94話 登場、じっちゃんとばっちゃん
俺の父親方の祖父の名前は白野歳三、祖母の名前は白野美恵という。この世界がゲームに近しい世界であると言う記憶が戻る前から、ずっと気にかけてくれている。
あの二人からしたら、俺は小さい頃からずっと大事に見守ってきた孫なのだ。その二人に四人の事を黙っていたのは素直に謝らないといけない。だけど、あの二人が何て言うのか。
もし、今すぐに離せとか言い出したらどうしたものか。祖父と祖母は俺の体調の事を強く気にしている。四人も子育てをするのは厳しいと言う結論に至らないとも限らない。
どうなるのか、俺はきになっていた。二人が家に来るまであと少し、もし最悪の想定通りになった時にどんな言葉をかけるべきか考えていると……
「カイト?」
「千秋……」
「大丈夫? 我が相談に乗ろうではないか!」
「あー、ありがとう、でも、今は大丈夫だ」
「本当?」
「うん」
「もし……魁人のおじいちゃんとおばあちゃんが……なんでもない……カイト、なんかあったら何でも言ってくれー」
「おう」
千秋に気にかけさせてしまったなぁ。千秋達は最初は二階にいてくれと言ってある。祖父たちと話を通すのは、俺が話をまとめた後にすべきだと思ったからだ。
しばらく考え込んでいるとインターホンが鳴る。
来たか。そう思って家のドアを開けると、見知った二人の顔があった。
「あらあらあら、魁人、久しぶりねー」
「ばっちゃん。久しぶり」
「まぁ、話し聞かせて貰おうか」
「じっちゃんも相変わらず強面だね」
強面で厳格な雰囲気を感じるのが白野歳三、じっちゃん。ほわほわして優しそうなのが白野美恵、ばっちゃん。二人は靴を脱いで家に入るとそのまま手洗いうがいをしてリビングに入る。
互いに座り、そして向かい合う。あちらはこちらから話を切り出すのを待ってるようであった。
「まぁ、連絡をしたとは思うんだけど……子供四人と一緒に暮らしているんだ」
「一言、何故言わんかった」
「いや、心配をかけたくはないと思ってさ」
「そうか……そう言うとは思っていたが……まぁ、お前が決めた事なら儂からは何も言わん」
「……」
「どうした?」
「てっきり止めると思ってた」
「まぁ、止めることも考えた。儂からしたらお前だけが孫だから、なんで他人を育てる必要があるのかとも。だけれど、お前がどこか楽しんでいるような気がした。前にあった時とは明らかに変わっている」
「そうねー、おじいちゃんの言う通り。私もそんな気がするわー」
思わず拍子抜けをしてしまう程に、二人は俺が子供四人を引き取った事を承諾してしまった。いや、既にしていたような気さえする。
「それで、お前の引き取った子はどんな子なんだ」
「気になるわー、とっても、気になるわー」
「あ、二階に居るから呼んでくるけど……怖がらせないでくれよ」
「無意味に威圧する性格じゃない」
「おじいちゃんは顔が怖いから、それを言ってるのよねー?」
相変わらずばっちゃんはほわほわしてるなぁ……。この人は最初から反対するとは思っていなかったけど……。じっちゃんの方は頭が固いイメージあったから絶対反対すると思ってた。
もしかしなくても既にばっちゃんがここに来るまでに説得とかしてくれていたのだろう。相変わらず、優しいばっちゃん。
二人に四人を紹介するために二階に登って、四人の部屋をノックしてドアを開ける。
「カイト、どうだ?」
「問題なかったよ。このままでいいって」
「おー! 良かったぁ! 我凄く嬉しい! どのくらい嬉しいかって言うと三日連続でハンバーグ食べた時の百倍くらい嬉しい!」
「そっか……俺も嬉しいよ」
「我とお揃いだな! じゃあ、今日は記念でハンバーグね!」
「うん」
千秋が嬉しそうにしてくれるとこっちも余計に嬉しくなるなぁ。彼女の後ろで千春、千夏、千冬もほっとしているようで胸をなでおろしている。
「それで、じっちゃん……おじいちゃんとおばあちゃんが千秋達と話してみたいって言っているんだけど、大丈夫か?」
「な、なに?」
