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パラレルif話 ~リオ編~

もしもアリアが、幼い頃(リオの両親が亡くなる直前くらい)に"ゲーム"の記憶を得ていたら……?という、「パラレルif話 ~リオ編~」です。


 ――『リオ様。私と一緒に暮らしてくれませんか……っ?』


 まるでプロポーズのような言葉を口にしたのは、まだ幼い少女だった。

 両親を共に失い、あまりの喪失感に涙さえ溢せずにいるリオの体を抱き締めて、ポロポロと大粒の涙を流していた。

 その涙がまるで宝石のように綺麗で、思わず見惚れてしまったことを覚えている。


 ――『ごめんなさい……っ。ごめんなさい……っ。私が……っ、もっと早く……っ』


 なにを謝るのだろうと思った。

 ぎゅうぎゅうとリオの身体を抱き締めたその小さな身体は震えていた。


 ――『……リオ様には……っ、幸せになって欲しいんです……っ』


 父も母も失って。

 それでも、幼い世界で絶望したその直後。


 ――確かに自分は幸せを手に入れていたのだと、そう思う。





 *****





 読書の途中で眠気に誘われてしまったのだろう。

 本を膝に抱えたままソファで眠っている、一つ年下の従妹の無防備な寝姿に、リオは一瞬、迷うようにぴくりと足を止めていた。

「……アリア……?」

 呼びに来たというにも関わらず、とても起こそうとはしていない音量で声をかけたリオは、困惑の色が強めに出た、なんともいえない表情を浮かばせる。


 この公爵家に身を預けるようになってから十年弱。

 少女の兄弟と共に育てられたといっても過言ではない従兄(リオ)の存在は、アリアにとっては実の2人の兄と同じような、"兄"の立ち位置でしかない。

 だから、こんな風に無防備な寝顔を見せてしまうのも当然で、ある意味特権だと言われてしまえばそうなのかもしれないけれど。


「……アリア……? こんなところで寝てると風邪ひくよ……?」

 案外眠りの深いアリアは、1度眠ってしまうと多少の物音では起きたりしない。そのことを知っているのも、もうずっと同じ家で暮らしているからだ。

「……アリア……?」

 心地よさそうな寝息を溢している少女を、このまま寝かせておいてあげたいような、早く目を覚ましてその瞳に自分の姿を映して欲しいような、相反する2つの気持ちが内在する。

「……アリア……」

 近づいて、頬に流れていた髪をそっと掬う。

 それでもまだ起きる様子のない少女の寝顔に、もしここにいるのが身内(・・)以外の()であったとしてもこのままなのだろうかとふと思う。

「…………」

 ふわり、と長い髪から漂った甘い花の馨り。

 まるで花の蜜に誘われるかのように、無意識に唇が近づいた。

「……ん……」

 の瞬間。

「――――っ」

 さすがに気配を感じたのか、ぴく、と小さく反応した閉じられた(まぶた)に、リオは慌てて身を引いていた。


 ――一体、自分は、今、なにをしようとした……?


 無意識の自分の行動に愕然とする。

 無防備に眠っている、兄妹(きょうだい)も同然に育てられた少女相手に……。

「……ん……っ、リオ、様……?」

 ぼんやりと起きたアリアが、目を擦りながら寝惚け眼を向けてきて、リオは一瞬跳ね上がった鼓動をどうにか遣り過ごしながら優しい微笑みを浮かべてみせる。

「起きた? こんなところで寝たらダメだよ?」

「ごめんなさい……。ついウトウトしてしまって」

 おはよう。とからかうように苦笑すれば、アリアはまだ眠そうに無防備な欠伸を噛み殺していた。

「午後のお茶しないか、って。みんな待ってるよ?」

 リオがアリアを呼びに来た当初の目的を思い出して甘く微笑(わら)えば、アリアはふと読書前に母親が台所で甘い香りをさせていたことを思い出す。

「……そういえば、お母様、なにか作っていたものね」

 アリアの母親の趣味は、元王女とは思えないお菓子作りだ。

「行ける?」

「はい」

「じゃあ、行こうか」

 自然手を差し出せば、それを拒絶されることはなく、そのまま流れるようにソファから立ち上がるアリアをエスコートすれば、繋がった手を離されることはない。

 連れ立つようにその部屋を後にすれば、パタリと扉は閉じられていた。





 *****





 王族であるリオが公爵家であるアクア家に身を置くようになったのは、まだリオが幼い日の、両親の死がきっかけだった。

 普通王族は、王宮に住まうこととされている。いくら伯母に当たる元王女が婦人となった公爵家とはいえ、もし王宮を出るのであれば、王族の身分を捨てて養子に入るべきだという話が出たところを、そうならないように尽力したのはアクア公爵夫妻であり、そして、1人になってしまったリオと一緒に暮らしたいと言い出した幼いアリアだった。

