父さんからの贈り物
2話同時投稿です。
僕はアンソニー。アンソニー・ストーンズ、10歳。
ついこの間まで僕は家族と一緒に街から離れた森の中で暮らしていた。
今は学校の寮生活だ。
学校に入るまでの話を少ししようと思う。
父さんは街で魔導具屋を営んでいる。
普通の商人は自宅を店舗にするんだけど父さんは宿屋の物置小屋を借りてそこを改修して店にしたから、店には森の自宅から通っているんだ。
母さんは昔は冒険者だったけど僕を身籠ってからは、宿屋に住み込みで働いていたんだ。
そしてそこで父さんと知り合った。
あれ?おかしくない?
そう、僕は父さんの本当の子供じゃない。
本当の父親の事は顔も知らない。
母さんと同じ冒険者だった父親は、母さんが妊娠して仕事ができなくなると、他のパーティに移って街から出て行ったらしい。
宿屋は冒険者の世話役をしていたので、不憫に思った女将さんが母さんを住み込みで雇ってくれたんだ。
はじめて他の街からふらっとやってきた父さんは小さな女の子を連れていた。
僕のお姉ちゃんのベルだ。
もちろん僕と血は繋がっていない。
それどころか父さんとも繋がっていないんだ。
お姉ちゃんの住んでいた都市は魔族との争いで酷く荒らされ、両親も亡くなってしまった。
父さんは身寄りのない小さな女の子を見捨てられずに、引き取って一緒に旅をしてきたんだ。
この街で母さんに出会った父さんはそれはそれは大きな衝撃を受けたらしい。
「雷撃の恋」に落ちたんだと言っていた。
一目惚れって言うんだって。僕にはよくわからないけど、多分すごい好きって事だよね。
父さんは母さんに猛アプローチをかけたけど、僕はまだ赤ちゃんだし、父さんには誰の子だかわからない子供がいるしで、全く相手にしなかったんだって。
最近聞いた話だと、母さんはこの頃、男なんて絶対信用しないと決めていたらしい。それにお姉ちゃんも父さんの隠し子だって信じて疑わなかったっていってた。
父さんはそれからこの宿に泊まり、事あるごとにアタックしては振られていた。
それでも少しずつ母さんの気持ちも変化してきていたんだろう。
みんなで出かけたり、食事をしたりしていたのを覚えている。
僕達が家族になったのは、僕が3歳の時。
僕は原因不明の高熱を出して倒れてしまったんだ。
薬も魔法も効かなくて、幼いながらもいよいよもうダメだと思った。
意識は朦朧として、視力もほとんど失われて光くらいしか感じなくなっていた。
父さんはこの時、宿屋の依頼で魔獣狩りに出かけてていなかった。
僕が熱を出したのを心配して3日目に女将さんが父さんに使いを出してくれたけど、結構遠くの場所だったから2週間くらいは帰って来れないはずだった。
なのに便りを出して4日目に父さんは帰ってきたんだ。早足の飛脚が伝えるのに3日はかかる道のりだ。何をどうしたのか、知らせを聞いてたったの半日で帰ってきてしまった!