千秋はいきなり氷河期に入ったように固まった。千秋だけではない、千春達もだ。四人は今まで年配者で良い人とは接したことはないからちょっと怖いのかもしれない。
既に程遠い程、全くないと言えるほどに離れた親族たちには両親含め敵の許せる人は居なかったのだから、僅かに怖さがあるのだろう。
「無理にとは言わないけど……今日は止めておこうか?」
「いや、我は行くぞ……ただ、ちょっと緊張するからカイトに一緒に来て欲しい」
「勿論、一緒に行くよ」
「よし、なら行こう! ほらほら、千春達も行くぞ、我達が普段から物凄く良い子であるとアピールしておかないといけないからな!」
「まぁ、そうね」
「秋姉の言う通りっス……」
「勿論三人が行くなら、うちも行くよ」
俺を先頭に千秋、千春、千冬、千夏の順番に階段を下りてリビングに入る。すると、眼をパチパチしながらばっちゃんが四人を見た。
「あらあらあら、可愛いわねー、お名前は何て言うの?」
「ち、千秋です! 我凄く良い子です! 宿題忘れたことないし、脱いだ服は裏返しのままにしないで、ちゃんと返して洗濯機に入れます! あと、勉強凄く頑張って迷惑とか全然かけません! ……だから、カイトとこれからも一緒に居ていいですか……?」
「あらあらー、こんなに可愛いのに、しかもいい子なのねー。勿論よー」
「えー、やったぁ!」
「千秋ちゃんは肌が綺麗なのねー、触ってもいーい?」
「うん!」
「あら、おじいちゃん、これは凄いわー。こんな柔らかくて羨ましいわー」
千秋の頬を触りながら、ばっちゃんはじっちゃんに向かって叫ぶ。じっちゃんは特に反応もしないまま、何度か頷いていた。
「おじいちゃんも何とか言ってあげたらどうなんです?」
「まぁ、構わないさ。魁人も一緒にいたがっているわけだしな」
「そうねそうね、こんなに可愛いんだから文句ないわー。可愛い孫が急に四人で来たと思えば問題はないしー、他の子達は何て言うの?」
「うちがお兄さ……魁人さんに引き取ってもらっている姉妹の長女の千春と言います。うちも迷惑はかけない……と言いたいのですが、偶にどうしてもお手を煩わせてしまう事があります。でも、うちもいい子にするのでこれからも一緒に居させてください」
「あらあらー。問題ないわねー。千春ちゃんも良い子そうね」
「千冬と言います。その、魁人さんにはずっとお世話になりっぱなしですが、だからこそ恩返しをしたいと思ってまス。ですから、今後もよろしくお願いします」
千冬は俺に向かっても言葉を発しているようだった。じっちゃんもばっちゃんも問題ないだろうと目線で訴えてくる。
「私は、千夏といいます……その、ちょっと大人の人は苦手で、中々言葉出ません。でも、魁人は凄く安心できるから、一緒に居たいし、ちょっと不安定な所があるから、支えてあげたいと、思ってます。だから、一緒に居たいです……」
千夏は俺の後ろに隠れながらぼそぼそ囁くように言った。それを聞いて、ばっちゃんがちょっと驚いたような顔をしているのが印象的だった。
「そう……そうね。支えて上げて欲しいわ。こちらこそよろしくね……。それにしても本当に良い子達なのね。可愛いし。わざわざ見に来ることなかったかしらー? ねぇ? おじいちゃん?」
「……まぁ、何とも言えんが。問題は今のところはないだろうさ」
「そうねそうね」
厳格そうなじっちゃんは腕を組んだまま特にこの状況に異を唱えることはしないようだった。俺としてもこれには一安心だ。
「そうだ、今日は私がご飯と作るわー、四人は何が食べたい?」
「我、ハンバーグ」
「あらいいわねー、千春ちゃん達は?」
「えっと、千秋が食べたいハンバーグでお願いします」
「よーし、じゃあ、おばあちゃんが美味しいの作っちゃうわー」
「我手伝う! こう見えても、この家の味見係大臣と料理大臣だから!」
「凄いわー、全然称号が分からないけど、凄いわー」
千秋打ち解けるのが早いな。ただ、千夏達はちょっと時間がかかりそうだけど……。それはしょうがないことだな。人それぞれペースがあるし。ただ、気にしてそうだからちょっとフォロー入れておこう。