 両親が亡くなる前までは、数度しか会ったことのない従妹(いとこ)だった。けれど、両親を失って愕然としていたリオの元へと走り寄ってきた幼い少女は、1つ年下だというにも関わらず、リオの身体をぎゅっと抱き締めて、なぜかずっと「ごめんなさい」と謝っていた。

 その理由を、リオは未だにアリアへ問いかけることはできないけれど、最近、少しだけ感じているものがあった。


 ――この少女は、なにか不思議な能力(ちから)を持っている。


 それは、予言や先見の能力(ちから)というほど明確なものではなく、とてもぼんやりとしたもののように思えるけれど。

 庶民でいうところの"初等部"を終える12の歳となり、王宮へと王族として足を運ぶことが多くなってしばらくたった頃。リオは、アリアの今までのリオに対する行動の意味を、少しだけ理解した気がした。

 アリアは、王族としての勉学の為とはいえ、リオが一人で王宮へ行くことをずっと警戒しているようだった。幼い頃から、リオが王宮へ呼ばれる度に「一緒に行く」と言ってきかなかったのは、周りが微笑ましく思うような、"お兄ちゃん大好きな妹"だからじゃない。


 ――恐らく、アリアが危惧していたのは、この国の王でもある、アリアとリオの実祖父の存在。


 それに気づいた時、もうずっと幼い頃から、自分はこの少女に守られていたのだということを知った。

 両親を失った幼い日に、アリアがリオをアクア家に招くことを両親に頼み込んだのも、できる限りリオが王宮内で一人になることがないように根回しされていたことも。

 全部全部。リオを守る為だった。


 ――だからリオは、今も真っ直ぐアリアに向き合っていられる。



「……婚約……?」

 祖父である国王と、五大公爵家のうちの一家、アーエール家当主を前にして、リオは驚いたように今聞いた言葉を反芻していた。

「そうだ。そろそろお前も婚約者を決める年だ」

「リオ様は将来を期待される身です。そう考えた時には遅いくらいかと」

 将来を期待される身――。おおっぴらに口に出すことは憚れるが、その物言いは、リオが将来皇太子となり、ゆくゆくは王となることを示している。

 高位貴族の子息子女の婚約者は、平均的には12~15くらいに決められることが多いだろう。王族ともなれば、生まれた時から決まっているようなこともある。それを考えた時には、今までリオに婚約者がいなかったことの方が不思議なくらいだった。

「我が娘、マリベールと婚約すれば、リオ様には我がアーエール家の後ろ盾ができます。悪い話ではないかと思うのですが」

 空色の長髪で、その色のせいか少しだけ冷たい印象を受けるアーエール家の当主は、淡々とした口調でリオを窺った。

 側近として、唯一の息子であるルイスもつけると話す彼は、自分の娘をリオの婚約者にすることをずっと打診していたらしかった。

「……ですが、ボクは今、アクア家にお世話になって……」

「だからこそ、だ。お前がアクア家に身を置いているからこそ、権力バランスを考えた時には、別の公爵家から妻を娶った方がいいだろう」

「……っ」

 政治的に最もと思われる理屈を口にされて言葉に詰まる。

 アクア家に身を置き、その上でアーエール家の御令嬢を婚約者にすれば、リオには実質、公爵家2家からの後ろ盾がついたことにもなるだろう。

 ずっと身を置いていたアクア家に恩があるからこそ、その家の令嬢を――、アリア(・・・)を妻に迎えたいと口にしても許されるのではないかという考えは、むしろ甘かったということを思い知らされたのはこの時だ。

 リオを家に置くからこそ、そう言い出さないことを条件にアクア家に連れていくことを許されたのだと、この時に全てのからくりを理解した。

「聡明なリオ様のことです。ご理解頂けるかと」

「……そ、れは……」

 リオが、王族の身分を捨てることなくアクア家で暮らしていた意味。アーエール家の令嬢と婚約することによって得る利益。それらを理解しても、すぐに納得することはできなかった。

