幕間
――ピンポーンッ
音が鳴り、彼女は「はーい」と返事をしながら玄関へと駆けていく。
「こちらにサインお願いします」
来訪者は、小さな荷物を持った宅配業者。
それを受け取り、彼女は嬉しそうに自宅リビングへと戻っていく。
「なんだ?」
手元の携帯電話から顔を上げた夫の質問に、彼女はドキリとしながら少しの緊張感と共に口を開く。
「……前々から読みたかった本が届いたの」
本も一緒に頼んでいるので、その言葉は決して嘘ではない。
嘘、ではないが、真実、でもない。
彼女が本当に欲しかったのは、本と同胞されている"ゲーム"の方だった。
――「禁断のプリンス2 ~behind the mask(仮面の裏側)~」
ネットで評判になっていたこのゲームの登場人物の一人に一目惚れをし、ずっとプレイしてみたいと思っていたのだが、彼女がそれを知ったのは発売直後だった為、売り切れ続出でなかなか手に入らなかったのだ。
その為、予約したそのゲームが届くまでの間、こちらも評判の高かった「1」の方を今までプレイしていたのだが、ちょうど先日それも全てクリアしてしまっていたのだ。
「1」の方も評判通り、彼女の期待に充分応えてくれる内容だったけれど、やはり本命はこちらの方だ。
早く封を解いてその中身を確認したい衝動を必死で押さえながら、彼女は夕御飯の支度へと戻っていく。
夫と、三人の子を持つ母である彼女は、彼らのいない平日の昼間にならないと自由はない。
リビングでは夕方のニュースが流れ、アナウンサーが神妙な顔つきで今日の事件を伝えていた。
「……連続婦女暴行殺人事件だそうだ」
物騒だな、と顔をしかめた夫の呟きにテレビを見れば、もう四件目だと被害の状況を伝えている。
「近隣県じゃないが、子供たちにも気を付けるように言っておけよ?」
メガネを押し上げ、心配そうな目を向けてくる夫に「えぇ」と返事を返しながら、彼女は届いたばかりのゲームの中身に嬉々として思いを馳せていた。
二章完結記念SSを活動報告に書かせて頂きました。
ご興味のある方は覗いて下さればと思います。