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ゴブリンと共に歩む、魔王転生。  作者: 佐の輔
第一章 ブイヤ領のゴブリン達。
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これからどうすべ?

ブクマと高評価ありがとうございます!励みになります!(^▽^)/

今回は登場するゴブリン多めです。

序章末話のリザルトを見て頂きながら読んで下されば…w



「これからどうすべ?」


 開口一番、いきなりコレはないだろうとは俺も思った。

 正しくは“俺達は今後どう行動していくべきだろうか?”だな。うん。


 俺達はインペスの町から無事本拠地へと帰還していた。


 そして、現在本拠地ではアーボとイレインが夫婦になった祝いの宴…だったのだが、恥ずかしがるアーボが自ら進んで俺とティアの件を皆にブッパしやがった。


 結果、今夜は見張りのゴブリンすら加わっての大騒ぎになってしまった。一応、今夜のメインはアーボ達であるから? 魔王命令ということで輪の中心に赤面したアーボとイレインを据えている。その前で巫女であるウリンがどこか妖艶な舞を皆に披露してくれている。


 いつもより酒が入ったのか何人かの男ゴブリン達が裸踊りまで始めてしまう惨事に…って元から半裸みたいな恰好だったからあまり違和感がない。むしろ、それを見る女ゴブリン達からの受けが良い気がした。うーん、異文化…。


「本来であればドガ叔父上の意見を交えて決めたいところですが…致し方ありません」


 俺達はその輪から少し外れたところで焚火を囲んで例の如く車座になって今後の方針会議をしていた。先の発言をしたやや疲れた笑顔を見せるアーキンの他に居るメンバーは俺の両隣のマットとティア・ハンス・アケ・ジョラとミョンとドガのゴブリン達。あ~ニドラは息子のリーノが余程寂しい思いをしていたのか今夜は早めに一緒に就寝したようだ。ドガとエマはジェンシ族の所に行っただろうし…それとニドラとアケの娘のアックも何故かインペスに残ったしな。

 それに加えて今夜はザッカから代表としてホンポ。防衛役からミファ。…本当はトルマとロソにも声を掛けたかったが、今は裸踊りの真っ最中だ。邪魔をするのは無粋だろう。

 畑の世話役の頭は本来ハーンとヘスと決めていたが、現在はゴブリンベリーの苗木の件でインペスに滞在している。だから変わりに子沢山のガルバンとソアラに来て貰った。

 本拠地の薬師役としてはティアが筆頭かと思いきや、ティアとその母親の師匠であるという老ゴブリンのススとその妻であるシップ―とエレバン。それに帰ってから俺達と行動を共にしているキヲ。そして最後にサル酒片手に引っ張られてきた建築役のカワラスとドアンだ。


 …こうして俺を交えてこれだけの人数で話し合いをするのは珍しい、というか始めてかもしれん。


「仕方ねえさ、アーキンよお。アイツはドクで一番の気苦労だからよ。今後はお前達で支えてやんなきゃあな」

「うむ。アイツだけは何故か不調が続いておるようだしな…ティア、何か体に良い効き目のある薬を……う~む、まだ落ち込んどるのか?」

「……だって」


 この輪の中でティアだけが浮かない顔をして首から下げた玉石を手で弄っていた。


 まあ、その理由は察しがつく。俺だ。


『お前ら!ちょっと待て! 俺はまだティアを嫁にするわけにはいかんぞ?』


 まあ、アレだ…まだこの領は不安定の極みにあるわけ、だからして? ゴブリン達を蔑ろにして俺がそんな幸せに現を抜かすことはできんのよな。せめて、もうちょいゴブリン達に安定した環境を与えてやってからだな。


『単にアンタがヘタレなだけでしょ。あ~ティアちゃん、カワイソー』


 ヴェス、煩いよ?

 

 …というか、仮にティアを貰い受けちゃったとして…そんな感じで夫婦の営み、みたいな事をする時にお前にずっと見られてるのはなんかヤダ。


『アタシだって別に見たかあーねえわよっ!…でも正直に答えてあげるけど。不運な事にアタシにはアンタの脳味噌から勝手に情報が常に送信され続けてるから、アタシの意思とは無関係にアンタの情事を見せつけられるハメになるわね? 気が滅入るわ…』


 マジか。死にたい。


『じゃあ、死んだら? 他所の魔王か勇者辺りに特攻でも何でもすればいいわ。…アンタを慕うゴブリン達を道連れにしてね』


 んな事ができるわけねえだろ! …俺の頭の中を知ってんのにそんなワザとらしい事を聞くなっての。


「ティア。悪いがもう暫く我慢してくれ」

「タロー様…(涙目)」

「…よいか娘よ? 魔王様はご自身の幸せよりも我らゴブリンの現状を案じて下さっておられるのだぞ。今後、魔王様を最も身近な場所から支えるべきお前が…その御意思を汲んで差し上げられぬとは言わせぬぞ!」