 王族である自分が――、将来を期待される自分が、今まで婚約話の1つも出なかったことの方が不思議だったのだ。

 いつからか、勘違いしていた。婚約話が出ないのは、きっと彼女(・・)とそうなることが決まっているからなのだと……。

「……ボクは王族とはいえずっと王宮を離れていて、まだまだ勉強中の身の上です」

 だからすぐに婚約などとは思い切れない、というのは苦しい言い訳だとわかっている。

「そう思うなら王宮に戻ってくればいいだけの話だ」

 案の定、ばっさりと切り捨てられて、国王である祖父は続ける。

「元々は、幼いお前が両親を亡くして寂しい思いをさせるだろうと、一時的にアクア家に預けただけだ。そろそろ潮時だろう」

 リオは、アクア家に養子に入ったわけではない。王族の身分のまま、"時が来るまで"居候(・・)させて貰っていただけ。

「ちょうどいい機会だ。もう戻れ」

 厳しい瞳を向けられて、返す言葉など見つからない。

「……そう……、ですね……。少しお時間頂いて、今後のことなどについてもしっかり考えさせて貰いたいと思います」

 ほとんど放心状態のまま、それでも僅かに残った理性が、今取れる最善の答えを口にする。

「長くは待てない」

「……わかっています」

 恐らく、求められる答えは一週間以内といったところだろうか。

「本格的な勉強をする為にも、早々に戻ってこい」

「…………はい」

 元々リオは、アクア家の人間ではなく、"王族"だ。

 いつか、と決められていた未来が、約束通り訪れただけのこと。

 いつか皇太子に――、王となることが嫌なのではない。むしろ、いつからか、そうなりたいと思っている自分がいた。

 けれど、いざその現実を突きつけられ、こうも喪失感を覚えさせられてしまうのはなぜなのだろうか。


 ――『リオ様』


 花のような少女の微笑みが浮かび上がり、リオはぐっと拳を握り締めていた。





 *****





 アクア家に戻ると、予想通り(・・・・)にパタパタと駆けてくる少女の姿があった。

「リオ様……っ!」

「どうしたの、アリア。そんなに慌てて」

 アリアは、幼い頃からいつもそうだった。普段我が儘など口にしたりしないのに、リオが王宮に行く時だけは一緒に行くと言って譲らず、一人で送り出された時には、用事が終わったらすぐに帰ってきて欲しいと念を押す。

 アリアの実の兄2人は、そんな妹の姿にどれだけ義兄的存在(リオ)のことが好きなのだとからかったりしていたが、そこにそんな甘い感情が込められていないことは、リオが一番よくわかっていた。

 アリアは、リオが王宮に行く時以外には、そんな行動を取ったりはしない。王宮へ出かけるリオを見送る時のアリアの瞳は、緊張だとか心配だとか、そんな張り詰めた感情が混ざったもの。そして、出迎えた時の表情は、無事に帰ってきた(・・・・・・・・)ことへの明らかな安心と安堵だった。

