大団円へと向かいましょう。
終わりにはもう少し…
私はルーナ嬢の言葉を聞き、最後の仕上げに取りかかった。
まずは手始めにルーナ嬢の処分について話さなくては。
「陛下、失礼ながら発言をお許しください。
ここにいるルーナ・シャンルー男爵令嬢は悪き魔王に操られておりました。今、私の勇者の力をもって魔王を倒したことにより正常な思考を取り戻しました。」
いきなり何を言い出すのかとルーナ嬢が私を見つめる。私はお構いなしに次の言葉を発した。
「この操られていた不憫な男爵令嬢には何の罪も無いのです。何卒、寛大な処置をお願い致します。」
「そうか。いつの間に魔王討伐を成し遂げたのか解らんが……本当にシャンルー男爵令嬢は操られておっただけなのじゃな。
一応は取り調べを受けて貰わねばなるまいが、投獄し処罰を受けさせるということはしなくても良かろう。近衛兵をここへ。
シャンルー男爵令嬢から詳しい話を聞いて魔王とやらの影響がないか調べるのじゃ。
これで良かったか?勇者よ。」
「はい。ありがとうございます。」
話がトントン拍子に進んでいく
。私がやっているとはいえ、本当に納得しているのか聞きたいくらいだ。
どうやら私は『説得力』と言うようなチート能力があるようだ。
その人が少しでも考えていたならその方向へ考えを持っていけるし、私の言ったことを全て無条件で正しいと思ってもらえるようだ。使い所を間違うと恐ろしい事になる。世界征服なんて造作もない事だろう。
まさしくチート能力、この力でこの世界をよりゲームから遠ざけてやる。
主人公を改心させたのはうまくいった。後は悪役令嬢のフィーリア様がどう動くかだが、あの方が一番厄介な気がする。
「陛下、そのように生ぬるい処罰では王家の威厳に傷がつきますわ。」
フィーリア嬢がざまぁに来た…ゲームの展開通りっぽい。
「フィーリア様、なぜそのように厳しい処罰を望まれるのですか?
そんなにもエンドリュース殿下のお心が離れてしまったのがショックだったのでしょうか?そんなにも愛していらっしゃったなんて初めて知りましたわ。
嫉妬して当然ですよ。突然現れたどこの馬の骨ともわからないマナーもなってないような女に婚約者が取られかけたのですから。」
目の端の方で両腕を近衛兵に押さえられているルーナ嬢が頬を膨らませて怒っている。が、そんなルーナ嬢は無視して話を続ける。
「でもフィーリア様、それは魔王に操られていたルーナの魔法のせいで殿下はそう思い込んでいただけなのです。要は勘違いですよ。そんなのにいちいち嫉妬してたら疲れちゃいますよ。殿下を狙う令嬢なんて沢山いるんですから。」
「そ、そうなのかしら……。
よく考えたら嫉妬してるのなんてバカらしく思えてきたわ。
でも処罰が甘すぎるとは思うわ。操られていたとはいえ、あの女は国家の転覆すら望んだのよ。」
「そんな大それた事をあのルーナが考えてる訳がないですよ。今だってこれからもっといい男を探すんだとか言ってるような恋愛脳の持ち主なんですから。」
「そんなことを……貴族にあるまじき発言ですわね。
そうだわ。陛下、私の屋敷で行儀見習いとして働いて頂くというのは如何かしら。そうすれば陛下の広いお心でお許しになったということを世に知らしめられますわ。」
「それは良いの。フィーリアのいう通り何の罰も無しというわけにはいかんしな。」
陛下はフィーリア嬢の言いなりなっているようだ。
それにしてもフィーリア嬢は陛下に意見が言えて、それをあっさりと通してしまえるなんて、何か弱味を握ってたりするのかしら。
このままいくと、もしかしたらエンドリュース殿下が国王になったりするんじゃないだろうか…まぁフィーリア嬢が付いていればどんな国王でも国家は安泰な気はするが。
「勇者様、これで宜しいかしら?」
フィーリア嬢の言葉に我に返った私はすぐに頷いていた。
「いいのではないでしょうか。では私は本当にここまでで宜しいですよね。」
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