「目減なよ嬢ちゃん。そう長い時間は掛からねぇさ? なんせ我らが旦那がゴブリンに付いてるんさね」

「うん…わかったよ。それまでボクも頑張ってタロー様をお助けするよ…!」


 俺に向ってペコリと頭を下げるティアがいじらしくて思わず頭を撫でてしまった。ティアが嬉しそうにスリつくのを見て他の連中の表情も和らいだ。


「で、だ。先ずは本拠地の防衛だが…、アーグは現在ザワーを泣かせた罰としてインペスに常駐させてる。その穴はミファ達に一先ずは埋めて貰う。まあ、アーボが居る時は問題ないと思うが、敵の数が多すぎたり、今後は俺に同行して遠征する場合もあるからな」

「我が甥が面目次第もありません」

「タロー様!この場は私達ザッカの戦士が命を懸けて御守りします!どうかお任せをっ!」


 ミファが思いっ切り地面にヘッドバッド…いや、土下座なのか? パワーが過ぎる。そういや、他のゴブリン達もここの飯を普通に食い出してから力が有り余るとかって…笑ってたっけ。


「うん。そこはミファと踊ってるトルマとロソに任せる」

「す、すいません…アイツ達は後で私が殴っておきますから」

「夜間の警護なら私達にもお任せ下さい。既に罠はいくつか獲物用を仕掛けておきましたし、ミョンは夜の闇に紛れれば敵はいません!」

「(コクコク)」


 ミファが背後の楽しそうな全裸二人を見て顔を赤らめる。それにジョラとミョンが加わってくれれば心強いな。


「畑は暫くハーン達に代わってガルバン達が中心に。それと新しい建築か…いやあ、驚いたぞ! いくら穴掘りが得意だからって、畑の周りに立派な堀が出来てるとはなあ!凄いぞカワラス、ドアン」

「いやあ~お恥ずかしい限りでさ」

「イヤ俺達は畑仕事も無かったんで暇で…この辺でかき集められるものだけしか使えてないんですが。水は魔王様の井戸から幾らでも流せましたし」


 そうなのだ。俺がほんの数日で帰ってきたらなんと、畑の周りをグルリと囲むように立派な水が流れる堀が出来たいたのだ。ちゃんと厚板で四方に橋まで架けてくれていた。


 近くに比較的割って形を整えた石が積まれていたみたいだが?


「それでもお前達の仕事はまだ途中なんだろ? アレで」

「へい! と、いいやすのも…作りたくても材料が足りないんでさ。粘土とか塗料とか色々ありやすが…一番欲しいのは石材と木ですね」

「魔王様の新しい住居もいち早く手を付けたいんですが…インペスからベッカーの野郎が戻ってくるまでには目途をつけたいんです。どうにかないりませんかね、魔王様?」

「うーん。河の橋だけじゃなく、此処でも石と木が必要になってくるかあ~」

「……やはり資材集めの遠征班を組んで山と森に送るしかないでしょう。ギルドからもまだ返事はきとらんですし、アメアから運ぶには少し遠いですしな」


 俺の隣のマットが腕を組んで唸る。


「え。皆を山と森に? 危なくないか?」

「魔王の旦那。安全な場所なんてこの世界にはそんなにないもんでさあ。此処のゴブリン達を養って今より力を付けたいと旦那がお望みなんでやしたら…多少はリスクがあってもやるべきでしょう。アッシも他のメンツも旦那の為なら喜んでどこにでも行きやすぜ?」

「そうだな。モンスターに関しては山はまだ比較的安全やもしれん。問題はナバンバの森だな…」

「確かにこれ以上の発展にはタロー様の御力に縋るだけではなく、我らゴブリンの努力で切り拓く必要があるでしょうね。それに資源だけではなく、新たな発見も望めるやもしれません。私達は今までその日その日を生きる事だけに必死になっておりましたから…このブイヤ領を知っているようで未だ何も知り得ていないとも思えるのです」


 どうやら資材集めの遠征は皆が必要性を感じているようだ。


「だが、森は危険だってマット言ってたよな? 流石に最初は俺達も同行して様子を見よう」

「そうですな。領境を超えなければ安全…という訳では決してない場所ですが、今後は無視しておくのは無理ですな。我らからもお願い申し上げます」

「そうとなりゃあ、後はメンバーか? どう思うよ、御隠居」


 ハンスの軽口に老ゴブリンが顎髭を扱く。


「そうさな。儂はもうこの場から動けんが、儂の息子と娘…ノミグスとピポを山へと出そう。儂の薬草ゴブリンの血は引かなんだが、ノミグスは採掘ゴブリン。ピポは妻のエレバンと同じく格闘ゴブリンだ。山への護衛には身軽でもってこいだろう。のう、ガルバン? お主のとこの双子の息子の片割れもまた採掘ゴブリンじゃろう。彼奴は仕事に忠実だし、慕う娘も採掘ゴブリンだったはず。さらにその父親のフートは鉱石になどに明るいスキル持ちだ。山へ向かわせるのは先ずこの5人で良いだろう」