父さんが部屋に来た時、すごく明るくて暖かいものに包まれた感じがした。
もう何も見えなかったけど、父さんが帰ってきてくれて嬉しかったのを覚えている。
あんなに苦しかったのが嘘みたいに楽になっていったから、これから神様の所に行くのかなって思ったんだ。
☆★☆★☆★
ふわふわした感じがあって光のある方へ向かっていった。
近づいていくと綺麗なお姉さんがいた。
すごく綺麗な顔なのに、すごく困った顔をしている。
最近母さんが父さんに誘われている時の顔に似ている。
けど母さんはどこか嬉しそうなのに、この綺麗なお姉さんは少し悲しそうな気がした。
「だいじょうぶ?」
その声でお姉さんは僕に気づいたみたいでビックリした顔をした後、すぐにニッコリ微笑んでくれた。
「おねーさんはだーれ?」
「私はカイト・サガミの守護者ですよ。」
「しゅごしゃってなーに?」
「守護者はそうね、神様の事かな。私はあなたのお父さんを守る神様よ。」
「カイトさんはおとうさんじゃないよー。おとうさんならよかったのにね?」
「あら、カイトはこれからあなたのお父さんになるんですよ。」
「・・・おかあさんとけっこんするの?」
「そうですよ。」
「・・・おとうさんとおかあさんのこどもでうまれてくる?」
「いいえ、アンソニー、あなたは今のままでカイトの息子になるんですよ。イヤなの?」
「すごくうれしい!でも、ぼくしんじゃった。」
「アンソニー、あなたは死んでいません。カイトが命を懸けてあなたを助けたから。」
「じゃあ、おとうさんしんじゃうの?」
「本当なら・・いいえ私がカイトを死なせはしません、その代わり私が与えた加護のほとんどがなくなるでしょう。」
「かごって?」
「この世界では『神様の贈り物』って呼ばれているものよ。」
「なくなっちゃうの?」
「いいえ、今度はあなたが受け取るの。でも今のあなたには大きすぎる力だから、10歳になったら渡してあげるわ。今はほんの少しだけで我慢してね。」
「ふーん、よくわからないや。じゃあ、またあえるの?」
「ふふふ、そうよ、私はずっとあなたたちを見守っているわ。あなたも、あなたの家族の事も。もう時間ね、元気でいなさい。私はあなたの守護神・女神チル。また会いましょう。」
(あなたは私の事を忘れてしまうけど・・・)
☆★☆★☆★
目が覚めたら不思議な感じがした。
どこかで誰かに会っていた気がするけど思い出せない。
目を開けて周りを見ると何も見えないけど、人の気配があるのがわかった。
「アンソニー!大丈夫?お母さんがわかる?」
お母さんの手が僕の顔や頭をわしゃわしゃしてきた。
「うーん、おかあさんのことはわかるけど、ここはくらくてよくみえないよ。」
「あーっ!なんてことを・・・」
母さんは泣き出してしまった。
「エリー、落ち着いて。」
父さんがやってきたようだ。
「だって・・・だって・・・アンソニーは目が、目が・・・」
「エリー、これを飲んで落ち着きなさい、きっと大丈夫だから。」
甘い香りがする。ぼくも大好きなホットハチミツだ。
「アンソニー、これが何かわかるかい?」
「わかるよ、ホットハチミツでしょ!」
「どこにあるか見えるかな?」
「みえない・・・」
「ああっ!!」
母さんが呻いた。
「じゃあ、これならどうかな?」
父さんが手を握ると、何かが流れてくるのを感じた。
「目を閉じてゆっくりと瞼の裏に神経を集中してごらん。」
「うーん、ん、ん!」
眉間にしわがよる。
「アンソニー、そんなに力を入れないで。逆に力は抜くんだ。これがわかるかい?」
目の前に暖かい何かがある。
「あ、なにかある!」
「そのままそれを見る感じで。」
少しずつ何かが形を作ってきた。手だ。父さんの手だ。
「てがみえる!」
「そうだ、じゃあ、この手を掴んでごらん。あ、ゆっくり!ゆっくり集中力を切らさないで。」
ゆっくり左手を伸ばして手を握った。
すると左手からも何かが流れてきたと思ったら一気に、目の前が明るくなった。
視覚が戻った訳じゃない。目は閉じたままだ。
明るいのは父さんの体が光っているからだった。
「まぶしいよ!」
「そうか、じゃあこれならどうだ?」
光がスウっと弱くなっていった。
細かいところはわからないけど、全体のシルエットがわかる。
自分の体を見ると自分も淡く光っている。
「おとうさんとぼくのからだがひかってるよ。」
「そうだ、アンソニーが見ているのは魔力なんだよ。アンソニーの目は光を失ってしまったけど、代わりに神様が魔力感知のスキルをくれたんだ。ってお父さん?お父さんって言ったのか?」
「そうだよ!だってまろくかんちはおとうさんがくれた『ぎふと』なんでしょ?かみさまじゃないよ!ぼくはしっているよ!」
「おおぉっ・・・」
今度は父さんは泣き出してしまった。
僕は何故だか魔力感知のスキルは父さんがくれた『ギフト』である事を知っていたんだ。