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ゴブリンと共に歩む、魔王転生。  作者: 佐の輔
第一章 ブイヤ領のゴブリン達。
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魔王は山と森にゴブリン達を派遣するそうです。

お待たせ(※淫夢ネタではないw)

今後はもうちょい集中力を戻すリハビリに専念します(^_^;)



「出立っ!」

「「おおっ!!」」



 昨晩、何ともなしに今後の事を皆で話合った結果、ゴブリン達の中でも恐らく最高齢で御意見番でもあるスス老師と共に資材集めを目的とした調査に本拠地から東のアンツ領へと続く山には石材や鉱石狙いで。…そいで北東にあるナバンバ領のジャングルへと続く森へは木材の調達及び開拓狙いで。取り敢えずゴブリン達を5名ずつ2~3週間派遣することになったのだ。無論、命大事にでな!


 メンバーは、山に行くのはズダ・ミンシル・フート・ノミグス・ピポ。採掘ゴブリン3人に鉱石に明るい鑑定ゴブリンと護衛の格闘ゴブリン。メンバーの能力的に現段階では申し分ないだろう。

 森は話を聞くに山よりは明らかに危険な場所であるらしい。メンバーはキヲ・ピスケ・キズア・ヤモーシそれに何故かインペスから急遽帰ってきたアックだ。採集ゴブリンは3人に護衛の弓ゴブリンと魔法ゴブリン。…採集は問題ないだろうが、野生のモンスターと対峙する場合の戦力的にどうだろう? こればかりは現地に行って少し確認する必要がある。なので、今回は数日の間は森派遣組に同行する予定になっている。余りにも危険なら森の方は作戦の練り直しだな。


「ズダ。山の方は危険はないかもだが、無理しないでなんかあったら直ぐに皆で帰ってこいよ~」


 俺の言葉に本拠地からも見える山へと歩いて行くズダ達が笑顔で俺に向って手を振り返してくれる。朝飯の前にイキナリこの遠征班の面子の名前が挙げられて大変な仕事を押し付けられたというのに嫌な顔をするゴブリンはひとりもいなかったんだよな。…むしろ今回選ばれたゴブリン達に羨望の眼差しが居残り組のゴブリン達から今なお向けられているくらいだ。



 俺達はズダ達を見送った後、早速森へと向けて大荷物を抱えて出発する。今回、俺の遠征に同行するのはマット・ティア・ハンス・ニドラ・アケ。ついでにニドラとアケの息子のリーノもだ。ニドラ達がついてくるのは護衛や雑用の他に娘のアックが逃げ出さないか監視する目的もあったらしい。アーボはしばらく本拠地の護衛をやってもらう。新婚さんだしな。



 ※



「ほお~これが上の領地…獣王領だとかいうバルボへと続く砂地かあ」

「はい。私もブイヤから出た事はないので実際に目にした訳ではないのですがバルボの大半がこの砂地が広がる乾いた土地だとか」

「うわ~砂漠ってヤツか? 暑いのは苦手だな…」



 俺達は一先ず本拠地から真っ直ぐ北上し、元々マット達が暮らしていたドク一族の場所までやって来ていた。



 挿絵(By みてみん)



 俺は膝をついて手でクリーム色の砂を掴む。


「おお…ホントに砂だ!」

「まさか…魔王様はこの量の砂を見るのは初めてなのですか?」

「イヤ、流石に海とかでは見た事があるさ。後は公園の砂場とか? …まあ質が全然違うが」

「コーエン?というのは存じませんが海かあ~…私もいつか見たいな」


 同行したアケがどこか遠い目をしていた。そういやコイツ、漁ゴブリンだったな。


「そういやアケは漁師だろ? 海くらい見たことあるんじゃ」

「いえいえ!滅相も無いタロー様。私はこのブイヤから2、3領離れた土地の淡水湖で細々と生きてきた無属のゴブリンでしたから。正直、聖王領と獣王領の小競り合いに巻き込まれて…弟夫婦と命からがらナバンバ領を抜けて妻に拾われるまで、恥ずかしながらこのブイヤすら知らぬほど世間知らずでして」


