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【コミカライズ】めでたく婚約破棄が成立したので、自由気ままに生きようと思います【書籍化】  作者: 当麻リコ


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19.誤解

訓練場見学に持っていく焼き菓子を脳内にリストアップしつつ、そういえばと思い出す。


「それにしてもライアン強いのね。あいつも結構強いらしいのに。まぁ自称だからホントかどうかは知らないけど」

「いや、リカルドはちゃんと強い。この前の御前試合でも二位だった」

「そうなの? じゃあそこは嘘じゃなかったんだ」


意外な言葉に目を瞠る。

ライアンがそう言うのなら本当に強いのだろう。

へなちょこに見えても、金に物を言わせて小さい頃から剣技の英才教育を受けていただけのことはある。

今はもう、そのお金さえないのだろうけど。


「ただ……」


言いづらそうにライアンが言葉を止める。

それで続く言葉が予測できてしまった。


「……つまり、貴方がリカルドを負かして一位になった人間てことね?」

「負かしたというのは少し語弊がないか」

「ボコボコにしたのほうが良かった?」

「余計に悪い」


心外だという顔でライアンが文句を言う。

お互い冗談で言っているのがわかっていたから、すぐに声を上げて笑い合う。


「本当にすごいかっこよかった。貴方に守ってもらえるお姫様は幸せものね」

「姫?」

「第一王女様と婚約するんでしょ?」


痛む胸を隠して笑顔で言う。


公式な発表は来週になるらしい。

とうとう公の知るところとなってしまうのだ。あちこちで新聞がばらまかれるだろう。

それを目にするたびに私はショックを受けるのだろうか。


「おめでとう。すごいわ、王様のお眼鏡に適ったんだもの」


せめてライアンの前では笑って祝福しよう。


そしてきっとライアンは照れて最大級に可愛い顔で照れるのだ。

それを間近で見られるだけでも満足しなくては。


そう思っていたのに。


「事実無根だ」


思い切り眉根を寄せて、むっつりした顔でライアンが言う。


「え、でも」


予想外の表情と答えに戸惑う。


おかしい。

確かな情報筋からの情報だ。

王城で働く噂好きの友人。彼女は人から秘密の話を聞きだすのが抜群に上手い。その彼女からの情報なのに。


「婚約するのは俺の弟だ」

「……あ、そう、なんだ」


拍子抜けして間の抜けた声になってしまった。

そういえば、確かにクリフォード家の誰とは言っていなかった。

以前聞いた噂ではライアンと第一王女がという話だったから、てっきり今回の確定情報はその続きだと思い込んでいたのだ。


「確かに以前、俺に縁談の話は来た。だが俺は断ったんだ」

「えっ、なんで」


心底不思議に思って問う。

だって第一王女との結婚なんて、将来が確実に約束されたようなものだ。


仕事に集中したいから、とかだろうか。

それならありえない話ではない。

ライアンは出世街道驀進中で、真面目で優秀な人だから自分の力だけで評価されたいと思ったのかもしれない。


勝手に納得しようとする私の前でライアンは押し黙ったまま、何か言いたげな視線を私に向けたがすぐには理由を教えてくれなかった。

一言では言い表せない複雑な事情があるのだろうか。


何にせよ、じわじわと嬉しい気持ちになってくる。

婚約していないからといって自分にどうこう出来るわけではないのは承知だが、それでも好きな人にまだ相手がいないというのは単純に嬉しかった。


「……カトレア姫は幼い頃から見てきたから妹みたいなものだ。それに昔から弟のキースの方が仲がいい。俺が断ったあとでキースとの婚約が決まって、二人もその方がいいと喜んでいた」


なるほど、弟君とお姫様のためか。だから王もすんなり認めてくれたのだろう。

では二人は政略的なものではなく、幸せな結婚をするのだなと他人事ながらほっこりしてしまう。


兄であるライアンも、さぞ満足のいく結果だったのだろうと視線を向けると、なぜかとても不満そうな顔のまま私を見ていた。


「もし姫の相手が俺だったとして、それを聞いてキミは何も思わなかったのか」

「え、お似合いだなって」


口にして自らダメージを負うが、たしかにお似合いではある。

美男美女というのもあるし、第一王女はとても優秀な女性だと聞いていたから。

容姿も家柄も能力も完全に釣り合っていて、妬む気持ちにもなれなかったくらいだ。

むしろ他のどんな女性より、カトレア王女と結婚するのならば、穏やかな気持ちで見送れたかもしれない。


素直な気持ちで言うと、ライアンが目に見えて不機嫌になった。


「俺がフローレスになんとも思われていないということが良く分かった」

「ええ!? そんなことないわ! すごく大切な人だから、良い人と一緒になれるなら良かったなって」

「……すごく大切?」

「そうよ。一番大事。だからライアンには幸せになってほしいって思ってる」

「一番……」


叶うことならその相手が私であって欲しかったけれど。

それは無理なことだから。

だけど幸せを願う気持ちは本物だ。

それが伝わったのか、ライアンの機嫌が少しずつ浮上していった。


私のこんな言葉で喜んでくれるならいくらでも言ってあげたい。

彼が本当に好きな人を見つけて、いつかここに来なくなるまではせめて。

彼にとって心地いい空間を提供することに全力を尽くそう。

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― 新着の感想 ―
[一言] よかった…わがまま王女なんて居なくて…。
[一言] もう、ほんと、、、 この二人は、なんなんでしょうねぇ、、、 良い味、出してるわぁ、、、 気が付かないのは当事者だけ~。 発覚するとチョー、ハズイやつww
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