怠惰の効力
ルーリアに言われた体育の時間は2時間目で伊織は緊張のあまり1時間目の記憶がなかった。というわけでルーリアに背中を押される形で着替えて体育館に向かった。
普段なら完全スルーしてくる教師があろうことか伊織を試合に参加させるように生徒たちに言ってきた。
ルーリアは一体先生に何をしたのか聞こうにも男女別なので今は近くにいないので聞くことができない。
生徒たちは明らかに不満そうに先生に文句を垂れるが先生はその全てを跳ね除けて強要した。その結果チームリーダーがジャンケンして負けた方が伊織をチームに入れて伊織のいるチームが1名多い状態で試合ということになった。
その様子を端から眺めていたのだが伊織を引き取ることになったチームリーダーが「足を引っ張るなよ」とすれ違いざまに言われた。
伊織的にはコートに突っ立っててもいいかと思っていたが先生にそうしたら成績下げると脅されたのでルーリアに言われたこともあるので伊織はしょうがなく真面目に取り組んで見ることにした。
とはいっても伊織にパスなんて回って来ないのでできることなんて限られてくる。
というわけで伊織は自チームのゴール前で陣取ることにした。体力的にボールを追ったり誰かをマークするのは辛いからこその選択だった。
そうして試合が始まってからそんなに時間も経たずに伊織の出番がやって来たボールを持った生徒がドリブルしながら伊織の方に突っ込んで来た。伊織をなめているのかパスができる状況なのにそのまま突っ込んで来る。
生徒が伊織の横を抜けさるタイミングで伊織は手を出した。伊織の手はドリブル途中のボールを弾き飛ばした。
まさかのできごとにその生徒は放心した様子で足を止める。それは周囲の生徒も一緒で敵味方問わず皆の足が止まった。
しかし味方の方が立ち直るのは味方の方が早く、コースの外に出かけたボールを拾うとそのままがら空きのゴールにボールを叩き込んだ。
その後も伊織に勝負を挑む輩はいたがことごとく伊織にボールを弾き飛ばされた。
ただ全員というわけではなく敵のチームリーダーだけは伊織は止めることはできなかった。
しかし伊織の活躍と人数差もあって伊織のチームが見事勝利したが勝ったはずチームメイトもどこか複雑な表情をしていた。
ただチームリーダーの鳴瀬くんだけは上機嫌な様子でナイスブレイだったと声をかけてくれた。どうやら相手チームリーダーである野上くんとは同じバスケ部でライバル関係にあるそうだ。
体育が終わり他の授業も終えた放課後、伊織はルーリア主導の元自宅で反省会が行われた。
「遠目に見ておったぞ。中々に見事じゃった」
開口一番ルーリアは伊織を褒めた。ルーリアの分析によればブラックドッグなら得たチーム行動と行動予測の経験がうまく発揮された故のプレイだったとではということだった。
それと野上くんを止められなかったのはブラックドッグから得たのは戦闘経験であってバスケ経験ではないので対処しきれなかったのではないかということだった。
「じゃがまあ、勝ったことで相手チームから経験を奪えたはずじゃ。チーム戦じゃからそう多くはないじゃろうが」
「そういえば途中から調子を崩していった人がいたけどあれって……」
「抜くか守るかの攻防が一つの勝負と捉えられたのじゃろう。気づかずに経験を奪ってしまっていたのじゃろう。体力さえつけばもうバスケは普通にプレイできるかもしれんの」
その後伊織は体作りということでみっちりしごかれてのだった。
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