を持った者ならみんな自分の特性にあった武器を選んで、それを使うのは常識だった。


でも父さんに言わせると、自分に合った武器を持っている冒険者はほとんどいないらしい。

Aランク以上の冒険者は別だけど、冒険者はいわゆる日雇い労働者のような自由業で、多くの冒険者は見栄を張って、派手な武器や名の知れたブランド武器を選びがちだからなんだって。


そんな父さんの店は近隣の町にも名の知られるちょっとした有名店になった。

商品がいいから?違う。対応が良いから?むしろ逆だ。


有名になったのは開店初日のトラブルが原因なんだ。

父さんはお店に来た冒険者をみんな倒してしまったんだ。しかもなんの属性もないただのナイフで!

原因は母さん。実は結構人気があったんだよね。

要は母さんを狙っていた逆恨みした冒険者のお礼参りを返り討ちにしちゃったんだ。それから散々説教をした後、父さんは冒険者から武器を取り上げ、代わりに見た目もショボイ安い武器を渡した。


冒険者が泣いて喚いても問答無用の鬼畜な所業だったと女将さんが楽しそうに教えてくれた。


数日後、女将さんのところに冒険者達がこっそり現れるようになった。

父さんにガチ説教された冒険者達だ。

彼らが言うには、渡された武器の使い心地が未だかつてないほどしっくりくると。

お陰でクエストが上手くいき報酬もあがり、ランクアップも目指せそうだという。


この街にいる冒険者のレベルは正直いって低レベル。

実力ある者や上位を目指す者は街を出ていきもっと稼げる都市に行くから。

この街の冒険者は夢破れて生活のため続けている者がほとんどだった。


そんな彼らが再びやる気を出していた。

そこで父さんにお礼を言いたいのだが、怖くて会いに行けないから代わりに言って欲しいのだと。

ちなみに魔導具屋は宿屋の隣だから挨拶に行くのに30秒もかからない。


後でそれを聞いた父さんは「だから3流なんだよ。」とちょっと嬉しそうにつぶやいたという。


女将さんに取り上げた武器は渡した武器を買ってくれれば返品するし、戻しても返品すると伝えたところ、全員が武器を買った上で、返品を断ってきたという。せめてもの気持ちだそうだ。


中古武器自体は大した利益を生まなかったけど、結局魔導具屋は大儲けした。

後にこの街を出て活躍する冒険者達のお陰で父さんの店はさらに有名になっていくのだった。


父さんの魔導具では販売と簡単な修理を行なっている。


修理はもっぱら刻まれている魔法陣の修復だけど、専門家じゃないから細かいものは直せない。

ただ父さんに言わせると手入れが悪くて少し手を入れればずっと良くなる魔導具は多いんだって。

簡単に言えば埃をかぶって魔法陣がうまく起動しないから、掃除をするような感じらしい。


魔導具の仕入れは秘密の場所で行なっている。

僕ら家族が冬に過ごす秘境のことだ。

この場所は僕らが暮らす街や森と違って魔力が多い不思議な場所で、魔法の勉強にはもってこいだった。


「父さん、どうして魔法の練習に向いているのにみんなはここに来ないの?」

「ここには結界が張ってあって、外からは見つからないようになっているんだよ。」


「どうして僕たちは入れるの?」

「父さんは入口を知っているからさ。」

「中の人は怒らないの?勝手に入って。」

「ははは、勝手じゃないさ。父さんはこの場所の管理を頼まれているんだ。」

「管理を?誰に?」

「アンソニーもいつか会わせてあげるよ。ただ今はまだ早いな。」

「母さんとお姉ちゃんは知ってるの?」

「母さんには話してあるよ。お姉ちゃんは・・・ベルは昔ここにあった国の出身なんだ。」

「え?お姉ちゃんの街は魔族に壊されちゃったんだよね?結界はいつ出来たの?誰が??」

「さあ、この話はもうお終い。仕事だ。武器の回収を始めるぞ!」


父さんは話を切り上げると、瓦礫だらけの荒地に入っていた。

僕も黙ってついて行く。


中古の魔導具や武器はここで拾って仕入れるのだ。

僕は魔力感知の練習も兼ねて父さんと一緒にいる。


魔力反応のある武器はそこらじゅうに落ちていた。

殆どが壊れていて修理不能な物ばかりだけど、中には掘り出し物もある。

それにしてもすごい数の武器だ。


いったいどれほどの戦闘があったのだろうか?


お姉ちゃんはどれほど苛烈な環境で過ごしてきたのだろう。


魔族との争いから10数年たってもその傷跡はしっかりと残っていた。

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