「師匠の言うとーりだ!兄貴のとこのズダ以外の男は誰に似たんだか細っちくて頼りねえからな!アタイの息子達が居りゃあオーガにメイス(・・・)だぜ!なあ、シップ―?」

「……そうね」

「グググ…俺が長年気にしていることをズケズケと…っ!」

「ちょっと、エレバン。あんまり私の夫を虐めないでくれる?」


 そういや、この強面のガルバンとエレバンは兄妹だったな。あんまり似てないけど…。対してもう一人のススの妻であるシップーは無表情で大人しい…いや、感情が読み取れないタイプだな。その息子のノミグスもそんな感じだった。そしてエレバンはヤンチャ少年のようなオラオラ系だ。


 というか、ガルバン。その顔で腕っぷしに余り自信がなかったんだな…。


「山はそれでいいとして、森の方はどうするね? それなりの戦力も要りそうだが…」

「ま、魔王様!どうか私にその御役目を与えて下さい!」


 立ち会がって俺に頭を下げたのは何とキヲだった。


「キヲ? 確かにお前さんは採集ゴブリンだが…森は山と比べて危ない場所らしいぞ?」

「それでも…これから何かに打ち込んでみたいんです…!」

「「う~ん…」」


 俺とマットは同じタイミングで唸るもんだからティアがクスリと視界の端で笑うのが見えた。


「魔王様っ!」

「どうした、ガルバン。 トイレか?」

「ち、違います!どうか森への遠征へは我が子らもお連れ下さいっ!」

「え。いいの? 皆、畑をやってくれてるんじゃないのか」

「いえ。魔王様の菜園と倉庫仕事ならば最低18人おれば良いだけなのです。末の子達はもう畑を手伝える大きさですし、本拠地に残ってくれるドガの者も手を必要な時に貸して貰えば事足ります!」


 ガルバンはその強面を俺に近付けて懇願し、俺が嫌がったと思った自分の妻であるソアラに引っ叩かれていた。


「ふんふん…息子のピスケと娘のキズアか。ピスケは採集ゴブリンだし、キズアは弓ゴブリン、だったな? 戦力としては…マット、どう思う?」

「はい。キズアは弓ゴブリンとしては女だてらに優れた戦士ですぞ。森に巣食う野生モンスター相手には有効かもしれません」

「なら護衛として問題ないな? 後は次男のヤモーシか」

「その、ヤモーシは気が弱く…とても戦闘などには役立ちませんが…採集の腕ならば自信を持ってお役に立たせられるでしょう!」

「そうか…だが森にはあとひとりくらい戦力のありそうなヤツを同行させたいなあ~」

「なら、アケか?」

「俺か? できれば森は…嫌な思い出しかない。それより河で魚でも獲った方が魔王様に貢献できる気がするんだが…」

「…なら、私が一緒に行くわ!」

「「うわっ!?」」


 急に背後から声が掛けられたので俺達が驚いて振り向く。


「「アック!?」」

「いつの間に帰ってきた?」

「インペスに残るんじゃなかったのか」

「……というか、なんでそんなにボロボロなんだ?」

「………1時間くらい近道しようとして通った藪道で宙吊りになってたのよ。アレ、ジョラの張ったヤツでしょ?」



 皆の視線が集まったジョラは処置なしと顔を覆った。



 ※



「で、なんでボク達と帰らなかった癖して急にコッチに来たのさ?」

「そりゃあ………アーグの野郎…!皆が引き上げてった途端、急にあの女とイチャイチャしやがってよおぉ!当てつけかよ!? ベッカーは建物に夢中で話のひとつも耳に入ってねえし! あんな地獄みたいな場所にあれ以上居れっかよおっ……コホン。まあ、こんな私でも一応は魔法ゴブリンだし? 何か皆の役に立てるかなあ~って。…………キャピ!」

「「…………」」


 顔を鬼神の如く憤怒に歪めて素を見せたアックに皆が沈黙と憐憫の視線で返した。


「まあ、多少人格に問題があろうともあのニドラの娘だ。取り敢えず、森へ様子見に送るのはそこなキヲとガルバンのとこから息子娘が3人。そして…まあ、戦力については申し分なかろ。この5人で良いのではないかの?」

「そうですね…」

「うぁ。まあ、生命線でもある魔王様の菜園の世話には問題もなさそうだしなぁ~。ギルドもオラが残ってればなんとか対処できるなぁ」



 こうしてスス老師の締め括りのもと、遠征班2組のメンバーがアッサリ?と決まった。



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