OPEN 3 ~Ladies and Gentleman...~
「それで?今度はなにがあったわけ?」
卒業パーティーのフィナーレを飾る打ち上げ花火もすっかり光を失くした頃。
学園へと戻りながら口にされたその問いかけに、アリアはどきりと身構える。
「一体なにを予知した」
ユーリの隣で、こちらもまた今回のアリアの行動に意味があることを確信しているシオンから、厳しい目が向けられる。
「…だから、私にはそんな大それた能力なんて…」
「お前に予知能力があろうがなかろうが、オレにとってはどうでもいい」
アリアの不審な行動について、今までハッキリと追及されたことはないが、完全にアリアになにか不思議な能力が備わっていることを信じて疑っていないらしいシオンは、今回初めて自分の考えをきっぱりと言い放っていた。
シオンからしてみれば、アリアにどんな特別な能力が備わっていようとも関係ない。
ただ、その能力が、結果的にアリアの身を危険に晒す。
シオンが危惧しているのはその一点のみなのだから。
「さっきのヤツは何者だ?」
闇魔法、と言ったな?
さすがに聞き違いとは思ってくれないシオンから言い逃れを許さない厳しい瞳を向けられて、アリアはつい沈黙してしまう。
「アリア」
「…ちっ、違うのよっ。私にもまだよくわからなくて…っ」
苛立たし気に呼ばれる名に、反射的にその細い肩を震わせながら、アリアは必死に弁解内容へと考えを廻らせていた。
「さっき、空を飛ぶ人影を見つけて、咄嗟に後を追ってしまっただけで…っ」
あの瞬間、確かに思い出したのは、"違う世界"の"過去の記憶"。
けれど、だからといってなにをしようと考えていたわけではない。
ただ、確認したかっただけ。
だから、その言葉は嘘ではない。
嘘では、ないけれど。
「…ただ、闇魔法の気配がしたから…」
ついつい深入りしてしまった理由についてそう言い訳して、アリアは複雑そうな表情で俯いてみせる。
「…また魔族が絡んでいるとでもいうのか」
「…そこまでは…」
シオンがそんな不穏な結論へ至ってしまったとしても、それはこれまでのことを考えれば当然の反応で、記憶を取り戻したばかりでまだ整理のつかないアリアは、ゆるゆると首を横に振る。
「…お前のその軽率な行動には呆れて物も言えないな」
確かに、月夜に空を翔ける人影など不審だろう。
けれど、だからといって後先考えず単独で後を追うなどなにを考えているとお説教してくるシオンの正論に、アリアは「うっ」と言葉に詰まる。
「…ごめんなさい…」
「なにかあったらどうするつもりだ」
なによりもシオンが危惧しているのは、アリアの身の安全だ。
実際に、シオンのその懸念通り、アリアは見知らぬ男に壁際まで追い詰められていたのだから。
「それは…」
ぐうの音も出ずに俯くアリアに向かい、シオンは大きく肩を落とす。
こんな説教じみたことを何度口にしても、無駄に終わることなどわかっている。
「とにかく、すぐに一人で突っ走るな」
言いたくなければ言わなくて構わない。
その代わり、一人で抱え込むなというのが、前々からのシオンやユーリのせめてもの願いだ。
「…お仕置きだな」
くすっ、と。耳元で落とされる意味深な囁き。
「…シオン。お前なぁ…」
嫌でも聞こえてきてしまったその言葉に、ユーリが呆れたような溜め息を洩らす中、アリアは声にならない悲鳴を飲み込んでいた。
"お仕置き"がR15の範囲内を超えてしまった為(苦笑)、今回からR18版を解禁します。(明後日投稿予約済みです)
18歳以上でご興味のある方は、ムーンライトノベルにて、同タイトルで検索してみて頂ければと思います。
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