「……あ、いえ……。リオ様のお戻りが遅いので心配で……」

 心の底からほっとしている様子が窺える吐息をつくアリアへ向かい、リオは静かな微笑みを浮かべてみせる。

「そんな、子供じゃないんだから大丈夫だよ」

「……そう……、ですよね……。ごめんなさい……」

 胸を撫で下ろしながら謝るアリアが浮かべる微笑みは酷く曖昧だ。

 その意味を、少し前に――、ある時、国王である祖父と2人きりになった時に理解した。

 もし、両親を失った後、あのまま王宮で過ごすことになっていたとしたら、免れることのできなかった悲劇かもしれない。けれど、今訪れている未来は。

「……ボクは、ずっとアリアに守られていたのかな?」

「え?」

 柔らかく微笑んで、金色に輝く長い髪を優しく梳いた。

「ありがとう」

「……リオ、様……?」

 揺るぎない信念を持ち、強い自分でいられたのは、全てこの少女がいたからだ。

 祖父から脅迫にも似た誘いを受けた時、頭を(よぎ)ったのは、この少女の今にも泣き出しそうな悲しげな表情だった。――そんな姿、今まで見たこともないというのに。

 きっぱりと拒絶できたのは、全てこの少女の存在があったから。

 両親を失ったリオを、小さな手で懸命に抱き締めていた時のような、あんな泣き顔は2度と見たくない。

 だから。

「できれば……、いや、今後はボクがアリアを守る番かな、って」

「……え……?」

 2度と、泣かせたくない。

 その笑顔を守りたい。

「……守らせて……、くれる?」

「……リ……、リオ……、様……?」

 そっと髪に触れた手を頬へと伸ばす。

 指先で優しくその頬を撫でれば、戸惑うようなアリアの瞳と目が合って、リオはくすりと苦笑した。

「小さい頃、アリアはよくボクに言ってたよね」


 ――『リオ様は将来立派な王様になるんだから……!』


 まるで未来を知っている(・・・・・・・・)かのように力強く言われ続けた言葉。

 その言葉に背中を押されるように、リオもまたずっと高みを目指していた。それはもちろん、両親の遺言のようなものも理由の一つではあったけれど。

「今もアリアは、ボクに王になって欲しいと思ってる?」

「もちろんですっ」

「……そっ、か」

 静かに頬を取られたまま力強く頷かれ、リオはその指の動きを止めてアリアの瞳をみつめ下ろしていた。

「……じゃあ、アリアは? アリアは……」


 ――王妃になることを、夢みていたりはしない?


 零れ落ちそうになった言葉を、寸でのところで呑み込んだ。

 お姫様になりたい。王妃様になりたい。というような、幼い女の子であれば1度は通るような夢を、アリアは今まで1度も口にしたことはない。

 それはつまり。

「……リオ様……?」

「……ボクは、今までこの家でアリアと過ごせたこと、すごく幸せで嬉しいことだと思ってるよ?」

 行くべき未来(みち)は、決まった気がした。

 否、元々決められていた未来だった。けれどそこから目を逸らさない決意をしたのは、他でもない自分自身。誰に、なにを言われたわけでもなく。

「でも、1つだけ……」


 ――そのせいで君は、ボクを"異性"としては見てくれなくなってしまった。


 幼い頃から兄妹同然に育てられてしまったから、アリアがリオを見る目は、実の兄2人と同じもの。むしろ、リオを心配するその瞳は、"弟"に近いのではないかと思ってしまうことがあるくらいだ。

 もし、その関係を変えることができるなら。"離れる"という苦しい選択肢を選ぶことも一つの手段かもしれなかった。

「……そろそろ城に戻ってくるように言われている」

「――っ!」

 思った通りに目を見張ったアリアの反応に苦笑する。

「大丈夫だよ、アリア。心配しないで? もうボクも子供じゃないんだから」

 触れていた頬から手を離し、そのまま抱き締めてしまいたい衝動を押し込めながら、揺るぎない瞳でアリアを見る。

「ボクを信じて? 君に真っ直ぐ向き合えないようなことはしないから」

 アリアが守ってくれた"今までの自分"を裏切ったりはしない。

 だから。

「リオ様……」

 不安気に揺らめく瞳に微笑んだ。

「ボクが城に戻る時には、そんな心配そうな表情(かお)じゃなくて、最高の笑顔で送り出して欲しいな」





 *****





「城に?」

「はい。本格的に勉強を始めるにあたって、そろそろ戻って来いとお祖父様に言われまして」

 リオから相談があると言われて時間を作ったアクア公爵家当主――、アリアの父は、リオから告げられた決意に一瞬だけ考えるような素振りを見せ、それからゆっくりと頷いていた。

「……そうだな……。明確な期限が切られていたわけじゃないが、元々一時的な約束ではあったしな」

 リオの育ての親と言っても過言ではないアリアの父は、外ではきちんと敬語を使っているが、アクア家へ戻れば王族とその臣下という関係を越えて砕けた言葉遣いになる。

 そんな関係ももうすぐ終わってしまうかもしれないと思うと寂しいものがあるけれど。

「そうですよね」

 リオはあくまでアクア家に預けられて(・・・・・)いただけで、養子に入ったわけではない。王族の身分を捨てることなくいられたことを、リオは今、改めて心から感謝したい気持ちだった。

