閑話休題 ~人物紹介~
その夜――優しい月明かりが暗闇へと静かな光をもたらす中。アリアは自室の机に向かい、深い深い溜め息を洩らしていた。
ペンを執り、一心不乱になにかを書き留める。
――今の自分と、昼間自分の中へと流れ込んできた記憶とを、懸命に照らし合わせながら。
この世界は五大要素――水・風・火・地・空――と、光・闇から成り立っている。
光属性の魔力に優れた王家が国の中心となり、その下にそれぞれの属性を持つ五大公爵家が、王家を支えるように国を導いている。
この魔法世界において特徴的なのは、この国の住人の瞳の色。色の濃い薄いはあれど、みな茶色の瞳をしている。そして、魔力を行使する時のみ、その瞳が己の属性の色へと変わる仕組みになっている。
――と、ここまではこの世界の基礎知識。
そこでアリアは一度顔を上げ、きゅっと口を引き結ぶと再びペンを走らせる。
――そう。寄せる思いは、"ゲーム"の登場人物たちへ
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まずは主要人物。
シオン・ガルシア。
主人公のクラスメイト。
風属性のウェントゥス公爵家子息。
兄一人、妹一人。
常に冷静沈着。なにをさせてもフルスコア以上の天才肌で、魔力も属性の風魔法を中心に、全ての要素を軽々と操るオールラウンダー。
その才ゆえか、なにものにも興味を示さず、動じることなく、感情もほとんど表に出すことがない。
ただでさえ冷たい印象をさらに際立たせる、漆黒の美少年。
セオドア・ヒューズ。
同じく、主人公のクラスメイト。
火属性のイグニス公爵家子息。
姉一人。
天才肌のシオンに対し、こちらは努力型の秀才タイプ。そのためか、シオンに対してライバル意識を持っている。
柔和な印象を周りへ与え、誰からも好かれる「お兄さん」キャラの優等生。
この世界では珍しい、その髪と同色の銀縁の眼鏡を愛用している。ただし、伊達。
ルーク・シアーズ。
地属性のソルム公爵家子息。
兄姉妹弟の賑やか兄弟の真ん中。
主人公より一学年下の為、まだ学校へは在籍していないものの、女装した主人公に一目惚れして以来、なにかと理由をつけて主人公に会いに来る。
燃えるような赤い髪が特徴的な、人懐こい大型犬タイプ。
リオ・オルフィス。
主人公の一学年上に在籍。
光属性、王家の美しく聡明な皇太子。
両親が早世し、子供のいない叔父夫婦の養子になっている。
慈愛に満ちた優しい空気を常に醸し出し、「綺麗」の一言に尽きる輝きと清廉さを兼ね備えている、まさに「次世代の王」として相応しい人物。
金色の髪がそのオーラをさらに輝かせている。
ルーカス・ネイサン。
学園の首席魔法講師にして、天才師団長。
柔らかな茶色の髪は少し長めで、一見すると優男だが、火属性を中心に攻撃魔法においては右に出る者のいない、その名の通り全ての魔法を操る天才魔道士。
ゲーム内ではお色気担当キャラ。
と、ここまでがメイン対象キャラ。
他には。
ルイス・ベイリー。
空属性のアーエール公爵家子息。
妹一人。
主人公の一学年上に所属し、皇太子であるリオの側近のような存在。
実はリオへと秘めたる想いを持っている為、主人公への当たりが強い。
系統としてはシオンと同じく、なんでもそつなくこなす寡黙で大人びた美青年。
こちらも深味のある濃い蒼色の髪をしているためか、冷たい印象を与えている。
リリアン・スチュアート。
スロバーツ侯爵家の一人娘。
その父親が学園長を任じられている為、主人公の一学年下でありながら、ちょくちょく学園へと顔を出している。
シオンに片思いをしており、それを隠すことなく態度に出す。
シオンルートにおいては、恋する女心の勘がなにかを察したのか、仮にも婚約者であるアリアよりもよほど二人の仲を邪魔してくる。
少し幼さの残る、女の子らしいピンク色の髪をした美少女。
最後に主人公、ユーリ・ベネット。
主に輸出入業で富を成す、商人の一人息子。
平民とはいえ、一代で財を成した裕福な家庭に生まれ、下手な下流貴族よりもよほど生活環境は恵まれている。
薄い茶色の猫っ毛で、大きな瞳、低い背丈と美少女そのものの己の容姿に多少のコンプレックスを抱いている。
とはいえ、基本的には明るく前向きな性格で、ゲームの中では自身のその容姿を逆手に取った行動すらしてみせる。
編入してすぐにクラスのムードメーカ的存在になるほどの、まさに生まれながらの主人公という魅力の持ち主。
突然変異で平民から生まれた、王族と同じ稀有な光属性。
そして、「私」。アリア・フルール。
水属性のアクア公爵家の令嬢で、王道ヒーロー、シオンの婚約者。
母は現国王の王女で、ゲームの舞台となっているかつての魔法学園で父に出逢い、一目惚れ同然で見初められて公爵家へと降嫁した。
つまり、現国王の孫娘にあたるアリアは、その高貴な血筋をシオンの父親に望まれて婚約者になったという経緯がある。
ちなみに、イグニス公爵夫妻とアリアの両親はかつて魔法学園で同じ時を過ごした親友であり、その為、その息子であるセオドアとは幼馴染みに当たる。
家名の「フルール」その名の通り、花も綻ぶ可憐な美少女である。
"皇太子"表記は、理由があって故意にしております。