Break Time 2
今日は朝から、否、それはもう昨日から。ユーリに会いたくて会いたくて、話したくて仕方なかった。
けれど、ギリギリに来る傾向があるユーリと朝話す時間があるわけもなく、授業の合間の短い休み時間で話し終えるものでもないから、結局お昼になるまでそわそわと休み時間を待ち侘びていたアリアだった。
「昨日、シャノンと話してなかった?」
「会った会った!」
聞きたくて堪らなかった質問を投げかけたアリアへと、ユーリの満面な笑みが向けられて、その眩しさにアリアは圧倒されてしまいそうになる。
もはやこの話題はシオンとは会話済みの内容なのだろうか。
シオンは、ユーリに会いに来たアリアへとチラリと視線を投げただけで、ユーリの隣の席に腰かけたまま口を出す気配はなかった。
「アリアから話だけは聞いてたから。違う学校の制服着てたし、特徴もそんな感じだし、もしかしてと思って声かけてみたらドンピシャッ」
すぐに誰とでも打ち解けることのできる特技を持つユーリは、新しくできた知り合いにご満悦の様子だ。
「オレも会ってみたかったんだよね」
アリアたちから話を聞いてずっと気になっていたのだと無邪気な笑顔を向けられて、こちらまで嬉しくなってしまう。
"1"と"2"の"主人公"同士が仲良くなったら、これ以上の最強ペアはないだろう。
「……なに話してたの?」
ついつい反射的に物陰に隠れて観察してしまった為、二人がなにを話していたのかはアリアにはわからない。
ユーリは誰が相手でもすぐに友達になってしまう性格だが、シャノンは真逆の性格だ。会話を弾ませるどころが話を続かせることすら難しい。
「ん~? ただの世間話だけど。自己紹介して、アリアとシオンの友達だって話して」
気になっていた人物と会うことができて満面な笑みで話しかけるユーリと、素っ気ない態度でただ一言二言だけを返すシャノン。
そんな二人の様子が思い浮かんで、思わず口元が緩んでしまう。
「シャノンて、あんまり喋るタイプじゃないだろ?」
すぐに相手の性質を見抜くのは、さすがユーリと言うしかない。
「なんか、アラスターを通して喋ってた感じだけど」
ユーリとシャノンのペアに気を取られすぎていて、あまりアラスターの存在にまで気が回っていなかったアリアだが、確かにシャノンは、傍にアラスターがいる時は、会話はアラスター任せにするような性格だ。
そこでユーリは「でも」と言い置いて、にかっ、と太陽の光を思わせる笑みを浮かべる。
「すげーいいヤツっぽかった!」
ユーリを前にして「いいヤツ」にならない人間の方がまずいないのではないかとは思うけれど、純真なその感情にはアリアまでつられて優しい気持ちになってしまう。
一緒にいる人間をほんわりぽかぽかした気持ちにさせるのは、さすが"主人公"だという一言に尽きる。
「今度みんなで集まれるといいな!」
「!」
なんの柵もないユーリだからこそ、純粋に口にできる願いゴト。
とても楽しそうに笑うユーリに、アリアは反射的に瞳を丸くする。
想像する。
"1"と"2"、全てのメンバーが揃ったところを。
それは、とても贅沢な一時だ。
でも。
「……ユーリが望むなら叶えられるかも」
きっと、不可能なことではない気がする。
他でもない、ユーリがそれを願うなら。
「え?」
ぽつりと漏らされたアリアの言葉に顔を上げたユーリへと、アリアはふんわりと微笑みかける。
「私も、そうなれば嬉しいな、って」
「だろ?」
それはきっと、ユーリにとっては、願い事にも入らないほど極々普通の日常の一部分。
煌々とした笑顔を浮かべるユーリに、アリアも「いつか」と強く願う。
――そんな素敵な光景に出逢える日が訪れますように。
きっと、それは、そう遠くないうちに。