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『書籍化!』百合ゲー世界なのに男の俺がヒロイン姉妹を幸せにしてしまうまで  作者: 流石ユユシタ
二年目

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88話 傷

「あのね……私は、心の声が分かるの……それで、反対に相手に自身の声を届けることも出来るの……」


 私は全てを告白した。たどたどしく、なるべく要件を省いているので少しわかりにくいかもしれない。でも、魁人は察しが良くて、千夏が先に色々話をしたと言う事を考えるときっと、どういう事か、おおよそは伝わっているだろう。



「……こ、怖い? つ、使わないから、あ、安心して……ほ、本当に、心読んだりしないから、す、捨てたり、しないよ、ね……?」

「勿論だ。約束しただろ? 何度も。俺は約束は守る。それに一緒に居たいからそんなことどうでも良いさ」

「そ、そっかぁ」


 あまりにあっさりとしていた。こちらは物凄い覚悟で言ったのにあまり動揺していない風に思える。千夏が先に言っててくれたからある程度免疫が出来たのかもとも考えられる。


 


「試しに、俺の心を読んでみたらどうだ?」

「えッ?」

「大丈夫だ。変な事は思わない」

「……うん」



――怖がるな。俺が一緒に居る



 人の心など、読めて良かったと思った事など無かった。こんな感情は初めてで、受け入れてくれたのは嬉しくて安堵が湧いてきた。この力にもう縛られなくても良いのだ。そう考えると感情が大きく揺さぶられる。彼の耳元で嗚咽をしながら泣き出してしまう。彼はそんな私の背中をさすりながら頭を撫でてくれた。



 安心と幸福に包まれた。これからはもう隠さなくてもいいんだ……。でも、私は、この力をこれから使って行こうと思わない。だって、あの日、見るつもりがなかった彼の過去。泣いていたあの顔、それを話さないと言う事はきっと、話したくなくて、思い出したくないんだろう。


 私が話したくなかったように。無理に引き出させたくない。それに彼が私を好ましいと思ってくれていることは分かった。何かを伝えたいなら口で言えば良い。好きって。

 



「落ち着いたか?」

「うん……でも、このままで居て」

「……わかった」

「…‥ねぇ、今日から一緒に寝て良い?」

「……え?」

「……私と寝るのはイヤなの? ……千夏とは寝たのに…‥」

「あ、いや、今日だけじゃなくて今日から、なのか?」

「うん……私は、そうしたい……」




 気付いたら、もう一つの話し方をしていた。あまり見せたくはなかった陰キャのような話し方。ぼそぼそ聞こえづらいような細い声。今までなら恥ずかしいから隠し通そうと思っていたけど、何だか、もう全部さらけ出したくなった。



「……驚かないの? ……いつもと大分話し方違う……。私って、言ってるし……」

「そんなに驚きはないな」

「そっか。じゃあ、どっちがいい……?」

「なにがだ?」

「話し方……我、カイトのご飯食べたい! みたいな……きゃぴきゃぴしてるのと、根暗そうな今の感じ……、私、魁人の好きな方の話し方がいいから」

「うーん……急に言われてもな」

「そうだよね……変なこと聞いた。忘れて……?」

「忘れるのは無理かもな。あー、そう言えば千春達は?」

「上に居ると思う……喧嘩少ししてるかあ気まずい」

「一緒に謝りに行こうか」

「うん」



 笑顔でそう言う彼。心配事を何一つさせない優しい笑み。その裏にはなにがあるのか、話してくれるのか。いつか、その先を私は知りたい。自分だけ助かったなんてそんなのは都合が良すぎる。


 待っていて。今度は私が



◆◆



「何で、全員くる!? 我がカイトと寝るの!」

「いいじゃない。別に」

「魁人さん、迷惑じゃないみたいだし……」



三者三様に、千秋、千夏、千冬がパジャマ姿でお兄さんの部屋に来ていた。千秋的には二人きりが良かったみたいだけど。



「ほら、明日も学校だから皆寝て」

「むー、我、オコ」

「私、このベッド気に入ってるのよね。大きいし」

「大人二人用くらいあるっス」



うちがそう言うと話しながらも三人はベッドに横になった。お兄さんは少し、苦笑いをしながら真ん中で、その隣に千秋と千冬、千冬の隣にはうちが居て、千秋の隣には千夏が居る。


寝て見て思うけど確かに大きい。お兄さんの両親が使っていたベッドだからだろうか。そう言えばお兄さんって両親の事全然触れないなぁ



少し、雑談などをすると直ぐに三人は眠ってしまった。色々あって疲れていたのだと思う。肩の荷が下りて、今日は今まで以上にゆっくり眠れるのだろう。三人の可愛い寝息が聞こえてくる。でも、お兄さんはきっと寝ていない、それが何となく分かった。



