黒犬
ルーリアには界獣が出現するタイミングと場所がわかるそうだ。暴食の力というよりは夜の支配者としての力だそうだ。
通常空間の歪みから亀裂に変わるまで時間がかかるそうでこの世界の対異界部隊はまず空間の歪みを観測し、それから部隊を派遣するそうなので到着までにはそれなりに時間がかかるそうだ。
だからルーリアと伊織は歪みが発生する前に先回りし、歪みが発生したら暴食の力で歪みに穴を開けて界獣を引きずり出して討伐。その後部隊が来る前に撤退する。そんな作戦を繰り返していた。
戦いの方はズブズブの素人である伊織はほとんど手は出さず、ルーリアがほとんどを殲滅し、伊織はそのおこぼれをもらうといった形だった。
強くなると誓ったのになんて情けないのだろう。伊織は内心そんなふうに落ち込んでいるのだがルーリアは鮮やかな手際で界獣を葬りながら色々と説明してくれる。
「この狼型の界獣はブラックドッグと呼ばれておる。集団での狩りを得意とし、数の利で攻めてくるから各個撃破していくのが最適じゃ。同時に攻撃できる数は限られてくるからの」
ルーリアはブラックドッグの攻撃をかわすと同時にナイフをブラックドッグの首に突き立て、そこを狙ってきたブラックドッグの頭を蹴り上げ、その威力でブラックドッグの頭蓋骨がひしゃげる。
そんな感じでルーリアは襲ってくるブラックドッグを一体一体返り討ちにし、勝ち目がないと理解し、逃走をはかろうとしたブラックドッグたちを夜の支配者の力で拘束した。
その後は伊織のターンで一体一体拳銃でとどめを刺すことになった。
「そろそろいきものを殺すのにも慣れたかの」
「まあ、身動きできない相手というのはいろいろ思うけど忌避感は擦れてきたかもしれない」
伊織は回数をこなしたおかげでどうすれば苦しませずに倒せるかわかってきたというのと倒した界獣は砂になって消えるというのもある。ルーリアが言うに異界のものが死ぬと死体は残らないそうだ。ただ長い間こちらの世界に滞在しこちらの物に適応した場合はそうではないそうだが。
「さて、奴らが来る前にずらかるとするかの」
伊織とルーリアは痕跡を消して素早くその場を後にした。十分距離を取るまで二人は無言で歩いた。そして伊織の家までやって来るとこれからのことを話す。
「ふむ、伊織よ。経験はだいぶ積めたじゃろうからそろそろ次の段階に進むのも良いと思うのじゃがどうじゃ?」
「次の段階?」
「うむ。今度は人から奪うのじゃ。明日の体育じゃが何をするか知っておるか?」
「……確かバスケットじゃなかったかな」
とはいってもチームスポーツは基本伊織はハブられるので体育館の隅で一人ボールをいじっているだけで試合何てしたこともないが。
「バスケか。ちょうどいいのー。伊織明日は試合に出るのじゃ。我から出られるよう根回ししておくのじゃ」
「は? 本気か!」
「うむ。面白いことになるじゃろうな」
ルーリアは楽しそうに笑ってそう言った。
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