「婚約者も決まって、いよいよ本格的に王族として勉強を始めるつもりだというなら、喜んで背を押さなくてはな」

 少し寂しげに。けれど納得した様子を見せる育て(アリア)の父親へと、リオは一瞬黙り込む。

 ――"婚約者"。

 自分がアクア家へと身を置くことになった経緯や条件を耳にしても、どうしても一つだけ通したい我が儘があった。

 アクア家当主であるこの人に迷惑をかけてしまうことになるかもしれないことはわかりつつ、それでも意を決して口を開き……。

「その件についてなのですが……」

 かけた時。


「ちょうどアリアのところにも、ウェントゥス家から婚約話が来ていることだしな」


「…………え……?」

 耳に飛び込んできたその言葉に、リオは大きく目を見開いていた。

「……アリアに、婚約話が……?」

「アリアも、後1年もすれば社交界デビューだ。ぼちぼちいろいろなところから話は来ている」

 アリアは、現国王の実孫だ。

 アリアの母親である元王女が公爵家へ降嫁した為に王族ではないけれど、王族と同等の血筋を持つ。

 そんな少女が引く手あまたであることは当然で、リオと同じく今までそんな話が出なかったことの方がおかしいくらいだった。

「……それって……」

 もう、こんなところで立ち止まっている場合ではないと、リオはぎゅっと拳を握り締めると真っ直ぐアリアの父親の顔をみつめていた。

「……ボクは、公爵家から妃を(めと)ることを求められていて、アリアは公爵家以上の家へ嫁ぐことが求められているのなら……」

 恐らくは、リオは公爵家以上の身分の女性を妻に迎えることを求められているだろうが、アリアはそうではない。自分たちも恋愛結婚をした優しいアリアの両親は、娘の幸せを一番に望むであろうから、よほど格下の相手でない限り、アリアが"誰か"を選べばその背を押すに違いない。

 それでも。

「……ボクじゃ、ダメですか?」

「……え?」

 驚いたように目を見張ったアリアの父親へと、決意を込めた瞳を向ける。


「アリアを、ボクの婚約者に」


 もし、将来、リオが王となるなら。その婚約者になった者は、皇太子妃であり王妃となる。

 普通であれば、娘がそんな立場に望まれれば一つ返事で喜ぶだろうが、アクア家に関してだけは別だろう。

 リオを家に入れた時点で、アリアはリオの婚約者候補から外されていたのだから。そうでなくとも、アリアの両親は、娘の一番の幸せを願っている。

「わかってます。アリアがボクのことを兄のような存在としか思っていないことくらい。……それでも、ボクは……」

 ぐっと握った拳に力を込める。

 ここで目を離すことは許されない。

「すぐにでもアクア家を出ます。将来、必ず期待に応えてみせますから……っ」

 リオをこの家へ招いた時に出された条件くらい、自分でなんとかしてみせる。

 それくらいのことができなければ、この先大きな国の上に立つ資格などないだろう。

「……アリアのことは、ボクに……っ」

 ずっと、守られてきた。

 だから、今度は。

「ボクに、守らせて下さい!」

 頭を下げて願い、それから誓う。


「必ず、幸せにしてみせます」









 ――「アリア」


 この部屋を出たら君に告げよう。


 ――「どうか、君の婚約者になる権利をボクに」

寝込みを襲っちゃダメですよ!(笑)

1つ屋根の下に暮らしていて、"義兄妹の禁断の愛"的な方向の妄想をしてみました。

アクア家を出る準備をする1ヶ月くらいでアリアを口説き落としてドキドキさせてあげて欲しいと思います。


本編、こちらにするべきだったな、と、今さらながら考えさせられました。(一時的にアクア家にいたリオが王宮に戻った設定。ちゃんと祖父の魔の手からは逃れます。……アリアに関しては、結局シオンに()られてしまうことは変わりないので切ないですが……)

よろしければ脳内変換して頂ければと思います!!(え!)


物語を書き始めた時はノリノリだったのですが、途中で可哀想になってしまったという執筆中の出来事です。リオと祖父の関係を時々うっかり本気で忘れます。ごめんなさい……!書き始めた頃は、まだBL時代の悪癖が残っていたもので……。(基本BLは暗い系ばかり書いていた過去が……)

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― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは!! あああああああああああああああ 私へのご褒美回毎度ありがとうございます!!! ↑勝手に言ってる。 泣きましたよ、ええ、号泣しましたっ!!! アリアと結婚!!!マジですか!!…
[一言] リオ様ルートも良い!!!王道少女マンガチックですね! 続きが読みたいwww
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