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ゴブリンと共に歩む、魔王転生。  作者: 佐の輔
序章 魔王、ブイヤに立つ。
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お酒を飲むのは2歳から(※ゴブリンに限る)

●タロー

 ブイヤ領の新たなる魔王。2日連続屋外で寝落ちが前書き段階で決定済み。


●ヴェス

 タローを補佐する魔王補佐の妖精。パンツは穿いてないらしい。


●マット

 弓ゴブリン。ゴブリンの成人に関してタローと多少の齟齬があったが無事解決。


●ティア

 マットの一人娘。兎にも角にも可愛い容姿をしている。薬草使い。更新でボクっ娘属性が追加。


「ど、どうぞ」

「おお…ありがとうね」


 ティアがやや緊張した面持ちで俺の持つ木の器に卵黄と牛乳を混ぜた色合いの液体を注ぐ。…かなり、発酵臭が強い。なるほど…これがゴブリンの酒なのか。…あ。アレルギーとかダイジョブかな? 俺、特に何も持ってないけど。異世界の食べ物まで検査範囲に入ってないだろーし。


「しかし、ゴブリンが僅か2年で成人とはたまげたなあ」

「逆に私達には長寿な種族の成人年齢を存じませんがね。私達ゴブリンのような下位のモンスターは成長も早く、その分寿命も短いのです。恐らく人間族の半分ほどでしょう」


 まるで犬や猫のような成長速度だな。と思ったが、改めて考えると彼らは歴とした亜人のモンスターなのだ。人間と比べるなど御門違いか。まあ、ドラゴンとかの有名どころはまた違うのかもしれないが。


「そうか…またゴブリンに対する見識が深まったな。まあ、兎に角。明日はついに畑のものにありつけるぞ!よろしく頼む!マット。そしてティア。今後も俺を助けて欲しい」

「仰せのままに…」

「は、はい!ボクも微力を尽くします!」


 俺のちょっと臭いセリフに二人はごく真面目に頭を下げてくれた。


「今後のブイヤ領と我が身内たるゴブリンに栄光あれ! 乾杯っ!」

「「乾杯!」」


 俺達は互いに杯を焚火の前に掲げて、一気に煽った。


「んっ…!?」


 このゴブリン酒…確かに発酵臭がキツイが、果実みたいに甘くて濃厚で美味いじゃないか!


「魔王様。娘が作ったサル酒…人間族の町にあるものと比べれば劣りはしますが、お口に合いましたかな?」

「うん。俺も初めて口にした味だが、割とイケる。流石、一流の薬草使いなだけある。ティアは酒造りの腕も良いようだな?」

「えっ。…エヘヘ!そ、そうですか?」


 ティアは眼にわかるほどに真っ赤になると俺の空いた杯に素焼きの壺から中身を注いでくれた。そして、顔の赤さを誤魔化すように自身の杯に何度も注いでその都度飲み干した。酒豪かよ。


 …しかし、この酒精は空きっ腹に効くなあ~。



 ※



 火が焚かれ辺りが全くの暗闇に包まれた静寂の中で、男のイビキがまるで怪物の声のように木霊していた。


「……父さん」

「どうした、娘よ?」

「不思議な御方ですね…」

「タロー様か? ああ、確かにな。私も18年…ゴブリンとしてはもう結構な年寄りだが、それでも他領との境で他の魔王の話を色々と聞いてきた。だが、このような御仁は初めてだな」


 マットはニヤリとしながら大の字になって寝ているタローの腹に毛皮を被せてやった。


「タロー様は…強いのかな?」

「強い…か。ティアは強者を魔王に望むか?」


 マットの問いにティアはジッとタローの寝顔を凝視している顔を横に振る。


「わかんない。だって、ボクは魔王なんて先代のグノー様しか知らないし」

「そうか。恐らくだが…タロー様は戦闘能力に特化された方ではないと思う。グノー様と同じ…いや、それ以下かもしれん。武装した一般の人間族とすら対等にやり合う事も難しいやも。武力によって領民を守り、領地を拡大することは…できぬやもしれんな。だが…」


 マットは暗闇の中でも仄かに光を放つ畑を見やった。


「私は無力とは到底思わない。いや、むしろ領民から搾取し、領兵を使い潰しの駒程度にしか考えていない列強の魔王などと比べて好ましいとすら私には思える。強き魔王は敵を切り裂いて殺せるだろうが、我らゴブリンを救おうなどと微塵も考えぬだろうからな…」


 ティアは畑にたわわに実る作物からタローの寝顔に視線を戻し「そうだね」と小さく呟いた。


「さあ、明日は魔王様の菜園での収穫だ。お前にも手伝って貰うぞ? 早く寝ろ」

「……父さんは外で寝るの?」

「…魔王様が外で就寝されているのにテントで寝る訳にもいかんだろう」


 マットはムッとした顔をしながら「お前はテントで寝ろ」といって地面に横たわる。


「タロー様をお城の寝室まで…せめてテントまで運んで…」

「許しも得ずにそんな真似ができるか!不敬だぞ、ティア!…それに、もしかしたらタロー様は地面の上で就寝される事を至高とされておるのやもしれん。昨日もこうして外で休まれていたからな」

「ええ~なら…ボクも外で寝るよ。なんかひとりだけなんて、嫌だし」

「…虫に刺されても知らんぞ」


 こうして城もテントも無人のままに夜は更けていくのだった。



 ※※※



『……アンタ。いい加減に寝台で寝なさいよ。てかせめて屋根のあるとこで寝なさいよ! ねえ? 知ってる? 寝台って寝る台って書いて寝台なの。つまり、寝る為だけの場所ってことね。究極的に言っちゃえば、そこ以外で寝るのは非常識でもあると言えるわけよ。 特にちゃあんと清潔な寝台があるのにも限らずに外の地面で寝るYA・KA・RAには、ね』


 俺はヴェスの説教で起こされた。


 顔の上で仁王立ちしていたヴェスを払いのけ、起き上がろうとした時にギョっとした。


 何故かティアが俺の横で寝息を立てていたからだ。


「なっ…!? ま、まさか…お、俺とした事が…!」

『残念だけど、昨夜はお楽しみでしたね? じゃないわよ。安心しなさい』

 


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