星降る夜に
そのまま王宮に留まる流れになる中で、シオンとアリアだけはこの場にはいなかった。
アクア家に対して考えた時には、これほどいいアリバイはないかもしれない。
「……今夜はみんなで飲みません?」
各々部屋は用意されてはいるものの、夕食を共にしていた面子へと、ルークはなんとも表現しがたい表情で周りを見回した。
「……なんか、今頃アリア嬢がなにをしてるのかなぁ、とか思うと、一人で寝付くなんてとても無理そうで」
「な……っ」
複雑そうな苦笑を洩らしたルークへと、色の濃い薄いはあるものの、ユーリを筆頭に瞬時に全員の顔が赤くなる。
「……や、だってそうじゃないっスか……っ」
つられてルークも赤くなりながら、慌てたように言い訳する。
あの少女に恋愛的な感情を抱いていないルークでさえ、とても複雑な気分なのだ。
それを、ここにいる他の面子が。
目の前で二人が想いを通じ合わせる場面を見て、一体どんな想いを抱いたのか。
ルークには、想像するだけのことしかできないけれど。
この場にいる者はみんなわかっている。
あの少女は、朝まで恋人の腕の中だ。
「……だったら、ボクも混ぜて貰えるかな?」
くすっ、と小さな笑みを溢し、リオが意味ありげな瞳をルークへ向ける。
「リオ様っ?」
それに、驚きの目を向けたのはセオドアだ。
いつだって自分の立場を弁えたリオが、一番にルークのその提案に賛同するとは信じられないことだった。
しかも。
「でしたら、先日頂いた評判のワインがありますから、お持ち致しましょうか?」
普段であれば難色を示すルイスまでもが主へとそう窺うものだから、もはや飲みの席に参加しない、などという選択肢は存在しなかった。
「そうだね。お願いしようか」
優雅な微笑みを浮かべたリオに、ルイスが恭しく頭を下げていた。
そうして。
「……まぁ、やっと、って感じスかね……」
「……あのシオンが今まで我慢してた方が驚きだ」
遠い目をして語るルークに、何処か寂しそうな目をしたセオドアの苦笑が洩らされる。
「まぁ、最後の一線以外は割りとやらかしてた、っつーか、手は出してたみたいだけどなー?」
アルコールの力もあってか、からかうような口調でギルバートが陽気に笑っていた。
「……そこで止められる方がむしろスゴいと思うけどな」
同席を断ることもできずに、いつの間にかその場に馴染んでしまったシャノンが、アルコールの匂いに顔をしかめながら溜め息を吐き出した。
「それだけ大切ってことッスかね」
「……だといいんだけど」
愛の力かと笑い上戸のように楽しげに口を開いたルークへと、ユーリもまた大きく肩を落とす。
少女が、誰よりも大切な存在であることには間違いない。
ただ、手に入れたくて堪らなかった存在が腕の中へと飛び込んできて、どこまであの友人が手加減できるのだろうかと、そう心配せずにはいられない。
「……もう、泣かせるなよな」
星の瞬く窓の外へと顔を向けて、ユーリはぽつりと言葉を投げていた。
R18版(アリアとシオンの初×××)は明日更新予定です。(やっとここまで……!)