 アケは恥ずかしそうに頬を掻いた。


「ふ~ん。海はこのブイヤから遠いのか?」

「いえ。魔王の旦那。海でやしたらこのブイヤに接する…こっから真下にあるゴメリを抜ければ直ぐ見えるはずですぜ? まあ、アッシもアメアのギルドでこの辺の地図を見ただけでやすが」

「ゴメリか…う~む」


 何故かマットが腕を組んで唸る。


「そういやゴメリの話はあんまりしないなあ…なんでだ、マット?」

「旦那…あそこは…」

「魔王様。ゴメリはその何かと問題がありましてな…とある(・・・)種族がほぼ独占的に居る土地なのですが、現在は人間族も住まぬ生産性の無い廃領扱いとなっています。……今後ジェンシの者達と交流が深まれば自ずと話題にもあがるでしょう」

「そりゃあ、このブイヤで一番の被害者はジェンシだろうしなあ~」


 マットが顔を顰め、ハンスもややウンザリした顔をしてその話は終わってしまった。


「ところでタロー様。なんでそんな砂なんかに興味が? 別に珍しくも何ともないタダの砂だよ?」

「ああ、ティア。お前が作るポーションって透明な瓶に入ってるじゃん? アレと同じものを作れるんじゃないかなと思ってな」

「え。ボクのポーションの容器はスキルで具現化されたものでポーション自体を使ったり、中身が零れたり割れると消滅しちゃうよ?」

「透明な? まさか…旦那ぁ、あの滅多に目に入らねえクリスタル…でやすかい?」

「クリスタル? ああ、そうだ。ガラスだよガラス。この砂を溶かして…えーと、あ。ウリンや女達が化粧っていうかペイントで油に混ぜて使ってるあの白い石…石灰と…何だっけ? あー思い出した!ソーダ灰と混ぜると硝子が作れるんだ。まあ、炉とかの設備とか全然足りんがな」


 にわか知識だがクラフト系のゲームにハマってた時に興味が出て少し調べたことがあるんだよなあ~。あ、でもソーダ灰なんてこの世界で普通に手に入るのか? そもそもソーダ灰って名前で憶えてるだけで正体をよく知らない。確か炭酸?ナトリウムだったかな…ナトリウムってことは塩か。炭酸は? …わからん。


「そ、そぉだ? …それを燃やした灰、ですか?」

「砂からクリスタルが? 私は水晶を高熱で溶かして加工する技術を遠い文明度の高い領などでその業を独占しているなどと聞いたことがあるくらいだが…」

「そりゃあ…恐らく石英ガラスってヤツだな」

「クリスタルの作り方なんて錬金術師共の奥義でやしょ。旦那の知識に驚かされるがあ…勝手にやれば流石にギルドの連中が黙ってはいやせんぜ?」

「そうなのか? まあ、ギルドの奴らとの取引で話をしてみよう。まあ、難しいだろうけど…もしこのブイヤ領でガラスを作れたら特産品とかになっちゃうかもな?」



 俺の言った無責任な言葉に呆れ顔のハンス以外が表情に分かり易い喜色を浮かべる。


 まあ、ガラスは無理でもコレからはギルドを通して物流が本格化する可能性もある。今後のブイヤの発展の為には貿易とまで大袈裟じゃなくとも色々と考えていく必要もあるだろうさ。



「魔王様。それではもう少し森に近付いた場所で今日はテントを張ることにしましょう」

「そうだな。今回は砂を見に来たんじゃなくて森を見に来たんだったな? そろそろ行くか…ってちょっと待っててくれ」

「タロー様。砂を持ってくの?」

「ちょっとだけな」


 俺は掴んだ砂をサンプルとして水筒代わりに使っている空の皮袋(ちなみにゴールデン・ファーワームの何個かある胃袋のひとつだったりする…orz)を適当に詰めておく。ギルドのえーとこの領担当のギルド職員、キャサリン当たりにでも見せて話を聞こう。



 俺達はその後、談笑を交えながら森を目指して再度歩き始めたのだった。



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