「起きてる?」

「俺に言ってるのか?」

「うん」

「起きてるぞ」

「そっか」



起きてるんだ……。まぁ、そう簡単に眠れるはずもない。超能力なんて物を持っていると知って、それを感じたのだから。僅かに落ち着きが無くなってしまうだろう。でも、不思議な人。両親はあんなにも取り乱したのに、この人は全然そんなことはない。




いや、違う……。不思議な人じゃない。何でなのか、何で驚かないのか。拒絶しないのか、その理由がうちには分かった。



「ねぇ、お兄さん……」

「ん? どした? 眠れないのか? 子守唄でも……」

「子ども扱いやめて、怒るよ」

「あ、ごめん」

「……そっち言ってもいい?」

「いや、すまん。隣が満員なんだが」

「上があるじゃん」

「あー、そう、だな……」

「嫌なの? 千夏とは寝たくせに」

「それ、流行ってるのか?」

「どういうこと?」

「いや、なんでもない」



うちは妹を起こさないようにそぉーっと布団の上を動きながらお兄さんのお腹の上に乗った。そして、そのまま胸板に顔をうずめる。あー、こんな感じなんだー。千秋とかが良くやってるからどんなものかと思っていたけど。そっか、こんな感じね、はいはい。


「今日は甘えん坊なんだな」

「子ども扱いやめてって言ってるじゃん」

「すまん。でも、本当に珍しいと思ってさ」

「偶にはね。うちもそう言う気分もあるよ」



お兄さんに話した。うちには凍結させる能力があると言う事を。でも、さほど驚かず、見せても特に驚きを見せなかった。それで何が変わったと言うわけではないけど、どことなく嬉しかったのも本音だ



「妹が寝てるから、好き勝手したいみたいな」

「長女は大変なんだな」

「うーん、大変って言うより、生き甲斐だけど……。まぁ、疲れは溜まるのかな……?」

「そうか」

「お兄さんだって、大変でしょ? 四人も子供が居て育てるってなったら」

「いや、さほど。一緒に居て楽しいし、生き甲斐って感じだ」



あぁ、やっぱり、この人は……。



「ねぇ」

「ん?」

「お兄さんは、何かないの?」

「何か?」

「辛かったこと」

「どうだろうな……」

「誤魔化したでしょ?」

「そんなつもりはない」




誤魔化した。嘘だとすぐに分かった。最初から気付いていたんだ。この人が自分と似ているって。


同じ、いや似たような傷を負って、《《自分を愛する事を諦めた人だと》》。いつもいつも自分為に生きろと散々この人は言う。嬉しかった、でも、うちは変わろうとは思えなかった。何故なら、この人自身が自分の為に生きていなかったから。いつもいつも、うち達を優先して、体を壊し、それでも笑い、お金を払って、それを鼻にかけることなく、ただただ、うち達に愛を注ぐ。



「うちも、あるよ……同じ傷が……」

「……どんな傷なんだ?」

「言わないよ、言っても意味ないし。と言うか、本当は少し察しがついてるんじゃない? どちらにしろ、お兄さんだって言わないんだからうちも言わない」

「……」

「ねぇ、お兄さん」

「なんだ?」

「一つ、提案があるの」

「提案?」

「うん……三人が自立して、もし、この家を出たも、うちはここに居てもいい?」

「そうしたいなら、勿論だ」

「そっかぁ……じゃあ、もしそうなったら、互いの傷を舐めあいながら生きていこうね……」

「……」

「冗談。アメリカンジョークだよ」



この人はどうでも良いんだ。自分の事なんて。この人は異様なほどに自己評価が低い。もし、うち達が居なくなったら、この人は何となくで生きていくんだ。うちもそうだ。三人が居なくなって、自立したら、あとはどうでもいい、何となくで生きるだけだ。


ただただ、生きるすべを機械のようにこなすだけ。でも、うちが何となくで生きるのならここが良い。この人と一緒でこの場所が……。




なんて、柄にもない事を考えてしまった。甘えるのは、今日だけ。変な事を口走るのも今日だけ。今日だけ、いつもと違う自分で居たいと思った。



これが同族を見つけたうれしさからなのか。この人の事を愛してしまったからなのか、それは分からなかった。かんがえるまえにうちは、深い眠りに落ちてしまった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 話し方については38話で既に告白しているはずなのでは?
[一言] この場をお借りして、 ↓の感想の誤字報告は誤字報告機能を利用することをお奨めします。 感想、レビューを書く、注意の更に下のとこに誤字報告と書いてるリンクする所があるので、そこをクリックし…
[気になる点] 他にも誤字を発見しましたので報告です。 誤)いつもいつも自分為に生きろと散々この人は言う 正)いつもいつも自分の為に生きろと散々この人は言う
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